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超常専門(超不本意)探偵アクトヒメ  作者: 血湧湧
八百墓村殺人事件
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10/17

八百墓村殺人事件7

 人生ゲームチームはミサキの部屋に戻っていた。響度親子は最後まで現れず、オウシュンは泣きじゃくるオウランを部屋へと連れて行った。リンコもそっちに行くのかと思いきや、こちらに来ていた。


「なんか大変なことになっちゃったわねぇ」


 そしてキヨミも来ていた。


「というかリンコは兄が死んだのに普通すぎんか?」


 ヒメが疑問を投げかける。これはみんなが思っていたが、なんとなく怖くて聞けなかったことだ。


「オウセンは女好きなチャラ男で、それだけならまだゴミと同レベルには見てあげられたんですが、あの男、私のこともいやらしい目で見てくるんですの。ワザとらしく私の体に触れてくることも多々ありました。そんな時に私を守ってくれたのがオウシュンお兄様でした。でもそれがきっかけで私は男性恐怖症に。オウシュンお兄様と、一緒に人生ゲームをやってくれる男性以外と話すと発作が起こるようになったのです。だから何年もの間、毎日オウセンの死を祈っておりました。だから今日は長年の望みが叶った記念日といえます。苦しみに歪んだ死に顔が見れなかったことが残念だったぐらいです」


 淡々と語ってはいるが、リンコからは憎悪と嫌悪、そして喜びといった感情が伝わってきた。


「なるほど。それはキモいのう。ゲロゲロじゃ」


「マジキモいのです。ゲロゲロです」


「お主以外の家族はオウセンとはどんな感じだったんじゃ?」


「お母様は子供を全力で愛してくれていますので、あの汚物のことも愛していましたわ。オウシュン兄様も同じです。汚物であっても血を分けた兄弟だということで大事になさってました。むしろオウセンの方がお兄様をよく思っていませんでしたね。一丁前に完全無欠のお兄様に嫉妬しているようでした」


「出来のいい兄弟をもったら、服従か敵対の二択しかないからのう。兄弟というのもまた呪いの一つじゃ」


 ヒメは大人びた顔で意味ありげなことを言う。


 みんながなんとなく、どう言う意味なんだろうとか少し考える中、そんな空気お構いなしで、ぶち壊してくる男が1人。


 いつもヒメと一緒にいて、こういう雰囲気に慣れていて、考えたって意味がないことがわかっている男、ナキである。


「そんなことより今は犯人探しだろ!とりあえずここで人生ゲームをしていた俺たち以外にアリバイはないんだから、容疑者はオウラン、オウシュン、サユリ、ショウゴってことになるよな」


「これだけの騒ぎになってるのに、最後まで現れなかった響度親子が気になりますね」


 ミサキも推理に加わる。


「そもそもなんで燃やす必要があったんだ?」


「あえて目立つように殺したんじゃないですか?」


 ミサキが何かを閃く。


「なんでだ?」


「アリバイをなんか、、、すごいことにするとか?」


 いや、やっぱり何も閃いてはいなかった。


「アリバイといっても、今回の殺人で完全に容疑から外れた人間はおらんぞ」


 アリバイについてヒメが口を挟む。


「私たち人生ゲーム組にはアリバイがあるんだから、不可能じゃない?」


 みんなが思ったことをチカゲが言ってくれた。キヨミが叫び声を上げた時には人生ゲームをやっていたんだから犯行は不可能。ちなみに人生ゲーム中にトイレなどで中座した人もいなかった。


「誰かわからないぐらいに燃え焦げておったのじゃ。火をつけてから発見されるまで相当時間が経っておる。朝食を終えたワシらは人生ゲームの前に一回自室に戻っておるから、その時にオウセンを殺して火をつけておけばよい。つまり全員に可能ということじゃ」


「でも朝食後は私、後片付けのために台所にいたわよ」


「え?」


 ここでもキヨミがヒメの推理に立ち塞がる。


 もはやヒメの天敵と言ってもいい。


「台所にはいつまでいたのじゃ?」


「そうねぇ。1時間ぐらいかしら。朝食の後片付けだけじゃなくて、昼食の下ごしらえもしていたから。ちなみに昼食はチキン南蛮よ!楽しみにしておきなさい!」


 焼き焦げた人間を見た後に昼食を楽しみにできる人間がいるはずがない。キヨミは間違いなくサイコパスの類いだろう。


 そしてキヨミの話はまだまだ続く。


「終わった後は、タバコを吸いに中庭に出たわ。といってもアイコスだからライターは持ってない。死体に火をつけたりはできないわよ。中庭もちゃんと喫煙所として開放されているから問題なし。そこで3本くらいかしらね。ゆっくり時間をかけて吸ってたの。今日って天気が良くて綺麗な青空でしょ。こういうときって思い出しちゃうのよね。まだ何者でもなかった頃の自分を。夢と恋を天秤にかけて、結局両方失ってしまったあの夏を。そんな感じで30分ぐらいかけてタバコを吸った後」


「台所に戻ったのじゃな?」


「いや、ちょっとトイレに寄って、そこで、あれ?もしかして今日ってワイドショーにデンスケ(テレビばっか出て本業が疎かになっている落語家)が出るんじゃない?と思って本堂にテレビを見に行ったのよ。こう見えて私、デンスケのファンなの。あの芸能界で生き抜くためならなんでもしてやるっていうプライドのなさが好きなのよ。なんだけどテレビをつけてみたら出てたのは兄弟子のノリスケ。デンスケが出るのは来週ですって。もう失礼しちゃうわってな具合で、もう一本タバコを吸いに行って、そして戻ってきたらオウセン様が燃えてたってわけ」


「やっと戻ってきたか。もう一生戻ってこないかとヒヤヒヤしたぞ。で、結局台所を空けていた時間はどれぐらいなのじゃ?」


「1時間はいってないわね。45分てところじゃないかしら」


「なるほどのう。45分もあればやりたい放題。もはや台所は無法地帯と化しておったじゃろう。でもワシら人生ゲーム組のアリバイは証明されたようじゃ」


 犯行可能な45分間は全員一緒にいたのだから人生ゲーム組は容疑者から外れた。


「じゃあやっぱり犯人は死児間オウラン、オウシュン、響度サユリ、ショウゴの誰かってことだな」


「いや、犯人はキヨミで、今言ってた話は全部嘘という可能性もある。ちなみにワシはこの説が一番有力だと思っておる」


 ヒメはどうしてもキヨミ犯人説を諦めきれない。というかキヨミを倒したい。


「ちょっとやめてよ、お嬢ちゃん。私、お手伝いさんよ?金田一で言うところの、毎回話が始まる時にバンって映し出される容疑者一覧にすら入らないモブよ」


 またまたぁと言った感じでキヨミが笑いながら言う。


 かなりの余裕である。


 目の前で殺人事件が起こり、その容疑者にされそうな人間の態度ではない。やはりこの石山キヨミという女性はまともではない。


 人でありながら、人としての何かを失った化け物である。


「じゃあ一応キヨミも犯人候補に入れとくか」


 ナキの一声で、キヨミはモブから昇格した。


「ん?」


 そこでヒメが何かを思い出す。


「キヨミ、さっき今日の昼食はチキン南蛮だと言ったのう?」


「ええ、そうよ」


「じゃあなぜ冷蔵庫にはマヨネーズが入っておらんかったのじゃ?」


 チキン南蛮の主役はタルタルソース、そしてタルタルソースの主役といえばマヨネーズである。マヨネーズなしでチキン南蛮を作るなんて夢物語だ。


 最初にキヨミが犯人だという推理が崩されたとき、ヒメはやけになって冷蔵庫のヤクルトを一気飲みしたが、その時、冷蔵庫の中にマヨネーズがないことを確認していた。


「う、うそよ!そんなはずないわ!タバコを吸いにいく前に確認した時はちゃんとあったもの!なんなら死児間家の冷蔵庫には常にマヨネーズが3本入ってる!1本もないなんてこと絶対にありえないわ!」


 キヨミが大声を上げる。初めてキヨミが本気で動揺している。


「いや間違いない。冷蔵庫にマヨネーズはなかった」


「うそよ、うそよ、うそよ、うそよ、うそよ、うそよ」


 頭を抱えてブツブツ言い出すキヨミ。


「それはそうとなぜ死児間家の冷蔵庫にはマヨネーズが常に3本も入っておるのじゃ?毎日チキン南蛮を作るとしてもそんなにいらんじゃろ」


 ヒメの疑問はもっともだ。マヨネーズが冷蔵庫に3本も入っているところなんてチキン南蛮専門店ぐらいなモノだろう。


「オウセン様が食べるのよ」


 絞り出すような声でキヨミが言う。


「どういうことじゃ?」


「オウセン様はマヨラーなのよ。いや、マヨラーなんて生易しいモノじゃない。あれはマヨネーズの権化よ。暇があれば台所にマヨネーズを吸いにくるのよ。どんなにお腹がいっぱいでもマヨネーズは別腹ってな具合で。きっと私がいない間にマヨネーズを全部吸ってしまったんだわ。祟りだったのよ!マヨネーズの祟りにオウセン様は殺されたんだわ!」


 恐怖に震えながらキヨミが叫ぶ。


「マヨネーズ、祟り、、、」


 ヒメが眉間に人差し指を当てて考え出す。これはヒメが推理に没頭するときのポーズだ。


「いやいやいや!マヨネーズで推理モードに入られても!」


 ナキから的確なツッコミが飛ぶ。


「とりあえずお茶にしませんか?いろんなことが起こりすぎたから、少し落ち着きたいです」


「それもそうだな」


 勝手に盛り上がっているキヨミとヒメは放っておいて、ミサキは他のみんなにお茶を入れる。


 みんなで穏やかにお茶を味わっているところで警察からお呼びがかかる。


「みなさん!一人ずつ犯行時刻に何をしていたのか、お聞かせください」


 ここからは一人ずつ別室で事情聴取だ。といってもわかることなどさほどないように思えるが。


「はいはい!ワシが行く!一番乗りじゃ!」


 何が楽しいのか。さっきまで考え込んでいたヒメがいきなり元気になって駆け出して行く。


 2階の空き部屋、扉を開けると2人の警察官がヒメを待っていた。一人はこの屋敷でよく見た中年の男。おそらく屋敷に待機している警官たちのリーダーだった男。だが今は少し違うようだ。なぜかといえばその横に座っている、もう少し若い30代中盤ぐらいの男の方が偉そうにしているからだ。


 無精髭に、鋭い目。他の警官とは雰囲気が違う。


「お主が今回の事件の警察役か。やっとキャラの立ったやつが来て嬉しいぞ」


 小さいヒメができる限りふんぞり返って、新キャラ警察を一生懸命見下ろす。


「お前が相続者に雇われたちびっ子探偵か」


 新キャラ警察もヒメを睨みつけた。


「その通り。ワシがアクト探偵事務所所長、阿久斗ヒメ。名探偵じゃ」


「そうか。俺は警視庁刑事部捜査一課、木暮イゾウ。警部だ」

 この出会いは長い因縁の始まりになるだろうと互いに確信していた。探偵と警察。ライバルになる二人が今まさに出会ったのである。


「あの、黙って見つめ合ってないで、さっさと事情聴取始めますよ」


 運命的なものを感じていたのは当事者の二人だけで、周りの人間からしたら無駄に時間をとっているめんどくさい二人であった。


 ヒメはそんな空気感を察して、大人しく席に座る。そして事情聴取は始まった。


「阿久斗ヒメ、お前は9時から11時の間は何をしていた?」


「一度自分の部屋に戻った後、生氷ミサキの部屋に行ってみんなで人生ゲームをやっておったな」


「部屋に戻ってから生氷さんの部屋に行くまでの時間は?」


「5分から10分といったところかの」


「その間、自分の部屋にいたということを証明できる人は?」


「おらんのう」


「それではお前のアリバイはー


「そういえばさっきお手伝いさんの石山キヨミが言っておったのじゃがー


 木暮警部がお前のアリバイはないと言おうとしたところで、ヒメはさっきキヨミから聞いた話を伝える。


「ああ、そう」


 すごく残念そうな顔をする木暮警部。それもそのはずだ。


 『じゃあお前にアリバイはないということだな』と、ライバルに向けてニヤリとやってやるはずだったのが、こんな不完全燃焼で終わるとは。


「その気持ちわかるぞ」


 ヒメは木暮警部の肩に手を置く。まさに少し前の自分を見ているようだった。


 少しだけヒメに甘えた木暮警部は気を取り直す。


「オーケー。十分だ。もう戻っていいぞ」


「警察側で何か掴んでおることはあるのか?」


「教えるかよ!と言いたいところだが、なにもわかってねーよ。全く、訳のわからねー事件だぜ」


「それについては同感じゃ」


 ヒメが部屋に戻ってから、キヨミ、ナキ、ミサキ、チカゲ、リンコの順で事情聴取がされていった。聞かれたことはキヨミ以外は大体同じ。


 これで少なくともオウセン殺害容疑からは、キヨミ以外全員外れた。


「うーん、推理が行き詰まっておる!こういう時は気分転換じゃ!町に繰り出すぞ!」


 ここでヒメは流れを変えるために外に出ることを選択。


「繰り出すほどの町ではねーけどな」


 ヒメはナキ、ミサキを連れて八百墓村のメインストリートへと繰り出すのであった。

読んでくださってありがとうございます。


引き続きよろしくお願いします。

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