第40話 真相
6/7の更新を落としてしまい申し訳ありませんでした。
面倒な時に面倒なのが現れたな――今まさに助けられた身ながらそう思ってしまうのは多分俺のせいじゃないよな? こいつの今までの行動の積み重ねのせいだよな?
「クージス……。面倒臭い時に起きて来やがって。やっぱり後ろ手に縛って埋めておくべきだったか」
『時間さえあれば私もその方が良かったと思うけど……』
精霊さまもそう言っているが、実際時間がないから手を抜いたせいで、こんなところにまた勇者がノコノコと現れたわけだ。本当に俺も迂闊だったな。
「俺はお前と事を構えに来た訳じゃない」
「お前の言葉の何を信じろと? リースを襲って、その次は俺たちを襲って、わざわざパーティーで俺を仕留めに来たお前の何を信じるんだ?」
ただ調子の良いことを言うクージスに、隠すことなく苛立ちをぶつけてやる。ただでさえこっちはリースが危ないから急いでいるっていうのに、自己弁護しにやって来た勇者の言うことなんてまともに聴いていられない。
「今回の一連の騒動については、本当にすまない……。全ては俺の未熟が原因だ」
『なんか、さっきと感じが違うわね。加護の反応もさっきとは違うし話を聴いてみるくらいの価値はあると思うわ』
「精霊さまがそう言うなら……」
釈然としないが、それでも俺より万象の知に近い存在がそう言うのなら、それに従うとしよう。リースに近づくことすら出来ない状況で勇者とも敵対するようなら流石に詰みと言ってもいい。
「フォン……。本当に聞こえるようになったんだな」
姿の見えない精霊さまと話す俺を、クージスは特に奇異な物を見るようなこともなくただ見ていた。そう言えばこいつも光の精霊さまの声が聞こえた人間だったな。
「話をするにせよ、一旦リースから距離を取るぞ」
「分かった」
リースは今ただ佇んでいるが、次にいつ発作的にさっきの術をぶっ放すか分からない。とりあえず有効射程外に出ないことには落ち着いて話も出来ない。
リースに背を向け走り出した影外殻を纏って強化された俺と、ほぼ変わらない速度でクージスは容易に付いてきた。さっき戦った時は俺の方が速度で優位を取れていたが、俺の速度が落ちているのか? いや、体感的には変わらない。クージスが速くなっているのか?
処刑場の広場から離れた裏通りに滑り込み、息を整える。ここからならリースの魔力も感じ取れる。今は落ち着いているらしいが、精霊さまの言を頼りにするなら、あの纏っていた術【闇の衣】も相当に魔力を――ひいては心身を酷使しているらしい。あまりこいつにかかずらっている暇はない。
「申し訳なかった」
そう言っておもむろにクージスは頭を地面に擦り付ける程に下げた――いや、完全に擦ってるな。これは、DOGEZA……? 命で償う次に重いとされる謝罪方法を、勇者がした?
「恥ずかしい話だが、フォン、お前には足手纏いだと伝えてパーティーを抜けて貰ったが、あの後俺たちは悉く人材に恵まれなかったんだ」
「は、はあ……?」
いきなり何の話だ? とはいえおそらくここから聴かないと理解出来ないってことなんだろうから、口を挟むことはしないでおく。ただ「それで」と先を促した。
「5人目の枠の最後の1人が埋まらずにメンバーをとっかえひっかえしていた俺たちの前に、逸材が現れた――逸材って言っても、出て行った時のフォンより少し強い程度だけどな」
「そいつ、もしかして頭に角ついてなかったか?」
「オーダクレストのことを知っているのか?」
「名前までは知らないけど、あのデーモン崩れならお前ら3人を沈めた後に戦ったよ。ったく勇者ともあろうものが何であんな半人半魔の奴をパーティーに採用した?」
少なくとも、クージスはソーラライ出身の人間で、出会った当初は俺とも反りが合わなくて苦労した覚えがある。理由もなく完全な闇術使いだったアレを引き入れたがるか? 確かに最初デーモンだと俺も気付かないくらい擬態は巧かったが、それでよくも勇者が務まったな。
「そこが俺たちの恥ずかしい話だ。お前を超えるくらいのメンバーなら楽に集まると思っていたら、誰もついてこられなくてこのザマだ。ただあれだけ貶して追い出した手前お前にお願いしに行くのも気が引けてな……。結果実力だけあれば誰でもいいと引き入れてしまったのが最大級の落とし穴だった」
まあ確かにあの時点ではそのまま付いていったら確実に俺は死んでいただろうけどさ……。人並という物を超越した奴らの言う普通が如何に当てにならないかよくわかるな。
「で、アイツは結局何をしたんだ? お前が本当に言いたいことってそこからなんだろ?」
「あ、ああ……。多分俺たちの持っていたポーションに何か細工をされた。常時心が掻き毟られるような不快感と、目標である魔王打倒を成し遂げられない自分たちが責められているような気がしてきて、気付いた時にはあ――リースに剣を振るっていた。アイツの持っている宝具があれば目標と成し遂げられると思って」
罪悪感を植え付け、凶行に走らせる薬――確か原料はエンザイ草がベースになっていたっけ。俺のスキルではすぐに薬の細かい調合は出てこないが、なんかまた魔族関係のきな臭い話になってきたな。
「つまりお前の言いたいことを要約すると、人材難で仕方なく引き入れたデーモン崩れに一服盛られて唆されて同士討ちして1対3で全滅させられた挙句、その報復に軍まで動かしてきたと……」
「…………本当に恥ずかしい話だが、それでほとんど相違ない」
なんか脱力してしまうが、まあ起こった後のことを今更口頭で責め立てても、リースを助けられるわけでもない。これ以上の問答は時間の無駄だろう。
『光の精霊の奴に今度会った時このネタでからかってやろうっと』
精霊さまは光の精霊の選んだ勇者の失敗に喜んでいるが、世界を見守る存在としてそれでいいのか? いや、確かに精霊さまはヒトの味方でも魔族の味方でもないけどさ。
「今は大丈夫なのか? リースの救助中に背中からバッサリとか俺は御免被るぞ」
「大丈夫だ。俺は正気に戻っている。何故か知らないがお前の術で眠らされて起きた時から目の前に掛かっていた靄が晴れたような気がするんだ」
『実際さっきまでくすんでいた加護が輝きを取り戻しているし、掛かっていた悪影響は消えていると思ってもいいわ』
ヒトの加護を覗き見られる精霊さまがそう言うのなら、そう言うことなんだろう。少なくとも、今リースを助けるためにはゴブリンの手でも借りたいところだしな。
「……分かった。信用しておく」
「この聖剣に駆けて、必ず」
思いもしなかったが、勇者の加勢を得られたことで状況は動きそうだ。槍を支えに立ち上がり、もう一度リースの魔力を感知する。リースの傍に分かりにくいが俺やリースとよく似た魔力――どうやら散々俺たちを引っ張りまわしてくれた主賓のお出ましらしい。
次回:勇者(仮)+勇者VS魔王少女+ちょっと強い変な奴




