第16話
「今日は何もしなくていいですからね」
森へ着いたルカリオに、
最初にそう言った。
「何もしないとは、何をするんだ?」
「だから何もしないんです」
「意味が分からない」
「遊ぶとか。昼寝するとか。腹減ったら食べるとか」
「それは何かしているだろう」
「……細かいな」
今日は、
カイルが王宮へ掛け合ってくれた、
半日だけの休み。
勉強なし、
儀礼なし、
貴族との面会なし、
王族としての挨拶もなし。
護衛はもちろん来ているけど、
森の中では少し離れて待機することになっている。
マリエル王妃も、
許可してくれたらしい。
ルカリオが疲れていることは、
あの人も分かっていたんだろう。
「それにしても」
ルカリオを見る。
「今日はまともな服ですね」
「いつもまともだ」
「森で着るにはまともじゃないです」
今日は、
いつもの王子らしい服じゃない。
飾りも少ない、
動きやすそう。
汚れても困らなそうな服だ。
「今日は汚しても構わない服だそうだ」
カイルが言った。
「汚していいのか?」
ルカリオの目が、
少しだけ輝く。
「いいらしいですよ」
「本当に?」
「隊長が言ってるんだから」
確認するように、
カイルを見る。
「はい。今日は構いません」
「そうか」
嬉しそう、
やっぱり、
五歳だ。
◇
「幼獣は?」
「まず挨拶くらい――」
言い終わる前に、
もう歩いていく。
「早いって」
追いかける。
その先で、
ちびも、
ルカリオを見つけた。
ぱっと顔を上げる、
そのまま、
走った。
「来た!」
ルカリオも走る。
「危ないから――」
言ってるそばから、
ちびが飛びついた。
「うわっ!」
どさ、
ルカリオが、
草の上へ転がる。
「殿下!」
護衛たちが一斉に動く。
「大丈夫です」
手で止める。
「でも」
地面を見る。
ルカリオが、
笑っていた。
「ははっ」
ちびに顔を舐められている。
「こら、やめろ」
口では言うけど、
全然嫌そうじゃない。
服には草、
膝には土、
髪まで、
少し乱れている。
「殿下、お召し物が」
「今日は汚していい」
ルカリオが、
地面に座ったまま、
堂々と言う。
「ちゃんと許可取ってきたんだ」
思わず笑う。
横を見ると、
カイルも笑っていた。
この前、
疲れた顔で森へ来た子と、
同じには見えない。
休ませて、
よかった。
◇
ちびは、
随分大きくなった。
生まれたばかりのころは、
歩くことすら、
危なっかしかったのに。
今は、
走る、
飛びつく、
じゃれる。
ミアナから少し離れたところまで、
勝手に探検する。
もちろん、
成獣に比べたら、
まだまだ小さい。
「こっちだ!」
ルカリオが走る。
ちびが追う、
また飛びつく。
「おっと!」
今度は転ばなかった。
「上手くなりましたね」
「僕だって学ぶ」
ちびも、
学んだのか、
今度はオレを見る。
「……嫌な予感」
走ってくる。
「ちょ、待て!」
受け止める。
重い。
「お前、本当に重くなったな!」
前なら、
まだ簡単に抱えられた。
今は、
油断すると、
そのまま押し倒されそうになる。
「隊長!」
「成長したな」
「見てないで助けてください!」
カイルが、
笑いながら近づく。
ちびの身体を、
オレから引き離す。
「助かっ――」
今度は、
ちびがカイルの袖へ飛びついた。
「……」
「隊長」
「何だ」
「今度そっちです」
「見れば分かる」
袖を噛まれる。
引っ張られる。
でも、
カイルは怒らない。
「今日、甘くないですか?」
「休日だからな」
「ラグナに休日の意味分かります?」
「分からんだろうな」
「じゃあ甘やかす理由にならないでしょ」
「今日はいい」
珍しい。
でも、
こんなカイルも、
嫌いじゃない。
◇
「勝負する」
突然、
ルカリオが言った。
「何を?」
「こいつが、どちらに来るか」
ちびを指す。
「僕のほうに来る」
カイルが、
少しだけ眉を上げた。
「どうでしょうね」
「僕に懐いている」
「私も世話をしております」
「僕のほうだ」
「では試してみますか」
「何で二人とも本気なんです?」
いい大人と、
五歳児。
「多分オレに来ますよ」
二人が、
同時にこっちを見る。
「お前は反則だ」
「セナは反則だ」
「何でですか」
「匂いがある」
「それ込みでオレでしょ」
「だから反則だ」
離れたところへ、
三人並ぶ。
「せーの」
呼ぶ。
ルカリオ、
カイル、
オレ。
ちびが、
耳を動かした。
まず、
ルカリオを見る。
「ほら!」
次に、
カイル。
「まだ分かりませんよ」
そして、
一直線に、
オレへ。
「ほら」
「ずるい」
「反則だな」
二人が、
同じような顔をする。
五歳と二十五歳が。
「何で隊長までそんな顔するんです?」
「別に」
「してるでしょ」
「していない」
「ルカリオと同じこと言ってる」
「カイルと一緒にするな」
「殿下と一緒にしないでくれ」
「息ぴったりじゃないですか」
笑った。
◇
そこへ、
のそのそ、
さらに巨大な影。
「……ドルガ」
「来た」
「お前は呼んでない」
ドルガは、
当然、
気にしない。
オレたちの周りを、
鼻を動かしながら歩く。
「ドルガも遊びたいんじゃないか?」
ルカリオが言う。
「多分食べたいだけです」
「そんなことはない」
カイルが、
即座に否定した。
「隊長だけドルガに甘いですよね」
「甘くない」
「先生に太ったって言われたの忘れました?」
「俺は何もしていない」
「まだ言う」
ドルガが、
カイルのほうへ鼻を寄せる。
「ほら」
「何がだ」
「絶対何か期待してる」
「気のせいだ」
この人、
本当に、
ドルガにだけ弱い。
◇
昼、
森の休憩場所で、
三人で食事をした。
今日は、
王宮から料理も持ってきている。
さすが王子の食事。
普段より、
かなり豪華。
「婚約者なら、同じものを食べるものではないのか?」
「どこでそんな知識仕入れてくるんです?」
「侍従」
「また王宮教育」
肉料理、
魚、
焼き菓子、
野菜、
チーズ、
穀物料理。
いろいろある。
その中で、
カイルが、
何も言わず、
野菜と穀物の皿を、
オレの近くへ寄せた。
「……」
「どうした?」
「いや」
覚えてるんだ。
オレが、
何を食べるか。
祭りの日も、
食べられる店を、
調べてくれていた。
前なら、
よく気づくな、
くらいだった。
今は、
ちょっと違う。
自分のことを、
覚えていてくれた。
それが、
嬉しい。
「……」
視線を感じる。
ルカリオが、
オレを見る。
カイルを見る。
料理を見る。
また、
オレを見る。
「何です?」
「何でもない」
「何です、その顔」
「何でもない」
前に、
オレがカイルを見ると変だと言ったくせに。
今度は、
そっちが何か気づいた顔してる。
◇
「セナ」
「何?」
「どうぞ」
ルカリオが、
飲み物を差し出した。
「……ありがとうございます」
「うむ」
なぜか、
偉そう。
「婚約者だからな」
「まだやってたんですか、それ」
「婚約している間は婚約者だ」
「それはそうだけど」
カイルが、
一瞬だけ、
微妙な顔をした。
でも、
前みたいに、
大きく距離を取ったりはしない。
たぶん、
ルカリオとオレの間に、
恋愛なんて何もないことは、
カイルも分かっている。
それでも、
婚約は婚約。
そこだけは、
まだ変わらない。
◇
「カイルも食べろ」
今度は、
ルカリオが料理を差し出す。
「ありがとうございます、殿下」
「今日は殿下と言わなくていい」
「それはできません」
「なぜだ」
「私は護獣騎士団長ですので」
「今日は休みだ」
「殿下が休みでも、私は団長です」
「セナは僕を名前で呼ぶ」
「オレは貴族じゃないので」
「それは理由にならない」
カイルまで、
こっちを見る。
「じゃあ隊長も呼べばいいじゃないですか」
「できない」
「ほら」
「何が、ほら、だ」
身分、
立場、
本当に、
二人とも、
面倒くさい。
「今日は休みなんだから」
ルカリオを見る。
「そんなに王子っぽくしなくていいですよ」
「僕は休んでも王子だ」
「それはそうですけど」
昨日の話を、
少し思い出す。
王じゃなくなったら、
何になる。
「じゃあ」
考える。
「王子だけど、五歳ってことで」
「……」
ルカリオが考える。
「それならいい」
「いいんだ」
よく分からないけど、
納得したらしい。
◇
散々遊んだちびが、
とうとう疲れた。
オレの横へ来て、
伏せる。
そのうち、
頭を、
太腿の上へ乗せた。
「重い……」
「僕も」
「何が?」
ルカリオが、
反対側へ座った。
「何してるんです?」
「休む」
「そこじゃなくてもいいでしょ」
「ここがいい」
結果、
右にちび、
左にルカリオ。
動けない。
「人気者だな」
カイルが言った。
「人間からはそうでもないですけど」
いつもの感覚で、
答える。
「そうか?」
「え?」
カイルが、
周りを見る。
少し離れたところでは、
騎士団員たちが仕事をしている。
ミレーヌもいる。
隣には、
ルカリオ。
目の前には、
カイル。
「少なくとも」
カイルが言う。
「ここでは、そうでもないだろ」
「……」
言われて、
初めて、
ちゃんと見る。
昔、
人は、
オレの近くに来なかった。
来ても、
鼻を押さえる。
目を潤ませる、
離れる。
だから、
先に、
オレが離れるようになった。
今、
ここでは、
匂いがあっても、
人がいる。
普通に話す、
飯を食う、
字を教わる、
笑う、
隣に座る。
「……そうかも」
小さく言った。
何だろう、
この感じ。
まだ、
名前をつけるほどじゃない。
でも、
前とは、
違う。
◇
「眠いんじゃないですか」
隣を見る。
ルカリオの目が、
半分閉じている。
「眠くない」
「またそれ」
「眠く――」
数分後、
寝た。
「……」
オレの肩へ、
こつん、
頭が乗る。
「寝たな」
「寝ましたね」
反対側では、
ちびも熟睡。
「動けない」
「随分懐かれたな」
「どっちです?」
「両方だ」
「匂いのせいですかね」
「殿下は違うだろ」
「……」
確かに、
ルカリオは、
最初、
匂いに反応した。
でも、
今、
オレのそばにいる理由、
全部、
匂いで説明できるわけじゃない。
「殿下に」
カイルが、
小さな声で言う。
「王子としてではなく接する人間は少ない」
「王子なのは本当でしょ」
「ああ」
「なら普通に王子として――」
「それ以外もある」
「……」
「五歳の子供で。兄で。ラグナが好きで。負けず嫌いで」
「結構ありますね」
「だから」
カイルが、
眠っているルカリオを見る。
「殿下は、お前のそばが居心地がいいんだろう」
ふと、
口から出た。
「隊長は?」
「ん?」
「隊長は」
言ってから、
何聞いてるんだと思った。
「オレのそばは、居心地いいですか?」
「……」
カイルが黙る。
やっぱり、
聞くんじゃなかった。
「いや、今の――」
「……いいな」
「……」
心臓が、
跳ねる。
「ラグナが落ち着くから、仕事も随分楽になった」
「……そっち?」
「何か不満か?」
「別に」
不満は、
ある。
何で、
あるんだ。
◇
飲み物を渡してくれるため、
カイルが近づいた。
オレは、
両側を塞がれていて動けない。
「ほら」
「ありがとうございます」
受け取る。
指が、
触れた。
「……」
「……」
ほんの一瞬、
二人とも、
止まった。
祭りの日は、
手をつないだ。
あのときより、
今のほうが、
たった指が触れただけで、
ずっと気になる。
カイルも、
手を引かない。
ほんの、
少しだけ、
時間が長い。
「……幼獣……」
突然、
ルカリオが寝言を言った。
「……僕の……」
「……」
カイルの手が離れた。
「夢の中でも取り合ってる」
思わず笑う。
カイルも、
小さく笑った。
いいところだったような。
別に、
何もなかったような。
自分でも、
よく分からない。
◇
目を覚ましたルカリオは、
ちびを撫でながら言った。
「リリアナもここへ連れてきたい」
「まだ赤ちゃんですよ」
「大きくなったら」
「それなら」
「こいつと遊ばせる」
「年齢差、すごいことになりますよ」
「構わない」
「ちび、もうちびじゃなくなってるかも」
「それでもいい」
ルカリオは、
本気らしい。
「リリアナもラグナが好きになるだろうか」
「王族なんだから、好きなんじゃないですか?」
「血が濃いから好きとは限らない」
カイルが言う。
「あ」
そうか。
血。
能力。
性格。
全部。
別。
「じゃあ本人次第ですね」
「ああ」
「好きになればいい」
ルカリオが、
ちびを見る。
「こいつも小さいし。リリアナも小さい」
「比べるなって前にも言いましたよね」
「でも」
ルカリオが、
真面目な顔をする。
「守るのは同じだ」
「……」
ちびが生まれたとき、
『守らないとな』
そう言った。
今は、
リリアナもいる。
「ちゃんとお兄ちゃんですね」
「当然だ」
胸を張る。
ちょっと、
嬉しそう。
王、
じゃなくても、
この子には、
兄というものもある。
幼獣の遊び相手、
オレの婚約者、
森に遊びに来る子供、
いろいろある。
◇
ちびが、
少し離れた場所へ走っていく。
ミアナは、
食事中。
でも、
誰も、
放ってはいない。
ルウが、
ちびの動きを目で追う。
危ない方向へ行きそうになると、
別の成獣が、
身体を出して、
進路を変えさせた。
「……」
「どうした?」
カイルが聞く。
「母親だけで育ててるわけじゃないんですね」
「幼獣は群れ全体で守る」
「自分の子じゃなくても?」
「関係ない」
「へえ」
ルカリオも、
聞いていた。
「では」
ちびを見る。
「この子は皆の子なのか?」
「そういうわけではありません」
カイルが答える。
「ですが、皆で守るという意味では近いでしょう」
「……いいな」
「何が?」
「皆で守るの」
ルカリオが言う。
「いい」
「……」
王宮では、
誰が、
どちら側か、
そんな話ばかり。
ラグナは、
この子が、
誰の側なんて、
考えない。
ただ、
小さいから、
群れの子だから、
守る。
「……そうですね」
少しだけ、
胸に残った。
◇
午後、
ミレーヌに安全を確認してもらっていた玩具を出した。
丈夫な布を丸めたもの、
太めの紐。
「何だ、それ」
「ちび用」
投げる。
ちびが、
飛びつく。
「おお」
ルカリオも、
すぐ参加した。
「こっちだ」
紐を動かす。
ちびが追う。
「殿下、引っ張りすぎると危ないですよ」
「分かっている」
今度は、
カイルが反対側から、
布を動かす。
「隊長まで何してるんです?」
「少しくらいいいだろ」
「休日だから?」
「そうだ」
「さっきからそれ便利ですね」
そのうち、
また、
どっちに来るか、
ルカリオとカイルが張り合い始める。
「僕のほうだ」
「どうでしょうね」
「さっきはセナだった」
「今回は違います」
「二人とも」
呆れる。
「幼獣相手に何してるんですか」
結局、
ちびは、
また、
オレのところへ来た。
「……」
「……」
「だから何で二人とも同じ顔するんです?」
笑う。
ルカリオも、
カイルも、
ちびも、
森も。
何か、
すごく、
普通だった。
「……」
ずっと、
こうならいいのに。
気づいたら、
そう思っていた。
◇
そのまま、
自然に、
カイルを見る。
ルカリオと、
ちびを見ながら、
笑っている。
胸が、
少し、
苦しくなる。
『オレ、隊長のこと好きなのか?』
前に、
思った。
まだ分からない。
そうやって、
逃げた。
でも、
近づいたら嬉しい。
離れたら嫌だ。
祭りで、
一緒にいたのが楽しかった。
自分のことを、
覚えていてくれるのが嬉しい。
何でもない顔で、
野菜の皿を寄せるところまで、
見てしまう。
「……」
多分、
そうなんだろう。
オレ、
カイルが、
好きなんだ。
認めたところで、
何も変わらない。
オレは、
ルカリオの婚約者。
形式だけでも、
婚約者。
カイルは、
それを理由に、
距離を取っている。
「……分かったところで」
小さく呟く。
「どうすればいいんだ」
答えは、
出なかった。
◇
「殿下」
護衛が、
声をかける。
「そろそろお時間です」
「もう?」
ルカリオの顔が、
露骨に曇る。
「半日の予定ですので」
「……」
前なら、
まだ帰らない、
と言ったかもしれない。
でも。
「分かった」
今日は、
ちゃんと立ち上がった。
「また来てもいいか?」
「休み取れたら」
「取る」
「自分で取れるんですか?」
「母上に言う」
「強いな」
マリエル王妃相手に、
ちゃんと言うつもりらしい。
◇
最後に、
ルカリオが、
ちびの前へしゃがむ。
「また来るからな」
頭を撫でる。
ちびが、
返事の代わりみたいに、
ルカリオの服を噛んだ。
「分かったのか?」
「多分分かってないです」
「分かっている」
「何でそう思うんです?」
「僕を見ている」
「そりゃ目の前にいるから」
「分かっている」
満足そう。
「じゃあな」
もう一度、
撫でる。
ちびは、
また服を引っ張った。
「こら」
笑う。
泥だらけで、
髪も乱れて、
王子らしい格好なんて、
何一つしていない。
でも、
今日見た中で、
一番、
いい顔だった。
◇
「殿下」
ルカリオが森を出ていく。
その背中を、
カイルと並んで見送る。
「来たときより、顔色がいいな」
「休みって必要なんですよ」
「そうだな」
「隊長も休んだほうがいいんじゃないですか?」
「俺は休んでいる」
「今日仕事してたでしょ」
「お前もな」
「……」
顔を見る。
「それ言われると何も言えない」
二人で、
少し笑った。
◇
夕方、
ちびは、
ミアナのそばで眠っていた。
その周りに、
自然に、
他のラグナたちがいる。
一頭だけが、
ずっと見張っているわけじゃない。
誰かが寝れば、
誰かが起きている。
誰かが離れれば、
別の個体が近くにいる。
群れ全体で、
小さな一頭を、
守っている。
「……」
今日のルカリオを思い出す。
泥だらけで、
笑っていた。
ちびと張り合って、
リリアナもいつかここへ連れてきたいと言った。
『でも守るのは同じだ』
そう言った。
隣を見る。
カイルがいる。
少し離れたところには、
騎士団のみんな、
ミレーヌもいる。
ラグナがいる。
ちびがいる。
ルカリオも、
また来る。
王位のことも、
婚約のことも、
今日は、
少しだけ、
忘れられた。
ルカリオが笑って、
ちびが走って、
カイルが隣にいる。
こんな日が、
またあればいい。
そのときのオレは、
それがずいぶん贅沢な願いだなんて、
思っていなかった。




