かぐや姫引き止め大作戦!
ドラキュラ退治を終え、日本へ帰ってきた桃太郎一行。
ウィリアムから届いた大量の報酬に大喜びした一行は、「ドラキュラ退治お疲れ様会」を開くため、京の都へと向かうことになった。
しかし、都で待っていたのは――まさかの“かぐや姫トラブル”。
貢がせたお宝を持ったまま月へ帰ろうとするかぐや姫。
それを阻止したい公家たち。
そして、なぜか始まる綱引き。
今回は昔話界でも超有名ヒロイン・かぐや姫が登場!
桃太郎とかぐや姫、絶対に相性が悪い二人が激突します。
第8話、開幕です!
ドラキュラ退治から数週間後――。
備前の桃太郎邸には、大量の木箱が届いていた。
「うおおおおっ!!」
サルが歓声を上げる。
「金貨だ!!」
「こっちは宝石ですよ!」
キジも目を輝かせた。
木箱の中には、金銀財宝がぎっしり詰まっていた。
差出人はもちろん、トランシルバニアのウィリアムである。
「律儀な奴だなぁ」
桃太郎は腕を組んで頷いた。
「ちゃんと報酬送ってきたぞ」
犬は金貨を持ち上げながらニヤリと笑う。
「旦那、これはもう豪遊できますぜ!」
「よし!」
桃太郎は立ち上がった。
「ドラキュラ退治お疲れ様会だ!」
「待ってましたぁぁぁ!!」
こうして桃太郎一行は、景気よく京の都へ旅に出ることになった。
都は相変わらず華やかだった。
人々が行き交い、
屋台が並び、
芸人たちが騒いでいる。
「やっぱ都会は違うなぁ」
サルが感心する。
「備前とは人の数が段違いだ」
「旦那、まずは宿探しですかね?」
犬が周囲を見渡した。
しかし人気の都。
なかなか空いている宿が見つからない。
「うーん……」
桃太郎が困っていると――。
「あ、あの……!」
背後から声がした。
振り返ると、一人の公家風の男が立っていた。
細身で青白く、やたら疲れた顔をしている。
「あの、鬼退治で有名な桃太郎さんでしょうか?」
「そうだけど?」
桃太郎は首を傾げた。
「おたく誰?」
「わ、私は藤原道雅と申します……」
見るからに弱そうだった。
しかもかなりやつれている。
「どうしたんだ?」
桃太郎が聞くと、公家は涙目になった。
「実は……かぐや姫に騙されたのです……!」
「は?」
話を聞けば、男はかぐや姫へ求婚していたらしい。
しかし――。
「お宝を持ってきてください」
「珍しい品をください」
「愛を見せてください」
などと言われ、気付けば大量の財宝を貢いでいたという。
「でも今夜、かぐや姫は月へ帰ると……!」
男は膝をついた。
「せめて貢いだお宝だけでも返してほしいのです……!」
「うわぁ……」
サルがドン引きする。
「重課金勢だ……」
犬も真顔だった。
「完全に沼ってますね」
桃太郎は頭を掻いた。
「かぐや姫かぁ……」
有名人である。
しかも昔話界でもトップクラス。
「なんかワガママそうなんだよなぁ……」
桃太郎は露骨に嫌そうだった。
しかし公家の男は本気で落ち込んでいる。
さすがに少し可哀想になった。
「……しゃーねぇな」
桃太郎はため息を吐いた。
「協力してやるよ」
「本当ですか!?」
「ただし!」
桃太郎は指を突きつける。
「今回も総力戦だ!」
その瞬間、桃太郎は次々と指示を飛ばした。
「サル! キジ! 犬!」
「へい!」
「仲間を集めてこい!」
「了解!」
「メデューサちゃん!」
「なに?」
「夜までに百人力キビ団子を大量生産!」
「また!?」
「公家さん!」
「は、はい!」
「家来の中から力自慢をかき集めろ!」
「わかりました!!」
一気に動き出す一行。
そして桃太郎だけは、単独でかぐや姫の屋敷へ向かった。
夜――。
満月が空に浮かんでいた。
かぐや姫の屋敷では、別れの時が近づいていた。
「お爺様、お婆様……」
かぐや姫が涙を浮かべる。
「今までお世話になりました……」
老人夫婦は泣いていた。
「かぐややぁ……!」
「元気でなぁ……!」
その時。
空から光が降り注ぐ。
眩い月光。
そして現れたのは、月の使者たちだった。
「迎えに参りました」
白い衣をまとった者たちが、神々しく船を降ろす。
かぐや姫は静かに船へ乗った。
船はゆっくり浮上していく。
――その瞬間。
「ちょっと待ったぁぁぁ!!」
ドゴォン!!
屋敷の門が吹き飛んだ。
「何事!?」
月の使者たちが驚く。
そこにいたのは――桃太郎だった。
「ふぅ……ギリギリ間に合ったぜ」
しかも船には既に巨大なロープが括りつけられている。
「おい!?」
かぐや姫が叫ぶ。
「何してるのよあんた!!」
桃太郎はロープを引っ張った。
「決まってるだろ!」
「お宝返還だ!!」
「最低!!」
かぐや姫はブチ切れた。
「桃太郎! あんた備前の田舎で大人しくしてなさいよ!」
「うるせぇ!」
桃太郎も怒鳴る。
「映画化経験多いからって調子乗りやがって!!」
「そっちこそドラキュラ倒した程度でイキるな!!」
口論が酷い。
その時だった。
「旦那ぁぁぁ!!」
サルたちが到着した。
しかも大量の仲間付き。
「桃太郎ファミリー集合ですぜ!!」
「お待たせしました!」
「空から援護します!」
さらに――。
「桃太郎さん!!」
公家も家来を大量に引き連れてきた。
「力自慢を集めてきました!!」
「よし!」
桃太郎が叫ぶ。
「引くぞぉぉぉ!!」
「オーエス!!」
「オーエス!!」
大人数でロープを引っ張る。
船が少しずつ下がった。
「なっ!?」
月の使者たちが驚愕する。
「馬鹿な!?」
「地球人の腕力が月の船を……!?」
かぐや姫は顔を真っ赤にしていた。
「ちょっと何やってるのよ!!」
「お宝置いてけぇぇぇ!!」
「ゲス!!」
だが桃太郎たちは本気だった。
さらにそこへ――。
「桃太郎さん!」
メデューサが到着する。
巨大な桶いっぱいのキビ団子を抱えて。
「百人力キビ団子できたわよ!」
「ナイス!!」
桃太郎は笑った。
「みんな食えぇぇぇ!!」
団子を食べた人々の筋肉が膨れ上がる。
「うおおおお!!」
「力がみなぎる!!」
「腰が治った!!」
老人までムキムキになった。
「引けぇぇぇぇ!!」
「オーエス!!」
地上側のパワーが急激に強くなる。
船はどんどん引き戻されていった。
「か、かぐや姫!!」
月の使者たちが焦る。
「もう限界です!!」
「何とかしなさいよ!!」
「無理です!!」
ロープが悲鳴を上げる。
ついに月の使者は叫んだ。
「撤退します!!」
「えっ!?」
「来年の十五夜にまた迎えに来ますので!!」
バツン!!
船が切り離された。
「きゃああああ!!」
かぐや姫の船はそのまま地面へ墜落した。
ドガァァァン!!
土煙が舞う。
しばらくして――。
ボロボロになったかぐや姫が現れた。
「……最悪」
周囲には散乱する財宝。
公家たちの目が光る。
「あっ」
「私の宝玉!!」
「返してください!!」
「逃がすな!!」
かぐや姫は一瞬で囲まれた。
さらに、今まで貢がせていたことも全部バレた。
「酷い女だったんだな……」
「月の姫っていうから清楚かと……」
「ただの浪費家では?」
ヒソヒソ声が飛ぶ。
「……」
かぐや姫の肩が震えた。
そしてギロリと桃太郎を睨む。
「全部あんたのせいだからね!!」
「知らんがな!」
「こうなったら責任取りなさい!!」
「は?」
「来年の十五夜まで、あんたの家に泊まるから!!」
桃太郎は固まった。
「……え?」
サルが吹き出す。
「旦那、ヒロイン増えましたね」
「増えてねぇよ!!」
犬はニヤニヤしていた。
「アナ王女泣きますぜ」
「何も始まってねぇわ!!」
こうして――。
行き場を失ったかぐや姫は、一年間限定で桃太郎の家に居候することになったのである。
桃太郎はまだ知らない。
この月の姫が、今後とんでもない騒動を巻き起こすことを――。




