徴税方法
第四十八話 「税を集める者」
1789年12月。
パリ。
憲法制定国民議会。
前回の審議によって、新しい税制の輪郭が見え始めていた。
特権なき基礎個人貢献。
土地の平均純収益に課す地租。
商売と事業の規模に応じた商工業税。
身分に課税しない。
しかし、身分を理由に免除もしない。
一人十四リーブルという、あまりにも単純な定額人頭税は退けられた。
それでも、税制が完成したわけではなかった。
議長が開会を宣言すると、一人の議員が立ち上がった。
「陛下。」
「前回、我々は何に課税するかを議論しました。」
「ですが、まだ最も重要な問題が残っています。」
ルイは議員を見る。
「何だ。」
「誰が、その税を集めるのでしょうか。」
議場が静まり返った。
税率。
課税対象。
免除。
それらを法律で決めても、税は自ら国庫へ歩いてこない。
誰かが名簿を作る。
誰かが税額を通知する。
誰かが家を訪ねる。
誰かが金を受け取る。
誰かが国庫まで運ぶ。
そして、払わない者がいれば、誰かが支払いを求めなければならない。
ルイはネッケルへ視線を向けた。
「財務総監。」
「現在、税はどのように集められている。」
ネッケルは用意していた帳簿を開いた。
「一つの方法ではありません。」
「税の種類と地方によって異なります。」
「タイユなどの直接税は、多くの農村で、教区や共同体に割り当てられた総額を住民の間で分配しています。」
「その評価と徴収を担うのは、村の住民から選ばれた徴税担当者です。」
「村人が、村人から集めるのか。」
「はい。」
「では、徴税請負人は。」
「徴税請負人が主に扱うのは、塩税、酒税、煙草、商品流通税、関税などの間接税です。」
「全国に役所、倉庫、検査所、監視所を置き、雇った役人と警備員によって徴収しております。」
「同じ徴税でも、仕組みはまったく異なります。」
ルイは眉を寄せた。
「村人が村人から集める方法なら、徴税費用は安く済むのではないか。」
「表面上は安く見えます。」
ネッケルは答えた。
「ですが、別の問題があります。」
彼が合図すると、議場の扉が開いた。
粗末ではあるが丁寧に手入れされた上着を着た、一人の男が入ってきた。
日焼けした顔。
節くれ立った指。
帽子を胸に抱き、緊張した様子で議員たちを見回している。
「ボース地方の村から来た、エティエンヌ・マルタンです。」
ネッケルが紹介した。
「昨年、村のタイユ徴収を担当しました。」
男はぎこちなく頭を下げた。
「陛下。」
「議員の皆様。」
「顔を上げてよい。」
ルイが声をかける。
マルタンは恐る恐る顔を上げた。
「徴税担当者には、自分からなったのか。」
「いいえ、陛下。」
「村の者たちに選ばれました。」
「選ばれたことを喜んだか。」
その質問に、マルタンは困ったように首を振った。
「誰も、やりたがりません。」
議場の一部から笑いが起きた。
だが、マルタンは笑わなかった。
「村へ割り当てられる税の総額は、先に決められています。」
「それを、それぞれの家がどれだけ払うか、我々が決めます。」
「土地。」
「家畜。」
「仕事。」
「暮らしぶり。」
「知っていることを持ち寄って、税を分けます。」
「よく知る村人同士なら、正確に決められるのではないか。」
一人の議員が尋ねた。
「知りすぎているから、難しいのです。」
マルタンは答えた。
「隣の家に、去年より多く払えと言わなければなりません。」
「親戚に、あなたの家には牛が増えたと言わなければなりません。」
「不作だった者は、払えないと泣きます。」
「金を持っている者は、自分は去年ほど儲かっていないと言います。」
「村の有力者は、自分の税を高くすれば、来年覚えておけと言います。」
「貧しい者の税を減らせば、その分を他の誰かへ移さなければなりません。」
議場から笑いが消えた。
「未納者が出た場合は、どうする。」
ルイが尋ねた。
マルタンの表情が強張った。
「何度も家へ行きます。」
「それでも払えなければ、穀物や家畜を差し押さえるよう求められます。」
「昨年、幼い頃から知っている男の家から、羊を一頭連れていきました。」
「その男には、本当に金がありませんでした。」
「ですが、村全体で納める額は変わりません。」
「不足すれば、他の家から多く集めるか、徴税を任された我々が責任を負います。」
マルタンは帽子を握り締めた。
「その男の娘が、私を泥棒と呼びました。」
「間違ってはいません。」
「私は、あの家から羊を連れていったのですから。」
長い沈黙が落ちた。
ルイはマルタンの手を見た。
あの手で羊の縄を引いたのだろう。
国王の命令による税を集めながら、憎まれるのは国王ではなく、隣人である徴税担当者だった。
そして徴税担当者自身も、国家に仕える役人ではない。
ただ、その年に選ばれてしまった一人の村人だった。
(命じる者は遠くにいる。)
(憎まれる者だけが、目の前に立つ。)
群衆の怒号が、一瞬だけ耳の奥によみがえった。
誰かが命じた兵士。
誰かが閉じた門。
誰かが流した噂。
最後に人々が憎んだのは、いつも目の前にいる者だった。
胸が締め付けられる。
ルイは机の縁を握った。
それでも、視線を逸らさなかった。
「もうよい。」
「遠くから来てくれたことに感謝する。」
「徴税を任されたことを理由に、君を責める者はいない。」
マルタンは深く頭を下げ、議場を退出した。
改革派の議員が勢いよく立ち上がった。
「これこそ、旧制度の残酷さです。」
「村人に村人を取り立てさせる。」
「不足すれば、選ばれた者へ責任を負わせる。」
「このような徴税方法は、直ちに廃止するべきです。」
別の議員が反論する。
「では、誰が集めるのです。」
「中央から何万人もの役人を送り込むのですか。」
「村の事情を何も知らない役人が、土地も収穫も見ずに税を決めれば、今より悪くなります。」
「地方自治に任せるべきです。」
「地方に任せれば、村の有力者が自分たちの税を軽くする。」
「中央に任せれば、事情を知らない役人が貧民からも取り立てる。」
互いの主張がぶつかり合う。
地方に任せる危険。
中央に任せる危険。
どちらにも、明らかな欠陥があった。
議長が木槌を鳴らす。
「静粛に。」
ネッケルが再び立ち上がった。
「もう一つの方法も確認する必要があります。」
今度は、整った衣服を身につけた男が議場へ入ってきた。
徴税請負組織に長く勤務する会計責任者、ルネ・ルクレールだった。
先ほどのマルタンとは対照的に、その歩みには迷いがなかった。
「あなた方は、国民から税を取り立て、差額を利益にしている。」
改革派議員が厳しく言う。
ルクレールは一礼して答えた。
「我々が利益を得ていることは否定いたしません。」
「しかし、利益だけを見て、我々の役割をすべて中抜きと呼ぶのは正確ではありません。」
議場がざわめく。
「続けよ。」
ルイが促した。
「徴税請負組織は、契約で定められた金額を国庫へ納めます。」
「税が予定どおり集まる前から、国庫へ資金を前渡しする場合もあります。」
「そのため、国王政府は収穫や商取引の結果を待たず、軍や役人へ支払いを行えます。」
「我々は役所を置き、帳簿を整え、役人を雇い、街道や国境で密輸を取り締まります。」
「税収が予想より少なければ、我々が損失を負うこともあります。」
「多ければ利益を得る。」
「それが請負契約です。」
一人の議員が声を上げる。
「だが、国民がいくら払ったのか、国王政府には分からない。」
「契約に基づく納付額は分かるはずです。」
「国庫へいくら届いたかは分かる。」
ルイが言った。
「私が知りたいのは、そのために国民がいくら払ったかだ。」
ルクレールはすぐには答えなかった。
「各徴収所の帳簿を集めれば、調べることは可能です。」
「今すぐには答えられないのだな。」
「はい、陛下。」
ネッケルが静かに続ける。
「徴税請負制度には、確かに専門知識と組織があります。」
「しかし、国庫が受け取る金額を安定させる代わりに、実際の徴収額と徴収費用が見えにくくなります。」
「一方、村人による徴税は現地事情を知っていますが、評価する者と金を集める者が同じであり、個人的な感情や有力者の圧力を受けます。」
「どちらも、そのまま新制度へ移すことはできません。」
改革派議員がルクレールを指さした。
「では、徴税請負人を解散させ、その役人を全員追放すればよい。」
「明日、徴税請負組織をなくしたとして。」
ルイがネッケルに尋ねる。
「国家自身で税を集められるか。」
ネッケルは首を横に振った。
「できません。」
あまりにも明確な答えだった。
「中央政府には、全国の徴収所を直ちに引き継ぐだけの役人も、事務所も、帳簿もありません。」
「現金を安全に輸送する仕組みも不足しています。」
「さらに、徴税請負組織からの前渡金が止まれば、新税が実際に入るまで国庫に空白が生まれます。」
「廃止を決めることと、廃止した翌日から国家が代わりを務められることは、同じではありません。」
ルイは目を閉じた。
徴税請負制度をなくす。
言葉だけなら、一瞬で終わる。
だが、なくした制度が担っていた仕事は消えない。
帳簿を作る者。
金を数える者。
倉庫を守る者。
街道を監視する者。
地方からパリへ金を運ぶ者。
その全員を追い出せば、税そのものが国庫へ届かなくなる。
「二つを分けよう。」
ルイは目を開いた。
「何を分けるのですか。」
議員が尋ねる。
「税額を決める者と、金を受け取る者だ。」
議場が静かになる。
「これまでの村では、同じ者が住民の財産を評価し、税額を決め、家を訪ね、金を受け取り、未納者の財産を差し押さえていた。」
「それでは、一人の人間に力が集まりすぎる。」
「新制度では、課税評価と徴収を分離する。」
ルイは一枚の大きな羊皮紙を広げた。
「まず、各市町村に課税評価委員会を置く。」
「そこには、住民が選ぶ代表を加える。」
「彼らが人口、土地、建物、商売の台帳を作る。」
「村の事情を知る者がいなければ、正しい評価はできない。」
地方議員が満足そうに頷く。
しかしルイは続けた。
「ただし、地元代表だけには任せない。」
その表情が固まる。
「中央政府から派遣する監査官と、別の地区から選ばれた評価官を加える。」
「地元の有力者が、自分と親族の税を軽くできないようにするためだ。」
「評価委員は、税金を受け取ってはならない。」
「誰かの税を増やしても、その金が自分の手へ入らないようにする。」
一人の議員が質問する。
「徴収は誰が行うのです。」
「国が給与を払う公的徴収官だ。」
議場から、すぐに反対の声が上がった。
「新しい官僚を増やすのですか。」
「国王の役人を地方へ送り込み、再び地方を支配するつもりではありませんか。」
「徴税請負人を国営の徴税人に置き換えるだけではないか。」
ルイは反論を受け止めた。
「徴収官には、税額を決める権限を与えない。」
「新しい税を作る権限もない。」
「定められた台帳に従って金を受け取り、領収書を渡し、国庫へ送る。」
「それだけだ。」
「給与は固定する。」
「多く取り立てた者ほど報酬が増える歩合制にはしない。」
「差し押さえた財産の一部を徴収官へ与えることも禁止する。」
「徴収官が利益のために住民を追い詰める理由をなくす。」
ネッケルが付け加える。
「徴収官になる者には、読み書き、算術、帳簿作成の能力を確認する試験を課します。」
「官職を購入した者ではなく、仕事を行える者を採用します。」
「ただし、新しい人間だけで全国を埋めることは不可能です。」
「徴税請負組織で働いてきた会計係や書記のうち、不正へ関与していない者には、公的徴収官への応募を認めるべきでしょう。」
改革派議員が顔をしかめる。
「徴税請負人の手下を、国家の役人にするのですか。」
「帳簿を読めることまで罪にはできない。」
ルイが答えた。
「制度を変えるために、必要な知識まで捨てるつもりはない。」
「不正をした者は調べる。」
「仕事をしただけの者は、その能力によって判断する。」
ルクレールは黙って頭を下げた。
ルイは羊皮紙へ、徴収の流れを書き始めた。
住民。
市町村。
地区。
国庫。
「まず、課税額が決まったら、納税者へ書面で通知する。」
「何の税か。」
「いくらか。」
「何を基準に計算したか。」
「いつまでに払うか。」
「どこへ異議を申し立てられるか。」
「それらを一枚に記す。」
「文字を読めない者には。」
地方議員が尋ねた。
「村役場で、証人の前で読み上げる。」
「知らなかったということが起きないようにする。」
「通知を受け取った者には、異議を申し立てる期間を与える。」
「評価を行った委員会とは別の地区審査会が、それを判断する。」
「異議を申し立てた者は、審査が終わるまで一切払わなくてよいのですか。」
「争いのない部分は払う。」
ネッケルが答えた。
「争っている部分だけを保留する。」
「そうでなければ、誰もが異議を申し立て、徴収を何年でも遅らせるでしょう。」
ルイは次に、分厚い帳簿を持ち上げた。
「金を受け取るときは、必ず番号付きの領収書を渡す。」
「領収書は、帳簿から切り離す形式にする。」
「納税者が受け取る紙と、帳簿に残る控えに、同じ番号を書く。」
「徴収官が金を受け取りながら帳簿に記載しなかった場合、番号が合わなくなる。」
「納税者は領収書を持っているため、二度払えと言われても拒否できる。」
商人出身の議員が頷いた。
「商売では当然のことです。」
「国家の徴税では、当然ではなかった。」
ルイは静かに返した。
「だから変える。」
「集めた金は、どのように保管します。」
別の議員が尋ねた。
「村の徴収官の家に置けば、盗難や持ち逃げが起きます。」
ネッケルが一つの木箱を示した。
頑丈な鉄具が付けられ、正面には二つの鍵穴がある。
「各地区に、公金保管箱を置きます。」
「鍵は二本。」
「一本は公的徴収官。」
「もう一本は市町村代表が持ちます。」
「一人では開けられません。」
「箱を開けるときは、双方が立ち会い、帳簿の残高と現金を確認します。」
「一定額を超えた金は、地区の受取所へ送ります。」
「長距離を現金で運ぶ場合は護衛を付けますが、可能な地域では公認銀行家の為替手形を利用し、現金輸送そのものを減らします。」
「徴収官が、何か月も公金を手元に置くことは禁止します。」
「市町村の帳簿。」
「地区受取所の帳簿。」
「中央国庫の帳簿。」
「三つの数字が一致しなければ、監査を行います。」
議場の空気が、少しずつ変わっていった。
理念ではない。
実際に税が移動する道が、初めて形になり始めていた。
「納税は年に一度でしょうか。」
農村出身の議員が尋ねる。
「収穫前に地租を要求されても、農民には現金がありません。」
「原則として分割納付を認める。」
ルイが答えた。
「基礎個人貢献と商工業税は、年二回または四回。」
「地租は、その地域の主要な収穫と販売時期を考慮する。」
「小麦地帯と葡萄地帯で、同じ納期限にする必要はない。」
「徴収官が一人ひとりの家へ押しかけるのではなく、決められた日に市町村の受取所を開く。」
「遠い村には、徴収官が巡回する。」
「税を払うためだけに、農民を何日も歩かせてはならない。」
そこで、一人の保守派議員が立ち上がった。
「納税しない者には、どう対応するのです。」
「免除。」
「猶予。」
「分割。」
「異議申立て。」
「そのような制度を並べれば、払わない理由はいくらでも作れます。」
「最後には、強制しなければ税は集まりません。」
その言葉に、議場が静まり返った。
避けて通れない問題だった。
どれほど公平な税でも、払わない者は出る。
払えない者。
払いたくない者。
財産を隠す者。
逃げる者。
徴税制度には、最後に強制力が必要になる。
ルイはゆっくりと答えた。
「最初から差し押さえには行かない。」
「まず通知する。」
「期限を過ぎれば、再度通知する。」
「その者が本当に払えないのか、意図的に払わないのかを調べる。」
「病気、凶作、火災、失業で払えないなら、猶予または分割にする。」
「財産を隠しながら拒否しているなら、地区裁判所へ申し立てる。」
「徴収官自身に、勝手に家へ入り、財産を持ち出す権限は与えない。」
「裁判所の命令を必要とするのですか。」
「そうだ。」
「税を決める者。」
「金を受け取る者。」
「財産を差し押さえる者。」
「それらを同じ人間にしてはならない。」
ルイの声は静かだった。
だが、その言葉には力があった。
「差し押さえを行う場合でも、種籾、農具、職人の仕事道具、最低限の食料、寝具まで奪ってはならない。」
保守派議員が反論する。
「それでは、差し押さえられる物がなくなります。」
「来年の税を生み出す物を奪えば、本当に何もなくなる。」
ルイは答えた。
「農民から種籾を奪えば、来年の収穫がなくなる。」
「職人から道具を奪えば、明日の収入がなくなる。」
「一度の税を取り立てるために、翌年以降の納税能力を壊してはならない。」
「土地を持つ者が地租を故意に滞納した場合は、土地に未納額を記録する。」
「売却、相続、貸付けの際に精算させる。」
「商人が財産を隠しているなら、倉庫の商品や売掛金を裁判所の管理下に置く。」
「貧困そのものを罪にはしない。」
「だが、帳簿の偽造や財産隠しは、明確な不正として処罰する。」
議長が尋ねる。
「徴収官が不正をした場合は。」
「受け取った金を帳簿へ記載しない。」
「同じ税を二度要求する。」
「領収書を渡さない。」
「賄賂を受け取り、特定の者の未納を見逃す。」
「その場合はどうなさいます。」
「即座に職務から外す。」
「帳簿と現金を監査し、不足分を返還させる。」
「故意であれば裁判へ送る。」
「徴収官は国家の名で家々を訪れる。」
「その者の不正は、単なる窃盗ではない。」
「国家そのものへの信頼を盗む行為だ。」
ルイは議場を見渡した。
「ただし、徴収官を不足額について無制限に個人責任とすることもしない。」
「村人が逃げた。」
「凶作で払えなかった。」
「それだけで徴収官に自腹を切らせれば、先ほどのマルタンのように、何が何でも隣人から取り立てるしかなくなる。」
「徴収官が責任を負うのは、横領、怠慢、帳簿の偽造など、自分の行為による不足だけだ。」
ネッケルは、議論を一枚の制度案へまとめていった。
課税評価は、地方代表と中央監査官が共同で行う。
徴収は、固定給与を受ける公的徴収官が行う。
評価官と徴収官を分離する。
納税額と根拠を書面で通知する。
異議申立てを認める。
番号付き領収書を発行する。
公金箱は二本の鍵で管理する。
市町村、地区、中央の三つの帳簿を照合する。
分割納付を認める。
強制徴収には裁判所の命令を必要とする。
生活と生産に不可欠な財産は差し押さえない。
徴収請負組織は段階的に解消し、必要な人材と設備を国家が引き継ぐ。
その移行期間中は、徴税請負人の前渡金がなくなっても国庫が止まらないよう、予備資金を用意する。
一人の地方議員が制度案を見つめながら言った。
「地方だけにも任せない。」
「中央だけにも任せない。」
「互いに監視させるのですか。」
「そうだ。」
ルイは頷いた。
「地方は人を知っている。」
「中央は地方のしがらみから離れている。」
「どちらか一方だけでは足りない。」
「そして何より、税を集める者を信用だけで選んではならない。」
「善人だから任せるのではない。」
「悪人であっても、容易には不正ができない仕組みにする。」
議場の誰も、すぐには拍手しなかった。
新しい徴税制度は、華やかなものではない。
自由を宣言する言葉もない。
人権を称える美しい演説でもない。
帳簿。
領収書。
番号。
鍵。
納期限。
監査。
異議申立て。
それらは地味で、細かく、退屈にすら見えた。
だが、税を払う国民にとっては、その一つ一つが国家の姿だった。
領収書を渡さない徴収官。
勝手に家畜を連れ去る役人。
有力者だけを見逃す評価委員。
不足分を埋めるために隣人を追い詰める村人。
法律がどれほど公平でも、その最後に立つ徴税人が恣意的なら、国民が見る国家は不公平なままだ。
議長が木槌を鳴らした。
「本日の原則を財政委員会へ付託します。」
「課税評価、徴収、監査、異議申立て、強制徴収を分離した法案を作成するものとします。」
ルイは、机の上に置かれた番号付き領収書の見本を見つめた。
薄い一枚の紙だった。
王冠も。
剣も。
兵士も描かれていない。
それでも、その紙は国王の命令よりも確かなものになるかもしれなかった。
国民が税を払ったことを、国家自身に認めさせる証拠だからだ。
(税を集めなければ、国は動かない。)
(だが、集めるためなら何をしてもよいわけではない。)
ルイは顔を上げた。
「税を払う者と、税を集める者の間に、法律を置こう。」
「徴税人が国家なのではない。」
「法律が、徴税人を縛るのだ。」




