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心待ちにしています

「これもー焼いてー」


 河原にのんびり座って焚火をしていたアオの背に、のんびりした声がかかると同時に目の前ににゅっと黄色い丸いものが差し出された。


「よー紅、久しぶり」


 目の前に差し出されたものを、少し寄り目で見ながらアオは受け取る。


「うんー久しーぶりー」


 のんびり答えた紅はアオの横にある大石に腰掛ける。


「なかなか良いミカンだ……」


 手にしたそれを軽く宙に投げながらアオが言う。


「このままでも美味そうだけど、焼きミカンにしていいのか?」

「うんーその方が甘ーいもーん!」

「わかった」


 このミカンならこのままでも結構甘いと思うけどな……と言いながら、アオは紅のリクエスト通りに、焼きミカンにするべくミカンを焚火に入れる。


「んでーそっちーあたしにもー分けてー」


 紅が焚火を指さす。

 アオは苦笑いを浮かべた。


「良く分かったなー。ちょうど焼き上がりの頃合いだよ」


 アオはそう言って横に置いていた枝を焚火の中に突っ込む。


「すっごーく!甘ーい匂ーいたーくさんしてるよー」

「え?そうなのか?」


 紅に言われてアオは枝を操る手を止め、鼻を上に向けてクンクンと鳴らす。


「あ、ホントだ」


 焚火の火加減に気を取られ過ぎていて、周囲の匂いに気づくのが遅れていたようだ。

 アオの周囲は甘くて、それでいて少し酸味のある爽やかさの混じる空気に満ちていた。


「焼ーき林檎ー♪」


 歌うように紅が言う。


「当たり!」

「あたしー林檎ー大好きー。紅色でー、美味しいもーん!」


 紅にとって林檎の色はかなりポイントが高い。


「ははっ!」


 アオは苦笑いしながら林檎を焚火から取り出し、準備していた大きな葉っぱに乗せる。

 葉っぱがお皿である。


 所々紅色が残っているが真っ黒に焼けているそれを、アオはお箸を使ってパリッと音を立てて半分に割った。

 中はキラキラした黄色――と言うより黄金のような金色……。

 

「わーい!これー絶ー対っ!美味しいヤツー!」


 紅が歓声を上げる。

 白い湯気を立て、陽の光に果肉を光らせる焼き林檎はとても美味しそうだ。


「紅、お箸持ってる?」


 もし無いならその辺の枝を拾って作ろうか?と聞いたアオに紅はニヤッと笑う。


「へっへへー……。ジャーン!」


 ジャーン!と言ってアオに見せたのは木の匙。

 木を削りだして作られた美しい匙だった。

 柔らかく焼けた焼き林檎は、確かにお箸より匙の方が食べやすいだろう。

 それにとても熱いので、金属製のものより木の方が口元に触れた時に熱さを感じずに済む。


「準備いいなぁ!」

「銀河がー持ってけーって」


 河原に来る前に紅は母屋に寄っていたのだった。

 その際にアオが河原で焼き林檎をしているから、木の匙を持って行った方が良いとアドバイスをもらったと言う。


「なんだ、ばれてたか」


 こっそり一人で遊びに来たつもりだったが、仲間にはしっかりバレていたようだ。


「あとで他の連中も押しかけて来そうだなぁ……。オレは焼き林檎したいのに、宝とか居るとすぐに芋とか突っ込むからさ、こっそり一人でって思ったんだけど……」


 むむっとアオは思い悩むように少し口元をへの字にする。


「お芋もー美味しーいよー?」


 匙で林檎をすくい、口に運びながら紅が言う。


「もちろんそれはオレもわかってるさ」


 アオも器用に焦げた皮をお箸で外し、中の艶やかな実をつまんで口に入れる。


「美味っ!この熱くって、トロッとしてて、でもシャキッと感がちょっと残ってるのがいい!」


 お箸を握って焼き林檎を大絶賛するアオ。


「うん、すっごーく美味しーい。でもー、お芋もー美味しいよー」

「わかってるって!けどさ、オレは今日は()って気分じゃなかったんだよ。ミカンは()()って感じだったんだけどさ」


 つまりは焼き果物の気分と言うことらしい。


「焼き芋の美味さを否定するわけじゃない!」

「ふーん?」


 よくわからん……と言う顔で紅は首を傾げる。


「ま、それはそれとして……」

「うん?」


 アオは焚火に目を向ける。


「さっきのミカン、黄魚の力入ってなかったか?」


 その問いに紅は頷く。


「入ってるよー、黄魚ん()のーお庭にー()ってるのーもらってきたのー」

「え、勝手に採って来たのか?」

「違ーうもーん!」


 アオのビックリに紅はプン!と怒って見せる。


「黄魚がー新しい子にーあげてってーくれたんだよー」


 焼きミカンは紅が食べる分ではなかったらしい――。


「なる……。てか、黄魚なんで自分で持ってこないんだ?」

「今はーダメーってー」

「ふむ……」


 どうやら黄魚は家を離れられない何か(さわ)りがあるらしい。


「でもー新しい子ー心配ーってー」

「そっか……」


 座敷童として家を離れることが出来ないが、力を失った仲間のことも気になると、紅にミカンを託したと言うことらしい。


「早くー実体ー作れたらーいいのにねー」


 一緒に遊びたいという紅。


「そうだな……」


 新しい仲間の復活を心待ちにしている座敷童たちなのだった。


お読みいただき大変ありがとうございます。

よろしければぜひまた続きを読みに来て下さい(o_ _)o))

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