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超常専門(超不本意)探偵アクトヒメ  作者: 血湧湧
八百墓村殺人事件
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7/17

八百墓村殺人事件4

 ミサキ、ヒメ、ナキはお手伝いさんに部屋へ案内される。人が死に過ぎて空き部屋が多くなったらしく、一人一部屋与えられた。


 この本家にはちょっとした旅館ぐらいの客室が備えられている。


 2階に8部屋、3階に8部屋、燃えた離れの1階に3部屋、2階に5部屋で計24部屋。


 本妻とその子供を引いた遺産相続者の数も24人。まるでこの遺産相続の舞台のために作られているかのようで、気味が悪いが、これ以上考え事を増やしたくないミサキは考えないようにした。


「おかしいじゃろ。この部屋の数。遺産相続者達を集めるために作られてるようじゃ。てかこの屋敷っていつ作られたんじゃ?」


「8年前らしいな。さっきお手伝いさんに聞いた」


 だがヒメとナキはグイグイ考えていく。こういうのは大好物だ。


 というか一人一部屋与えられたのに、ヒメとナキは当たり前のようにミサキの部屋に集合していた。


「8年前には28人の遺産相続者は出揃っとる。つまりあれか。8年前にもう増えないと分かったのかのう」


「この屋敷が建てられる前に、死児間リンドウは病気で手術をしたらしいぜ。これもお手伝いさんが言ってた」


「人の口に戸は立てられんとは言うが、ここのお手伝いさんはセキュリティガバガバじゃな。戸が立たんどころかバリアフリーまで施されとるようじゃ」


「で、その手術でもう子供を作れなくなったんだとしたら、この屋敷は本当に遺産相続騒動のために作られたことになるかもな」


「それならしっくりくるのう」


 ヒメとナキはとても楽しそうにしている。


「でもそんなやる気満々で遺産相続の準備する人なんていますか?自分の死んだ後の話なのに」


 逆にミサキはこの不気味な遺産相続争いに不快感を示した。


「兎にも角にもやっと事件は始まった。プロローグの段階で人が死に過ぎて不安になったが、気を取り直してくのじゃ」


「本当、相続者が死ぬスピードが早過ぎて心配したわ」


 ここだけの話、本当に二人は心配していた。久しぶりにちゃんと推理ができそうな事件なのに、ちゃんと事件になる前に終わりそうでヒヤヒヤしていたのだ。


「とりあえずチカゲに聞いた、今回の容疑者と部屋割りについてまとめておくぞ」


 ヒメはテーブルに紙を広げて今回の事件について書き始める。



死児間オウラン 54歳 本妻

死児間オウシュン 32歳 長男 次期社長

死児間オウセン 28歳 次男 会社役員

死児間リンコ 23歳 長女 家事手伝い

響度サユリ 56歳 妾

響度ショウゴ 34歳 庶子 フリーター

井上チカゲ 42歳 現地妻 水商売

生氷ミサキ 20歳 隠し子 大学生

菱柳ナキ 26歳 独身 最終学歴短大中退

阿久斗ヒメ 数千歳



母屋

1階 死児間オウラン、死児間オウシュン、死児間オウセン、死児間リンコ

2階 201号室 響度サユリ、202号室 響度ショウゴ

3階 301号室 井上チカゲ(withドウジ)、302号室 生氷ミサキ、303号室 阿久斗ヒメ、304号室 菱柳ナキ


離れ全焼



「まあこんな感じじゃな」


「いいね。殺人事件っぽくなってきた」


「あのー、楽しそうなとこすみませんけど、お腹空いたんで台所にご飯もらいに行きませんか?」

 

 ・・・


 流れる沈黙。


「うむ、続きは夕飯を食べながら話すとしようかのう」


「そうだな。お手伝いさんにも話聞けるし」


「早く行きましょ」


 殺人事件より団子。みんなお腹が空いていたのだ。

 


「ご主人様は金持ちのくせにケチな人でね。私がもう少しいい洗剤が欲しいと言ったら、高い洗剤買うぐらいなら汚くていいって言ったのよ。たった100円高いだけで」


「いやまだ何も聞いてないんじゃが」


 台所に着いた途端、いきなりお手伝いさんがペラペラ喋り出した。


「すごいだろ、ここのお手伝いさん」


「セキュリティーが緩いどころか、壊れた蛇口じゃな」


「あの、お手伝いさん?」


 ミサキが恐る恐るお手伝いさんの顔を覗き込むが、その目は虚空を見つめていた。そして大きく息を吸い込み一気に話し始めたのだ。


「奥様は自分より先に旦那様の子供を産んだサユリさんが嫌いなのよ。サユリさんはサユリさんで自分の方が本妻になるべきだったって奥様を嫌ってる。次期社長は旦那様の本当の長男ショウゴさんにってサユリさんは思ってたんだけど、ショウゴさんの出来が悪くてねぇ。引きこもりって言うの?働きもせずに家にこもってて、人ともうまく話せない。それに比べてオウシュンさんは仕事ができて、社員からの信頼も厚い。どちらが跡取りかなんて火を見るより明らかよ。弟のオウセンさんもやればできるみたいなんだけど、仕事よりも遊びに夢中で、放蕩息子って感じね。リンコさんは気の弱い子でね。いつもオウシュンさんの側にいるわ。オウセンさんと話しているところは見たことないから、そっちとはあまり仲が良くないんじゃないかしら。ちなみに私はここで働き始めて38年。旦那様と奥様が結婚する前からいるの。死児間家については一番詳しいと言っても過言ではないわね」


 死児間家のお手伝いさんこと、石山キヨミは、一切つまづくことなくスラスラと長台詞を言い切った。


「わしが間違っておった。このお手伝いさんには蛇口なんて無粋なものはなかった。滝じゃ。遮る物などなくなだれ込んでくる」


「落語でも聞いてるんじゃないかってぐらいスラスラと話しきったな。あまりにも綺麗で内容が全然入ってこなかった。まるで歌のようだった」


 キヨミの長台詞に感心する2人。


「犯人はサユリさんね」


 最後にキヨミはとんでもないことを言った。


「な、何でですか?」


 驚いてミサキは理由を聞く。


「一番悪そうな顔してるじゃない」


「理由がグラフェンくらい薄い!薄過ぎて目眩がしたのじゃ!」


 死児間家について知り尽くしているのに、その理由はグラフェン(炭素原子の層1枚のみで構成される素材で、原子1つ分の厚みしかない)ぐらい薄かった。


「私のお母さん、井上チカゲさんについては知らないんですか?」


「チカゲさんね。この家に来たことはなかったからよく知らないわね。でもチカゲさんが街の方でやっているお店に旦那様はお亡くなりになる寸前まで欠かさず通っていたみたいよ。週3日ぐらいで」


 ここで言う街とは八百墓村からバスで40分ほどの大平駅前である。


 チカゲは大平駅前で10年前からスナックをやっていて、リンドウも足繁く通っていたらしい。というかこの店自体リンドウの援助によって始めたものだという。


「案外仲が良かったようじゃのう、お主の産みの両親は。両親だけで」


「なのに二人とも娘に会おうとはしなかったんだから、本当に邪魔だったんだな」


 この二人にデリカシーというものはないのか。むしろわざとやっているのではないか。デリカシーを恥ずかしいものだとでも思っているのではないかと疑りたくなるほどである。


「私の新しい生活を邪魔したくなかったのでは?」


「そういう慰めは他人から言われて成り立つものじゃぞ」


 生みの親の心境をせっかくポジティブに捉えそうとした矢先、辛辣な幼女の一言で再び地獄に突き落とされるミサキ。


「とりあえずキヨミさん、夕飯が欲しいんですけど」


「チカゲさんも怪しいわね。今まで会ったこともなかった娘を遺産相続用人として恥ずかしげもなく呼ぶあたり、相続意欲はトップクラスかもね。鍋にカレーが入ってるから自分でよそって食べな」


 その後もキヨミの話は、死児間家について隅々まで、どうでもいいことがほとんどだったが、3人がカレーを食べ終わっても止まることなく続いた。


 終わりそうもなかったので、3人はそそくさと台所を後にする。3人が台所を出た後もしばらくキヨミの声は響いていた。

 


「リンドウってドラクエより FF派だったんだな」


「オウランはランドよりシー派とはのう」


 部屋ミサキのに戻ってきた二人はキヨミに聞いた死児間家情報を整理していた。


「そんなことよりもう寝ません?っていうか部屋戻ってもらえません?」


 時刻は0時12分。朝早くから電車&バスに揺られて八百墓村までやってきたミサキにとってはもうかなり眠い時間だ。


「おいおい、ミサキ。飯食ったんだからこれからUNOだろ」


「ミサキよ、0時を回ったのならここからは人生ゲームの時間じゃろう」


 ナキはポケットからUNOを、ヒメは懐から人生ゲームを取り出す。


「「「え?」」」


 三者三様の「え?」である。


 まず「何で今から遊ばなきゃいけないんですか!寝ましょうよ!」のミサキ。 


 「夜中に遊ぶならUNOに決まってるだろう!100歩譲っても大富豪だろう!」のナキ。


 「今の時代カードゲームよりボードゲームじゃろ!というか遺産相続やってるんだから人生ゲームがしっくりくるじゃろう!きまくりじゃろう!」のヒメ。


 寝る、UNO、人生で小一時間ほど揉めたあと、結局何もできず、ただ無意味に睡眠時間を削ったのちに、彼らは疲れて寝てしまうのだった。


読んでくださってありがとうございます。


次回からいよいよ事件が始まります!

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