八百墓村殺人事件6
「オウシュン様ー!しっかりしてください!」
声の出所、台所に到着すると、そこには黒焦げになって焼死しているオウシュンがいた。というか黒焦げなので誰なのかはわからないのだが、お手伝いさんがオウシュンと呼んでいるのでオウシュンなのだろう。
「オウシュン様ー!しっかり!」
黒焦げなんだからしっかりしようもないのだが、お手伝さんは声をかけ続ける。
「しっかりー!」
黒焦げの死体に『しっかりー!』と声をかけ続ける光景は、かなり狂気的であった。
「なんで燃えたのじゃ?」
叫び続けているバカを無視してヒメはオウシュンの死体を確認する。
燃えていたところをお手伝いさんが水をかけて鎮火したらしいが、完全に燃え切っていた。
「しっかりー!」
「お手伝いさん!」
バチン!
しっかりー!を言うだけのNPCと化したお手伝いさんをビンタするヒメ。
「キヨミです!」
「キヨミ!ここで何があったのかを教えるのじゃ!」
ビンタによって正気を取り戻したお手伝いさん、もといキヨミは、呼吸を整えてから、今回の事件について話し始める。
「昼食を作るために台所にやってきたら、燃えてたのよ。すでに火だるまになっていてね。放っておけば火事になると踏んだ私は、ちょうど雑巾を洗うために持っていたバケツの水をオウシュン様にぶっかけたわ。その後もバケツに水を入れてぶっかけ続けて、なんとか鎮火したのよ。そこからは気が動転して覚えてないわ」
キヨミが持っている情報はそんなに多くなかった。正直に言えばパッとしなかった。だがキヨミの話を聞いたヒメはニヤリと笑った。
「今の話では、キヨミが台所に来た時にはオウシュンは火だるまだったのじゃな?」
「そうよ。まるでキャンプファイヤーのように燃えたぎっていたわ」
「ではなぜこの死体がオウシュンだとわかったのじゃ?」
ヒメが下からキヨミの顔を覗き込む。
「え?」
思わず後ずさるキヨミ。
「そうか!キヨミさんが見た時にはもう誰が燃えているかなんて判断できる状態ではなかったってことか!」
「その通りじゃ、ナキ。キヨミはすぐにバケツの水をかけ、消火にあたっておる。だが火が消えた時にはもう黒焦げだった。つまりキヨミが見つけた時にはもう結構燃えていて、焦げていたということになる。そんな状況で燃えている人間が誰かわかるのはオウシュンを燃やした人間、つまり犯人だけということじゃ!」
ビシッとキヨミを指差すヒメ。決まった。これは決まった。ちょっと早い気もするが、クライマックス。解決編スタートである。
「そ、そんな」
キヨミはその場に膝をついた。
「何があったんだ!?俺の名前を呼んでいたようだが!」
これからキヨミが自分の罪を告白し出すのかと思ったところで、死んだと思っていたオウシュンが現れる。
「「え?」」
結論から言うと、火だるまになっていたのはオウシュンではなくオウセンだった。
「オウセンー!」
遅れて駆けつけてきたオウランは黒焦げになったオウセンの死体を抱きしめて泣きじゃくった。オウシュンはその光景を見て辛そうな顔をしている。
「リンコさんは大丈夫ですか?」
「オウセン兄様なら大丈夫ですわ。オウシュン兄様ならどうなってしまうか自分でもわかりませんけど、オウセン兄様ならまあ」
心配そうに聞いてきたミサキにリンコは笑顔で答えた。
というかリンコは焼死体を見た瞬間に、それがオウシュンではないことはわかっていたらしい。リンコ曰く全く違うとのこと。黒焦げだろうが、爪一枚だろうが、オウシュンならばわかると言うのだから、リンコはマジでかなりやばい。
キヨミを追い詰めようとしたヒメの理論はリンコ相手では通じなかったと言うことだ。
ではなぜキヨミはオウセンの死体をオウシュンと呼んでいたのか。
「なんでじゃ?」
ヒメが聞いてみた。
「なんとなく次に殺されるならオウシュン様かなって思ってたから。てっきり」
「それもなんで?」
「金田一少年の事件簿だと、このあたりでオウシュン様みたいな堅物キャラが死ぬもんだから」
「わかる!」
ナキは共感した。
「狼狽えながら膝をついたのはなんでじゃ?」
「金田一っぽい場面だったから、自分も役に成り切ってしまって。心に身を任せたエチュードを繰り広げてしまったみたいだわ。若い頃、劇団にいたことがあるのよ」
キヨミは劇団にいたことがあった。
「そうなんだ」
そう言ったヒメは勝手に冷蔵庫を開け、勝手にヤクルトを取り出し、間髪入れずに飲み干した。そして窓際へ行って空を眺める。空の青さが嫌なことを忘れさせてくれる気がしたからだ。
そうこうしていると、待機していたくせに何もできなかった、役立たずの警察たちが慌てて台所にやってきて、現場検証を始める。
ということで台所から出されたヒメたちは、事情聴取が始まるまで部屋で待機となったのだった。
読んでくださってありがとうございます。
引き続きよろしくお願いします。




