50.キケンな先輩(テンツバ編)
……さて。
やって来たぜ、3年生の棟。
でも、こっからどうすっかな。
なんせ、あの人たちの所属科もクラスも知らない。
とりあえずはテキトーに探すしかねえか。
ウロウロウロッ……。
「ねえ……アレ、1年の松城百合子じゃない?(通りすがりの3年女子A、ビビリっ)
「うわ、本当だ! なにしに来たんだろ……まさか、上級生にケンカ売りに来たとか⁉︎(通りすがりの3年女子B、ゾゾ〜っ)」
……いや。
んなワケねーだろ。
はあぁぁ……。
そこら辺のパイセンに訊こうと思ったのに、こりゃ無理そうだな(汗っ)
とりあえず、地道に全部の教室を回っていくか。
ウロウロウロッ……。
いねえな。
もう帰っちまったのかも。
仕方ねえ、今日のトコロはアタシも帰るか……。
フッーー(百合子、前方の教室から出てきた2人の生徒の姿をとらえっ)
っーー!!!
あ、あれは……。
見つけたっ!
「あ、あの、先輩っーー!」
「……あん?」
くるんっ……(百合子に呼び止められた2人の生徒、足を止めて振り向きっ)
「……どうも、お久しぶりっす。テンツバ……いや、浅宮 天華 先輩、北浦 椿 先輩ーー」
「お前は、松城……(天華、驚き気味に返しっ)」
シーン…………。
「ワザワザこんな所に来て、なんの用だよ?(天華、尋ねっ)」
「あ、その……」
どうしても、確かめたいことがある。
2日前ーー。
インテリ風ナンパ野郎と廊下で話をした時。
アタシが先に立ち去って廊下を曲がった瞬間、2人の女子生徒がいた。
忘れもしない、入学式の日にからまれた赤髪の先輩と青髪の先輩ーー。
あれは、間違いなくこの2人だった。
歩きながらすれ違ったアタシとは違い、2人は廊下の壁に背を預けて立ち止まっていた。
ーーつまり。
いつからかは知らねえが、2人はあの場所に腰を据えて立ち止まっていたんだと思う。
そうなると。
静かな廊下で話していたアタシたちの会話が、きっと聞こえていたはずだ。
……だから、気になる。
インテリ風ナンパ野郎をシバいたのがこの2人だとしたら、私たちの会話がなにか関係していたのかーー。
「あ、あの……2年の原ってヤツをシバいたのが先輩たちだっていう噂……ホントっすか?」
シーン…………。
「ああ、本当だ(天華、静寂を切り裂き返答っ)」
っ……!
やっぱり、ホントだったんだ。
「な、なんでっすか?」
「……逆に、なんでそんなこと訊くんだよ?」
「それは……」
ど、どうしよう。
なんて返したらイイ?
……いや。
ここまできて、なに尻込みしてんだよ。
アタシは、このモヤモヤを解消しにココへ来たんだ。
ありのままをぶつけたらイイーー。
「2日前、たぶん先輩たち聞いてましたよね? アタシと原が廊下で話してるトコ」
「っ……!(天華&椿、ピクっ)」
「それと今回のコト、なにか関係があるんすか?」
「……お前には関係ねえだろ(天華、バッサリっ)」
……教えて、くれないのか。
「イイんじゃない? 教えてあげれば。関係なくはないでしょ(椿、ポツリっ)」
あ……。
初めて聞いた、青髪先輩の声。
「……まあ、お前がイイなら私は構わないけど」
っ……!
お、教えてくれるのか?
「アイツをシバいた理由は、アイツが『女の敵』だったからだ」
「女の、敵……?」
「お前があの場をハケたあと、アイツがバカ丸出しでヒトリゴト言ってたんだよ。自分が優しく口説いたら年下の女はイチコロだってな」
「っ……!」
「今まではバレないように他校の女を弄んでたらしいけど、ついにウチの学校の女にも手を出そうとしたんだ。その標的が、凛咲愛美だったってワケ」
っっっーー!
そ、そんなっ……。
「他校の知り合いに情報を探らせたら、本当に被害者がたくさんいることがわかってよ。裏もキッチリ取れたから、昨日ボッコボコにシバいてやった。顔の原型がわかんねえぐらいにな」
ひ、ひぇ……。
容赦ねえな、この2人。
「でも、アイツをシバいた理由はほかにもある」
「っ……?」
「私たちが1番許せなかったのは……アイツが、お前の大切な『恋心』を土足で踏みにじったことだ」
「えっ……⁉︎」
「……お前、好きなんだろ? 凛咲愛美のこと」
っっっーー!!!
な、なんでっ?
バレてる……!
「……あの時さ、私たち嬉しかったんだぜ?」
「へっ?」
「アイツに凛咲のことが好きなのか訊かれた時、お前は自分の気持ちを取り繕って誤魔化したりしなかった。ちゃんと、無言で『YES』と答えてた。それが、すごく嬉しかったんだ。だってーー」
だ、だって……?
グイッーー(天華、椿の左腕に自分の右腕をからませっ)
「チョ、チョット⁉︎ はぁ……もう(椿、呆れながら照れっ)」
え?
せ、先輩?
なにやって……。
「だって、私たちもガールズLOVERだからーー!」
え。
……………………。
えええぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっっーー⁉︎
「マ、マジ……すか?(百合子、目が点っ)」
「誰にも言うんじゃねえぞ。同じ立場のお前だから言ったんだからな」
「は、はい……」
い、いや、言わないけど!
でもっ。
なんかっ。
サラッと、すごいカミングアウトされたんですけど⁉︎
「チラッと教室のぞかせてもらったけど……可愛い娘じゃねえか、凛咲愛美」
「へっ?(照れMAXで顔から湯気がプシュウッ)」
「安心しろ。お前の恋を口外しないよう、原のヤツにはちゃんと釘を刺しといた。つーか、記憶が消えるくらいボコッたから、もう覚えてねえかもな」
「は、はぁ……(苦笑っ)」
「あの日、たまたま私たちが暇つぶしで1年の棟をブラついてたのもなにかの縁だったのかもな。でも……私たちができるのはココまでだ」
スッーー(天華、椿の左腕から右腕を離しっ)
「想いが通じ合って結ばれるっていうのは、すごく難しい。それが女同士ってなると、さらにハードルは高くなる。空高く、見上げるほどにな」
っ…………。
「私たちは運良く結ばれたけど、お前の恋が同じようにいく保証なんてどこにもない。だから、無責任に『がんばれ』とか『キットうまくいく』なんて軽々しく言えない。でも、それでも……」
フッーー(天華&椿、優しく微笑みっ)
「それでも、私たちはそのピュアで『まっしろ』な恋がうまくいくことを……願っているーー」
トクンッッッーー!(百合子、胸の中にかつてない感情の波が押し寄せっ)
「じゃあな(天華、椿とともに立ち去りっ)」
…………。
待って。
…………。
先輩。
…………。
待ってください。
スタッ、スタッ……(遠ざかる、天華&椿の背中っ)
「先輩っっっーー!!!」
「っ……!(天華&椿、立ち止まって振り向きっ)」
「あの、ありがとうございます。凛咲を……愛美を、助けてくれてーー(百合子、深々と頭を下げっ)」
「……な、なに頭なんか下げてんだよ。私たちはお前に負けたヤツらだぞ?(※第1話参照)」
……そんなこと、どうだってイイ。
愛美を。
そして。
アタシを。
こんな、生意気な年下の小娘の恋を……。
守ってくれて。
応援してくれて。
ホントにーー。
「ありがとう、ございますっーー(百合子、大粒の涙が溢れっ)」
……クスッ(天華&椿、顔を見合って笑いっ)
「顔を上げな、松城」
「…………(百合子、天華の呼びかけにゆっくりと顔を上げっ)」
「あんまり泣くと、目が腫れて凛咲が心配するぞ? 女はそういうのに敏感だからな」
「っ……(百合子、右手の甲で目をコシコシッ)」
「よし、それでイイ。とりあえず、お前は美人なんだから自信を持て」
「か、からかわないでください!(赤面っ)」
「からかってねえって。あとは……いつだって気持ちに素直にな、松城!」
グッーー⭐︎(天華&椿、力強く親指を立てっ)
「っ……は、はいっーー!」
ペコリッ!(百合子、再び深々と頭を下げっ)
ザッ……(天華&椿、立ち去りっ)
……ありがとうございます、先輩。
あなたたちの恋のカタチを包み隠さず教えてくれて。
先輩たちの幸せそうな背中を見て、なんか少し勇気が出ました。
4月からは2年生ーー。
また愛美と一緒のクラスになれる保証なんてない。
なのに、このままなんとなくフワッとすごしてちゃダメだ。
想いは、カタチにしなきゃ伝わらない。
……大丈夫。
バレンタインの時だって、ちゃんとチョコを渡せたじゃないか(※第47話参照)
きっと、また勇気を出して想いをカタチにできるはず。
いつだって、気持ちに素直に。
……ですよね、先輩!
ーー間近に迫る進級の時。テンツバから思わぬエールを受けた百合子の恋の行方や、いかに……(これにてキケンな先輩編、完結♪)




