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わけっこ

「って感じで、宝結構落ち込んでてさぁ、宥めんのが大変だったんだよ……」


 昔のことを嘆き、凹む宝を時効だからと何とか宥めて送りだしたあと、クロは銀河のルームを訪ねてそこで盛大に愚痴りながらため息をついた。


「ずいぶんと懐かれたもんだな」


 ため息をつくクロを見ながら銀河は笑って言う。


「なんだよ、銀河だって宝と仲良いだろーが!」


 少し揶揄いが入ったような物言いをされて、クロは銀河に口をとがらせた。

 確かにクロは他の仲間の座敷童よりは宝に懐かれているような気はする――というか、きっとそうだと言う自覚はある。だが、だからと言って他の仲間たちと宝の仲が悪いと言うわけではない。


「わかっておるさ、少し羨ましいような気がしただけだ」

「羨ましいなら、いくらだって、お悩み相談の役なんか代わってやるぞ?」

「遠慮しておこう」

「ちぇーっ!なんだよ!」


 ふん!と言ったクロに銀河は少し呆れた目を向ける。


「ワシのところにぼやきに来る自分はどうなのだ?」


 自分だって宝と似たようなことをしているのではないか?と、指摘する銀河。


「えー、俺のは単なるぼやきだから宝とは違うって」


 宝のぼやきは千年も前の話しで、しかもやらかした座敷童()本人のみならず、そこに守護対象である人一人(ひとひとり)と神様(欠片だが)まで巻き込んだ壮大なもの……。

 今さら悔んだところでどうしようもないし、どうにかできる――となったところで、今さらどうにかされては困る存在が当事者以外に山盛り存在する事態となっている。

 それに比べて、クロのぼやきなど可愛いものではないか。

 と、主張するクロだが……。


「聞かされてもあまり楽しくない話し…という意味では同じだとワシは思うぞ」

「えぇぇ……」


 クロは片足の膝に片肘をつくというお行儀悪い体制のまま、器用に肩をすくめて見せる。

 口では違うと言いながらも、銀河に対して少しは悪いと思う気持ちはあるのだろう。


「まぁ、ぼやきたいというのなら聞くがな」

「なんだよー!そうやって身構えられたら話し難いじゃないか!」

「なんだ贅沢だな……」


 聞く気がない態勢の時に話したがって、さて聞いてやろうじゃないか……となると、話し難いなんて――。


「ひねくれものめ」

「違うー!そうじゃなくってさー、気楽に聞き流して欲しかったんだよ、俺は!」


 誰かに愚痴って、ぼやきを聞いて欲しい気持ちはあるが、だからと言ってそれを真摯に受け止め聞いて欲しいとは望んでいない。助言等を望んでいるわけではないのだ。

 適当に……なんなら「ちゃんと真面目に聞いてくれよー!」とか言ってもおかしくないような、それくらいの感じで聞いて欲しいのだ。


「なんだそれは……」


 クロの主張に銀河は呆れる。


「だから愚痴りたいってだけで、特に聞いて欲しいってわけじゃないんだよ」

「迷惑な!」

「そう言うなよ。俺もあんまし聞きたくない悩み聞かされて、ちょっとしんどかったんだ。銀河もそのしんどさ少し感じてくれ」


 つまりクロは宝の悩みを聞かされてしんどかったので、そのしんどさを銀河にも分ちあって欲しいと言うことで――。


「そんなイヤなものは分けてくれんでいい!」

「えー、まぁそう言わず……」

「いらん!」

「なんでだよー」


 じゃれ合いになっていくクロと銀河、そこにまた違う声が加わる――。


「おーい、居るかー?入るよー」

「ん?アオか」

「よー」


 アオが広い畳を横切って二人のところにやって来た。 

 銀河の部屋はだだっ広い畳部屋で、その部屋の奥には渓谷を見下ろせる窓があるのだが。

 銀河とクロはその窓の前にいた。


「なに持ってんの?」


 二人のところに来たアオは、両手に薄い茶色をした丸いものを三つ抱えていた。


「ジャガイモ!」

「ジャガイモぉ?」

「む?それはバターか?」


 アオはジャガイモを一個づつ銀河とクロに手渡すと、真ん中にバターの乗った皿を置いた。


「うん。まだあっつあつだぜ!冷めないうちに食おうぜ!これにはバターが合うんだよなー」


 絶対美味いヤツなんだ!と言うアオ。

 言いながらそそくさとジャガイモを半分に割って、バターを乗せている。

 半分に割ったジャガイモの断面からは湯気がほこほこ上がり、美味しそうな芋の匂いがフワッと漂った。


「ふむ、そうだな確かに美味いヤツだ」


 そう言う銀河は半分には割らず、端っこを軽く齧って食べ、芋のそのままの味を楽しんでから、おもむろに齧りあとにバターを乗せている。


「美味いのはいいけど、どうしたんだこれ?」


 クロはアオと同じようにジャガイモを半分に割りながら聞く。


「白波が今日のオヤツは芋餅作るっていって蒸してたんだよ。湯気あがってすっげえ美味そうだったから、つぶす前のヤツ貰って来た」

「え、良いのかよ?」

「餅を作るのに足りなくはならんか?」


 食べながら心配する銀河とクロ。

 だがアオは大丈夫と請け負った。


「たくさん蒸してたから大丈夫。ただ、オレらのオヤツが芋続きになるけどってだけのことさ」


 今ジャガバタ食べて、この後の囲炉裏部屋でのオヤツは芋餅――。


「ああ、まぁ美味いからそれは大丈夫」

「うむ。元は一緒でも、調理をされれば別物だからな」

「そっか、良かったー。芋続きになるってわかってるけど、やっぱ美味いもんは分け合って食う方が美味いからさ」


()()()()はこういうものの方がやはり嬉しいな……)


 と、気楽に笑うアオを見ながらこっそりそう思う銀河だった。


お読みいただき大変ありがとうございます。

よろしければぜひまた続きを読みに来て下さい(o_ _)o))

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