一人十四リーブル
第四十七話 「一人十四リーブル」
1789年12月。
パリ。
憲法制定国民議会。
前回の審議では、複雑に絡み合った王国の税を整理し、国民一人ひとりを同じ制度の下に置く「一人一税」という考え方が示された。
タイユ。
カピタシオン。
ヴァンティエーム。
塩税。
酒税。
国内関税。
地方ごとに異なる免除。
身分、官職、都市、州ごとに認められた特例。
それらを可能な限り廃止し、誰にでも理解できる一つの税へまとめる。
言葉にすれば、実に明快だった。
複雑な徴税制度を維持する役人を減らせる。
徴税請負人による中抜きも防げる。
地方ごとに異なる負担もなくせる。
何より、貴族だから免除され、平民だから課税されるという旧来の不公平を終わらせることができる。
だが、制度は理念だけでは動かない。
一人の地方議員が、慎重な面持ちで立ち上がった。
「陛下。」
「仮に、すべての国民から同じ定額を徴収する人頭税を導入するといたします。」
「その場合、一人当たり、いくら徴収すればよいのでしょうか。」
議場が静まり返った。
一人一税。
言葉としては美しい。
しかし、その一税をいくらにするのか、まだ誰も答えを持っていなかった。
ルイは隣に座るネッケルへ視線を向けた。
「財務総監。」
「現在、国庫へ入る年間収入は、どれほどだった。」
ネッケルは机の上に積まれた帳簿から、一冊を取り出した。
「年度によって変動いたしますが、平年でおよそ四億リーブルです。」
議員たちの間から、低いざわめきが起こる。
四億リーブル。
それだけの金が国庫へ入っても、利払い、軍事費、宮廷費、行政費によって消えていく。
しかも、それは国家が破綻せずに済む最低限に近い額であり、国債の元本を大きく減らせるほどの余裕はなかった。
ルイは頷いた。
「では、王国の人口は。」
「正確な人口登録はまだ完成しておりません。」
ネッケルは慎重に答えた。
「これまでに集められた教区記録、地方長官の報告、穀物消費量などから推測すれば、およそ二千七百万人から二千八百万人と考えられております。」
「ここでは、二千八百万人として考えよう。」
ルイは羊皮紙を手元へ引き寄せた。
羽ペンを取り、数字を書き始める。
四億リーブル。
二千八百万人。
四〇〇、〇〇〇、〇〇〇を、二八、〇〇〇、〇〇〇で割る。
議場の視線が、羽ペンの先へ集まった。
やがてルイは計算を終えた。
「十四・二八……。」
小数点以下を見つめ、改めて口を開く。
「およそ十四・三リーブル。」
議場から、はっきりとしたどよめきが起こった。
ルイは羊皮紙を持ち上げた。
「単純に計算するならば、こうなる。」
「国家が現在と同じ四億リーブルを必要とし、二千八百万人全員から均等に徴収するならば、一人当たり年間十四・三リーブルである。」
「切り上げれば、一人十四リーブルと少し。」
「これが、一人一税という考え方を数字にした場合の答えだ。」
一瞬、議場に奇妙な安堵が広がった。
年間十四リーブル。
途方もない額には聞こえない。
これで塩税もタイユも国内関税もなくなるなら、受け入れられるのではないか。
そんな空気が生まれかけた。
しかし、ネッケルは羊皮紙を受け取ると、計算を確認したうえで静かに首を振った。
「算術としては正しい数字です。」
その言葉に、ルイがネッケルを見る。
「算術としては、か。」
「はい、陛下。」
ネッケルは帳簿を閉じなかった。
「ですが、財政の計算としては、前提が正しくありません。」
議場に再び緊張が走る。
「まず、二千八百万人には、生まれたばかりの乳児も含まれます。」
「幼い子供。」
「収入を持たない老人。」
「病人。」
「働くことのできない者。」
「救貧院で暮らす者。」
「家族に扶養されている者。」
「その全員を、一人の納税者として数えております。」
一人の地方議員が立ち上がった。
「一家に父母と子供が三人いれば、五人分。」
「年間七十一・五リーブルです。」
「豊かな農家ならば払えるかもしれません。」
「しかし、小作農や日雇い農民にとっては、到底軽い負担ではありません。」
別の議員も続いた。
「子供が多い家ほど重くなります。」
「貧しい家ほど、一人当たりの税が家計を圧迫する。」
「これでは、身分の不平等をなくす代わりに、家族の人数による不平等を作ることになります。」
ネッケルが頷いた。
「さらに、実際に納税できる独立した成人だけを対象にするなら、納税者は二千八百万人よりはるかに少なくなります。」
「仮に納税者が人口の半分なら、一人当たりの必要額は十四リーブルではありません。」
「二十八リーブルを超えます。」
「そこから貧困者を免除し、未納を見込み、徴収費用を加えれば、実際の税額はさらに高くなります。」
議場の空気が変わった。
先ほどまで小さく見えていた十四という数字が、急に重さを持ち始める。
ルイは机の上の羊皮紙を見つめた。
十四・三。
計算は正しい。
だが、その数字の中には、乳児も、病人も、明日のパンに困る家族も、広大な領地を持つ公爵も、すべて同じ一人として押し込められている。
(計算は簡単だ。)
(人間を消してしまえば、いくらでも簡単になる。)
ざわめきが少し大きくなった。
その音が重なり、ルイの耳の奥で、かつて自分を取り囲んだ群衆の声へ変わりかける。
胸が狭くなる。
呼吸が浅くなる。
羽ペンを持つ指が、わずかに震えた。
それでもルイは逃げなかった。
机の下で拳を握り、ゆっくりと息を吐いた。
ネッケルはさらに続けた。
「もう一つございます。」
「四億リーブルのすべてが、人頭税で置き換えるべき税収ではありません。」
「王領からの収入。」
「国境で徴収する外国関税。」
「印紙や契約の登録料。」
「郵便や造幣に関する収入。」
「これらまで一人当たりの人頭税で置き換える必要はございません。」
「反対に、国庫へ四億リーブルが入っているからといって、国民が四億リーブルしか負担していないわけでもありません。」
「徴税請負人の利益。」
「地方での徴収費用。」
「役人への手数料。」
「国庫へ届く前に失われる金があります。」
「ゆえに、四億を人口で割るだけでは、国民の現在の負担も、新制度に必要な税率も分からないのです。」
「では、一人十四リーブルという数字には、何の意味もないのですか。」
質問した議員が尋ねた。
ルイは少し考えてから答えた。
「いや。」
「意味はある。」
「この数字は答えではないが、一つの間違いを明らかにした。」
「国家の収入を人口で割れば、公平な税ができる。」
「そう考えること自体が間違いだったのだ。」
そのとき、貴族身分出身の議員が立ち上がった。
「陛下。」
「一人一税を改めるのであれば、身分ごとの事情も考慮していただきたい。」
「貴族のタイユ免除は、単なる恩恵として与えられたものではありません。」
「軍務。」
「国王への奉仕。」
「領地の秩序維持。」
「代々負ってきた義務と引き換えに認められてきた権利です。」
その発言に、第三身分出身の議員たちから反発の声が上がる。
「では、畑を耕す農民は国家へ奉仕していないと言うのか。」
「パンを作る者より、剣を帯びる者の方が価値があるのか。」
議長が木槌を鳴らした。
「静粛に。」
別の法服貴族が立ち上がる。
「官職に付随する免税もございます。」
「我々の父や祖父は、国王から官職を購入しました。」
「国家は官職とともに、一定の権利を売ったのです。」
「今になって、その権利だけを一方的に取り上げるなら、国家が自ら結んだ契約を破ることになります。」
続いて、聖職者議員が口を開いた。
「聖職者もまた、国王への負担を拒否してきたわけではありません。」
「教会は自由献金として、聖職者団体全体で国王へ金を納めてきました。」
「教会の土地と聖職者個人へ直接課税することは、教会が持つ自主的な負担決定権を失わせます。」
反論。
抗議。
同意。
議場のあちこちから声が上がる。
ルイはそれらを遮らず、しばらく聞いていた。
やがて静かに立ち上がった。
「確認しておきたい。」
「私は、これまで貴族が一切の税を払っていなかったと言うつもりはない。」
議場が少し静かになる。
「貴族もカピタシオンを払い、ヴァンティエームを払い、物を買えば間接税を負担してきた。」
「教会も自由献金を納めてきた。」
「問題は、まったく払っていなかったことではない。」
「誰が、どの税を、どのような方法で負担するかが、身分、官職、州、都市によって異なっていたことだ。」
「同じ収入を持つ二人でも、一方は交渉でき、もう一方は命じられたまま払わされる。」
「その違いを終わらせなければならない。」
貴族議員が問い返す。
「では、貴族を重く課税なさるのですか。」
「違う。」
ルイは即座に答えた。
「貴族であることを理由に、重くはしない。」
「だが、貴族であることを理由に、軽くもしない。」
議場が静まり返った。
ルイは新しい羊皮紙を広げ、そこに三本の線を引いた。
「一つの税ですべてを解決しようとしたことが、間違いだった。」
「人が持つ負担能力は、一つではない。」
「人としての負担。」
「土地から収益を得る者としての負担。」
「商いや事業から利益を得る者としての負担。」
「この三つを分けて考える。」
一番目の線の上に、ルイは書いた。
『基礎個人貢献』
「第一に、特権なき基礎人頭税。」
「ただし、一人十四リーブルではない。」
「独立して生計を立てる成人に、その地方の日雇い労賃三日分を基礎額として負担してもらう。」
「パリと農村では賃金も物価も異なる。」
「全国一律の金額にはしない。」
「王族。」
「貴族。」
「聖職者。」
「官職保有者。」
「軍人。」
「身分や職務を理由とした免除は認めない。」
「ただし、病人、働けない者、極端な貧困者には免除または猶予を認める。」
一人の議員がすぐに問いかける。
「それも免税ではありませんか。」
「違う。」
ルイは答えた。
「貧困による免除は、身分による特権ではない。」
「同じ状態ならば、平民でも没落貴族でも同じ扱いを受ける。」
「免除の理由は家名ではなく、支払う能力がないという事実でなければならない。」
ネッケルが補足する。
「ただし、三日分の労賃だけでは、公債利子や高額な年金で生活する富裕者を十分に捉えられません。」
「土地を持たず、商売もせず、莫大な収入だけを得る者がいるからです。」
ルイは頷いた。
「そこで、住居の賃貸価値、使用人の人数、乗用馬、馬車などを、生活能力の目安として加算する。」
「粗末な一室で暮らす職人と、多数の使用人を抱えて邸宅に住む者を、同じ三日分だけで終わらせない。」
「これも、身分を見るのではない。」
「実際の暮らしを見る。」
別の議員が言った。
「それでは、純粋な定額人頭税ではありません。」
「そのとおりだ。」
ルイは認めた。
「純粋な定額人頭税を捨てるのだ。」
二番目の線に、ルイは書いた。
『地租』
「第二に、例外なき地租。」
その言葉だけで、議場の貴族と聖職者の表情が変わった。
「土地から収益を得る者は、その収益に応じて負担する。」
「貴族領。」
「聖職者領。」
「ブルジョワの所有地。」
「農民の自作地。」
「都市の住宅。」
「倉庫。」
「工房。」
「所有者の身分ではなく、土地と建物が生み出す平均純収益を基準とする。」
大領主の一人が立ち上がる。
「収穫は毎年変わります。」
「豊作の翌年に不作が来れば、前年と同じ税を払うことなどできません。」
「ゆえに、一年の収穫だけでは決めない。」
ルイは答えた。
「数年間の平均を使う。」
「種子、通常の耕作費、建物や水路の維持費を差し引き、残った純収益に課税する。」
「初年度は一割程度。」
「土地台帳が整い、旧来の負担が廃止された地域では、必要に応じて八分の一から最大六分の一まで。」
「雹、洪水、凶作で実際に被害を受けた土地には、身分を問わず猶予を認める。」
聖職者議員が尋ねる。
「教会領も同じでしょうか。」
「教会が所有し、その収益を受け取る土地ならば、同じ地租を負担する。」
「ただし、教会財産を国家が管理し、そこから聖職者の生活、礼拝、救貧、教育の費用を支出する制度へ移るなら、国家が自分自身へ地租を払っても意味がない。」
「その場合は、必要経費を差し引いた教会領の純収益を、国庫の帳簿へ直接記載する。」
「どちらにしても、自由献金という名で負担額を別に交渉する仕組みは終わらせる。」
聖職者たちの間に重い沈黙が落ちた。
地方の貧しい貴族が立ち上がる。
その衣服は古く、袖口もわずかに擦り切れていた。
「陛下。」
「名ばかりの貴族で、わずかな土地しか持たぬ者もおります。」
「その者まで、大領主と同じ額を負担するのでしょうか。」
「同じ額ではない。」
ルイは答えた。
「同じ規則で計算する。」
「土地が小さく、純収益が少なければ、地租も少ない。」
「公爵だから高いのではない。」
「土地収入が大きいから高くなる。」
「反対に、平民であっても広大な土地を所有しているなら、同じ地租を負担する。」
貧しい貴族は、しばらくルイを見つめた後、静かに着席した。
三番目の線に、ルイは書いた。
『商工業税』
「第三に、商工業税。」
「土地を持たずとも、大きな利益を得る者はいる。」
「卸売商。」
「銀行家。」
「両替商。」
「工場主。」
「海運業者。」
「弁護士。」
「公証人。」
「医師。」
「印刷業者。」
「彼らを地租だけで捉えることはできない。」
商人出身の議員が腕を組む。
「職種別の二十三段階を、ここで用いるのですか。」
「基本表としては使える。」
ルイは答えた。
「だが、職種だけで税額を決めてはならない。」
「織機一台で働く親方と、織機百台を動かす工場主が、同じ織物業だから同額というのでは不公平だ。」
「業種の基本等級。」
「都市の規模。」
「店舗や工場の賃貸価値。」
「雇用する人数。」
「使用する設備。」
「それらを組み合わせて事業規模を評価する。」
「雇われ職人や徒弟にも課すのですか。」
「課さない。」
「商工業税を払うのは、原則として事業の経営者だ。」
「賃金を受け取る職人は、基礎個人貢献だけを負担する。」
「また、この税を払うことを、営業許可の恩恵にしてはならない。」
「登録し、定められた税を払えば、原則として誰でも商売を始められる。」
「役人が気に入らぬ者の営業を拒むために使えば、それはギルドに代わる新しい独占になる。」
商人議員がさらに尋ねた。
「赤字の年はどうします。」
「事業規模だけで決められれば、商売に失敗した者まで前年と同じ額を求められます。」
ネッケルが答えた。
「毎年の申告と異議申立てを認めます。」
「ただし、利益をすべて自己申告だけで決めれば、帳簿を隠す者が有利になります。」
「店舗の賃料、倉庫の広さ、雇用人数、設備など、外から確認できる事実を基本とするべきでしょう。」
「災害、破産、長期休業については、地区委員会が減免を審査する形が適切です。」
ルイは三つの言葉を見下ろした。
基礎個人貢献。
地租。
商工業税。
「同じ人物が、三つを払う場合もある。」
「広大な土地を持ち、商業会社を経営し、大邸宅で暮らす者ならば、三つすべてを負担する。」
「土地を持たず、誰かに雇われて働く者ならば、基礎個人貢献だけでよい。」
「小さな自作地を耕す農民ならば、基礎個人貢献と、その土地の収益に応じた地租。」
「人を一つの職業へ押し込み、その職業名だけで税を決めるのではない。」
「その者が、何から収入を得ているのかを見る。」
議員の一人が問いかけた。
「この三つで、四億リーブルを確保できますか。」
ネッケルはすぐには答えなかった。
帳簿の数字を追い、何枚かの紙を並べる。
「現時点では、あくまで概算です。」
「土地評価が正しく行われ、身分免除をなくすことができれば、地租で二億二千万から二億四千万リーブル。」
「基礎個人貢献と住居・使用人などの加算で、五千万から六千万リーブル。」
「商工業税で、一千五百万から三千万リーブル程度。」
「これだけでは、四億リーブルに届かない場合があります。」
議場から声が上がる。
「不足ではないか。」
「結局、税を増やすのか。」
ネッケルは動じなかった。
「先ほど申し上げたとおり、四億リーブルの全額を、この三つだけで集める必要はありません。」
「外国関税。」
「印紙税。」
「契約、相続、土地売買の登録料。」
「王領その他の国有財産からの収入。」
「郵便、造幣などの収入。」
「それらを合わせれば、四億リーブル前後へ届く可能性があります。」
「したがって、この三つは国家に存在する唯一の収入ではありません。」
「国内で恒常的に徴収する、三つの主要な直接税と考えるべきです。」
「では、塩税は。」
「国内関税は。」
「酒税はどうする。」
次々と質問が飛ぶ。
ルイが答えた。
「すぐにすべてを廃止するとは約束できない。」
議場の一部から不満の声が上がった。
その声に胸が震えた。
だが、ルイは言葉を止めなかった。
「約束だけなら簡単だ。」
「今日、塩税もタイユもヴァンティエームもすべて廃止すると宣言することはできる。」
「だが、新税の台帳も徴収官もないまま旧税を止めれば、翌月には軍へ給金を払えなくなる。」
「役人も、病院も、救貧院も止まる。」
「国債の利払いが途絶えれば、国家の信用は再び崩れる。」
「だから順序が必要だ。」
ルイは三本の線の下に、さらに数字を書いた。
「第一段階。」
「人口、土地、事業所を登録する。」
「基礎個人貢献と商工業税を低い税率で開始する。」
「地租は、既存のヴァンティエーム台帳、賃貸借契約、領主の地代帳、教会の記録を使って暫定的に評価する。」
「第二段階。」
「新しい三税が実際に徴収できることを確認した後、タイユ、旧カピタシオン、ヴァンティエームを廃止する。」
「第三段階。」
「全国の土地台帳を整え、地租を正確にする。」
「その収入が安定した地域から、塩税、国内関税、旧来の酒税を順番に廃止する。」
改革派議員が立ち上がった。
「それでは、古い不公平が数年残ります。」
「残る。」
ルイはごまかさなかった。
「だが、廃止する日付を法律で先に定める。」
「徴収官や徴税請負人が、改革を永久に引き延ばせないようにする。」
「徴税請負契約は満了させるか、国家が明確な価格で買い戻す。」
「官職に付随する権利についても、国家が過去に売ったものなら、必要な補償を審査する。」
「特権を永久に残すことと、国家が自ら結んだ契約を整理することは同じではない。」
「奪うのではない。」
「終わらせるための手続きを作る。」
議場は再び静かになった。
ネッケルが新しい帳簿の形式を示した。
一人の住民について、三つの欄が設けられている。
個人と世帯。
所有する土地と建物。
営む商売と事業。
「課税台帳は、可能な範囲で住民に公開します。」
「自分の土地だけが高く評価され、隣の領主の土地が低く評価されていないか。」
「同じ規模の商店が、別の等級に入れられていないか。」
「住民自身が確認できるようにするのです。」
「また、評価を行う者と、実際に金を受け取る者を分けます。」
「地元代表だけに任せれば、有力者へ配慮するおそれがあります。」
「中央から派遣する監査官と、地元の選出委員を組み合わせ、異議申立ては別の地区委員会で審査します。」
議長がゆっくりと立ち上がった。
「つまり、前回示された一人一税という考え方は、修正されるのですね。」
ルイは羊皮紙の上に残る十四・三という数字を見た。
ほんの少し前まで、それは答えに見えていた。
複雑な王国を救ってくれる、簡潔で美しい答え。
しかし、その簡潔さは、子供と大人を区別しなかった。
貧しい者と富める者を区別しなかった。
土地収入と商業利益を区別しなかった。
国家収入と税収すら区別していなかった。
「修正ではない。」
ルイは静かに答えた。
「一人一税という考え方は、ここで捨てる。」
議場がざわめく。
「その代わりに。」
「人には、人としての基礎負担を。」
「土地には、その収益に応じた負担を。」
「商いには、その規模に応じた負担を求める。」
「身分には課税しない。」
「だが、身分を理由に免除もしない。」
議長はしばらく黙っていたが、やがて頷いた。
「本日の審議で、一つの数字が出ました。」
「一人十四・三リーブル。」
「しかし、その数字が答えではないことも明らかになりました。」
「我々が決めなければならないのは、一人当たりの金額ではありません。」
「国民の何を負担能力と認め、どのような規則ならば、すべての者を同じ法律の下へ置けるかです。」
拍手は起こらなかった。
それほど簡単な結論ではなかった。
大領主は地租を恐れた。
聖職者は自主課税権を失うことを恐れた。
商人は新たな営業税を警戒した。
農民は土地評価が本当に公平になるのか疑っていた。
誰もが、新しい制度によって自分の負担がどれほど変わるのかを計算し始めていた。
だが、それでよいのだとルイは思った。
美しい言葉に拍手を送るより、自分の負担を数字で確かめる方がよい。
十四・三リーブル。
その数字は、フランスを救う答えではなかった。
むしろ、国家を一つの割り算だけで治めてはならないと教える数字だった。
一人十四リーブル。
あまりにも簡単で、だからこそ最も危険な答えだった。




