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第12話 フォンのスキル

前回のあらすじ:光属性の女の子と出逢いました

 ちょっと機嫌を直したかと思いきや、またリースの額に小さくしわが寄っていた。

おむずがりの”子供心”は俺もちょっと自信ないかな。冒険者ギルドにも兄弟制度みたいに新人冒険者をベテランが補佐しながら交流を深める研修とかあったけど、俺はずっと単独(ソロ)だったからその手の研修は参加してないしな。

明らかな年下とパーティーを組んだのはクージスのパーティーのウィルちゃんが初めてだったか。あの子は大人びていたけど。


「……話は変わるけど、フォンは何かスキルあるの?」

「あるよ……。【農家(ファーマー)】のスキルがな……」


これも俺の心を暗くしてくれる要因だ。農家のスキルは多種多様な農作物の採取、生育に関する知識収集力の向上、開墾の高速化、自分の畑防衛における耐久力、力の上昇などの効果がある。

現実には「これ魔王と戦うのになんか役に立つの?」というのが俺の偽らざる本音だ。開拓村で農業を営んでいた俺の少年時代を踏まえて水の精霊様から与えられたスキルみたいだが、生憎俺は農家じゃない。


「なにひそひそ話してるのさ! ボクにも教えてよ!」

「大したことは話してないって。ただ俺のスキルが役に立たないなってことだけだ」

「……冒険者向けのスキルじゃなかった」


 悲しいけどそれが俺のスキルの現実だ。とてもこんなスキルで魔王なんか倒せるわけがない。他の人に比べれば3属もの加護を授かっているだけマシなのかもしれないが、比較対象が勇者では哀れなものだ。


「つーか、魔物狩りをするにせよ【聖騎士】なんてレアスキル与えられた貴族のお嬢様がこんなところでパーティー募ってるんだよ。あんたみたいな部下を連れて行けばいいじゃねえか」

「それにつきましてはあまり広言出来ないんですが……。その……。相次ぐ魔族の襲撃や、件の人攫いもあってノトス王国全体が疲弊していますが、リンスレット家はその中でも酷いものです」

「もう部下なんてアルしかいないもんねー」


 ルドはあっけらかんと言うが、完全に没落寸前貴族じゃねえか。

「リンスレット領は人間世界の最北端で、誰も領土を通って行かないから通行税も上がらないです。それに加えて年がら年中魔族・魔物がやって来るのに、疲弊した王国の常備軍はそこまで広い防衛線を守ることが出来ません。今までは国がギルドを通じて冒険者を頼って魔物狩りを行っていたのですが、ここ数カ月で事情が変わりまして」

「街で話題になっていた人攫いとかの件か?」

「その通りです。冒険者の行方不明や死亡が相次ぐようになりました。死体を弄ばれたものから死因が特定できない損傷のない遺体まで様々ですが、確かなのはC級D級の冒険者が立て続けに減ったこともあって捌き切れなくなった魔物がリンスレット領の畑を頻回に襲うようになったのです」


 俺たちは魔物や魔族がどこから来るのかは知らないが、奴らとて生きる以上物を食らう生物であることは確認されている。防備の弱いところに畑があれば言うまでもなく食らいつくしに来るのが奴らだ。


「きっとボクに【聖騎士】のスキルが宿ったのも、魔族を退けることでリンスレット領全ての人が安心して畑に日々の糧を求められるようにするためだと思うんだ!」


 ルドは肩を震わせ、燃えていた。人のために自分の持てる力、与えられた力を使おうとするその意志が眩しくて、俺は少しだけルドから目を背けた。隣ではリースも思いっ切り俯いているし、やっぱりそんなところも俺たち似てるんだな。

 俺は魔王への復讐、リースはヒトに虐げられないため。つまるところ自分のためだ。


「熱い志だな」

「優しい子なんです。私のスキルも【上級従者(メイド)】なので戦闘向けではないですけど、あの子を1人で行かせる訳にはいかないので、こうして慣れない剣を取った次第です」


確かにメイドのスキルは戦闘に特化されているとは言いがたいが、人を見抜く人事能力。炊事清掃、主の資産管理能力や、果ては主を守護する目的での戦闘での対精神攻撃耐性、僅かながら身体活性も得られる超広域の複合スキルだ。

間違いなく俺の【農家】に比べれば当たりスキルだろう。勿論、見た目は若いのにそこまでのスキルを身に付けられた彼女の血の滲むような努力もあっただろうが。


「お願い致します。私たちとパーティーを組んでいただけないでしょうか? おそらく私1人でお嬢様を守ることは叶わないでしょう。加えてお嬢様はスキルこそ発現しましたが実践経験は多くなく、その実践も魔物相手です。魔族ではありません」

「なんで俺たちなんだ? 俺たちは、その……。こっちでは名は知られてないと思うんだが」


 一応俺はA級下位、リースはA級上位相当の1人ではあるが、俺はノトス領内に入ってから身分証明であるギルドカードを出したのはリースにミルクを買ったときに一度だけ。リースに至ってはギルドカードを持ってすらいない。等級を見抜かれたということは無いはずだ。


「ふふっ、メイドの目は誤魔化せないのですよ」


そう言ってアルは自身の右目を指で指した。どうやらスキルで俺たちの能力の表層くらいは読まれていたらしい。ちょっと俺もリースもギルドの中だからって油断していたか。


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