表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひのくに戦記1913 -戦火の世界-  作者: 茂野夏喜
第一章 
50/134

転属 4

 幕舎を離れた俺と嶺善班長は、まっすぐに嶺善班員の駐屯場所へと向かう。急遽追加された人員との顔合わせ――それ自体は既に住んでいるわけだが――。今更だが、緊張する。


 ……そしてその道すがら、俺を勧誘した”隠された意図”について、一応聞いておこうと思った。



 「あの、班長。お聞きしたいことが」

「なんだ?」

嶺善班長は遅くも早くもないペースで歩きつつ、視線を進路から外さないまま答える。

「俺を迎え入れていただくって話、俺の能力とかそういうのだけじゃないですよね?」

「……あぁ、そうだな。正直、要らぬ気づかいかもと思いはしたが」

「いいえ、あの、それ自体は感謝してるんです。有難く思ってますが……」


 「言いたいことは分かるぞ、刻峰。俺の班は、”変わり種”が多いと」

マイルド何だかストレートなんだかよくわからない言い回しだったが、俺は素直に

「えぇ」

と答える。


 今更だけれど、この人はあんまり気難しいタイプの人じゃないし、遠慮とか気遣いとかをある程度抜きにして本音で話してもいい気がする。



 「まぁ、当たらずも遠からずってところか。別にな、面倒な人材を押し付けれているわけじゃない」

「と、言いますと」

「有能だが、癖のある人材を集めている……といった方が正確だな」

「癖がある、ですか」

確かに、俺は異世界人ってだけでかなりの癖……いや、曲者であろう。


 「改めて教えておこう。我が班には、お前と私を含めて11人の隊員がいる」

そこから、嶺善班長による各隊員の簡単な紹介が始まる。中には既にしっている事実や事情もあるけれど、俺は改めて全部聞くことにした。




 まず、勇田輝実上等。22歳、俺と同じ。だから気が合うのだろうか。……どうでもいいけれど、”てるみ”って名前が可愛らしい。彼は凄腕の狙撃手で、狙撃用途に改造された旧式のボルトアクションライフルを使用しているそうな。一応は信濃原一等兵をスポッター(観測手)として担当させることもあるが、その気になれば単独での狙撃も可能らしい。ちなみにその腕前は、1キロ以上離れた敵の頭部を狙い撃ちにできるレベルらしい。それがどの程度凄いことなのかは分からないけれど……。


 そんな彼は、過去に上官への反逆、および暴力行為を働いたかどで軍法会議にかけられたことがあるらしい。嶺善班長いわく、彼には彼なりの理由があってそうしたのであり、またその正当性もある程度までは認められたのだとか。しかし原隊にはいられず、なんだかんだで嶺善班長が引き抜いたとのこと。



 次に、信濃原由紀一等兵、18歳。彼女は勇田のスポッターとしてだけではなく、救急治療にも精通しているらしい。また薬草についての知識もあり、その辺の草むらから治療薬を作ることもできるのだとか。……シンプルにすごい。それだけではなく、格闘術の心得もあるらしく『お前じゃ勝てない』レベルらしい。


 そんな彼女は、そもそも年齢を偽って入隊したのだとか。また銃を扱えず、徳長さんでさえも匙を投げるレベルでセンスがないらしい。この世界では(日本世界ではどうだったっけ?)衛生兵も銃を持つのが通例らしく、事務職くらいしか適性がないと判断されたが、嶺善班長は彼女を”使える”と判断したそうだ。



 白楼魅夜上等兵(22)は、いたって模範的に、いやそれ以上に戦闘をこなせる優秀な兵であり、銃の腕も格闘の腕も人一倍長けているらしい(この世界……いや時代では、格闘戦も重要な要素という。なんとなく分かる気はするが)。それだけでいえば精鋭部隊にでも配属されてもおかしくないくらい、本当に優秀な人材。


 だが問題は、俺も知っている通りに”殺しすぎる”こと。本当に情け容赦がなく、敵に対する非情さはかなりのもので、たとえ武器を持たない敵兵でも、死にかけの敵兵でも、投降の意思を示す敵兵でも一切の躊躇を見せず殺してしまうらしい。そんな行き過ぎた行動を抑制するため、嶺善班長ができる限り監督しているのだとか(嶺善班長の前では自重するらしい)。



 黒桐史郎伍長(36)は、人並み以上に戦えるだけでなく、重度の武器オタクであるらしい。世界中の軍隊で使用されている火器の名称と大まかなスペックを把握しており、銃の整備や修理に関して速度、精度ともに右に出る者はいないとまで言われている。そういえば台湾での時、嶺善班長が彼から銃を受け取っているのを見たが、普段は最も信頼している彼に銃を預けているとのことだ(自主的に申し入れがあったらしい)。


 半面、危険な状況下でも平気で敵の死体から銃や装備を漁ったり、まるで『仲間より武器を大事にしている』ような数々の振る舞い(ちょっと想像がつかないけれど……)がもとで中々馴染める居場所が定まらなかったらしく。今は嶺善班長の元で色々な約束事を決めて戦うことになっているらしい。



 光峰欽二一等兵(28)は、少ない労力で多くの敵に効果的な被害を与えるのが得意であるらしい。特に罠や奇襲なんかでは多大な成果を上げ、特に今回のような入り組んだ戦場では役に立つ人材であるとか。だからこそ敵の罠や策を見抜くこともでき、班員全体のリスク管理は彼の手によるところが大きいという。


 だが、やり方が行き過ぎる場合もあるって話。例えば、敵に大規模な被害を与えるためとはいえ、友軍兵士を犠牲にするような戦い方を平気でやってのけたり(そんなの上の人間は普通に強いられることじゃないかと思ったが、そういうレベルの話ではないらしい)。或いは、いくら敵とはいえ人道に”反しすぎる”行いや、交戦規定を完全に無視した戦い方をやったり。ともかくそういうことで通常部隊で腫物扱いされ、これも嶺善さんがお誘いしたらしい。



 徳長蒼龍軍曹(31)、下の名前がイケメンすぎる。彼は知っての通り、刀(日刀というらしい)を用いた接近戦を得意とする。その剣術は嘉神元帥から直々に教わったもので、今では元帥公認の”ひのくに最強の剣豪”と言わしめているらしい。また飛びぬけた反射速度と独特の体術を備えており、何でも敵との間合いを”創る”ことができるらしい。


 そしてその戦い方がそのまま欠点でもあり、彼は銃を持とうとしない。通常部隊で一人だけ刀持参など、そんな特殊な人材を受け入れられる環境は他になかったらしく、これも否応なしに嶺善班へと配属されている。



 神吉迅曹長、実に齢57のお爺ちゃんであるが、未だ現役で戦えるほどのフィジカルを持っている。長年の経験と頭の良さで、光峰と同じように敵の行動パターンを見抜いたり戦局を判断するのに長けているのだとか。


 ただし、さすがのご高齢ということもあってもうすぐ引退なさるとのこと。無理に引き留めたが、この大戦争が最後の戦いになるであろうと言われている。



 滝隅秀一上等兵(26)、彼は”殺し”の才能があるという。戦うというより、的確かつ迅速に敵の命を奪うって言い方がしっくりくるそうだ。素手でも、銃でも、鈍器でも、刃物でも、まるで殺人テクのお手本を示すように殺してしまうらしい。


……彼の場合は、ちょっと境遇が信じられない。彼は元犯罪者、それも史上稀にみる連続殺人の犯人であり、元死刑囚でもあったのだそう。彼の話を聞き調べた結果”自分なら使える”と判断し、特異な手続きをもって従軍させることにした、と。……なんか、そういう設定どっかで見たことある気がする。どこの世界でも実際にあり得るものだとは思わなかったけれど。


 霧雨撒炎曹長については、「奴は自分勝手だからな」の一言で終わり。このご時世に単独行動で戦うって、孤独に戦った経験のある俺からしても不安で怖くて不利でどうしようもないと思うんだけれど。とにかく、そういうことだ、と。



 ちなみに役職と階級が釣り合っていないメンバーが何人かいるが、彼らに関しては『特殊な人材だから』というお話。ただし”万が一”の場合には、階級順に沿って指揮系統権の移譲が行われるのだそう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ