桃太郎VSドラキュラ! そして石化の魔眼
ついに始まった――桃太郎一行VSドラキュラ軍団の総力戦!
吸血鬼たちが支配する不気味な城で、桃太郎たちは圧倒的な数の敵に追い詰められていく。
しかし、鬼退治で名を上げた英雄・桃太郎には秘策があった!
キビ団子。
桃。
そして、絶対に敵に回してはいけない“あの美少女”。
ギャグも勢いも最高潮!
桃太郎たちは無事にドラキュラを倒し、トランシルバニアに平和を取り戻せるのか――?
第7話、開幕です!
ドラキュラ城――。
その大広間では、桃太郎一行と吸血鬼軍団の激戦が繰り広げられていた。
「うおおおお!!」
犬が吸血鬼を吹き飛ばす。
「渋柿食らえぇぇぇ!!」
サルはまだ柿を投げていた。
「お前いつまで柿使ってるんだ!」
キジがツッコむ。
「だってまだ余ってるんだよ!」
だが、さすがは吸血鬼軍団。
倒しても倒しても次々に現れる。
しかも普通の鬼より素早い。
天井を走り、
壁を這い、
牙を剥きながら襲い掛かってくる。
「チッ……!」
桃太郎は刀で応戦していた。
だが表情は険しい。
「数が多すぎる!」
「桃太郎さん!」
キジが空から叫ぶ。
「このままだと押し切られます!」
その時だった。
桃太郎がニヤリと笑った。
「キジよ」
「はい!」
「そろそろではないか?」
キジは窓の外を見た。
そして目を見開く。
「……来ました!」
次の瞬間。
ドラキュラ城の門が吹き飛んだ。
ドゴォォォン!!
「な、何事だ!?」
吸血鬼たちが振り向く。
そこにいたのは――。
「うおおおおお!!」
「桃太郎様のためだぁぁぁ!!」
「ドラキュラを倒せぇぇぇ!!」
大量の村人たちだった。
農民。
漁師。
鍛冶屋。
老人までいる。
しかも全員、異様に筋肉質。
「なんだあの集団!?」
ドラキュラ軍団がざわつく。
その理由は単純だった。
桃太郎は事前に、アナ王女へ大量のキビ団子を作らせていたのである。
しかも特製。
“百人力のキビ団子”。
食べた者の身体能力を一時的に超強化する、恐るべき代物だった。
「すげぇ……!」
サルが驚く。
「農民なのにゴリラみたいになってる!」
「キビ団子パワーだ」
桃太郎が胸を張る。
村人たちはクワやスキを持ち、吸血鬼へ突撃する。
「畑荒らしより怖くねぇ!!」
「年貢の恨みを思い知れぇぇぇ!!」
妙に士気が高い。
吸血鬼たちは一気に押し返された。
「馬鹿な……!」
ドラキュラが歯ぎしりする。
桃太郎はさらに叫んだ。
「よし! 日本から取り寄せた“あれ”も使え!!」
犬とキジが荷袋を開く。
中に入っていたのは――。
「桃?」
吸血鬼たちが困惑する。
次の瞬間。
「投げろぉぉぉ!!」
大量の桃が飛んだ。
ゴッ!
ベチャ!
「ぎゃああああっ!!」
吸血鬼たちが悲鳴を上げる。
「なんだこれは!?」
「体が焼ける!!」
実は桃は、古来より邪気を払う神聖な果物とされている。
つまり吸血鬼と相性最悪だった。
「桃が弱点だったのか!?」
ウィリアムが驚愕する。
「いや今思いついた」
「行き当たりばったり!?」
吸血鬼たちは逃げ惑う。
「くそぉぉぉ!!」
ドラキュラは激怒していた。
「桃太郎めぇぇぇ!!」
その瞬間。
ドラキュラの姿が消える。
「桃太郎さん後ろ!!」
キジが叫んだ。
しかし遅い。
ドラキュラは一瞬で桃太郎の背後へ回り込み、その首筋へ牙を突き立てた。
「勝った!!」
ガブッ!!
そして――。
数秒後。
「……ペッ!!」
ドラキュラが吐き出した。
「な、なんだこれは!?」
桃太郎の首から流れていたのは、血ではなかった。
桃の果汁のような甘い液体だった。
「甘っ!!」
ドラキュラがむせる。
「虫歯になるわこんなもん!!」
桃太郎は首を押さえながら怒鳴った。
「この野郎!!」
ゴン!!
ゴン!!
ゴン!!
桃太郎の拳骨が炸裂する。
「俺はアン〇ンマンじゃねぇんだぞ!!」
「ぐはぁっ!?」
ドラキュラは吹き飛んだ。
しかも様子がおかしい。
体が急激に衰えていく。
「な、何故だ……!」
ウィリアムが呟く。
「まさか……桃から生まれた桃太郎さんの血が、聖属性みたいになってる……?」
「知らん!」
桃太郎は適当だった。
だが結果的に、桃太郎の血はドラキュラにとって猛毒になっていたのである。
ドラキュラは膝をついた。
「くっ……回復せねば……」
赤い瞳が周囲を見渡す。
「美女の生き血があれば……!」
その視線の先に、一人の少女が立っていた。
眼鏡をかけた美少女。
メデューサ――いや、“メイプルちゃん”である。
「これは運がいい……」
ドラキュラが笑った。
「あの娘の血をいただく!!」
「あ」
桃太郎が顔を引きつらせる。
「ドラキュラ、その子はやめた方が――」
だが遅かった。
ドラキュラはメデューサへ飛びかかる。
「いただ――」
その瞬間。
カチャ。
メデューサが眼鏡を外した。
ゾワッ――。
空気が変わる。
髪が無数の蛇へ変化する。
美しい少女の姿は、神話の怪物そのものへと変貌した。
「えっ」
ドラキュラが固まる。
「あなた、距離感近すぎるのよ」
メデューサの瞳が輝いた。
ピカァァァァッ!!
次の瞬間。
ドラキュラの体は石へ変わっていく。
「な、ななななっ――」
完全石化。
ドラキュラはそのまま硬直した。
沈黙。
吸血鬼軍団も固まる。
サルが震えながら呟く。
「やっぱこの人が一番怖くない……?」
「言うな」
桃太郎は慌ててメデューサへ駆け寄った。
「メデューサちゃん!」
「なに?」
「早く眼鏡! 眼鏡かけて!!」
「あ、はいはい」
メデューサが眼鏡をかける。
すると蛇髪が消え、再び美少女の姿へ戻った。
「便利ねこれ」
「便利じゃねぇよ!!」
桃太郎は冷や汗を流した。
その時だった。
ドラキュラが石化したことで、周囲の吸血鬼たちに異変が起きる。
「うっ……!」
「体が……!」
吸血鬼たちが次々と人間へ戻っていった。
どうやらドラキュラの力で吸血鬼化されていたらしい。
「戻った……!」
「人間に戻れたぞ!!」
城中に歓声が響く。
村人たちは涙を流して喜んでいた。
「桃太郎様!!」
「ありがとう!!」
「救世主だ!!」
しかし、その中で一人だけ首を傾げる村人がいた。
「……でも今、なんか凄い怪物いなかった?」
「蛇の髪だったような……」
「あ」
桃太郎が凍りつく。
「そんなのいるわけないだろ!!」
桃太郎は即座に叫んだ。
「気のせいだ気のせい!!」
「そ、そうかな……?」
「それよりアナ王女に勝利を知らせに行け!!」
「お、おおーっ!!」
勢いで誤魔化した。
桃太郎は小声で呟く。
「……バレる前に帰るぞ」
「ですよねぇ……」
ウィリアムも苦笑した。
その後。
桃太郎たちは、ひっそりと城を後にした。
「ウィリアム!」
桃太郎が手を振る。
「アナ王女によろしくな!」
「桃太郎さん!」
ウィリアムは深々と頭を下げた。
「本当にありがとうございました!」
「報酬は後で送りますんで!」
「おう!」
こうして――。
長きに渡るドラキュラ退治の旅は終わった。
日本へ帰国した桃太郎たちは、その後しばらく平和に暮らしたという。
特にメデューサは、その石化能力を活かし、石仏作りで大成功した。
「はい次の人ー」
「不動明王風でお願いします」
「任せて」
もはや完全に職人である。
そして桃太郎は今日も思う。
「やっぱ旅っていいな」
だが――。
世界には、まだまだ怪物が存在していた。
桃太郎たちの冒険は、もう少しだけ続くらしい――。




