02 野良犬諸国連合
今ここに、四人の女帝が誕生した。
ハールバリー小国からは、バジリス女王。
キリーランド小国からは、ジャンガリアン女王。
ガンクプフル小国からは、ロボロフ女王。
ロンドクロウ小国からは、ゴールドベア女王。
奇しくも、みな『勇者反対派』の人物で、まだ10歳にも満たない幼子たちである。
もちろん、彼女たちだけでは覚束ないので、同派閥から摂政が選ばれ、為政を手助け。
ちなみにではあるが、バジリスの摂政は前国王である父親であった。
戴冠式に参列した『セブンルクス王国』の関係者たちは、顔を引きつらせながらも彼女たちに祝福を送った。
新たなる世代に生まれ変わった『エヴァンタイユ同盟』は、セブンルクスを中心に、さらなる躍進を遂げるであろう……! と。
しかし、そんな彼らの顔面が、強ばったまま戻らなくなるほどの大事件が勃発してしまう。
それは式典の最後、『所信表明』にて起こった。
新女王たちは手を取り合うと、雛鳥が巣から飛び立つように……。
仔狼が、初めての遠吠えをするように……。
高らかに、こう叫んだのだ……!
……我らは『エヴァンタイユ同盟』を破棄し、新たに『ドッグレッグ同盟』を締結するっ!!
なんと、これまでの同盟を捨て、新たなる同盟を生み出してしまったのだ……!
それは大胆にも、これまで同盟の主導であり、事実上の支配国であった『セブンルクス王国』を除外。
四国が対等なる立場となったものであった。
しかも不敵にも、それまで特別扱いしていた勇者への優遇措置を、すべて無くしてしまうという。
この宣言はいわば、『脱大国』であり『脱勇者』……!
『ゴーコン』以上の騒乱が、旧『エヴァンタイユ諸国』を吹き荒れたのは言うまでもないだろう。
もちろんセブンルクス王国はそんな一方的な宣言など認めるはずもなく、四国を強く批判。
官民をあげて、戦争も辞さない覚悟で撤回を求めた。
しかし、新たなる同盟は決して揺らぐことはなかった。
いままでの各小国の大臣たちは、勇者とセブンルクスに媚びを売ることに必死であった。
しかし新しい体制は利権に汚されておらず、しかも『反大国』『反勇者』の者たちでガッチリ固められている。
そして何より、幼き女王たちが一枚岩だったことに尽きる。
彼女たちは『合同クエスト』でともに戦い、勇者と大国の野望をはね除け、国と国とを超えた『戦友』とも呼べる絆を培っていたのだ。
『合同クエスト』の最中、ハールバリー小国のバジリスが、他の姫君たちに振る舞った『チョコレート』。
女王たちはその味を、一生忘れることはないだろうと語っている。
セブンルクスとしては、離反した相手が一国であったならば、戦争を仕掛けていたことだろう。
同国は『勇者の国』とも呼ばれているので、絶対正義である勇者の協力も得て、その小国を地図から消し去っていたに違いない。
しかし四国ともなれば、そうもいかない。
いくら相手が小国であれ、四方向から攻められてはひとたまりもないからだ。
となれば、内側から攻めるしかない。
小国の国内世論を誘導し、内部から同盟破棄の声を上げさせようとした。
各小国内にいる、大国寄りの有識者に批判させ、マスコミに煽らせるという作戦に出る。
……この世界の平穏は、勇者様によって保たれている!
その『絶対正義』である勇者様をないがしろにするなど、言語道断!
もしその傘の下から抜けるというのであれば、この国には災いが訪れるであろう!
作物は不作となり、疫病が流行、モンスターが跳梁跋扈するのは間違いない!
しかもそうなった時には、もう誰も助けてはくれないだろう!
なぜならばこの国は、時代の流れに逆行し、じょじょに近隣諸国……いいや、世界からも見放されつつあるからだ!
私は世界を旅し、実際に見てきたのだ!
見知らぬ辺境の国までもが、酒場や井戸端で、この国のことを悪く言っているところを!
これはある筋からの情報だが、魔王信奉者たちも、この混乱に乗じて乗り込んでくる作戦を立てているという!
そうなってはもう、おしまいだ!
民よ、今こそ立ち上がるのだ!
思いつきで考えたような、身の程知らずの愚かな同盟を即刻破棄し、長き歴史に培われた、真の平和同盟を取り戻すのだ!
あえてセブンルクスの名を伏せ、勇者の名を全面に出し、世界から孤立するような誘導をしようとするあたり、かなり狡猾である。
そしてそれは連日続いた。
人の集まる街角で、著名人が拡声魔法で声高に叫び、新聞は連日トップで主張を繰り広げる。
しかし……。
びっくりするほど民衆はなびなかった。
それは、なぜか……?
そう、『スラムドッグランド』……!
あのアトラクションの効果が、ここにきて好アシストを果たしていたのだ。
『ゴーコン』で勇者たちの内ゲバを見せつけられた時点で、民の間には多少の不満があった。
そこに来ての、プリン村と記念館の連続コンボによって、勝負はすでに決着していたのだ。
道行く人々は、見た目は一般市民でも……。
中身はすでに、反逆者……!
勇者やセブンルクスの者たちがいくら手を尽くしたところで、時すでに遅し。
『ドッグレッグ同盟』はすでに、
Association of Slum Dog Nations……!
すなわち、『野良諸国連合』……!
野良犬たちの、巣窟であったのだ……!
ではここで、野良犬諸国の位置関係を見てみよう。
北側覆い被さるようにしてあるのが、『勇者の国』と呼ばれる『セブンルクス王国』。
そして西側から順番に、『魔導女の国』と呼ばれる『ガンクプフル小国』。
『聖女の国』と呼ばれる『キリーランド小国』。
『尖兵の国』と呼ばれる『ハールバリー小国』。
『戦士の国』と呼ばれる『ロンドクロウ小国』。
ちなみにではあるが、かつて『エヴァンタイユ諸国』と呼ばれていたのは、上記の五国が『扇』のように見えることから付けられたものである。
そして新たなる枠組みである『ドッグレッグ諸国』は、小国である四国が『犬の足』のように見えるからである。
その犬の足から、海を隔てた南に『グレイスカイ島』。
さて……。
これで『ドッグレッグ同盟』というものが、権力を手にしてはしゃいだ子供たちによって、思いつきでなされたものではないというのが、わかっていいただけただろうか?
そしてオッサンはなぜ、ハールバリー小国の次に、近隣諸国ではなく……。
遠く離れた南の孤島に『スラムドッグマート』を展開したのか、わかっていただけただろうか?
そう……!
『グレイスカイ島』を同店の流通の拠点とすることで、一気に『四国同時攻略』を狙ったのだ……!
グレイスカイ島には、海を自在に操ることのできる遺跡がある。
その力を利用すれば、同店の貨物は陸を利用して運ぶよりも、遙かに早く各国の港に届けることができるのだ。
かつての『ゴーコン』におけるビーチの戦いにおいて、マザーが光のような速さで応援に駆けつけたのも、その力によるものである。
その気になれば、グレイスカイ島から各国の港まで、わずか3分……!
陸だと隣国まで向かうのに、馬車で何時間もかかる道のりが、カップラーメン時間にまで短縮……!
これを戦争に例えるなら、相手の領土がすべて主砲の射程内にあるようなものである。
しかも国家権力まで味方に付いているようなものだから、かつてジェノサイド一家にされたような、出店における妨害もない……!
もはや、やりたい放題っ……!
さらにゴルドウルフは、2国を掌中におさめたので、昇格……!
ついに、大国副部長クラスにっ……!!
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●御神級(会長)
ゴッドスマイル
●準神級(社長)
ディン・ディン・ディンギル
ブタフトッタ
ノーワンリヴズ・フォーエバー
マリーブラッドHQ
●熾天級(副社長)
キティーガイサー
●智天級(大国本部長)
ライドボーイ・ロンギヌス
ライドボーイ・アメノサカホコ
ライドボーイ・トリシューラ
ライドボーイ・トリアイナ
●座天級(大国副部長)
↑昇格:ゴルドウルフ
●主天級(小国部長)
●力天級(小国副部長)
●能天級(方面部長)
●権天級(支部長)
ジャンジャンバリバリ
●大天級(店長)
●小天級(役職なし)
○堕天
デスディーラー・リヴォルヴ
サイ・クロップス、ゴルゴン、スキュラ
ジェノサイドダディ、ジェノサイドファング、ジェノサイドナックル
ミッドナイトシャッフラー、ダイヤモンドリッチネル、クリムゾンティーガー
ライドボーイ・ランス、ジャベリン、スピア、オクスタン、ゼピュロス、ギザルム、ハルバード、パルチザン
名もなき戦勇者 3801名
名もなき創勇者 334名
名もなき調勇者 527名
名もなき導勇者 306名





