払えない者払わない者
第四十九話 「払えない者、払わない者」
1790年1月。
パリ近郊。
ボース地方に近い小さな農村、サン=マルタン村。
憲法制定国民議会で新しい徴税方法の基本方針が認められてから、約一か月が過ぎていた。
全国で一斉に新制度を始めることはできない。
人口台帳も。
土地台帳も。
徴収官も。
異議申立てを扱う地区審査会も、まだ十分には整っていなかった。
そこで国民議会は、地域の異なる三つの市町村を選び、新しい徴税制度を試験的に運用することを決めた。
試験徴収によって納められた金額は、既存税から差し引かれる。
新旧二重に負担させるものではない。
目的は税収を増やすことではなく、議場で作られた制度が本当に現場で動くのかを確かめることだった。
その一つに選ばれたのが、サン=マルタン村だった。
村役場の一室には、新しい徴税台帳が置かれている。
第一欄。
基礎個人貢献。
第二欄。
土地と建物に対する地租。
第三欄。
商売と事業に対する商工業税。
壁には、村人全員の課税額を記した一覧表が掲示されていた。
評価に異議がある者は、三十日以内に申し立てることができる。
徴収を担当するのは、試験によって選ばれた公的徴収官、リュシアン・デュフールだった。
かつて地方の徴税事務所で書記として働いていたが、税額を決める権限を持ったことはない。
読み書き。
算術。
帳簿作成。
法令の理解。
それらを調べる試験を受け、最初の公的徴収官の一人として採用された。
彼の机には、番号付き領収書を綴じた帳簿が置かれていた。
受け取った金額を書く。
日付を書く。
税の種類を書く。
同じ番号が記された領収書を切り離し、納税者へ渡す。
帳簿側には控えが残る。
その横には、二つの鍵穴を持つ公金箱が置かれていた。
一つの鍵はデュフール。
もう一つは村の代表が持っている。
どちらか一人だけでは、箱を開くことができない。
徴収初日。
村役場の前には、朝から長い列ができていた。
制度の説明を聞きに来た者。
自分の税額を確かめに来た者。
異議を申し立てに来た者。
そして、実際に税を納めに来た者。
「次の方。」
デュフールが呼びかける。
一人の農民が机の前へ進み、布袋から硬貨を取り出した。
デュフールは納税通知書と台帳を照合する。
「基礎個人貢献、二リーブル五スー。」
「自作地に対する地租、十三リーブル十スー。」
「合計、十五リーブル十五スーです。」
農民は一枚ずつ硬貨を並べた。
デュフールは村の代表が見ている前で数え、領収書に金額を書き込む。
「間違いありません。」
「領収書をお受け取りください。」
農民は受け取った紙を裏返し、何度も確かめた。
「これを持っていれば、もう一度払えとは言われないんだな。」
「はい。」
「なくさないように保管してください。」
農民は領収書を上着の内側へ慎重にしまった。
次の者が進む。
その次も。
大きな混乱は起きなかった。
支払う金額が事前に知らされている。
計算の基準も書かれている。
金を渡せば、その場で領収書が発行される。
当たり前のことだった。
だが、フランスの多くの農民にとって、税がこのような形で集められるのは初めてだった。
昼を過ぎた頃。
列の最後に、一人の女性が立っていた。
三十歳を少し過ぎた程度に見える。
だが、その顔には年齢以上の疲れが刻まれていた。
粗末な外套。
使い込まれた靴。
指には、糸を紡ぐ仕事でできた小さな傷がいくつも残っている。
名を、マリー・ルフェーヴルといった。
夫は前年の秋、熱病で亡くなった。
二人の子供を抱え、洗濯と糸紡ぎで暮らしている。
土地は持っていない。
店もない。
そのため、課せられたのは基礎個人貢献だけだった。
金額は二リーブル五スー。
地方の日雇い労賃三日分として定められた額である。
「マリー・ルフェーヴルさんですね。」
デュフールが台帳を確認する。
「はい。」
「基礎個人貢献、二リーブル五スーです。」
マリーは小さく頷いた。
だが、硬貨を取り出そうとはしなかった。
「どうしました。」
「全部は、ありません。」
彼女は手の中に握っていた硬貨を机の上へ置いた。
八スー。
必要な額の五分の一にも満たない。
「これだけです。」
デュフールは台帳と硬貨を交互に見た。
「残りは、いつ払えますか。」
マリーは答えなかった。
「分割納付は認められています。」
「来月、少しでも納められるなら、そのように記録できます。」
「分かりません。」
かすれた声だった。
「下の子が病気です。」
「熱が下がりません。」
「薬屋に一リーブル以上払いました。」
「今週は、看病のために仕事もほとんどできませんでした。」
「この八スーを払えば、今日のパンを買えなくなる。」
デュフールは言葉を失った。
前の制度ならば、村全体へ割り当てられた額を満たすため、徴税担当者は支払いを迫っただろう。
彼女が払わなければ、その不足は他の村人か、徴税担当者自身へ回される。
だが、新制度では、徴収官に不足額を自腹で埋める責任はない。
同時に、徴収官には独断で税を免除する権限もなかった。
「私は、あなたの税を取り消すことはできません。」
デュフールは慎重に答えた。
マリーの顔が青ざめる。
「ですが、猶予の申請はできます。」
「地区審査会へ事情を伝えます。」
「それまでは、この八スーも持っていてください。」
マリーは硬貨を握り直した。
「払わなくてもよいのですか。」
「まだ、払わなくてよいと決まったわけではありません。」
「私一人では決められないのです。」
「あなたが本当に支払えない状態なのか、審査を受けてもらいます。」
「嘘は言っていません。」
「分かっています。」
デュフールは答えた。
「ですが、あなたを信じることと、制度として確認することは別なのです。」
その言葉に、マリーは傷ついたような顔をした。
それでも最後には、小さく頷いた。
デュフールは猶予申請書を作り、彼女の名前の横に印を付けた。
同じ日の午後。
もう一人の未納者がいた。
村の北側に広い領地を持つ、アルマン・ド・ベルモン子爵だった。
耕地。
牧草地。
葡萄畑。
森。
複数の農家から受け取る地代。
さらに、村を流れる川には水車小屋を所有していた。
新しい台帳では、土地の平均純収益に基づく暫定地租として、一千二百四十リーブルが課されている。
邸宅の規模、使用人、馬車に対する個人貢献の加算。
水車小屋の事業収入に対する商工業税。
合計すれば、一千三百リーブルを超える。
ベルモン子爵本人は村役場へ来なかった。
代わりに、執事が一通の書状を持って現れた。
デュフールが封を開く。
『ベルモン家は代々、タイユを免除されてきた。』
『この権利は国王より正式に認められたものであり、村の委員会や新任の徴収官が勝手に覆せるものではない。』
『土地収益の評価にも重大な誤りがある。』
『ゆえに、我が家は本件の税を納めない。』
デュフールは書状を最後まで読み、執事を見た。
「子爵は異議申立てを行ったのですか。」
「この書状が異議申立てだ。」
「定められた書式と、収益を示す資料が必要です。」
「ベルモン家に、平民と同じ紙を書けと言うのか。」
「新しい規則では、同じです。」
執事の表情が険しくなる。
「貴様は、自分が誰に口を利いているのか分かっているのか。」
「私は子爵閣下へ直接話しているのではありません。」
「閣下の執事である、あなたと話しています。」
村役場にいた者たちの間から、かすかな笑いが起こった。
執事は顔を赤くした。
「このような無礼は、必ず後悔することになる。」
「税を払わない場合は、未納として記録します。」
デュフールは淡々と答えた。
「異議があるなら、期限内に地区審査会へ申し立ててください。」
「それだけです。」
執事は書状を机へ残し、足音を響かせて出ていった。
デュフールはベルモン子爵の名前の横へ、未納を示す印を付けた。
同じ印だった。
マリー・ルフェーヴル。
アルマン・ド・ベルモン。
二人とも、期限までに税を納めていない。
台帳の上では、同じ未納者だった。
しかし、事情まで同じではなかった。
その翌日。
村役場の前に掲示された台帳を見ていた一人の粉ひき職人が、首をかしげた。
「水車小屋が、子爵の欄から消えている。」
周囲の者たちが集まる。
「本当だ。」
「去年までは子爵のものだったはずだ。」
「今も地代を受け取っている。」
「だが、台帳では子爵の従兄弟の所有になっている。」
課税評価委員会が調べたところ、水車小屋の名義は、台帳作成のわずか六日前に変更されていた。
新しい名義人は遠く離れた町に住み、水車小屋を訪れたことすらない。
粉ひき職人へ指示を出しているのは、今もベルモン子爵の執事だった。
水車の使用料も、子爵家の会計係が受け取っている。
名義だけを変え、収益は変わらず子爵家へ入っていた。
地区監査官は、意図的な財産隠しの疑いがあるとして報告書を作成した。
未亡人の猶予申請。
貴族の納税拒否。
水車小屋の名義変更。
三つの報告は、まとめてパリへ送られた。
数日後。
サン=マルタン村へ、国王の馬車が近づいていた。
ルイは車内で、窓の外を見つめていた。
道の先には、国王が来ると聞いた村人たちが集まっている。
大勢ではない。
武器を持っている者もいない。
それでも、人の集まりを目にしただけで、喉が狭くなる。
石畳。
怒号。
振り上げられた腕。
倒れた自分の上を踏み越えていく足。
存在しないはずの記憶が、身体の奥からよみがえる。
指先が冷たくなる。
呼吸が速くなる。
隣に座るネッケルが、ルイの様子に気づいた。
「陛下。」
「村へ入るのをお止めになりますか。」
ルイは答えようとした。
だが、最初の息では声が出なかった。
目を閉じる。
ゆっくり吸う。
少し止める。
そして吐く。
王妃から何度も教えられたように、呼吸を一つずつ整える。
「いや。」
ようやく声が出た。
「行く。」
「報告書だけを読んで決めるなら、以前の王と同じだ。」
馬車が村役場の前で止まった。
扉が開く。
歓声は起こらなかった。
村人たちは不安そうに国王を見ていた。
新しい税を始めた王。
貴族にも課税しようとする王。
貧しい未亡人から二リーブル五スーを求めた王。
彼らが何を考えているのか、ルイには分からない。
それでも馬車から降りた。
膝がわずかに震えた。
ネッケルが隣に立つ。
ルイは群衆へ背を向けず、自分の足で村役場へ入った。
最初に呼ばれたのは、マリー・ルフェーヴルだった。
彼女は緊張した様子で部屋へ入り、国王の前で深く頭を下げた。
「顔を上げてくれ。」
ルイが言う。
「事情を聞きたい。」
マリーは子供の病気について話した。
夫が亡くなったこと。
洗濯と糸紡ぎで得られる金額。
家賃。
パン代。
薬代。
手元に残っている金。
地区審査会の委員は、事前に調べた資料を机へ並べた。
教区の死亡記録。
薬屋の領収記録。
彼女へ仕事を渡している織物商の証言。
借りている家の賃料。
所有する家畜や土地がないことを示す村の台帳。
「彼女に隠し財産はありません。」
委員が報告する。
「通常であれば、糸紡ぎと洗濯によって基礎個人貢献を納めることは可能です。」
「しかし現在は、子供の看病によって仕事が減っています。」
「この状態で徴収すれば、食料または薬を減らすことになります。」
保守派の随行議員が尋ねた。
「それでも、八スーは持っていたのでしょう。」
「少しでも払わせるべきではありませんか。」
マリーは握っていた硬貨を見た。
ルイは尋ねる。
「その八スーで、何を買うつもりだった。」
「黒パンと、少しの薪を。」
「子供の熱は。」
「まだ下がりません。」
ルイはしばらく黙った。
自分が二リーブル五スーを代わりに払えば、簡単に終わる。
国王の財布から出せばよい。
人々も慈悲深い王だと喜ぶかもしれない。
だが、それでは制度にならない。
国王が訪ねてきた村の未亡人だけが救われる。
国王に会えない場所で暮らす者は、同じ苦境でも助けられない。
「私が代わりに払うことはしない。」
マリーの顔が曇った。
「これは、王の気まぐれで免除する問題ではないからだ。」
ルイは地区審査会の委員へ向き直った。
「猶予の規定を適用できるか。」
「はい。」
「病気と一時的な収入減少が確認されています。」
「六か月の徴収猶予が妥当です。」
「六か月後にも支払えない場合は。」
「再審査します。」
「収入が回復していれば分割納付。」
「回復していなければ、貧困者として免除の対象にできます。」
ルイは頷いた。
「では、そのとおりにする。」
「八スーは持ち帰れ。」
マリーは信じられないような顔で国王を見た。
「本当に、よいのですか。」
「税が消えたわけではない。」
「六か月後に、もう一度事情を確認する。」
「だが、子供の薬と今日のパンを諦めさせてまで、今すぐ集めることはしない。」
地区審査会は、その場で猶予証明書を作成した。
理由。
期間。
再審査の日付。
委員の署名。
番号。
すべてが記載されている。
デュフールは証明書を読み上げ、文字を読めないマリーへ内容を説明した。
彼女は八スーと証明書を握り、何度も頭を下げて部屋を出ていった。
次に、ベルモン子爵が呼ばれた。
子爵は自らの馬車で村役場へ現れた。
上質な外套。
銀の飾りが付いた杖。
その後ろには執事と会計係が続いている。
子爵は国王へ礼をしたが、村の徴収官には視線すら向けなかった。
「陛下。」
「我が家が納税を拒んでいるかのように報告されたことは、誠に遺憾です。」
「拒んでいないのか。」
「不当な課税に異議を唱えているのです。」
子爵は分厚い書類を差し出した。
「昨年は収穫が悪く、地代の未納も多くございました。」
「屋敷と農業設備の修繕にも費用がかかっています。」
「台帳に記された純収益は、実態より高く評価されています。」
ネッケルが書類を受け取り、会計係の報告と照合する。
「異議申立てそのものは認められています。」
ルイは言った。
「なぜ、定められた期限内に資料を提出しなかった。」
「我が家が、村の委員会による審査を受けること自体が不適切だからです。」
子爵は答えた。
「ベルモン家は、代々タイユの免除を認められてきました。」
「我々の義務と権利は、村の農民と同じではありません。」
「八月の決議によって、身分を理由とした租税特権は廃止された。」
「私は、その決議を受け入れておりません。」
議員たちの間に緊張が走る。
ルイは、子爵の言葉を遮らなかった。
「国王である陛下ならば、お分かりになるはずです。」
子爵は続けた。
「権利とは、その時々の多数によって簡単に奪われてよいものではありません。」
「国家が代々認めてきた権利を守ることは、王権を守ることでもあります。」
それは、単なる傲慢ではなかった。
旧制度の中で生きてきた者にとって、免税は不正な逃げ道ではない。
生まれたときから存在する権利だった。
国家が認め。
国王が認め。
父祖が受け継いできた。
それを突然終わらせることは、彼らにとって国家による契約違反に見える。
ルイは、その理屈を理解した。
理解したうえで、首を横に振った。
「過去の国王が認めたからこそ、現在の国王である私にも責任がある。」
「必要な補償を審査すべき契約があるなら、審査する。」
「だが、土地から収益を得ながら、家名だけを理由に永久に税を免れる権利までは認めない。」
「それは財産権ではない。」
「他の者へ自分の負担を押しつける権利だ。」
子爵の表情が硬くなった。
「先ほどの女には、支払いを猶予したと聞きました。」
「そのとおりだ。」
「では、我が家にも同じ猶予を認めるべきです。」
「法の下では平等なのでしょう。」
その言葉に、随行議員の何人かが頷いた。
ルイは答えず、地区監査官へ視線を向けた。
監査官が報告書を開く。
「ベルモン家の昨年度収入を調査しました。」
「地代の一部に未納があることは事実です。」
「しかし、穀物倉庫には前年からの備蓄が残されています。」
「葡萄酒の販売収入も確認されました。」
「使用人十四名。」
「乗用馬六頭。」
「馬車三台。」
「パリの金融業者へ預けられた資金もあります。」
「現在の手元資金だけで、第一回納付額を支払うことが可能です。」
子爵が声を上げる。
「それらは家を維持するために必要な財産だ。」
「未亡人の八スーも、彼女の家を維持するために必要な財産だった。」
ルイが答えた。
「だが、彼女の八スーと、あなたの六頭の馬は同じではない。」
部屋が静まり返る。
子爵は杖を握る手に力を込めた。
監査官がさらに一枚の書類を取り出す。
「加えて、水車小屋について報告があります。」
「何のことでしょう。」
「台帳作成の六日前、所有名義が従兄弟のシャルル・ド・ベルモン氏へ変更されています。」
「正式な契約だ。」
子爵が即座に答える。
「売却代金は。」
ネッケルが尋ねた。
子爵は答えなかった。
「契約書には三千リーブルとあります。」
監査官が言う。
「しかし、支払いを証明する記録がありません。」
「水車小屋の使用料は、名義変更後も子爵家の会計係が受け取っています。」
「粉ひき職人への指示も、子爵家の執事が出しています。」
「名義人とされる従兄弟は別の町に住み、水車小屋を訪れていません。」
「売ったのではない。」
ルイが言った。
「台帳から名前を消しただけだ。」
「陛下。」
子爵が反論する。
「法律上の所有者は従兄弟です。」
「ならば、従兄弟が収益を受け取るはずだ。」
「収益を受け取る者と、帳簿上の名義人が異なる場合、新税は実際に収益を受け取る者へ課す。」
「そのような規則は、後から作られたものです。」
「新しい税だから、新しい規則で集める。」
「過去の行為を処罰するのではない。」
「現在の収益を確認している。」
子爵は唇を結んだ。
ルイは、机の上に並ぶ二つの書類を見た。
未亡人の猶予申請。
子爵の異議申立て。
二人とも、税を払っていない。
だが、一方は八スーしか持たず、病気の子供へパンと薬を買おうとしていた。
もう一方は十分な財産を持ちながら、古い免税権を主張し、さらに収益を生む水車小屋の名義まで移していた。
「ベルモン子爵。」
「あなたの収益評価に本当に誤りがあるなら、地区審査会で再計算することを認める。」
「必要経費として差し引くべき修繕費があるなら、証拠を提出すればよい。」
子爵がわずかに顔を上げた。
「では。」
「だが、審査そのものを拒むことは認めない。」
「争いのない部分については、直ちに第一回分を納めてもらう。」
「水車小屋については、実際の収益の流れを調べる。」
「意図的な財産隠しと認められた場合は、未納額と加算金を土地収入から徴収する。」
「支払わなければ。」
「地代の一部を、裁判所の命令によって国庫へ直接納めさせる。」
「屋敷へ兵士を送り、家具を奪うのではないのですか。」
子爵の声には皮肉が混じっていた。
「その必要はない。」
ルイは答えた。
「あなたには収入がある。」
「その収入から集めればよい。」
「徴税は、屈辱を与えるために行うのではない。」
「国家に必要な負担を求めるために行う。」
子爵は長く黙っていた。
やがて執事へ目を向ける。
「第一回分を用意しろ。」
執事が驚いた顔をする。
「閣下。」
「聞こえなかったのか。」
「用意しろ。」
その日の夕方。
ベルモン家の会計係が、争いのない部分として三百リーブルを村役場へ持参した。
デュフールは硬貨を一枚ずつ数えた。
番号付き領収書へ金額を書く。
台帳側の控えにも、同じ番号と金額を記す。
子爵家の会計係へ領収書を渡す。
金は、二人の鍵で開けられた公金箱へ収められた。
同じ箱には、朝から農民や商人が納めた金も入っている。
貴族の金だけを入れる特別な箱はなかった。
翌日。
ルイとネッケルはパリへ戻った。
その数日後、憲法制定国民議会では、サン=マルタン村の二人の未納者について審議が行われた。
保守派議員が演壇に立つ。
「陛下。」
「一人には猶予を与え、もう一人には徴収を命じた。」
「これは本当に法の平等と呼べるのでしょうか。」
「国王や審査会が、誰が同情に値し、誰が値しないかを決める制度になりませんか。」
別の議員も続く。
「貧困を理由に猶予を認めれば、誰もが収入を隠し、病気や不作を理由に支払いを遅らせるでしょう。」
「例外をなくすために、新制度を作ったのではありませんか。」
議場には、同意する声も多かった。
貴族特権を廃止した直後に、新しい免除を作れば、再び例外だらけになる。
その懸念は正しかった。
ルイは演壇へ立った。
「例外をなくすことと、事情を見ないことは同じではない。」
「貴族だから免除する。」
「聖職者だから免除する。」
「官職を持つから免除する。」
「それらは、身分や地位によって最初から与えられる特権だ。」
「だが、病気、災害、失業、凶作によって支払えない者へ猶予を認めることは、特権ではない。」
「同じ状態になれば、誰でも同じ猶予を受けられるからだ。」
「では、誰が本当に貧しいかを、どのように判断するのです。」
議員が尋ねる。
「一人の徴収官には決めさせない。」
ルイは答えた。
「本人の申告だけでも決めない。」
「世帯の収入。」
「土地と家畜。」
「住居の賃料。」
「病気や災害の記録。」
「仕事を失った期間。」
「生活に必要な支出。」
「それらを地区審査会が確認する。」
「猶予には期限を設け、期限が来れば再審査する。」
「一度貧困と認められた者が、永久に免除されるわけではない。」
「同様に、一度富裕と判断された者が、不作や破産の後まで同じ税額を払わされるわけでもない。」
ネッケルが補足する。
「重要なのは、徴収官と猶予を決める者を分けることです。」
「徴収官が気に入った者だけを見逃すことはできません。」
「審査会の決定には、理由、期間、証拠を記録します。」
「中央監査官は、猶予が特定の身分や一族へ偏っていないかを確認します。」
急進的な改革派議員が立ち上がった。
「それでも私は、未納者を区別することに反対します。」
「法律で決められた税を払わなかったという結果は、二人とも同じです。」
ルイは、その議員をまっすぐに見た。
「結果だけを見れば、同じだ。」
「だが、国家が見るべきなのは結果だけではない。」
「払おうとしても払えなかった者。」
「払えるのに、古い特権を盾に拒んだ者。」
「財産を隠して逃れようとした者。」
「その三者を同じように扱うことが、本当に公平だと思うか。」
議員は答えなかった。
「法の平等とは、すべての人間へ同じ痛みを与えることではない。」
ルイは続けた。
「同じ事実には、同じ規則を適用することだ。」
「貧しい平民が払えないなら猶予する。」
「没落した貴族が同じ状態なら、その者にも猶予する。」
「裕福な平民が財産を隠せば徴収する。」
「裕福な貴族が同じことをすれば、同じように徴収する。」
「見るのは家名ではない。」
「支払う能力と、実際の行為だ。」
議場は静まり返った。
議長が木槌を鳴らす。
「財政委員会より、未納者への対応原則を読み上げます。」
書記官が立ち上がった。
「第一。」
「一時的な病気、災害、失業、不作による未納には、期限を定めた猶予または分割納付を認める。」
「第二。」
「恒常的に最低限の生活能力を欠く者には、審査を経て基礎個人貢献を免除する。」
「第三。」
「猶予および免除は、身分、職業、信仰、家名を理由として認めてはならない。」
「第四。」
「十分な資産または収入を持ちながら故意に納税を拒む者には、裁判所の命令によって賃料、地代、売掛金その他の収入から徴収する。」
「第五。」
「名義変更、帳簿偽造、虚偽申告による財産隠しには、未納額に加えて加算金を課す。」
「第六。」
「徴収のためであっても、種籾、農具、職人の仕事道具、最低限の食料と寝具を差し押さえてはならない。」
採決が行われた。
賛成。
反対。
棄権。
完全な一致ではなかった。
それでも原則は可決された。
その頃、サン=マルタン村では、マリー・ルフェーヴルが猶予証明書を小さな木箱へしまっていた。
子供の熱は、少しずつ下がり始めていた。
彼女はまだ税を払っていない。
税を免除されたわけでもない。
だが、今日のパンを手放すことなく、立て直す時間を与えられた。
村の反対側では、ベルモン子爵の会計係が、水車小屋の収入記録を地区審査会へ提出する準備をしていた。
子爵もまた、まだすべての税を払ったわけではない。
だが、もはや古い家名だけで審査を拒むことはできなかった。
二人は同じ未納者だった。
しかし、同じ理由で未納になったのではない。
ルイは、サン=マルタン村から届いた二枚の報告書を見つめた。
一枚には、病気。
もう一枚には、財産隠しの疑い。
帳簿の上では、どちらも空欄から始まっていた。
制度とは、その空欄に何を書くかを決めるものだった。
「貧しい者から最後のパンを奪うのは、徴税ではない。」
ルイは静かにつぶやいた。
「富を隠す者を見逃すのも、徴税ではない。」
払えない者を守る。
払えるのに払わない者から集める。
その二つを区別できて初めて、税は略奪ではなくなる。




