メデューサとキビ団子作戦
ついに日本を飛び出し、西洋を目指す桃太郎一行!
堺から船に乗り、天竺を経由しながら世界を旅する一行であったが、道中ではまさかの“あの有名猿”と遭遇してしまう。
さらに、ギリシャの都市アテネでは、人を石に変える怪物・メデューサが暴れ回っていた――。
果たして桃太郎たちは、最強クラスの魔眼を持つ怪物にどう立ち向かうのか?
今回も桃太郎一行の戦法は、正攻法とは程遠いです。
第5話、開幕!
都へ辿り着いた桃太郎一行は、そのまま堺の港を目指した。
日本最大級の港町――堺。
そこには異国の船が並び、見たこともない服を着た商人たちが行き交っている。
「おお……!」
サルが目を輝かせた。
「すげぇ! 本当に海外の人がいる!」
「世界は広いんですよ」
ウィリアムが笑う。
しかし桃太郎は腕を組み、不満げだった。
「思ったより地味だな」
「何期待してたんですか」
「もっとこう、派手な歓迎とか」
「誰も来ませんよ!?」
キジが即座にツッコむ。
だが、その数分後。
「おおっ! あれが鬼退治の英雄・桃太郎か!」
「本物だ!」
「絵を描かせてくれ!」
「握手してくれ!」
なぜか人だかりができた。
「来たぁぁぁぁ!!」
桃太郎がガッツポーズする。
「世界人気来てる!!」
「都合のいい世界ですねぇ……」
サルが呆れた。
その後、一行は大型船へ乗り込み、西へ向けて出航した。
大海原。
荒れる波。
未知の世界。
まさに大冒険――。
のはずだったのだが。
「うおぇぇぇ……」
桃太郎は甲板で死んでいた。
「酔った……」
「英雄弱っ!!」
キジが叫ぶ。
「鬼は倒せるのに船酔いするんですか!?」
「陸専門なんだよ俺は……」
犬は普通に元気だった。
「ガハハハ! 海も悪くねぇな!」
「犬だけ適応力高すぎません?」
一方ウィリアムは真顔で祈っていた。
この旅、本当に大丈夫なのだろうか。
数週間後――。
一行はついに天竺へ到着した。
異国の香辛料の匂い。
巨大な寺院。
見たこともない文化。
桃太郎たちは目を輝かせた。
「おぉ……」
「すげぇな天竺」
「なんか強そうな奴がいっぱいいそうです」
そして、その予感は当たった。
「ん?」
山道を進んでいた桃太郎たちの前に、一匹の猿が現れた。
ただし普通の猿ではない。
金色の毛並み。
如意棒。
異常な威圧感。
「お前、なかなか強そうだな」
猿はニヤリと笑った。
サルが青ざめる。
「げぇっ!? まさか……!」
「俺様は孫悟空だ!」
沈黙。
そして桃太郎が眉をひそめた。
「誰?」
「知らないんですか!?」
ウィリアムが叫ぶ。
「超有名人ですよ!?」
「ふーん」
しかし桃太郎は興味なさそうだった。
それが気に障ったのか、孫悟空の額に青筋が浮かぶ。
「テメェ……!」
「何だよ」
「日本の桃野郎が調子乗ってんじゃねぇぞ!」
「そっちこそ猿のくせに偉そうだな!」
「猿扱いするな!!」
そこからは酷かった。
桃太郎と孫悟空は、出会って三分で殴り合いを始めた。
ドゴォォン!!
山が揺れる。
「やめてください!!」
ウィリアムとサルが止めに入る。
だが二人とも聞かない。
「ドラマ化経験あるからって上から目線なんだよ!」
「そっちは昔話一発屋だろうが!」
「何だとコラァ!!」
その時だった。
「悟空!」
穏やかな声が響く。
現れたのは、僧衣を纏った男――三蔵法師だった。
「また喧嘩しているのですか」
「だってコイツが!」
「そっちが!」
完全に子供である。
三蔵法師はため息をつき、ウィリアムに頭を下げた。
「申し訳ありません」
「い、いえこちらこそ……」
こうして、何とか大乱闘は回避された。
だが別れ際。
「次会ったら勝負だ!」
「望むところだ猿!」
最後まで仲が悪かった。
そして数か月後――。
一行はついにアテネへ到着した。
白い建物が並ぶ巨大都市。
神殿。
市場。
活気に満ちた街並み。
「うおおお!!」
桃太郎が感動する。
「海外っぽい!!」
「海外ですからね」
すると街の人々がざわめき始めた。
「あれが桃太郎か!」
「鬼退治の英雄!」
「本当に来てくれたんだ!」
民衆が一斉に集まってくる。
しかも歓迎ムードだ。
桃太郎は急に髪をかき上げた。
「いやぁ困るな」
「急に格好つけ始めた」
だが、歓迎の理由はすぐに分かった。
「お願いします!」
街の長老が頭を下げる。
「どうかメデューサを倒してください!」
「メデューサ?」
ウィリアムが説明する。
「見た者を石に変える怪物です」
「……は?」
桃太郎は固まった。
「見ただけで?」
「はい」
「チートじゃねぇか!!」
桃太郎は即座に後退した。
「無理無理無理!!」
「珍しく弱気ですね」
「だって視線で即死だぞ!?」
鬼より危険だった。
しかし犬が静かに言う。
「桃太郎の旦那」
「何だ」
「不可能を可能にするのがヒーローってもんでしょう」
「また始まった……」
「ここで勝てば、“ディスティニー映画”化も夢じゃありませんぜ」
桃太郎の目が変わった。
「……世界的人気アニメ化か」
「絶対あります!」
「よし、やる!」
単純だった。
その後。
桃太郎は街の職人街へ向かった。
「これ作ってくれ」
渡されたメモを見た職人たちは困惑する。
「……本当にこれで?」
「ああ」
桃太郎は不敵に笑った。
「完璧な作戦だ」
数日後――。
一行はメデューサの住む島へ向かった。
島全体が不気味な霧に包まれている。
「絶対ヤバい場所ですよここ……」
サルが震える。
しかし桃太郎は堂々としていた。
「メデューサぁぁぁ!!」
いきなり挑発した。
「鬼退治で有名な桃太郎様が相手してやる!」
すると洞窟の奥から、美しい女の声が響く。
「……愚かな英雄ね」
現れたのは、蛇髪の美女だった。
妖艶な瞳。
美しい顔。
だが髪の毛は無数の蛇でできている。
「貴様ら全員、石に変えてやる」
その瞬間、霧の向こうに桃太郎たちの影が見えた。
メデューサの瞳が輝く。
「石になれ」
ピカァァァッ!!
魔眼が発動する。
そして霧の奥には――。
石化した桃太郎たちの姿があった。
「ふふっ」
メデューサは笑う。
「他愛もない。英雄殺しの魔眼の前では全て無力」
その時だった。
「“英雄殺し”って酒の名前みたいだな!!」
「!?」
背後から桃太郎の声。
振り向いた瞬間。
「今だぁぁぁ!!」
桃太郎!
犬!
サル!
キジ!
四人が同時に飛びかかった。
「なっ!?」
「押さえろ!!」
犬が羽交い絞めにし、
サルが腕を固定し、
キジが蛇髪を突っつき、
桃太郎が口をこじ開ける。
「何をする!?」
「これでも食らえ!!」
桃太郎は強引にキビ団子を押し込んだ。
「むぐっ!?」
メデューサが飲み込んだ瞬間。
ピカァァァ……。
蛇髪が消えていく。
禍々しい雰囲気も薄れていく。
そして現れたのは――。
一人の美少女だった。
「……あら?」
メデューサは目をぱちぱちさせる。
「私、どうしたのかしら」
「成功だ!」
桃太郎が笑う。
「無性に……桃太郎さんに協力したくなってきたわ……」
ウィリアムは呆然としていた。
「まさか……仲間化した……?」
実は最初に石化された“桃太郎たち”は偽物だった。
アテネの石工職人に作らせた精巧な石像。
さらに霧は、キジがドライアイスに水をかけて必死に発生させていた人工霧。
「俺、ずっと団扇で扇いでたんですよ……」
キジが疲労困憊で言う。
「地味に大変だった……」
サルも肩で息をしていた。
「俺ら毎回やってることがおかしくない?」
「勝てばいいんだよ」
桃太郎は胸を張る。
こうして――。
メデューサは桃太郎一行の新たな仲間となった。
後日。
一行はアテネの教会で、メデューサ専用の“魔眼殺しの眼鏡”を作ってもらっていた。
「これ便利ね」
「外すなよ」
「分かってるわ」
メデューサは微笑む。
その姿は、もう怪物には見えなかった。
「よし!」
桃太郎は遠くを見つめる。
「次はいよいよトランシルバニアだ!」
ドラキュラ。
吸血鬼の王。
旅の本当の目的が、ようやく近づいていた――。
第5話を読んでいただきありがとうございました!
今回はついに海外編に突入し、
天竺
孫悟空
アテネ
メデューサ
など、一気に世界観が広がる回になりました。
特に孫悟空との小競り合いは、
「昔話界のスター同士が会ったら絶対ライバル視するだろうな」
と思いながら書いていました(笑)
また今回のメデューサ戦は、
「石化能力相手にどう戦うのか?」
をギャグ方向に全力で考えた結果、
石像の偽物
人工霧
キビ団子洗脳
という、いつもの桃太郎らしい攻略法になりました。
もはや“鬼退治”ではなく“知恵と勢いで神話を攻略する集団”になりつつあります。
そして新たに仲間になったメデューサ。
美少女化した彼女が今後どんな立ち位置になるのかも、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです!
次回はいよいよ、ドラキュラが待つトランシルバニアへ――。




