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第22話 光の下で

 空が、やけに広かった。


 見上げても、何もない。ただの青が、どこまでも続いている。


 生まれてからずっと、この王都の上には結界があった。目には見えないけれど、確かにそこにあった。その天井が、今は抜け落ちている。


 守られていない空とは、こんなに落ち着かないものなのか。


 その下で、僕は仰向けに倒れていた。


「――フェイ! フェイ、しっかりして!」


 誰かが肩を揺すっている。


 視界に、泣きそうな顔が飛び込んできた。


「……エスタ」


「馬鹿! 大馬鹿!」


「腕! 腕、見せて!」


 エスタが、僕の右腕を掴み上げた。


 土煙の中で、遠目には何が起きたのか分からなかったのだろう。それでも、僕の腕が崩れて消えていくところは見えていたらしい。


 そのまま、肘から手首へ、指先へと、両手で確かめるように辿っていく。


 そして、動きが止まった。


「……え」


「あるよ」


 エスタは、僕の手を握ったまま固まっていた。


「……ある」


「うん」


「指も、爪も、ちゃんとある」


「うん」


「なんで?」


「生えた」


「……は?」


「さっき、生えたんだよ」


 エスタは僕の手をひっくり返して、隅々まで確かめ始めた。


 傷ひとつない。ただ、皮膚の色が、他の部分より少しだけ薄い。日に焼けていない肌だ。当たり前だった。ついさっきできたばかりなのだから。


「ちょっと。本気で言ってる?」


「本気。肘から先、完全になくなってた」


「見てたわよ。崩れて、飛んでいくのが」


 エスタの声が震えた。


「なんで、そんな平然と」


「平然としてないよ。自分でもまだ、よく分かってない」


 僕は握ったり開いたりしてみせた。ちゃんと動く。感覚もある。指先で石畳の冷たさも分かる。


 ただ、自分の腕という感じが、まだ少ししなかった。


『芽が伸びるのと、同じに見えた』


 襟元から、コロンの声がした。


『外から見ていた。あれは人間の治癒じゃない。欠けたところを塞いだんじゃなく、最初から作り直したんだ。木が枝を伸ばすのと、同じやり方で』


「そんなことできるのか」


『あの樹にとっては、たぶん難しいことじゃない。六百年かけて国一つ分の命を育てた相手だぞ。腕の二本くらい』


「……軽く言うなあ」


『事実だ』


「……まあ、いいわ。とにかく、あるんだから」


 エスタは大きく息を吐いて、それから僕の額を指で弾いた。


「痛っ」


「まったくもう。無茶するんだから」


 エスタの手が、僕の体を撫でるように動いた。


 金色の光が、指先から溢れていく。


 疲れが引いていくのが分かった。重かった腕が軽くなり、喉の渇きが薄れ、腹の底に沈んでいた鉛のようなものが溶けていく。


「……すごいな、それ」


「でしょ」


 エスタは少し得意げに言ってから、すぐに真顔になった。


「向こうも診てくる。ちょっと待ってて」


 彼女は立ち上がると、倒れている騎士たちのほうへ駆けていった。


 一人目。手をかざして、数える間もなく傷が塞がる。


 二人目。三人目。


 騎士団長が目を見開いて、自分の腕を見ている。裂けていたはずの傷が、跡も残さず消えていた。


「……嬢ちゃん、あんた」


「動かないでくださいね。次、そっちの人」


 その中に、地面に座り込んでいる人影があった。


 剣を杖にして、肩で息をしている。


「キアリー!」


 駆け寄ると、彼は顔を上げて、血の混じった唾を吐いた。


「……よお」


「大丈夫か」


「見りゃ分かるだろ。大丈夫じゃねえ」


 そう言いながらも、キアリーは笑っていた。


「はい、じっとして」


 エスタが後ろから追いついてきて、キアリーの肩に手を当てた。金色の光が広がる。


「……うわ、なんだこれ。効きすぎだろ」


「文句あるの?」


「ない。ないです」


 治療が終わると、キアリーは剣を鞘に収めて、しばらく黙っていた。


「……なあ、フェイ」


「うん」


「俺さ、正直、怖かった」


 思いがけない言葉に、僕は彼の横顔を見た。


「訓練の的とは全然違うんだよ。向こうは本気で殺しに来るし、こっちの剣は通らないし。……足が震えて、情けねえ声出しそうになった」


「でも、前に出てただろ」


「出るしかなかったんだよ。後ろに、逃げ遅れたやつらがいたから」


 キアリーは自分の手のひらを見つめた。まだ、わずかに震えている。


「今日で分かった。俺、全然足りてない」


「そんなことは」


「ある。だから、もっと強くなる」


 彼は顔を上げて、いつも通りに笑った。


「後期課程が三年あるだろ。卒業までに、ちゃんと使い物になっとく」


 少し離れた場所で、騎士団長が空を見上げていた。


「……団長。結界が」


「ああ」


 部下の声に、団長は短く答えた。


「ない」


 その一言で、周りの空気が変わった。


「日が暮れる前に、外周の警戒線を張る。魔物が寄ってくるとすれば、まず北の森からだ」


「は!」


「動ける者だけでいい。無理はするな」


 騎士たちが散っていく。


 僕は、ようやく実感した。


 あの黒い雨は止まった。金属の魔物も消えた。それでも、この学園はいま、何にも守られていない。六百年ぶりに。


「……あ、そうだ」


 エスタが急に思い出したように、腰の物入れを探り始めた。


 取り出したのは、小さなガラス瓶だった。中に、少し濁った緑色の液体が入っている。


「これ、返す」


「え、なにこれ」


「あんたが作ったやつでしょ。お母さんから預かってたの」


 僕は瓶を受け取った。掌に、まだ人の体温が残っていた。


 見覚えのある濁り方だった。ひと月以上前、まだ馴染ませが安定していなかった頃の一本だ。


「……なんで、エスタが」


「あんたの家に行ったのよ。ひと月くらい前に」


 エスタはそっぽを向いた。


「本人に返しますって、約束したから」


「うわ、これ出来悪いな。沈殿してるし」


「捨てないでよ」


 思ったより強い口調だったので、僕は顔を上げた。


「え、いや、作り直すって意味で」


「それでも捨てないで」


 エスタは瓶を指さして、少し言いにくそうに続けた。


「……さっき、それ握ってたの。祈るとき」


「え」


「握ってたら、分かったのよ。……あんたが毎日やってたこと」


「何が」


「指の腹で捩じるのも、余熱で四十数えるのも、片付けまで丁寧にやるのも。……ぜんぶ、そうだったんだなって」


「だから、何が」


「……鈍いわね」


 そう言ったきり、エスタは説明しなかった。


 僕には、さっぱり分からなかった。


 これ以上聞いてはいけない気がして、僕は瓶を握り直した。


「……ありがとう」


「別に」


 エスタは僕を睨んで、それから、ふっと力を抜いた。


「……フェイ」


「うん」


「わたし、ずっとあんたのこと、目の敵にしてた」


「知ってる」


「知ってたのね」


「めちゃくちゃ言われてたし」


 エスタは膝を抱えて、砕けた石畳を見つめた。


「あれ、ぜんぶ的外れだったのよ。あんたに勝ちたかったんじゃなくて、自分が認められたかっただけ。……気づくのに、ひと月かかった」


「そんなの、僕だって」


「あんたはいいのよ」


「よくないだろ」


「いいの」


 エスタは立ち上がって、服の埃を払った。


「……これからは、ちゃんと競争してあげる。薬と魔法、どっちが早く治せるか」


「それ、結局張り合ってないか?」


「うるさい」


 歩き出しかけて、エスタが振り返った。


「あんた、髪」


「ああ、これ」


 言われて、僕は自分の髪を掴んだ。肩に触れるくらいまで伸びている。向こうでは切る道具もなかったし、気にしている余裕もなかった。


「うわ、ひどいな。ぼさぼさだ」


「……ぼさぼさね」


「明日にでも切ってもらうよ」


「そう」


 エスタは、それきり何も言わなかった。


「切らないほうがいい?」


「別に」


「どっちだよ」


「どっちでも」


 そう言って、エスタはさっさと歩いていった。


 僕は自分の髪をもう一度掴んで、首を傾げた。


『――汝の選び、しかと見届けた』


 頭の奥に、あの声が響いた。


 僕は振り返った。


 陥没した石畳の上で、緑の飛龍がゆっくりと首をもたげていた。


 その体は、端から崩れ始めていた。


 翼の縁から一枚、また一枚と葉が剥がれ、風に舞い上がっていく。胴が、四肢が、次々に解けて、無数の葉になって空へ散っていく。


「待って――」


『問うたな。なぜ庇うのか、と』


「はい」


『答えは、要らぬ』


 散っていく葉の向こうで、声だけが残っていた。


『汝は、答える代わりに為した。ならば、それが答えであろう』


 最後に残った首が、ゆっくりと下がった。


『――良き実を結べ、愛しき小さな調べよ』


 葉が、すべて散った。


 中庭いっぱいに、緑の葉が舞っていた。


 やがてそれらも一枚ずつ光になって消え、あとには何も残らなかった。


 砕けた石畳の上に、人影が座り込んでいた。


 黒いものは、跡形もなかった。


 そして、小さかった。


 あれほど見上げていた姿が、今は僕と変わらない背丈しかない。器が縮んだのか、それとも中身が減ったのか、たぶん後者なのだと、なんとなく思った。


 白い衣。六対の、虹色に透き通った翅。それも今は、両手を広げたほどの幅しかない。長い髪が、砕けた石畳の上に広がっている。


 顔を見て、僕は息を呑んだ。


 薬草園のあの像と、同じ顔だった。


 風化して細部が消えかけていたから、これまで気づけなかった。けれど、伏せた瞼の形も、組んだ手の指の並びも、全部あの石の通りだ。


――本物を見て彫ったのか。


 コロンの言葉が、こういう形で腑に落ちるとは思わなかった。


 そして、もうひとつ腑に落ちた。


 あの像を彫った人は、たぶん、この大きさの彼女に会っている。人が見上げずに済む背丈まで、わざわざ降りてきてくれた彼女に。


 その人は、自分の手のひらを見つめていた。


 何度も裏返して、見つめて、また裏返して。まるで、それが自分のものだと信じられないみたいに。


 僕は、その人のほうへ歩いていった。


「……あの」


 反応がない。


「大精霊様?」


 肩が、跳ねた。


 顔を上げたその人は、僕を見て、それから周りを見回して、みるみるうちに――


 耳まで赤くなった。


「あっ」


「え?」


「あ、あの、その」


 さっきまでの威厳は、どこにもなかった。


 その人は慌てて立ち上がろうとして、衣の裾を踏んで、よろけて、また座り込んだ。


「……見苦しいところを」


「いえ」


「いえ、ではありません。あの、わたくしは……」


 言葉が続かない。


 彼女は膝の上で両手を握りしめて、しばらく俯いていた。


 やがて、小さな声で言った。


「……ありがとう」


「はい」


「そなたに、礼を言わねばなりません。……あれほどのことをしておいて、そなたに助けられ、あまつさえ礼まで言うなど、虫がよすぎると承知の上で」


「別にいいです」


「よくありません」


 顔を上げたその目には、まだ涙の跡が残っていた。


「よくないのです。わたくしは、間違えました」


「……」


「鋼を突き立てたのは人の子です。それは変わりません。……ですが、突き立てられる場所を作ったのは、わたくしです」


「それは」


「わたくしは、脈を預かる者でした。預かったものに、自分の考えで手を入れた。……その一点だけは、誰にも譲れませぬ。わたくしの落ち度です」


 言い訳もせず、けれど必要以上に自分を責めもしない。数えるべきものを数えて、差し引きを済ませた言い方だった。


「僕、見ました」


 彼女の言葉を遮って、僕は言った。


「さっき、流れ込んできたんです。あなたの記憶」


「……」


「最初に人が立ったところから、全部」


 彼女の肩が震えた。


「だから、知ってます。あなたがずっと一人だったこと」


 長い沈黙があった。


 やがて、彼女は静かに立ち上がった。


 衣の埃を払い、髪を整え、背筋を伸ばす。その一連の動作で、さっきまでの狼狽は消えていた。


 けれど、威圧感もまた、もうなかった。


「――わたくしは、これからも人と共にあります」


 まっすぐな声だった。


「試すことはいたしません。脅すことも。……ただ、共にあります」


 彼女は、僕に手を差し出した。


「触れてもよろしいですか」


「え、はい」


 僕は自分の手を伸ばした。


 指先が、触れた。


 その一点から、光が放たれた。


 光は、地面を走り、空へ昇り、複雑な図形を描き始めた。


 円。その内側に六角。さらにその内側に、無数の細かな文様。それらが幾重にも重なり、回転し、広がっていく。


 やがて図形は天を覆い尽くし、学園を、城壁を、その内側の街並みごと、王都のすべてを包み込んだ。


 そして、ゆっくりと透明になって、見えなくなった。


 周りで、声が上がった。


 空を見上げていた騎士たちが、顔を見合わせている。生徒たちも、教師たちも。


「戻った……」


 誰かがそう呟いた。


 見えるわけではない。それでも、分かるのだ。天井が戻ってきたことが。さっきまで剥き出しだった頭上に、また蓋がされたことが。


 騎士団長が兜を脱いで、深く息を吐いた。


「……警戒線は、そのまま張らせる。念のためだ」


 言いながらも、その声からは張り詰めたものが抜けていた。


「……結界?」


「はい」


 彼女は空を見上げて、目を細めた。


「新しく張り直しました。前のものより、少し柔らかくしてあります」


「柔らかい?」


「壊れやすい、ということです」


 思わず、彼女の顔を見た。


「いいんですか、それ」


「はい」


 彼女は、初めて微笑んだ。


「壊れないものは、気にかけてもらえませんから」


 東の空から、光の帯が近づいてきていた。


 無数の小さな光が、糸のように連なって飛んでくる。その先頭に、紫がかった翅を持つ、ひときわ大きな一つ。


 アリアは中庭の上空で翅を止め、眼下を見下ろした。


 砕けた石畳。抉れた地面。座り込む人間たち。


 そして、その中央に立つ、白い衣の姿。


『……イーリス様』


『アリアか』


 イーリスは、深く頭を下げた。


 大精霊が、下位の精霊に。


『おやめください。そのようなこと』


『詫びる機会は、これきりかもしれぬ』


『……』


『すまなかった』


 アリアは、何か言い返そうとして、やめた。


 代わりに、深く息を吐いた。


『……二度と、なさらないでくださいまし』


『誓おう』


 そのとき、視界の端で何かが動いた。


 白く輝く、大きな翅。


『――久しぶりだな、アリア』


 聞き覚えのある声だった。けれど、その姿には見覚えがない。


 大人の背丈ほどに広がった白い翅。縁だけが緑に光っている。その中心に、小さな少女の姿。


『……まさか、あなた』


『そのまさかだ』


 アリアは、しばらく口を利かなかった。


 薬草園のミズナ草の葉陰。人間の子の面倒ばかり見て、つまらない問答に付き合わせてきた、あの小うるさい下位精霊が。


『納得がいきません』


『何がだ』


『わたくしは二百年、あの塔で針を見張ってまいりました。あなたは、わたくしより五十年も後に生まれて、あの畑で草の世話をしていただけでしょう』


『そうだな』


『それが、なぜ』


 コロンは、翅を一度ゆっくりと動かした。


『呼ばれ続けたからだ』


『……え』


『毎日だ。名前を呼ばれて、相談されて、礼を言われた。……二年も続けば、こうなる』


『……』


『お前が言ったんだぞ。買いかぶりすぎじゃないか、と』


 アリアは、返す言葉を失った。


 そして、しばらくしてから、ようやく小さく呟いた。


『……買いかぶりでは、なかったようですね』


『ああ』


『腹立たしい』


『知っている』


 しばらく、どちらも黙っていた。


 やがて、コロンのほうから口を開いた。


『あの子が最後に押し返したとき、東から流れが来た。あれがなければ、間に合っていない』


『……そうですか』


『お前だろう』


 アリアは、翅の向きを変えた。


『さあ。風が、たまたまそちらへ吹いただけでしょう』


『……素直じゃないな』


『あなたにだけは、言われたくありません』


 コロンは、笑ったようだった。


 声には出さなかったが、翅の光が一度、ふわりと揺れた。


『助かった。ありがとう』


 アリアは、すぐには答えなかった。


 それから、東の空を振り返って言った。


『三十三人が、一人も欠けませんでした』


『そうか』


『あの子たちも、光を送りました。翅の上がらない者まで、みんな』


『……そうか』


『ですから、わたくしにではなく』


 紫の翅が、静かに傾いた。


『あの子たちに、仰ってくださいまし』


 ふと、上を見上げると、見慣れないものが浮いていた。


 白い翅。その中心に、小さな少女。


 僕とだいたい同じくらいの背丈で、緑がかった白い髪をしている。


「……コロン?」


『ああ』


「え、その姿、戻らないの?」


『戻れる。が、今は面倒だ』


 コロンはふわりと降りてきて、僕の目の前に立った。


 地面に足をつけている。影もある。触れそうな距離だ。


 なんだか、急に落ち着かなくなった。


「……なんで、そうなったんだ?」


『お前のせいだ』


「え、僕?」


『それ以上は言わん』


 そう言って、コロンはさっさと横を向いてしまった。


 僕は空を見上げた。


 もう、緑の葉は一枚も残っていない。


――良き実を結べ、愛しき小さな調べよ。


「……ありがとうございました」


 小さく、そう言った。


 返事はなかった。


「あ、そうだ」


 僕は思い出して、コロンを振り返った。


「結局、あの青いやつ、飲まなかったな」


『……む』


「百日かけて作ったのに、一口も」


『しかたないだろう。……あれは、その』


 コロンは、言葉を探すように黙った。


『……もらったものを、減らしたくなかったんだ』


「減らすも何も、薬なんだから」


『分かっている。分かっているが』


 百五十年、誰にも何ももらったことがなかったと、あの日この精霊は言った。


 だとしたら、あれは薬ではなかったのだ。少なくとも、この精霊にとっては。


「……作り直すよ」


『……いいのか』


「いいに決まってるだろ。材料も工程も覚えてるし、今ならもっといいのが作れる」


 コロンは、しばらく黙っていた。


 それから、ふい、と横を向いた。


『急がなくていい』


「え」


『納得のいくまでやれ。半年でも、一年でもいい』


「そんなにかけないよ」


『かけてもいい、と言っている』


 コロンは、まだこちらを見なかった。


『……どうせ、僕はあの薬草園から動かん。逃げも隠れもしない』


「知ってる」


『なら、いい』


 僕は、その横顔を見ていた。


 薬草園の隅の、あの葉陰。明日もそこにいる。明後日も。僕が三年生を終えて、卒業して、旅に出る日が来たとしても、たぶんずっと。


 そう思ったら、なんだか妙に安心した。


「じゃあ、また明日」


『ああ』


 コロンは、ようやくこちらを向いた。


『それと』


「何」


『次は、ちゃんと飲む』


「うん」

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

明日の22時に次話を更新します。


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