ちょっとタイミングがずれた
「な……い」
岬の端で、海風に髪を遊ばれながら黄魚が不満そうにつぶやく。
「あら、ホント。いないわねぇ……」
「えーなーんでぇー?」
黄魚の言葉に頷く緑花と紅の髪も、同じように風に髪を遊ばれている。
「居るって、言ったわよね?」
自分の髪の毛で遊んでいる風の精霊に、緑花が少し不機嫌そうに問う。
その言葉に、風はくるくると緑花の髪をかき混ぜながら伝える。
「居たの?ついさっきまで?ふーん……」
うーんと、腕組みをする緑花。
「また…動い、た……」
「まぁ、そう言うことなんでしょうけど……」
「せーっかくー来ぃたのにー」
ぶーっと紅が頬を膨らませる。
「ふくれっ面したいのは私もだけど、さっき紅が寄り道したいって言わなかったら、動く前にルームに入れたんじゃないかしら?」
「えーっ!?」
大仰に頬を両手で押さえて、心外だと主張する紅。
「緑花…反、対し…なかった、あたい…も」
紅を責める言葉を発した緑花を嗜める黄魚。
「まあ、それはね…私も気になってはいたから、反対する理由もないかなーって……」
「同罪……」
「そうね」
苦笑いする緑花。
緑花、黄魚、紅の三人は、三人無理なく落ちあえる三叉路で待ち合わせし、その後白波のルームに行こうと海辺までやってきたのだが……。
「灯台の子ー、どーなってるかー見にー行きたーい!」
という紅の希望により、ルームに来る前に灯台へ寄り道してきたのだ。
「会えーなかったしー」
灯台に付喪神が宿りかけている……と言うのが、スズメの見解ではあるが、具現化できるほどの力にまったく至らず。
座敷童である三人娘たちも、灯台に触れ、じっと探ってやっとその存在を察知できる……程度のものだった。
「ア、レは……まだ、ものすごく…時間が、かかる」
「そうね」
「うん、わーかるー」
黄魚の言葉に緑花も紅も頷く。
「あの…子の、様子…見れてよかった」
「それは……そうね」
黄魚の言葉に頷いた緑花を見て、自分が会いたいと言ったおかげだと胸を張りかけた紅だが――。
「でも、それとこれとは別の話しよねー」
と、緑花はそう言って何もない岬の先端を指さした。
「えー!白波のーお部屋がー勝ーーー手にーどっーか行っちゃうのはー、あーたしのーせいじゃなーい!」
「でも、さっきまで居たって、風の子言ってるもの。もし寄り道してなかったら、きっと間に合っていたはずよ。これからまた行き先探ってたら、私たちが外に居られる時間無くなっちゃうじゃない」
「だからー!それはーあたーしの、せいじゃー……あ……」
「「あ」」
言い合っている緑花と紅の目の前に、すーっと戸が現れ、そこからこじんまりとした家の構えが具現化していく……。
「帰…って、来たね」
現れたものを見て黄魚がつぶやく。
と――。
カラリと戸が開いた。
「おーい!」
開いた戸からのんきな声で三人に声をかけてきたのは……。
「宝!」
「おは、よ」
「もー!どこー行ってーたのー!?」
三人娘から口々に詰め寄られ、おっととばかりに身を引く宝。
「え?ちょっと、お山の方へって……なんだよー」
むーっと三人に不満気な視線を向けられて、宝はドンびく。
「どうして私たちが向かってる時にどっか行くなんて考えられるのよ!」
「居なくて、びっくり……」
「そーだー!そのせいでーあたしー緑花にーいーじめられたー!」
「なっ!いじめてなんかないわ!指摘しただけよ」
「緑花…いじめっ子?」
「違う!」
「違わなーい。あたしー、緑花にーいじめられてるーっ!てー思ったもーん」
「勘違いよっ!」
女三人寄れば姦しい……。
三人のうちの一人はぽつぽつとしか話さないのだが、その一人が地味に燃料を投下していて、なかなかの騒がしさだ。
「と、とりあえず…中入らね?オヤツあるぞ」
「「「食べ(ます)(る)(るー!)」」」
口喧嘩をピタッと一瞬でやめ、パッと宝に顔を向けた三人娘なのだった。
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