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超常専門(超不本意)探偵アクトヒメ  作者: 血湧湧
八百墓村殺人事件
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8/17

八百墓村殺人事件5(人生ゲーム回)

 3月11日(水)8:30 遺産相続確定まであと27時間30分


「結局寝てしまって人生ゲームができなかったのじゃ!こうなったら朝人生ゲームじゃ!全員さっさと起きろい!」


 ヒメは朝から元気がいい。スタートマスに車を並べながらみんなを起こす。


「いや朝からゲームする気にはならねーわ。腹減った」


「そうですね。朝ごはん食べに行きましょう」


 しかし二人はヒメが展開していた人生ゲームを跨いで部屋を出ていく。


「ふぐっ、ふぐっ。みんなで人生ゲームがしたかったのに。せっかくこの旅行のためにリサイクルショップで初代人生ゲームを買ってきたのに」


 ヒメは人目も憚らず泣き出した。彼女は本気で、心の底から人生ゲームをやりたかったのだ。それも初代を。


「朝飯食べたらやろうか」


「そ、そうですね」


 二人は立ち止まって振り返った。


「本当か?本当にワシと人生ゲームやってくれるのか?」


 ヒメは縋るように二人を見た。


「うん、やるやる」


「めっちゃ楽しみです!」


「そうかそうか!じゃあさっさと朝食を片付けて人生ゲームをやるのじゃ!」


 そうと決まればというわけで、ヒメは二人を追い抜いて、食堂へと駆け出していった。


「何であんなに人生ゲームやりたいんですか?」


「知らん。けどこれ以上ヒメの機嫌を損ねれば、事件とは全く関係ないところでこの村が滅びる」


 サラッととんでもないことを言ったナキだが、その目に嘘はなかった。


「本当に人生がかかったゲームになりましたね」


「そうだな。これが最後の晩餐ならぬ最後の朝食にならないように気をつけようぜ」


「悔いのないように沢山食べようと思います」


 無駄に重い意味を持ってしまった朝食に3人は向かうのであった。

 


 3人が食堂に着くと、すでに相続者たちが全員集まっていた。


「遅かったわね」


「あ、チカゲさん。昨日は寝るのが遅かったので」


 ミサキたちはチカゲの隣に座る。上座の方ではオウラン組とサユリ組がすでに食べ終わりそうだ。


「ドウジはおらんのか?」


 あたりをキョロキョロ見渡しながらヒメが聞く。


「そうね。あの子はこの家の人間の前には姿を現さないわ。子供がお酒をがぶがぶ飲んでたら色々言われそうでしょ」


「それもそうか。というか少しぐらい酒を我慢できんのか?」


「できるかどうかはわからないけど、我慢させた時点で私との契約が反故にされちゃうのよ」


 この契約は不思議なモノだそうで、契約期間中ドウジはどこからともなく酒を召喚し、そしてその費用は自動でチカゲの預金から引き落とされていくらしい。


 さすが妖怪、物理法則をゴミのように扱う。


「なるほど。ちなみにチカゲは人生ゲームは好きかのう?」


 ヒメがチカゲに擦り寄る。


「いや、好きも嫌いもないけど」


「じゃあこのあと一緒にやらんか?これからの相続争いについても話しながら」


 よくわからない誘いで、妙にグイグイくるヒメにチカゲは困惑している。


「ま、まあいいけど。何で人生ゲーム?」


「この世で一番楽しいゲームだからじゃ」


 ヒメが曇りなき眼で答えた。


「あのう、私もご一緒してもいいでしょうか。人生ゲーム」


 突然後ろから聞こえた声にヒメが振り返ると、そこには死児間リンコがいた。


「おわっ!いつの間に!」


「すみません。人生ゲームと聞こえたもので」


「ん?お主も人生ゲームが好きなのか?」


「はい、人生ゲームには目がなくて。私、オウシュンお兄様以外とはお話しできないんですが、人生ゲームを通してならスムーズにお話ができるのです。今だってまだ人生ゲームが始まっていないのに、人生ゲーム関連の話ということで見知らぬあなたとこうしてお話しできているほどです」


 水を得た魚のように人生ゲーム愛をペラペラ語るリンコ。


「ふん、手加減はせんぞ」


 そんなリンコを、好敵手と認めたかのように、ヒメが笑う。


「望むところですわ」


 リンコもノリノリで答えた。


 ウザいのでさっさと朝食を食べてほしいものだ。

  


 朝食を食べ終わった一行はミサキの部屋で人生ゲームを囲んでいた。


 参加者はヒメ、ナキ、ミサキ、チカゲ、リンコ。


「それでは始めるのじゃ!」


 ヒメが勢いよくルーレットを回す。ゲームスタートである。


「えーっと、『愛の意味を知る 20万円ずつもらう』じゃ!」


「愛の意味を知ったなら、金をせびるなよ。あ、『世界は闇に包まれた 10万円払う』か。世界の危機にしては安く済んだな」


 ツッコミながら10万もらうナキ。


「やった!『世界のアカシックレコードに触れる 3マス進む』です!」


「世界の理に触れても進めるの3マス程度かよ」


「3マス進んだ先は『遂にカテナチオを破る 3点とる』です!」


 ミサキは進むだけじゃなく、点もとった。


「1点は10万円と交換できるらしいから30万円もらった感じね。次は私か。えーっと『人が家畜にしか見えない 80万円もらう』。どういうもらい方なの、これ」


 苦言を呈しながらしっかり80万を数えるチカゲ。


「あ!『あの日の誓いを忘れた 200万円もらう』ですわ!」


「なんで忘れたのにもらえるんだよ」


 リンコも人生ゲーム好きを自称するだけあって幸先のいいスタートだ。


「2周目!気合いが入るのじゃ!『全てを手に入れたことにより虚しさを覚える 1回休み』か!くそぅ!」


「いや早すぎるだろ。何で2周目で全て手に入れてるんだよ!はぁ、次は俺か。『年収1億円突破 100万円もらう』。いや、1億円くれよ」


 若干ナキのツッコミがうるさいが、和気藹々と人生ゲームは続いていく。そして中盤になってくると、話題は死児間家の内情に切り込んでいく。


「ところでリンコは金持ちなのに、何でこんなに人生ゲームが好きなんじゃ?人生ゲームとは主にテレビゲームを買うことのできない貧乏人が現実から目を背けるためにやるゲームじゃろう」


 これはこの世でヒメだけが思っている、他には誰一人思っていない、完全に間違った偏見である。


「だからこそなんです。貧乏人の象徴である人生ゲームが、大金持ちの私には何より眩しく映ったのですわ」


 もう一人いた。でもこれで最後。人生ゲームに対して貧乏のイメージを抱いているのはこの世にたった二人だけ。もういません。


「いや、モノによってはゲームソフトより人生ゲームの方が高いだろ」


 お、ナキがいいこと言った。


 そうなんです。むしろ人生ゲームは金持ちの遊びと言ってもいいのです。


「ナキさん、それじゃハードの値段が入ってないですよ。人生ゲームがゲームソフトよりも高かったところで、ハードはその何倍もするんで、やっぱり人生ゲームは安いですよ」


 チッ!ミサキが余計なことを言った。ミサキのくせに。


「確かにそうだな」


 すぐに納得するな。もっと頑張れ。


「で、この貧乏ゲームをみんなでやってる本当の理由はなんなの?」


 チカゲがとんでもないことを言った。


「いや単純に人生ゲームを楽しみたかっただけなんじゃが、せっかくチカゲとリンコがいるんじゃ。この遺産相続戦における二人のスタンスを聞いておこうかのう」


「スタンス?私は明日までここにいて遺産をきっちり貰うつもりよ。もちろんミサキにも貰ってもらうわ。人が死んでるからって帰るつもりはないし、ミサキも帰さない」


 チカゲの答えは概ね予想通り。だが思ったよりストレートな、娘遺産相続要員発言。ヒメは少し心配になってミサキを見る。


 だがミサキは首を振って、大丈夫とばかりににっこり笑う。


「リンコはどうじゃ?」


「私は正直遺産に興味ないですわ。ナチュラルボーンお金持ちなので、そもそもお金に関して興味がありませんの。と言うかわかりませんの」


 リンコの言葉に嘘はなかった。お金に関しては『わからない』というのが本心なのだ。


 お金に困ったことはないどころか、お金を使ったことも、見たことさえもそんなにない。欲しいものを言えば貰えたし、食べたいものも、行きたいところも、言うだけで全て現実になった。そのためにお金が使われていると頭でわかってはいても、実感がないのだ。だから金に困るということなど想像もできない。


「でもその辺は人生ゲームを通して学べたのではないのか!?」


 ビシッという効果音を自分の口で言いながら、発言の矛盾を暴いたヒメがリンコを指差す。


「えーっと、これはゲームですので」


 そう、どれだけ優れていても人生ゲームはゲームなのだ。世界中の人間が熱中するゲームの王であったとしても、それは覆すことのできない事実。だから人生ゲームで金の大切さを実感できることはなかった。ゲームだから。


「ゲーム。確かに。どうやらうまい逃げ道を要していたようじゃ」


 悔しそうにしているヒメを見ながら、『そりゃそうだろ』と全員が思っていた。


「というか相続者が次々死んでいて、もしこれが殺人で、犯人がいるとしても、もう相続者は残り8人。一人分の相続額は25億円。本家は100億、ウチと響度家も50億円ずつ。犯人にとってこれ以上人を殺す意味なんてあるのかしら。犯人がいた場合だけど」


 チカゲの言うことはもっともなように聞こえるが、それを言い出すのは少し遅い。


「遺産の取り分を増やしたいだけならここまでやる必要はないじゃろ。確かに最初は多すぎるから少し減らそうと考えたのかとも思ったが、やりすぎじゃ。割にあっておらん。人を殺すにはリスクが付きまとう。捕まってしまえば相続額は0になってしまうんじゃから。金目当てでやってるんだとしたらバカすぎる」


「200億円が絶対必要なのかもしれないぜ?」


 このまま医者になるか、俳優にチャレンジして一攫千金を狙うかを悩みながらナキが言う。


「普通に生きてて200億も必要になる事態など起こらん。会社が倒産寸前とかならあり得るかも知らんが、調べてみたら経営はすこぶる良好、ニコニコ黒字経営じゃ」


 ちなみに死児間家が経営している会社は『シジマ醤油』。国内シェアの20%を占める大手醤油メーカーである。その歴史は100年以上。日本人の嗜好が大幅に変化しない限り倒産することはないだろう。


「じゃあ犯人の目的は金じゃないって言うのか?」

 

 ナキは俳優に挑戦することに決めたようだ。俳優の職業カードを手にしている。


「そうじゃな。金というより執念のようなものを感じる。誰にも遺産はやらんというな」


「欲しいじゃなく、渡したくないってことか」


「犯人の動機がそっちなら、ここまでの数を殺すのも頷ける」


「いや、頷けはしないでしょ!」


 最後にミサキのツッコミを受けたが、ヒメとナキのやり取りは案外核心をついているように思え、チカゲは少し考え込む。


「ゴールですわ。最終総資産額は200億円ですわ!」


 それはさておき、人生ゲームはリンコの圧勝で終わった。2位のナキに200億円差近くつける大圧勝であった。


「ちくしょー!!!」


 ヒメは地面を叩きながら悔しがった。4位のくせに、一丁前に悔しがっていた。


「ちくしょー!!!」


「きゃー!!!」


 ヒメのちくしょー!にかき消されそうだったが、うっすらと悲鳴が聞こえた。


「悲鳴が聞こえなかったか?」


「ちくしょー!!!」


「・・・様ー!!!」


 誰かの名前を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、またしてもヒメのちくしょー!によってかき消された。マジで迷惑なちくしょー!だ。


「いい加減黙れ」


「ちく・・むぐ」


 ヒメの口を抑えて4発目のちくしょー!を阻止するナキ。


「オウシュン様ー!!!」


 やっと聞こえた声はお手伝いさんのもの。1階からだ。


「事件じゃ!」


 ヒメは飛び上がって駆け出した。

読んでくださってありがとうございます。


引き続きよろしくお願いします。

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