49.キケンな先輩(衝撃の真相編)
「今日はもう、凛咲さん帰っちゃったのかな?」
くそっ、よりにもよって1番ツラを見たくねえヤツに出会うなんて……。
サッサと退散だっ!
「あっ、待ってよ松城さん!」
ピタッーー!(百合子、足を止めっ)
コ、コイツ……。
なんでアタシの名前を知ってんだ?
……ああ、そうか。
アタシは、実質的にこの学校最強のヤンキーだった。
名前が知れ渡っていてもおかしくはないか。
つーか。
わかってんなら、最初から名前で呼べよ?
イチイチ腹が立つヤツだぜ……!
「よかった、今日は怒ってないのかな? 素直に止まってくれるなんて」
「…………(ギロッ)」
「あれ、なんかやっぱ怒ってる?」
「なんか用かよ」
「ああ……いや、別にキミに用はなかったんだけど。凛咲さんがいなさそうだったから、なんとなく呼び止めただけ」
ちっ……。
いちいちイライラする野郎だぜ!
こんなヤツを相手にするほどバカらしいことはない、帰るぞ!(百合子、立ち去りっ)
「あっ、あのさぁ!」
あああっ、やめろ!
これ以上アタシにからむな!
イライラしすぎて、ぶっ飛ばしちまいそうだ!
「松城さんってさぁ……もしかして、凛咲さんのこと好きなの?」
「っっっーー!!!(百合子、思わず足を止めっ)」
な、なに……?
「なんか、昨日の様子を見てたらそう感じちゃって。松城さんは凛咲さんのことが好き……違う?」
「…………」
「無言ってことは、ビンゴだと思ってイイのかな?」
「…………」
否定したく、ない。
こんなヤツごときに。
愛美への気持ちを、ウソでも誤魔化したくないーー。
「ふふ、じゃあ訊き方を変えようかな。松城さんは、凛咲さんの……なに?」
「…………」
「それも無回答?」
「……ダチだ」
「ふうん、それだけ?」
「……それだけだと、ダメなのかよ?」
「いや、別にダメじゃないよ。そっか、ただの友達なんだね。よかった」
「……どういう意味だ?」
「ふふ、それは松城さんの想像にお任せしようかな」
「っ……!」
あああっ……やっぱダメだ!
これ以上話してたら、コイツをぶっ飛ばしちまう!
こらえろ、アタシっ。
こらえるんだ!
ザッーー(百合子、立ち去りっ)
スタスタスタッ……フッーー(百合子、廊下を曲がった所で何者かとすれ違いっ)
「あ〜あ、行っちゃった。つまんねえの、もっとおちょくってやろうと思ったのに。ふふ……つーか、アイツ本当に凛咲ちゃんのこと好きだったのかよ。こいつは思わぬ特ダネをゲットだな、学校最強のヤンキーもチョロイもんだぜ。ま、アイツは色々とややこしそうだから、今はこれぐらいにしとこっかな。本題は凛咲ちゃんのほうだし。ああいう大人しそうな女子は、俺がちょっと年上の余裕かまして優しく口説くとイチコロだからな。面白すぎてやめらんねえわ。バレねえように今までは他校の年下ちゃんと遊んでたけど、そろそろ身近なトコで遊びてえもんな。凛咲ちゃんで何人目かなあ? はは、もう覚えてねえわ〜(原先輩、踵を返しっ)」
ジリッ、ジリッーー。
「んっ?(原先輩、微かな音を感じて振り返りっ)」
シ〜ン……。
「気のせいか……? 誰かいたと思ったけどーー」
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(2日後っ)
愛美と話さなくなってから3日目ーー。
昨日はもう、挨拶すらしてもらえなかった。
でも、それは愛美のせいじゃない。
そうさせてるのは全部アタシだ。
教室まで向かう、朝イチの廊下ーー。
愛美から笑顔で「おはよう」って言われるのが楽しみで、毎日ウキウキしながら歩いてた。
なのに。
今は。
ツラいーー。
「ねえねえ、聞いた? 2年の原 黒男ってヤツの話(他クラスの女子生徒A)」
「え、なにそれ?(他クラスの女子生徒B)」
ピクッーー。
は……原、黒男……?
「なんかさあ、昨日ボコボコにシバかれたらしいよ。しかも、ボコったのはあのテンツバだっていう噂(※第1話参照)」
っっっーー!
な、なんだと……⁉︎
「テ、テンツバに? なにやらかしたの?」
「わかんない……でも、見るに耐えないほど相当なボコられようだったらしいよ」
「へ、へえ……」
っ…………。
な、なんだ? 今の話。
急すぎて、ちょっと意味がわかんねえ。
どういうことだ……?
ガラッーー(百合子、呆然気味に教室の戸を開けっ)
「聞いた? 2年の原先輩の話(クラスの女子A)」
「知ってる、テンツバにシバかれたんでしょ?(クラスの女子B)」
「うん、噂だから確証はないみたいだけど」
「その原ってヤツ知ってる。パッと見はインテリ風のイケメンだったけど、なんか裏でもあったのかな?」
「さあ……」
ホ、ホントにこの噂で持ちきりだな。
……ってことは。
愛美も、当然すでに知ってるってことだよな?
大丈夫かな……。
愛美、いつにもまして浮かない顔でうつむいてる。
……そりゃそうだ。
好きになった相手がボコボコにされたなんて、ショックで心が砕け散るに決まってるーー。
こ、声……かけてみようかな?
傷心中なんだから、放っといてくれって思われるかもしれない。
それに。
今まで愛美を避けるようにしてたのに、イキナリ話しかけてくんなよって煙たがられるかもしれない。
でもーー。
落ち込んでる愛美の横で、ただ黙って座ってるなんてアタシにはできないっ。
愛美のために、なにか力になりたい……。
たとえ、求められていなくても。
その想いだけは伝わってほしい。
だから……ごめん、愛美。
アタシ、今からお前に声をかけるぜーー。
「お、おはよう(照れっ)」
「っ……⁉︎ お、おは、ようっ……」
あ……。
返してくれた。
挨拶、返してくれたっ!(百合子、涙がジワっ)
……って。
な、なに感極まってんだよ!
せっかく会話の突破口が開いたってのに。
愛美のこと、ちゃんとフォローしなくちゃ!
「だ、大丈夫か?」
「え……な、なにが?」
「いや、原のヤツのこと」
「原って……あの、原先輩のこと?」
「ああ。好きだったんだろ? なのに、こんな噂が立つなんて……ツライよな」
「えっ? ちょ、ちょっと待って! 私……原先輩のこと、全然好きじゃないよ⁉︎」
……へっっっ?
「な、なんで、そう思ったの?」
「だって……カッコよかったって言ってたじゃん?」
「だ、誰を?」
「いや、だから……原のコト」
「…………ぷっ」
え?
「ふふふ……あははははっ……!」
ちょ、ちょっ……⁉︎
なにっ?
なんでそこ、大爆笑なのっ⁉︎
「ごめんね……でも、百合ちゃんの様子が急におかしくなったのって、もしかしてそれが原因だったの?」
「へっ? いや、それは、その……(タジタジっ)」
「ふふ……カッコよかったっていうのは、原先輩のことじゃないよ」
「え?」
「あのカッコよかったっていうのは……百合ちゃんに言ったんだよ」
「ア、アタシィッッッ……⁉︎」
ま、待って。
ちょっと待って。
それ……どういうこと⁉︎
「あの時ね、実は私すごく困ってたんだ。イキナリ可愛いとか言われたり、好きな本のジャンルとか訊かれて……」
ええっ⁉︎
そ、そうなの?
恋する乙女モードに入ったんじゃなかったの⁉︎
「そんな時、百合ちゃんが『図鑑だ!』って言ってフォローしてくれて……それだけじゃなく、あの場から早く立ち去るように促してくれた。それがとても頼もしくて……だから、カッコよかったって言ったんだよ」
は、はぇ……?
って、ことは。
つまり。
アタシ。
思いっきり。
めちゃくちゃ勘違いして、1人で壮大に落ち込んでたってことぉっっっーー⁉︎
あわわっ……。
マ、マジかっ!
アタシ、なんて早とちりな……。
あうぅぅ〜!
は、恥ずかしいっ!
恥ずかしすぎて、穴があったら入りたいぃぃぃ!
そしてっ。
勝手に変な空気を作って、ごめんよ愛美〜!(泣っ)
「もしかして……ヤキモチ、妬いてた?」
「へっ⁉︎ バ、バッカヤロー、んなワケねえだろ!(真っ赤な顔でプイッ)」
「ふふ……そっか。ヤキモチ妬いてくれてたら、嬉しかったのになーー」
はい、妬いてました。
ホントは。
落ち込むと同時に、それはもう盛大にヤキモチ妬いてましたぁ!
「……でも、よかった」
「えっ?」
「また、こうして百合ちゃんと笑いながら話せるようになってーー(目に涙を浮かべながら、安堵のエンジェルスマイルっ)
「っっっ……」
その言葉、そっくりそのままお返しするっつーの。
はあぁぁ……。
よかった。
ホントに、よかったぁーー(百合子も涙目っ)
あ……でも。
1つだけ、気になることがある。
あの時のあれは、きっとーー。
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(下校の時間っ)
「じゃあね、百合ちゃん」
「おう、またな」
さあ、愛美をコッソリ校門までお見送りだ。
今日からまた、しっかり任務を果たすぞ〜!
サッ、ササッーー(機敏な動きで愛美を見守りっ)
よし、ナニゴトもなく無事に帰ったな。
やっぱ、1日の終わりはこうでなくっちゃ!
……それと。
今日は、もう1つやらなきゃいけないコトがある。
どうしても、確かめたいことがあるんだ。
あの人たちにーー。
ーー百合子が確かめたいこと。そして、その相手とは?(次回へ続くっ)




