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超常専門(超不本意)探偵アクトヒメ  作者: 血湧湧
八百墓村殺人事件
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八百墓村殺人事件3

「本家遠くない?」


 死児間本家へ向かう途中でヒメが文句を言い出す。まあそれもそのはず。死児間本家は高い丘の上に建てられていて、麓から階段が作られているが、かなりの段数を登らなくてはいけない。


 その段数はちょっとした修行レベルなのである。


「遠いわよ。でも登らなきゃ着かないんだから、黙って登って」


 チカゲは死児間家に来てから何度もこの階段を登ったのだろう。とっくに諦めている。


「バカと金持ちは高いところが好きってことだろ」


 ナキも息を切らせながら、苦し紛れの嫌味を吐き出す。


「でも自然に囲まれてるんで、森林浴って感じで気持ち良くないですか?運動にもなりますし」


「「「・・・」」」


 ミサキはすごく前向きな発言をしたが、全員に無視された。疲れている時の正論はイラッとくるのである。


「ぐびぐび」


 ドウジはスタスタ登りながら、息も切らさず、生ビールをごくごく飲んでいる。階段を登りながら缶ビールを飲むのって難しくない?と思われそうだし、その通りなのだが、ドウジはうまいこと飲んでいる。あまりにもうまいこと飲んでいるので、重力とか操ってるの?と思ってしまいそうだ。

 

・・・


 ん?操ってるのか?重力。


 妖怪なのだから本当に重力とかを操っているのかもしれないが、それに関しては今の段階ではわからない。


「はぁはぁはぁ、やっと半分ってとこかのう」


 息を切らしながらみんなで死児間本家へと登っている、その瞬間だった。


 ドン!


 大きな爆発音が鳴り響く。そして爆発音の元、死児間本家を見ると盛大な炎が上がっていたのである。


『はぁ?』


 5人とも同じ言葉が頭に鳴り響いた。喋り方、キャラ関係なく『はぁ?』である。


 一生懸命階段を登っているところで、いきなり目的地が爆発したのだ。『はぁ?』以外の何ものでもないだろう。


「死児間家で爆発じゃ!急ぐぞ!」


 ここはさすが年の功。ヒメが真っ先に『はぁ?』から立ち直る。


「離れが燃えてる。あそこにも遺産相続者が寝泊まりしていたわね」


 一番後ろでチカゲは綺麗とでも言いたそうに、燃え盛る炎を眺めていた。



 離れの火が鎮火され、警察からの事情聴取や、捜査がひと段落したのは完全に夜になった22時ごろであった。


 離れはほぼ全壊。爆破時、離れにいたのは8人の遺産相続者。彼らは全員死亡。爆発の原因も不明。これが警察から知らされたことである。


 死児間家で約2時間のインターバルを挟んで起きた二つの事件、集団不審死と爆破。流石にやばすぎる事態ということで、事件解決までの間、警察も死児間本家に滞在することになった。


 そして死児間本家に到着してから数時間、やっとミサキたちと死児間家の面々の顔合わせが行われる。


 顔合わせが行われる本堂は、赤と金を基調に作られた和洋折衷な広間であり、辛辣にいえば派手すぎて品がないデザインだった。


 そこに今のところ生き残っている相続者たちが集まっている。


 本堂の奥、ミサキたち(ヒメとナキはミサキの後ろに控えている)から見て正面、まるで玉座のような座布団に座っているのが、死児間リンドウの正妻、死児間オウラン。オウランの両脇、左大臣右大臣のように陣取っているのが長男オウシュン、次男オウセン。オウシュンのすぐ横にぴったりくっついて座っているのが長女リンコだ。


(今のところ一番怪しいのがこの本妻チームじゃな)

 

 これがヒメの第一印象だ。


「ミサキさんはチカゲさんの娘さんということよね」


 まずはオウランが口を開いた。高そうな和服に身を包んだ50代ぐらいの美しい女性。歳をとっているのはわかるが、それでもその美しさが損なわれることはなく、その老いさえ着飾るかのように、上品だった。


「親子共々お世話になります」


 チカゲは頭を下げる。


「そしてそちらのお二人は?」


 オウランがヒメとナキの方へと視線を向ける。ドウジはいつの間にか姿を消していた。


「彼らは私が雇った探偵たちです。あの、死んだ人もいるって聞いて、不安だったんで付いてきてもらったんです」


「アクト探偵事務所所長の阿久斗ヒメじゃ。しばらく世話になる」


 ヒメがいつもとは打って変わって上品に礼をする。


 だが特に意味はないだろう。なんとなくやってみた。それだけのはずだ。


「助手のナキでーす」


 ナキはいつも通り適当に挨拶した。


「・・・まあいいですわ。部屋も余ってしまいましたし、好きに泊まって行って構いません」


 オウランは少し考えたがヒメとナキを受け入れた。


「相続者でもない人を泊まらせていいの?オウランさん」


 ミサキたちの右側に座っていた女性が不満そうな声を上げる。彼女は響度ひびきどサユリ。死児間リンドウの不倫相手の一人で、隣には息子のショウゴが座っている。ちなみにショウゴは死児間リンドウ最初の子供でもある。


 オウランと結婚してからもしばらく子宝に恵まれなかったリンドウは、先に不倫相手のサユリと子供を作ってしまったのだ。


 だからオウランとサユリの付き合いは長い。


 というかオウランにとってはちゃんと把握していた唯一の不倫相手と言ってもいい。


「今回の相続において、関係のない人間を連れてきてはいけないという決まりはありません。それでも普段だったら見知らぬ人間を屋敷に泊める事はしませんが、これだけの人が死んでるのです。自衛のために人を連れてきても、私にはもう何も言えません」


 オウランの顔は憔悴しきっていた。そりゃそうだろう。ただでさえよくわからない遺言のせいで、不倫相手と隠し子が片っ端からやってきて、それだけで死にたくなりそうだったのに、自分ではなく周りがどんどん死んでいくのだから。


「まあいいわ。今、この家の長はオウランさんなんだから。じゃあ行くわよ、ショウゴ」

「う、うん」


 気の強そうな母親と暗くて大人しそうな息子。二人のイメージはそんな感じ。見た目はケバいババアと太ったおっさんといった感じだ。二人は一番最初に立ち上がり本堂を後にしていった。


「ミサキさん、一応兄ということになる。ここにいる間はよろしく」


 響度親子がいなくなったのを確認してから、長男オウシュンが口を開いた。


「は、はい!よ、よろしくお願いします!」


 思ったより友好的な言葉に、むしろミサキはあたふたした。オウシュンはがっしりとした体格の強面な男だったから余計に、出てきた言葉とのギャップに面食らったのかもしれない。


「母さん、俺も部屋に戻るぜ」


 次に立ち上がったのはオウセン。兄とは違って細身でやる気のない目をした男。母親の返事を聞く前にとっとと出て行ってしまった。


「では今日はここまでにしましょう。お手伝いさんが台所にいるので、言えば料理をしてくれます。それで今日の夕飯は各々どうにかしてください。食堂でみんな揃ってという気にはなれないでしょう。今日は」


 そう言ってオウランも立ち上がる。続いてオウシュン、リンコも出ていった。リンコは最後まで一言も話さず、オウシュンの横にくっついたままだった。


「私も部屋に戻るわ。また明日ね」


 チカゲが立ち上がるといつの間にかその横にドウジも立っていた。立って酒を飲んでいた。


 この日は一旦ここまで。


 今日はみんなもう疲れ切っていたのだ。なんたっていきなり5人死んだかと思ったら、離れ爆破されてさらに8人死んだのだから。


読んでくださってありがとうございます。


引き続きよろしくお願いします。

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