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超常専門(超不本意)探偵アクトヒメ  作者: 血湧湧
八百墓村殺人事件
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八百墓村殺人事件12(解決編)

 本堂に集められた全員が息を呑んだ。


 それもそのはず。


 いきなりヒメが、「犯人はこの中にいる!」と言い切ったのだから。言い切ったし、指をビシッと指してポーズまで決めたのだから。


「探偵さんよ。お前はこの不可思議な事件の犯人がわかったって言うのか?」


 最初に口を開いたのは、木暮警部である。


「犯人だけではなく全てじゃ。この事件における全てがわかった。そしてそれを今から話してやるから大人しくしておけ」


 ヒメは全てと言い切る。


「犯人はこの中にいるってことは、俺たち家族の中に人殺しがいるということかい?」


 強めな口調で、少し怒り気味なオウシュンが言ってくる。


「この中にというかこの空間にと言った方が正しいが、お主の家族の中に人殺しがいるというのは間違っておらん」


 ヒメはまっすぐにオウシュンを見ながら再び言い切る。


「色々言いたいことがあるやつはいるだろうが、それはこいつの推理を聞いてからにしてくれ。ここにいるのはガキのような見た目をした、中身もガキなクソ幼女だが、今まで解決できなかった事件はない世紀の名探偵だ。だからここからの推理ショーを邪魔するやつがいたら、この俺が許さない」


 ナキがヒメの前に立って、全員に睨みを効かせる。


 それは睨みというか、獅子が獲物にぶつけるかのような、威圧であった。


「さあ、はじめろ。名探偵」


「まずは一つ目の謎からじゃ」


 ヒメの推理が始まる。



「今回の事件において動機を持っている人間は誰もいなかった。キヨミを疑った時期もあったが、相続者が全員死んだとしてもキヨミに相続権が移ることはない。つまりみんな、誰も殺したくなかったはずじゃ」


「それでも人は殺されまくった」


 木暮警部が付け足す。


「その通りじゃ。ではなぜ人は殺されたのか。今回の事件においての最終目標は相続者の全滅のように感じる。しかしそれによって得する人間はいない。まあ無理やり導き出すなら、国かのう。相続先を失った遺産はおそらく国に入るから。でも国が200億円程度のために、こんなに人を殺すか?あり得んのう」


「じゃあ犯人の目的は遺産じゃないってことか?」


「目的の根本はもちろん遺産じゃよ。じゃが遺産を得ることではない」


 ヒメはよくわからない言い回しをする。


「犯人の目的は遺産を得ることではなく、誰にも遺産を渡さないこと。だから殺すのじゃ。遺産相続権のある人間を全員。今日の12時までに」


 ヒメは時計を指差す。遺産相続確定まではあと3時間。


「残り時間も少なくなってきたし、最後はこの本家を爆破するつもりかもしれない」


 ヒメの言葉にみんなの背筋が凍る。


「安心せい。犯人がわかった以上、ここを爆破させたりはせん」


「それで犯人は一体誰なんだ!」


 痺れを切らした木暮がヒメに詰め寄る。


「誰にも遺産を渡したくなく、どこにでも神出鬼没に現れて、凶器も使わず人を切って刺して燃やせて、密室だってお構いなし。そんな存在はただ1人だけ。死児間リンドウ」


「は?リンドウはもう死んでるだろう!」


「の幽霊じゃ」


「「「「え?」」」」


 さっきまで張り詰めていた空気が一気に崩れ去る。


 全員がポカンとした顔をしている。


 いや、ナキはため息をついているようだ。


「探偵、お前一体何を言って、、、」


「幽霊は思念体であるから、距離とか関係なく一瞬で移動できるし、基本人には見えないので、目撃情報がないのも頷ける。そしてワシが犯人が幽霊であることを確信した大きな理由は二つ」


 まだ誰も話についてきていないが、お構いなしに、ヒメはビシッと指で2のポーズをとる。


「まず一つ目はオウセンの死体が燃やされていたことじゃ。普通なら燃やす意味などない。だが相手が幽霊となれば話は別じゃ。キヨミ!オウセンは重度のマヨラーだったそうじゃな」


「え、私!?えーっと、そうね。暇があればちゅーちゅーやってたわ」


 急にパスされたキヨミは驚いていたが、そこはさすが元劇団員、しっかりと自分の役目をこなす。


「幽霊というものは、死んでいるということで、生への執着が強くなる。要するに極度の健康志向になるのじゃ」


「「「「はぁ?」」」」


 みんな、こいつ何言ってるんだ?といった顔でヒメを見るが、そんなことで推理モードのヒメを止めることはできない。


「もっと生きたかったという想いが強い幽霊は許せないのじゃ、不摂生な人間が。よくあるじゃろ。若い時に失敗した年寄りの方が、若者に厳しく当たる的な。あれみたいもんじゃ。幽霊にとってはマヨネーズを直で行く人間なんて見てられなかったのじゃろう。許せなかったのじゃろう。だからなかったことにしようとした。マヨネーズをなかったことにしようとした。だから燃やしたのじゃ。マヨネーズは油でできとるからな。燃えればなくなる」


 引き続き、みんなは、こいつ何言ってるんだ?といった顔でヒメを見ている。


「幽霊は荼毘の炎を使えるので、燃やすのはお手のものじゃしな。あと気合いを入れれば、人や物に触れられるし、実態がふにゃふにゃしてるから、体の形状を変えて手を刃物にしたりもできるはずじゃ」


 流れに任せて、ヒメは取って付けたような幽霊の生態をペラペラと語り出す。


「透けてるから密室も行き来自由じゃ。そしてワシが犯人を幽霊だと確信した最も大きな理由は昨夜のミサキ襲撃事件だ」


 みんながミサキを見る。ミサキ襲撃事件については、ヒメとナキ、そしてドウジとその雇い主チカゲしか知らない。


 知らない人のために、ミサキは昨夜あったことを話した。


「そんなことがあったなんて!警察が泊まり込んでおきながら、申し訳ない」


 木暮がミサキに頭を下げる。


「や、やめてください!この通り無事だったんで!大丈夫です!」


 ミサキは慌てて木暮に駆け寄った。

 

 そしてそんなやりとりはほったらかしてヒメの推理は続く。


「無事だったのは良かったのじゃが、ではなぜ無事だったのか?というかなぜ犯人は電気がついた本堂に入ってこなかったのか?いや、入ってこれなかった?この話を聞いた時にワシは犯人が幽霊である確信した」


「誰も聞いてくれなさそうだから、俺が聞いてやるよ。それはなぜだ?」


 みんなまだポカンとしているので、ナキが質問してあげた。


「この本堂のデザインを見ればわかるじゃろう」


「派手?」


「そう!派手なのじゃ!派手すぎるのじゃ!幽霊とは基本的に透けている存在、薄い存在なのじゃ。だからこそ派手な背景に弱い。派手な場所では自分の希薄さがより際立ってしまうからじゃ!こんな派手な部屋に入れば精神が崩壊してしまうこと請け合い。だから入ってこなかった。入ってこれなかったのじゃ」


 ヒメは決まったといった感じで、ニヤリと笑みを浮かべる。


 だが残念ながら誰もピンときてない。


 この子どうしよう、とみんなあたふたしてるくらいだ。


 みんながどうしていいかわからなくなっている状況で、いや、そんな状況だからこそ、木暮が口をひらく。さすが国民全体の奉仕者、公務員である。


「いや、探偵。いくらなんでも幽霊って、、、」


「そう!普通ならそう簡単に死者が幽霊になることはない!」


 しかし、ヒメの勢いを止めることはできなかった。


 むしろ『その言葉、待ってました!』とばかりに熱量は上がっていく。


「ではなぜ、死児間リンドウは幽霊になったのか。それはこの村で語られている逸話の影響が大きい。逸話とは幽霊発現にとって都合のいい材料となる。その逸話が本当だろうが嘘だろうがはどうでもいい。この逸話を信じている人間がどれだけいるかということが重要なのじゃ。幽霊とは1人では成り立たない。たい焼き屋のババアの話と一緒で、客の協力も必要なのじゃ。逸話を信じる客たちの恐怖心と、その内容に適した神輿。これらが揃った時、まさに幽霊の発現条件が整ったのじゃ」


「逸話って、『ワシの宝は誰にも渡さん!』って人を殺しまくった死児間リンドウのじいさんの話か?」


 ナキはババアの話を思い出した。


「ああ、今回の事件と似ておらんか?遺産は誰にも渡さんと相続者を殺しまくるリンドウ。ただ、幽霊とは言っても、生前の人格と逸話が混ざりあった新しい生き物と言った方が近い。だから今回の事件を引き起こしている幽霊は、死児間リンドウというか、死児間リンドウに似た、透けている何かじゃ」


「探偵!いい加減、妄想話はもうやめてくれ!人が死んでるんだぞ!」


 痺れを切らした木暮が声を荒げるが、ヒメは気にすることなく、天井の方を指差す。


「ほら、来たぞ。正体をばらされて焦っておる。力づくで殺る気じゃ」


ーごがぁぁぁぁ!ー


 凄まじい咆哮と同時にそれは姿を表す。


『ワシの宝は誰にも渡さん!』


読んでくださってありがとうございます。


引き続きよろしくお願いします。

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