## 第三章「封じられた坑道」
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七人になった坑道は、静かだった。
ジャンたちが引き返した後の静けさだ。七人の足音だけが残っている。上層で駆逐された怪物の痕跡が床に残っていたが、もうその先には何もいない。坑道が、七人のものになった。
奥へ進むほど、壁の光る石が増えていった。中層でも密だと思っていたが、さらに奥へ行くほど密度が上がる。アレクの目には靄が濃くなっていくのが分かった。他の六人には美しい光る石が増えているようにしか見えない——アレクだけに、その石の周囲に見えない何かが漂っているのが分かる。
通路が、奥へ行くほど荒くなっていった。
支柱の間隔が広くなり、壁の仕上げが粗くなる。採掘量を増やすために急いで掘り進んだ痕跡だ。鉱員がここを掘るとき、もうそれほど丁寧にやっている余裕がなかったのだろう。どんどん深く、鉱脈を追って。
やがて通路が——終わった。
行き止まりではなかった。壁に穴が開いていた。
直径二メートルほどの、粗い穴だ。縁が欠けており、砕けた石が足元に散らばっている。穴の縁に、ツルハシの跡が生々しく残っている——古い石を叩き割った跡だ。三週間か四週間、それくらい前の傷だ。まだ新しい。こちら側の石の断面は、湿気を帯びて白っぽい。
穴の向こうは暗かった。
こちらの坑道より、もっと暗い。しかし空気が違った——蒸れた坑道の匂いではなく、乾いた、古い石の匂いが来る。動いていない空気の匂いだ。長い時間、誰も入らなかった場所の匂いだ。
ドルフが穴に近づいた。縁の石に手を触れた。割れた断面をなぞり、ツルハシの跡を指で確かめた。「最近だな。三週間かそこらだ」
「ここからモンスターが流れ出したんでしょう」とアレクは言った。「鉱員が掘り当てた場所です」
誰もその先を言わなかった。向こうから来たのはモンスターだけだ。掘り当てた鉱員たちは——来なかった。
ドルフがアレクの精霊の火を穴の向こうに差し入れるよう促した。淡い光が広がった。
壁があった。
壁ではあるが、こちらとはまったく違う壁だ。石の面が揃っている。接合部の隙間がない。天井を支えているのは木の支柱ではなく、石のアーチだ。穴の縁のこちら側——新しく割られた粗い断面——と、向こう側の壁が、同じ岩盤からできているとは思えないほど違う。こちらは荒々しく割れた生の石で、向こうは誰かの手で丁寧に整えられた石だ。
ドルフが穴をくぐった。続いて全員が入った。
向こう側に立った瞬間、アレクは足を止めた。
靄が——濃い。
穴の向こうは空気の匂いが違った。閉じ込められた、長い時間誰も触れていない空気だ。しかしそれ以上に、靄の密度が比較にならない。壁から滲み出ているのではない——穴から流れてきている。この向こうに何百年もかけて溜まっていたものが、三週間前に接続された瞬間から上に向かって流れ出し続けていた。中層でジャンたちを倒したのはこれだ、とアレクはその場で確信した。
リーンが足元を見て言った。「足跡がある」
穴の縁から向こうへ、複数の足跡が続いていた。五人か六人分だ。鉱員の重い靴の跡だ。中に入っていった足跡だ。
「戻ってきていない」とリーンは言った。「全員、中に入って——出てきていない」
少し奥に革の工具袋が落ちていた。その隣に、ランプが転がっている。火が消えている。オイルはまだ残っているのに、火が消えている。急に消えたのではない——使う者がいなくなってから、自然に燃え尽きたのだ。
ドルフが穴の縁、向こう側の壁面に手を触れた。
こちら——人間が掘り割った断面——と向こう側の石が、同じ岩盤からできているとは思えないほど違う。こちらは荒々しく割れた生の石だ。しかし向こうは、誰かの手で丁寧に切り出した石だ。石の面が揃っている。接合部の隙間がない。
「古い工法だ」とドルフは言った。声が変わった——分析しているのではなく、信じられないものを目の前にしている声だ。「相当昔だ。ドワーフの仕事だ」
「ドワーフの坑道ですか」とプラムが聞いた。
「俺も知らなかった。こんな場所があるとは」
ドルフが向こう側の壁をもう一度指でなぞった。接合部の精度を確かめるように。「古い。かなり古い——伝承の中にしか残っていない工法だ。もし本当に……」
そこで言葉を切った。続けるには、確認が必要だった。
ガルドが穴をくぐって、向こう側に出た。壁に手を触れた。ドルフとは違う触り方だった——石の質を確かめているのではなく、何かを探しているような指の動かし方だ。
「……本当にあった」
ガルドが呟いた。声が低かった。昨夜の酒場や、さっきの坑道の陽気さが消えていた。別の何かが、その声の底にあった。
「知っていたんですか」とアレクは聞いた。
「噂だけだ。ドワーフの間で伝わってる話——大昔に精霊を使った鉱山があって、一夜で滅びた、という」ガルドが壁から手を離した。「おとぎ話だと思ってた。まさか、本当にあるとはな」
ドルフがガルドの方を見た。一瞬だった。ドルフの目が何かを測っていた。しかし何も言わず、前を向き直した。
エリスが穴の縁から奥の空気を感じていた。「精霊の歪みが、はっきりしてきました。中心は——もっと奥の方です」
フィーアが「うん」と言った。「何かがずっと叫んでる感じ。近い」
「行くぞ」とドルフが言い、先頭に立った。
分岐が出るたびに、ドルフは立ち止まって壁の石を見てから「こちらだ」と言った。迷っていない。
「分かるんですか」とアレクは聞いた。
「大体はな」とドルフは言った。「ドワーフの鉱山の作りには流儀がある。大きい鉱山では地上に帰る時間が無駄なので中層の要所に居住区を作る。最深部への道は必ず緩やかな下り勾配だ」
「穴掘り優先で地上に出ないなんて、穴掘り好きのドワーフらしいわね。エルフには耐えられないわ」とリーンが言った。
「好き嫌いの話じゃない」とドルフは言った。「身についているだけだ」
七人で奥へ進んだ。
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ドワーフの坑道に踏み込んだ瞬間、全員が立ち止まった。
天井が高い。
壁に埋め込まれた光る石が、青白い光で空間を照らしていた。数百年経っても光り続けている。見えない光の石に細工を施したドワーフの照明だ。松明は要らなかった。しかしその光をもってしても、天井は遥か上にある。通路が広い——馬車が十台は並んで走れる幅だ。床は平らに加工されており、壁は石のアーチが連なっている。人間の坑道とは何もかもが違う。規模が、工法が、この場所にかかっていた時間が。
「……でかい」とプラムが呟いた。声が反響した。「坑道じゃない。宮殿みたいだ。行ったことないけど」
採掘場の跡が次々と現れた。石を切り出した巨大な空間、柱が規則正しく並んでいる作業場、石製の橋が通路の上を跨いでいる。工房の廃墟があった。鍛冶の道具が錆びたまま残っている。作業台の上に、数百年前の仕事の途中のような石が乗っている。
誰も来なかった場所の空気がある。時間が止まっている場所の空気だ。
ガルドの目が変わっていた。
通路を歩きながら、壁の装飾に目がいく。金の紋章、銀の縁取り。工房に残された道具の中に、宝石が嵌め込まれた金槌があった。ガルドの足が一瞬止まった。手が、無意識に伸びかけた。
「触るな」とドルフが先を行きながら言った。振り返りもせずに。
ガルドの手が止まった。「……ああ。分かってる」
しかしその目は、まだ工房の中を舐めるように見ていた。
分岐が何度も出てきた。そのたびにドルフが壁を確かめ、通路の勾配を見て、「右だ」「左の通路は落盤している。迂回する」「こっちが近い」と判断を下した。ドルフがいなければ、ここで確実に迷子になる。広さが問題なのではない。全部が似ているから方向が分からなくなる。
変異した蝙蝠の大群と遭遇した場所があった。
通路の天井を埋め尽くすほどの数がいた。翼の膜が厚く黒い。体が通常の倍近い。進んでいくと気づいて一斉に羽ばたき始め、風圧が来た。光る石の照明が翼の影で明滅した。
「走れ」とドルフが言った。
リーンが弓を引いて、群れの中心に向けて矢を放った。矢が一本で蝙蝠を三匹まとめて串刺しにし、落ちた。群れの中心に一瞬隙間ができた。
「今です」
全員がかき分けて走った。翼が顔に当たった。羽ばたきの風で埃が舞った。フィーアが「うわっ」と声を上げた。プラムが頭を抱えながら走った。
抜けた。
全員が息を整えた。フィーアが羽根をつまんで「でかい蝙蝠ね……」と言った。「羽根が重そうだった。飛び方が変だった」
「あれが正常だと思ってるんだろう」とリーンが言った。「あの環境で生まれたから」
崩落しかけの橋を渡る場面もあった。数百年放置された木製の橋で、床材が腐っている。プラムが先に小さな体で渡り、どこが踏めてどこが危ないか確かめた。「三番目の板は踏まないでください。向こう岸から二番目も」と言ってから、一人ずつ渡った。ソビットの小さな体が、ここでは利点だった。他の誰よりも先に偵察できる。
ドルフとリーンが橋の前でどちらが先か一瞬にらみ合い、ドルフが先に渡った。リーンが「順番ぐらい譲りなさいよ」と言った。「渡った後に言うな」とドルフが言った。
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それは、通路の端が開けるように始まった。
天井が上がっていく。壁が左右に広がっていく。前方の暗さが変わり——そこだけ、光がある。石の光だ。青白い光が、大きな空間の奥から漏れている。
通路の出口をくぐった。
プラムが最初に言った。
「……街だ」
声が空洞に響いた。
誰も、次の言葉を出さなかった。
巨大な空間だった。天井が——遥か上にある。光る石の照明がそこまで届かない。しかし戸建ての建物が並んでいるわけではない。洞窟の壁面そのものに部屋が彫り込まれ、通路が走り、階段が刻まれている。地上の街というより、巨大な建物の内部にいるような感覚だった。石のアーケードが通路の天井を覆い、その両脇に鍛冶場、礼拝所、倉庫が口を開けている。地上に出るには遠すぎるため、地下に生活のための場所を丸ごと作ったのだ。奥は暗く広がっていた。どこまで続くか分からない——光る石の明かりが届かない先に、さらに空間があるのが空気の流れで分かる。
壁に埋め込まれた光る石が、通路の壁面に彫り込まれた店や工房の輪郭を浮かび上がらせていた。壁のそこかしこに、金細工と銀細工の装飾が施されていた。礼拝所の祭壇に宝石が嵌め込まれている。広場に面した門柱に、金の紋章が刻まれている。財宝として持ち出された様子はない。
撤退が急すぎたのか、あるいは必ず戻ると思っていたのか——どちらにせよ、数百年前のものがそのままそこにある。
ガルドが息を呑んだ。
金と銀の装飾を見回していた。目が光っていた——光る石の明かりとは別の光だ。欲だ。隠していない。門柱の金の紋章、礼拝所の祭壇の宝石、工房に残された道具。全部が数百年前から手つかずのまま、ここにある。
「これは……すごいな」ガルドの声が少し震えていた。「全部残ってるじゃないか。誰にも持ち出されずに」
ドルフがガルドを見た。目が冷たかった。
「墓荒らしの真似はするな」
「分かってるよ。仕事が済んでからの話だ」ガルドが両手を上げた。しかし目は装飾品から離れなかった。
ドルフは何も言わなかった。ただ、もう一度ガルドを見てから、広場の正面に向かって歩き始めた。
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ドルフは広場の正面の壁に向かって歩いた。紋章が刻まれていた。大きく、深く彫られた紋章で、数百年が経ってもはっきりとしている。その下に碑文がある。ドワーフ文字で何か書かれている。
ドルフは紋章の前に立って、黙っていた。
様式が分かった——自分の一族の紋章とは違う。しかしドワーフの紋章だ。見たことのある造りだ。誰が使っていたものか、古すぎて分からない。しかし誰かの先祖が、ここに刻んだものだ。
エリスが、碑文の前で立ち止まった。
しばらく黙って碑文を見ていた。それから、小さな声で言った。
「もしかしたら……あの童話の鉱山じゃないかしら」
全員が彼女を見た。
「童話?」とフィーアが聞いた。「何それ」
ミュエルもリーンの肩の上で首を傾げていた。
「エルフとドワーフが精霊を制御しようとして失敗した話よ」とリーンが言った。声が少し固かった。「ダークエルフが精霊を無理やり使役しようとして、制御を失った。精霊が暴走して、鉱山ごと封印された——子供に聞かせる話。ドワーフとエルフがなぜ仲が悪いか、という理由の一つとして語られる」
「人間の子供も聞かされます」とエリスが言った。「精霊を道具のように扱った罰、という教訓話として」
「知らなかった」とフィーアは言った。「私たち、人間の子供じゃないから」
「なら、この精霊力の歪みも説明できます」とエリスは言った。目が碑文に向いたまま。「ダークエルフに精霊の制御を頼んで、失敗した——童話の鉱山だとしたら、精霊が今も中にいるはずです。縛られた状態で」
プラムが目を輝かせた。「財宝あるかも。強欲ドワーフだから、たんまりため込んでいたりして。どう思う?」
ドルフは何も言わなかった。
紋章の前に立って、動いていない。表情が読めない。ただ、紋章を見ていた。おとぎ話だと思っていたものが目の前にある。そういう顔をしていた。言葉が出ない顔だった。
アレクは空間を見回した。地上に出れば、これは一大発見になる——考古学的にも、政治的にも、歴史的にも。今、それを考える余裕はない。しかしその重さが頭の隅で引っかかった。
フィーアがアレクの肩の上から言った。「ドワーフとエルフの仲の悪さって、これだけのせいじゃないと思うけどね。神話時代からじゃないの」
「真相はもはや誰にも分からないよ」とアレクは言った。
リーンが一度口を開きかけて、やめた。何か言いかけた。しかし言わなかった。
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(第四章へ続く)




