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凡人がなるルイ16世  作者: 山口祐輝


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土地を金に変える

第53話 「土地を金に変える」

1790年1月。

パリ。

テュイルリー宮殿に隣接する国民議会。

公的徴税所の試験導入は、まだ始まったばかりだった。

徴税額。

徴税費用。

帳簿の誤り。

納税者から寄せられた苦情。

それらを統一された形式で記録することにより、これまで見えなかった金の流れは、少しずつ明らかになり始めている。

だが、公的徴税が王国全土で機能するようになるまでには、長い時間が必要だった。

徴税官の採用。

帳簿の統一。

地方金庫の整備。

現金輸送。

監査。

現在の徴税請負契約との調整。

一つの地方で試験を行うだけでも、多くの問題が起きている。

それをフランス全土へ広げるとなれば、数か月どころか、数年を要するかもしれない。

しかし。

国庫の支払期限は、それほど長く待ってはくれなかった。

公開貸付によって集められた金は、軍人と行政官の給与、国債の利息、穀物の買い付けへ次々と消えていった。

それは浪費ではない。

どれも止めることのできない支出だった。

税制改革が成果を上げるより先に、借りた金が尽きようとしていた。

その朝。

ネッケルは二冊の帳簿を持って、議場へ入った。

一冊は薄い。

もう一冊は、両手で抱えなければならないほど分厚かった。

議員たちの視線が、その二冊へ集まる。

議長が木槌を鳴らした。

「本日の議題は、国家財産を利用した国庫資金の確保についてです。」

「財務総監より報告を求めます。」

ネッケルが演壇へ立つ。

最初に、薄い帳簿を開いた。

「諸君。」

「こちらは、現在、国庫が自由に支払いへ用いることのできる現金を記した帳簿です。」

頁数は少なかった。

書かれている数字も、王国の規模と比べればあまりにも小さい。

次に、分厚い帳簿へ手を置く。

「そして、こちらは国家の管理下へ置かれた財産について、各地方から届き始めた報告です。」

「修道院。」

「農地。」

「森林。」

「葡萄畑。」

「都市の建物。」

「倉庫。」

「水車。」

「教会が所有してきた土地と財産は、王国全土に存在します。」

議場がざわめく。

1789年。

国民議会は、教会財産を国家の管理下へ置くことを決めていた。

教会から信仰を奪うためではない。

国家が聖職者の生活、礼拝、教育、病院、救貧などの費用を負担する代わりに、それらを支えてきた財産を国家の責任で管理する。

少なくとも、賛成した議員たちはそのように説明していた。

しかし、全国の財産調査はまだ終わっていない。

どの土地が、どの教会や修道院に属するのか。

どれほどの収入を生むのか。

借地人は誰なのか。

古い寄進や契約には、どのような条件が付いているのか。

帳簿が残っている土地もあれば、境界さえ曖昧な土地もある。

ネッケルは二冊の帳簿を並べた。

「王国には、広大な財産があります。」

「しかし、支払いに使える現金がありません。」

一人の議員が呟いた。

「土地はあるが、金がない。」

「そのとおりです。」

ネッケルは答えた。

「軍人へ農地の一部を渡して、給与の代わりにすることはできません。」

「穀物商へ修道院を切り分けて渡すこともできません。」

「国債の利息を、森林や葡萄畑で支払うこともできない。」

「財産がどれほどあっても。」

「それを金へ変えられなければ、目の前の支払いには使えないのです。」

財政委員会に所属する議員が立ち上がった。

その手には、一枚の紙が握られていた。

まだ正式な証券ではない。

構想を説明するために作られた見本だった。

「そこで、財政委員会から一つ提案がございます。」

議員たちが顔を上げる。

「国家の管理下へ置かれた土地と建物。」

「それらを担保として、国が証券を発行するのです。」

「証券?」

「はい。」

議員は見本を掲げた。

「この証券には、国家財産の価値を割り当てます。」

「フランス語で、割り当てることを『アッシニェ』と申します。」

「国家財産へ価値を割り当てられた証券。」

「ゆえに、これをアッシニャと呼びます。」

その名前が、議場で初めてはっきりと口にされた。

アッシニャ。

まだ一枚も印刷されていない。

しかし、その響きだけで、議員たちは新しい可能性を感じ取っていた。

「具体的には、どのようなものだ。」

一人の議員が尋ねる。

財政委員は準備していた法案を開いた。

「総額を四億リーブルとします。」

議場がどよめく。

四億リーブル。

公開貸付でようやく集めた一千二百万リーブルとは比べものにならない。

王国の年間歳入にも匹敵するほどの額である。

「額面は、まず一千リーブルを中心とした大口の証券とします。」

「年五パーセントの利息を付ける。」

「国家へ代金を請求する債権者。」

「軍需品を納めた商人。」

「廃止される官職の補償を受ける者。」

「その他、国から大金を受け取る権利を持つ者へ、現金の代わりに渡します。」

商人出身の議員が手を挙げる。

「受け取った者は、それをどうするのです。」

「国家財産が売却される際、土地の購入代金として使用できます。」

財政委員は答えた。

「一千リーブルのアッシニャを持つ者は、一千リーブル分の国家財産の購入に使える。」

「国家は、土地を売却するより先に、その売却代金を証券として使うことができます。」

別の議員が顔を輝かせた。

「なるほど。」

「まだ売れていない土地の代金を、先に使うのか。」

「そうです。」

「土地はすぐには売れません。」

「調査。」

「測量。」

「評価。」

「競売。」

「所有権の移転。」

「すべてを終えるには時間がかかります。」

「アッシニャを使えば、その時間を待たずに国庫の支払いを進められます。」

議場に賛同の声が広がる。

「四億リーブルあれば、当面の危機を越えられる。」

「公開貸付を何度も行う必要もなくなる。」

「教会財産を利用すれば、新たな税を国民へ課さずに済む。」

しかし、ネッケルは表情を変えなかった。

ルイも、議員たちの熱気に加わることができなかった。

アッシニャ。

その名前を、ルイは知っている。

前世。

革命後のフランスで、何度も目にした紙。

最初は土地によって価値を保証された証券だった。

やがて普通の貨幣のように使われ始めた。

国庫に金が足りなくなるたび、追加発行が求められた。

四億が増える。

さらに増える。

紙は増える。

しかし、その紙で買える物は増えない。

銀貨が市場から消えていく。

商人は紙で支払われることを嫌がる。

同じパンでも、銀貨で払う者と、紙で払う者で値段が変わる。

給料として受け取った紙の価値が、使う頃には下がっている。

民衆は値上がりに怒る。

政府は投機家や商人を疑う。

紙を拒む者を、革命の敵だと呼び始める。

そして不信を押さえつけようとするほど、紙への不信は深まっていく。

ルイの手が震えた。

机の上の見本は、ただの白い紙だった。

それでも彼の目には、価値を失い始めたアッシニャを握り締め、パン屋の前で怒鳴る群衆の姿が見えた。

耳の奥で声が重なる。

「昨日より高い。」

「紙では売れない。」

「銀貨を隠している。」

「投機家を捕らえろ。」

やがて声は太鼓の音へ変わった。

ルイは机の端を握った。

(まだだ。)

(まだ一枚も刷られていない。)

(同じものになると決まったわけではない。)

(ならないように考えるために、私はここにいる。)

ルイは呼吸を整え、ゆっくり立ち上がった。

「質問がある。」

議場が静まる。

財政委員がルイへ向き直った。

「まず。」

「四億リーブルという金額は、何を基準に決めた。」

「国家の管理下へ置かれた教会財産は、四億リーブルをはるかに上回る価値を持つと考えられています。」

「考えられている?」

ルイは聞き返した。

「まだ調査は終わっていないのだろう。」

財政委員は一瞬、言葉に詰まった。

「すべての調査は終わっておりません。」

「ですが、これまでの教会収入と各地の報告から、十分な価値があることは確実です。」

「価値とは、誰が決める。」

「土地が一年に生む収入か。」

「今売れば買い手が支払う金額か。」

「十年後の価格か。」

「建物を修繕する費用は差し引くのか。」

「借地人との契約はどうする。」

「古い寄進に付けられた条件は?」

質問が続く。

財政委員は答えようとしたが、どれにも簡単な答えはなかった。

法律家出身の議員が口を開く。

「所有権をめぐる訴訟も起こるでしょう。」

「教会が所有していると思われていた土地に、別の権利を主張する者が現れるかもしれません。」

「その土地を担保にしたアッシニャは、どうなるのです。」

地方選出の議員も立ち上がる。

「土地の価格は、地方によって違います。」

「同じ広さでも、葡萄畑と荒れ地では価値が異なる。」

「街道に近い土地と、山奥の土地も同じではありません。」

「調査を急げば、財産を実際より高く評価する地域も、低く評価する地域も出てくるでしょう。」

財政委員は反論する。

「だからといって、すべての土地を測り終えるまで待つのですか。」

「その頃には、国庫が破綻しています。」

「完全な評価を待つことはできません。」

ルイは頷いた。

「そのとおりだ。」

「だから、完全を待つつもりはない。」

「だが、分からないことを、分かったことにしてはならない。」

ルイは見本の紙を指した。

「次の質問だ。」

「四億リーブルのアッシニャには、年五パーセントの利息を付けるという。」

「一年で支払う利息は、いくらになる。」

議場のあちこちで議員たちが計算を始める。

ネッケルが答えた。

「二千万リーブルです。」

場内が静まり返る。

四億リーブルという大きな数字に気を取られていた者たちが、その証券にも毎年利息が発生することを思い出した。

「国庫には、今、その二千万リーブルを払う余裕があるのか。」

ネッケルは首を横に振った。

「土地の売却収入が予定どおり入れば、そこから支払うことはできます。」

「予定どおり入らなければ?」

「新たな財源が必要になります。」

「税か。」

「借金か。」

「あるいは、さらにアッシニャを発行するのか。」

誰も答えなかった。

財政委員が言う。

「利息を付けなければ、受け取る者がいないでしょう。」

「銀貨の代わりに紙を渡すのです。」

「信頼してもらうには、相応の利益が必要です。」

「分かっている。」

ルイは答えた。

「だから聞いている。」

「これは、無料で四億リーブルを生み出す仕組みではない。」

「将来の土地売却代金を先に使い。」

「そのうえ、売れるまで利息を払い続ける仕組みだ。」

「その費用まで含めて考えなければならない。」

商人出身の議員が立ち上がった。

「一千リーブルの証券では、一般の国民は使えません。」

「パン一斤を買うことも。」

「一日の賃金を支払うことも。」

「少額の税を納めることもできない。」

「最初から、一般の貨幣として使うものではありません。」

財政委員が答える。

「国の大口債権者へ渡す証券です。」

「ならば、誰が土地を買うことになる。」

地方議員が問いかける。

「一千リーブルの証券を受け取れる者。」

「国へ物資を納めた大商人。」

「銀行家。」

「金融家。」

「裕福な官職保有者。」

「その者たちだけが、国家財産を買えるのではありませんか。」

「土地を小さく分けて売ればよい。」

「小さく分けるには、測量と境界の確定が必要です。」

「それには時間がかかります。」

「急いで売れば、大きな土地のまま売ることになる。」

議場には、新たな問題が次々と現れた。

早く売るなら、大きな区画のまま売らなければならない。

大きな土地を買えるのは、裕福な者だけである。

農民へ土地を渡すため細かく分ければ、測量と手続きに時間がかかる。

時間をかければ、国庫の現金不足には間に合わない。

聖職者議員が、ゆっくりと立ち上がった。

「そもそも。」

「教会財産は、国王や議会が自由に売るためのものではありません。」

「貧しい者への施し。」

「病人の治療。」

「孤児の保護。」

「学校。」

「礼拝。」

「死者のための祈り。」

「そのために寄進された財産です。」

改革派から反論が飛ぶ。

「だから国家が、その役割を引き継ぐのです。」

「教会が十分に救済を行っていない地方もある。」

「国家が一律に管理した方が公平だ。」

聖職者は首を横に振る。

「国家が財産を売り払い。」

「その金を過去の借金へ使ってしまった後。」

「十年後、二十年後の救済費用は、どこから出すのです。」

議場がざわめく。

土地を売れば、一度だけ大金が入る。

しかし土地が毎年生み出していた地代や収穫は失われる。

国家が教会の仕事を引き継ぐなら、その費用は毎年必要になる。

現在の借金を減らすために財産を売り、その後の支出を新たな税で賄う。

それでは本当に国家は豊かになるのか。

ルイは、再びアッシニャの見本へ視線を落とした。

「もう一つ聞きたい。」

「アッシニャで土地が購入されたとき、そのアッシニャはどうする。」

「役目を終えたものとして処分します。」

財政委員が答えた。

「土地が売れる。」

「アッシニャが国へ戻る。」

「戻ったアッシニャを消却する。」

「そうすることで、売却した土地と同額の証券が市場から消えます。」

「それなら、最初に決めた四億以上に増えない限り、土地と証券の対応は保たれます。」

「はい。」

「では、国庫が再び苦しくなったときは?」

議場が静まり返った。

「四億を使い切った後。」

「まだ給与が足りない。」

「利息も払えない。」

「その時、議会は何をする。」

一人の議員が答える。

「必要なら、追加発行を検討することになるでしょう。」

その言葉を聞いた瞬間、ルイの背筋が冷たくなった。

必要なら。

その言葉が最も危険なのだ。

最初は四億。

次は、非常時だから。

その次は、戦争だから。

さらに次は、前に発行した証券の利息を払うため。

紙を印刷すれば、目の前の支払いはできる。

税を集めるより早い。

国民を説得して負担を求めるより簡単だ。

土地を売るより早い。

借金を申し込んで断られることもない。

だから止められなくなる。

ルイは震える息を吐いた。

「紙を刷ることは。」

「税を集めるより、はるかに簡単だ。」

議員たちがルイを見る。

「だからこそ、発行する前に、止める仕組みを作らなければならない。」

「国王が命じても。」

「大臣が求めても。」

「議会が熱狂しても。」

「決められた限度を簡単には超えられない仕組みが必要だ。」

改革派の議員が尋ねる。

「陛下は、アッシニャに反対なのですか。」

ルイはすぐには答えなかった。

反対だと言えば、国庫を救う有力な手段を失う。

賛成だと言えば、前世と同じ道を歩み始めるかもしれない。

「分からない。」

議場がざわつく。

国王が、分からないと口にした。

以前のルイなら、決して言わなかった言葉だった。

「土地を担保として、売却より先に資金を得る。」

「その考えには意味がある。」

「今の王国に必要なものかもしれない。」

「だが、これは単なる借金では終わらない可能性がある。」

「国が支払いに使えば、人々はそれを他の者へ渡す。」

「受け取った者も、さらに別の者へ渡す。」

「やがてアッシニャは、証券ではなく貨幣のように動き始めるかもしれない。」

商人出身の議員が頷いた。

「利息付き証券なら、保有する理由があります。」

「しかし支払いに使われ始めれば、貨幣との境界は曖昧になります。」

ルイは続けた。

「もし国家が自分で発行したアッシニャを、税として受け取らないなら。」

「国民はこう考えるだろう。」

「国家自身が受け取らない紙を、なぜ自分たちが受け取らなければならないのかと。」

議場が静まり返る。

「だが税として受け取れば、アッシニャは国家への支払いに使える。」

「それによって価値を持ち、貨幣に近づく。」

「税として戻ってきたアッシニャを消すのか。」

「もう一度支払いに使うのか。」

「それによって、市場に残る量も変わる。」

「土地だけではない。」

「税との関係も決めなければならない。」

ネッケルは、ルイの言葉を聞きながら考え込んでいた。

当初の案は、土地売却代金を先取りする利息付き証券である。

しかし国庫がそれを支払いに使えば、流通が始まる。

国民が税に使えるなら、さらに受け入れられやすくなる。

一方で、貨幣として使われるようになれば、発行量が物価や銀貨の流通にも影響する。

問題は財政だけでは済まなくなる。

「陛下。」

ネッケルが口を開く。

「発行を決める前に、少なくとも四つのことを定める必要があります。」

「申してみよ。」

「第一に、何を担保とするのか。」

「土地の売却価格か。」

「土地が毎年生み出す収入か。」

「あるいは、その両方か。」

「第二に、発行上限を誰が決め、どのような手続きで変更できるのか。」

「第三に、アッシニャが国庫へ戻ったとき、消却するのか、再び使うのか。」

「第四に、アッシニャを土地購入だけに使える証券とするのか、税や一般の支払いにも使えるものとするのか。」

「さらに偽造対策も必要です。」

法律家が付け加える。

「番号。」

「印章。」

「紙質。」

「署名。」

「発行された総額を確認する帳簿。」

「納税証明書以上に厳しい管理が必要でしょう。」

ルイは頷いた。

「紙そのものには、ほとんど価値がない。」

「そこへ一千リーブルと書けば、一千リーブルになるわけではない。」

「価値を与えるのは。」

「国家が約束を守るという信用だ。」

「一度その信用を失えば。」

「どれほど法律で価値があると命じても、国民の心までは従わせられない。」

議場は長い沈黙に包まれた。

四億リーブル。

その数字が与えた最初の興奮は、すでに消えていた。

代わりに、一枚の紙が持つ可能性と危険が、議員たちの前へ姿を現していた。

議長が木槌を手に取る。

「アッシニャ発行案について、直ちに最終決定を行うことは見送ります。」

財政委員の一部から不満の声が上がる。

議長は続けた。

「ただし、国家財産を担保とする証券の必要性は認める。」

「臨時金庫を設置し。」

「国家管理下の財産について、所在、収入、推定価値、権利関係を調査する。」

「同時に、アッシニャの発行上限。」

「利息。」

「納税への使用。」

「国庫へ戻った証券の取扱い。」

「偽造防止。」

「これらを含む法案を、財政委員会と徴税制度調査委員会が共同で作成する。」

「以上を採決に付します。」

採決の結果、共同法案の作成は賛成多数で承認された。

アッシニャの発行そのものが決まったわけではない。

それでも、王国は確かに一歩を踏み出した。

議会が終わった後。

ルイは、一人で議場に残っていた。

机の上には、財政委員が持ち込んだアッシニャの見本が置かれている。

まだ正式な番号もない。

印章もない。

署名もない。

中央には、ただ大きく一千リーブルと書かれていた。

ルイは、その紙を手に取った。

軽かった。

銀貨一千リーブル分とは比べものにならない。

指先だけで持ち上げられる。

折ろうと思えば、簡単に折れる。

火へ近づければ、一瞬で灰になる。

それほど軽い紙に、国家は土地と信用と未来を背負わせようとしている。

「刷る前に。」

ルイは誰もいない議場で呟いた。

「戻ってくる道を決めなければならない。」

発行する方法だけではない。

どう回収するのか。

どの程度を市場に残すのか。

不足したとき、誰が増やすのか。

増やしてはならないとき、誰が止めるのか。

それを決めずに紙を世へ出せば、アッシニャは国家を救う道具ではなく。

国家が未来から際限なく金を借りるための道具になる。

フランス革命を象徴する一枚の紙は。

この時点では、まだ印刷されていなかった。

しかし、その紙を生み出すための議論は。

すでに始まっていた。

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