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超常専門(超不本意)探偵アクトヒメ  作者: 血湧湧
八百墓村殺人事件
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13/17

八百墓村殺人事件10(ミサキとドウジ)

 3月11日(水)18:30 遺産相続確定まであと17時間30分


 夕飯は、殺人があった後だが、欠席するものはいなく、全員が本堂に集まった。


 もちろんメニューは昼間食べ損ねたチキン南蛮。



 警察たちは屋敷内をバタバタ動き回っていたが、まだ事件に進展はないようだ。


 夕飯を食べ終わったあとはみんな大人しく自室に戻った。


 疲れていたのか、1人で考えたいことがあったのか、理由は人それぞれだろうが、この日の夜は集まって何かをすることはなく、あっさりと終わった。



 3月12日(木)1:30 遺産相続確定まであと10時間30分


「ちょっとジュース飲みすぎちゃったかな」


 夕飯でかなりジュースを飲みすぎたミサキが起き上がる。


 トイレは1階。この屋敷、立派なのに、なぜかトイレは1階にしかない。


 2階と3階には0で、1階には3つ。どう考えても設計ミスである。ミスというか、ここまでいくと悪ふざけである。


「気味悪いから1階行くの嫌だけど、行かないわけにもいかないしなぁ」


 殺人が起こった屋敷を夜中に歩くのは嫌だろうが、漏らすわけにはいかないから、腹を括るしかない。


「よし!がんばれ!私!」


 自分で頬を叩いて気合いを入れたミサキはトイレを目指して部屋を出る。


「ひゃっ!」


 部屋を出ると、男が1人立っていた。


「だ、だ、誰ですか!?」


「俺だ」


 ミサキの部屋の前に立っていたのは、ドウジだった。


「えっと、なんで私の部屋の前に立ってるんですか?」


「ぐびぐびぐび」


 ミサキの質問には答えず、ドウジはビール瓶をラッパ飲みする。


「あのー、じゃあ私はトイレに行くので」


 そう言ってミサキは1階へ向かって歩き出すのだが、


「ぐびぐびぐび」


 なぜかドウジはビールを飲みながら後ろをついてきた。


「私トイレ行くだけなんですけど?」


「ぐびぐびぐび」


 何を言ってもビール飲みながらついてくるので、ミサキは諦めた。流石にトイレの中までは入ってこないだろうと思って。


 そのままミサキは無事にトイレまで辿り着く。ドウジはトイレの前で立ち止まった。大丈夫だった。


 そして個室に入り、用を足し、立ち上がった時。


「ん?」


 誰かの気配を感じて、上を見る。


「きゃぁぁぁぁ!」


 トイレのドアの上に誰かが手をかけていたのだ。


 ドン!


 だがドアをよじ登ろうとしていた手が突如吹っ飛ぶ。


「早く出て来い!逃げるぞ!」


 外からドウジの声。


 どうやらトイレに入ってこようとしていた奴はドウジに蹴り飛ばされたようだ。


「は、はい!」


 ドウジに言われた通りに、ミサキは急いで個室を出る。


「来い!」


 ミサキはドウジに手を引かれながらそのままトイレを出るが、


 ガン!ガン!ガシャン!

 

 何かで壁を叩く音、廊下に飾ってあった壺が割れる音、それらが一緒になって後ろから迫ってくる。


 ミサキは怖くて振り向くことができない。


 振り向いて犯人の顔を見た方がいいのはわかっている。見ようともしているのだ。でもどうしても振り向くことができない。


 手を引っ張っていったドウジはミサキを先に行かせる。


「暗くて相手の姿が掴めない!どこでもいいから電気をつけろ!」


 ドウジに言われたミサキは本堂に入り、電気のスイッチを探す。


 ガゴン!ガゴン!ガゴン!


 どでかい金槌か何かで壁や天井を叩きまくっているような音と振動がすぐそこまで迫っている。


「来るなら来い」


 ドウジはビール瓶を捨てて、懐から2本の小太刀を取り出す。


 酒呑童子。


 それがドウジの本当の名前。


 何百年も生きている大妖怪だ。だが特にこれといった能力を持っているわけではない。


 酒呑童子の特筆事項はただ一つ。


『白兵戦最強』


 そのドウジが刀を抜いて構えたのだ。


 負けるはずがない。


 はずがないのだが、確信がもてない。


 ドウジにも向かってくる奴の気配が掴みきれていないのだ。


「まあいいか」


 ここでドウジは一つ諦める。


「殺す」


 本当は殺さずに無力化するはずだった。殺してしまっては後々面倒だからだ。でもそんなことにこだわって致命的なミスを犯すわけにはいかない。


 敵の狙いはミサキ。ドウジの横を抜けてミサキの元へ向かおうとするが、そこでドウジは斬り掛かった。


「なに!?」


 しかし手応えがない。確かに斬ったはずなのに。


(不味い)


「ミサキ!逃げろ!」


 ドウジが叫ぶ。


「へぇ!?」


 しかし返ってきたのはミサキの気の抜けた声。それと同時に本堂の明かりがつく。やっと電気のスイッチを見つけたのだ。


「無事か!」


 ドウジも本堂の中へ入ってくる。


「えっと、今どういう状況ですか?」


 しかし本堂にはミサキしかいなかった。確かに敵も入っていったはずなのだが、まるで消えたかのように、そこには誰もいなかった。


「消えたな」


「どこかに隠れてるんでしょうか?」


「いや、嫌な感じがなくなった。本当にいなくなったんだろう」


 言いながらドウジも意味がわかっていない。


「えっと、どうしましょうか」


「トイレも無事済ませたんだし、部屋に帰って寝ればいいだろ」


 ついさっきまで不審者に追われていた女性がすぐに寝られるわけないのだが、ドウジにそんな気遣いはない。


 恐る恐る部屋へと戻るミサキの後ろを、新しく取り出したビール瓶を飲みながらドウジがついてくる。


 そしてミサキの部屋の前まできたところでドウジが口を開く。


「朝まで俺が部屋の前を守っててやる。だから安心して寝ろ。今度は大丈夫だ。誰も通さん」


 そう言ったドウジはビールを飲み干し、今度は日本酒の瓶を取り出し、ミサキの部屋の前で胡座をかいた。


「あ、ありがとうございます」


「おう」


「おやすみなさい」


「おう」


 絶対寝れないと思いつつも、ミサキは部屋へ入っていく。そして熟睡した。

読んでくださってありがとうございます。


引き続きよろしくお願いします。

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