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超常専門(超不本意)探偵アクトヒメ  作者: 血湧湧
八百墓村殺人事件
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3/17

アクト探偵事務所の日常

 ここは阿久斗探偵事務所。東京都豊島区にある雑居ビル3階。


「やはり推理ものにおいて超常的なものが登場するのは反則だと思うわけよ。人間同士というフェアな条件下で、犯人は知恵を駆使して周囲を欺き、探偵は知恵を駆使してそれを暴く。こういう知能戦が醍醐味なわけじゃん。密室トリックが瞬間移動って拍子抜けもいいとこだし、これが推理小説だったら読者から殺人予告が届くレベルだぞ」


 前回の事件「人喰い館殺人事件」にまだ納得いっていないナキが文句を言っている。推理もの好きのナキからしたら苦情を言わずにはいられないほどの解決編だったのだろう。


「だって瞬間移動だったんじゃからしょうがないじゃろーが!ヒポポメテスだったんだもん!それが真実なんだもん!それしかなかったんだもん!」


 ヒメは拗ねた。


 もちろんヒメの意見もわかる。彼女にはどうしようもなかった。彼女だって推理ものを舐めているわけではない。だがこの事件においてはアレが真相だったのだ。


「なんでいつも犯人が人外なんだよ」


「ワシらが人外だからかのう。類は友を呼ぶ的な」


 ヒメの言うとおりであれば、彼らがまともな事件にありつく事は永遠にないだろう。


「前の『なまはげ伝説殺人事件』の時の犯人も酷かったな。何だっけ?」


 ナキは数ヶ月前にヒメが解決した事件を思い出して嫌そうな顔をする。


「妖怪『尻子吸い(しりこずい)』じゃな。尻の穴から魂を吸い出す恐ろしい妖怪じゃ」


「そう、それ。外傷がなく、毒物反応も出ない死体にみんなが頭を抱えていたら、ケツから魂を吸い出してたって!そもそも殺人事件で魂とかいう要素入れ出したら終わりだろ!」


 確かに魂を抜かれるという殺人方法があるなら、検死は無意味、鑑識なんて何の意味もなくなってしまう。というかこの時はそうなっていた。鑑識は涙目であった。


「でも手強かったろ!尻子吸い!魂を抜くだけでなく、体を霧状にすることもできて!あれはかなり手に汗握る名勝負だったはずじゃ!」


「そう!前回の密室トリックも、その体を霧状にするって能力で解決してたよな!もう密室やめてくんね?密室が汚れる!」


 ナキは更に嫌なことを思い出したようだ。


「うるさい!それが真実なのじゃ!ワシ何にも悪くないもん!そんなに密室トリックが好きなら毛利探偵事務所の子になればいいじゃない!ワシもう知らん!」


 ついにヒメはヘソを曲げてしまう。


 とまあこんな感じの言い合いが、事件の後には常に行われている。それだけ彼らが解決する事件には常に人外が関わってくるということだ。類は友を呼ぶなんて生やさしい言葉では説明できないほどに必ず。これはどちらかというと呪いに近い。いや、思いっきり呪いなのだろう。


「それはそうとさっきからそこでお茶飲んでる婆さんは誰だ?」


 ナキが指差した先には、ソファの上に正座し、どこから出してきたかわからないから、おそらく自分の家から持ってきたであろう湯呑みを啜るお婆さんがいた。


「その婆さんはユミちゃんじゃ!このビルのオーナーじゃぞ!敬うがよい」


 なぜかヒメが偉そうにふんぞりかえる。


「そうなんだ。会ったことなかったから知らなかったわ。すいません。婆さん呼びしてしまって」


 相手がオーナーということでナキはひとまず謝った。


「で、ユミちゃんは一体なぜそこにおるのじゃ?」


「それはお前も知らないのかよ」


 また一口ゆっくりお茶を飲むと、ユミちゃんこと、早乙女ユミコ(78歳)は遂に口を開いた。


「阿久斗ヒメさん、家賃が滞っております。2ヶ月分」


「そうじゃったっけ?」


 ヒメはあっけらかんとしている。


「何度も手紙を送っていたのですが、何の返答もない。というわけで未納分の80万円と今月分の40万円。合わせて120万円を今月までにお支払いいただけなければ、即刻退去していただきます」


「な、なんじゃとー!」


 突然の退去宣告に、ヒメは驚きのあまり固まった。


「というわけなんでよろしく」


 そう言うと湯呑みを持ったまま早乙女ユミコ(78歳)は事務所を出て行った。


「気をつけて」


 ナキはオーナーを見送ると、固まっているヒメの頬をペチペチ叩く。


「おい、どうするんだ?今月中に120万払わないと追い出されるって。そんでもって俺も先月の給料まだもらってないからそれも合わせて140万だな」


「やばい!今ワシには新しいゲーム機を買うための5万円しかない!」


「ひとまずゲーム機購入は延期しろよ。てかエスペシア星人の頭脳を使えば金なんていくらでも稼げるんじゃないのか?」


「確かにワシにかかれば今月中に1億稼ぐのも容易い」


「1億が容易いのかよ」


「だがそれではルール違反になる」


「ルール違反?」


「ワシはこの事務所を開いた時に、地球での生活で使う金はすべて探偵業で稼ぐと言う縛りプレイを自分に課したのじゃ!」


 ヒメは縛りプレイを課していた。


「つまり自分ルールってことだろ?なら破ったって誰にも怒られないんだから、さっさと1億稼げよ」


「ダメじゃ!自分で定めたルールだけは絶対に破ってはいかん!」


「何でだよ!」


「それじゃあつまらなくなってしまう」


「は!?」


 そう、エスペシア星人は自分に課したルールを破ることはない。エスペシア星人は優秀ゆえに何でもできてしまい、困難にぶち当たることがない。つまり退屈なのだ。


 だから縛りプレイを好む。


 この場合、ヒメが自分ルールを破り、探偵業以外でお金を稼いで家賃を払った場合、現在プレイ中の「地球で探偵王にワシはなる!」はゲームオーバーとなるのだ。


 それだけは絶対に嫌なヒメは決意する。


「月末まで残り30日!探偵業で140万稼いでみせるのじゃ!」


「・・・」


「腹の底から声を出して『おー!』と言わんか!」


「・・・おぉ〜」


 こうして阿久斗探偵事務所は、今までのような、依頼を待つだけスタンスをやめ、獣のように自ら依頼を獲りに行くスタイルに移行したのだった。


 まずヒメが着手したのは、SNSの充実化。今までの事件についてナキと語り合う「アクト探偵事務所の事件簿チャンネル」を動画投稿サイトに開設。ヒメの探偵コーデをファッション系SNSにアップしたりもした。


 これに伴って「阿久斗探偵事務所」から「アクト探偵事務所」へと表記を変更。


 ナキは今まで事務所でゴロゴロしていた時間をポスティング業務に充てることにした。


 そうこうしながら1週間が過ぎた頃、チャンネル登録者数が1000人を超えた頃、遂に依頼が入ったのだった。

読んでくださってありがとうございます。


次回こそはいよいよ事件が始まる!と思います。

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