新ヒロイン獲得会議! 東国妖怪スカウト大作戦
西洋での激しい旅を終え、備前へ戻って来た桃太郎一行。
しかし――。
かぐや姫は月へ帰り、メデューサも失い、一行はかつてないほど静まり返っていた。
特に犬は、この危機を深刻に受け止めていた。
「このままでは作品が地味になる!」
……いや、お前が気にするのそこなのか。
そんなツッコミを入れたくなるような理由から始まる今回の旅ですが、犬なりに考えた末の結論は“新たな仲間探し”。
目指すは東国。
狙うは人気妖怪――玉藻の前と雪女。
果たして桃太郎一行は、新たな仲間を得ることができるのか。
そして、メデューサ復活への手がかりは見つかるのか。
第21話、どうぞお楽しみください。
かぐや姫が月へ帰ってから数日――。
桃太郎一行は、久しぶりに静かな日々を送っていた。
朝起きて、畑を耕し、川で洗濯し、昼は縁側で茶を飲む。
争いもなく、妖怪退治もなく、空から柿や骨が降ってくることもない。
平和そのものだった。
「……平和だなぁ」
桃太郎は縁側で大きく伸びをする。
サルは柿をかじり、キジは羽づくろいをしている。
犬はというと、腕を組んで難しい顔をしていた。
「桃太郎の旦那」
「ん?」
「この状態はまずいです!」
「え?」
犬が勢いよく立ち上がる。
「ちょっとみんな集合してください! 緊急会議です!」
「またかよ……」
桃太郎は嫌そうな顔をする。
だが犬は真剣そのものだった。
結局、一行は居間に集められる。
犬はどこから持ってきたのか、黒板まで用意していた。
「いいですか皆さん!」
犬がバンッと黒板を叩く。
「この作品の閲覧数が一度大きく落ちた時期がありました!」
「閲覧数?」
桃太郎は首を傾げる。
「何の話だ?」
「メタ発言やめろ犬君」
キジが小声で注意する。
だが犬は止まらない。
「ドラキュラ退治後、一時的に読者離れが起きたんですよ!」
「そんなことになってたの!?」
サルが驚く。
「しかし!」
犬は指を突き上げる。
「かぐや姫の登場回から数字が回復したんです!」
「え、あいつそんな人気あったの?」
桃太郎は本気で驚いた。
「人気ありましたよ。ツッコミもできるし、理不尽だし、暴力系だし、読者受けが良かったんです!」
「最後ただの危険人物だったぞ」
「そこが良かったんですよ!」
犬は熱弁する。
「つまり!」
黒板に大きく『女っ気不足』と書く。
「このまま男だけの旅が続けば、確実に飽きられます!」
「そんな身も蓋もない話ある?」
キジが引いている。
しかし犬は構わない。
「新ヒロインが必要なんです!」
桃太郎は腕を組む。
「そう言われてもなぁ……」
「候補は?」
「えーと……浦島太郎の乙姫とか?」
その瞬間、犬が却下の札を叩きつけた。
「却下です!」
「早っ!」
「あの海のキャバクラ嬢はダメです!」
「言い方!」
「舞台が海中になりますし、人魚姫とか深海系作品とのコラボがない限り厳しいです!」
「なんだその分析」
桃太郎は若干引いていた。
「じゃあ……清姫とか?」
犬の顔が真顔になる。
「旦那」
「な、なんだ」
「この作品を『ス〇ール・デイズ』みたいにしたいんですか?」
「嫌だ」
即答だった。
「ですよね?」
「鍋の中に閉じ込められて燃やされるのは嫌だ……」
サルが震える。
「おいらも嫌っす……」
その後も候補は出た。
織姫。
天女。
八百比丘尼。
鈴鹿御前。
だが犬は全部却下する。
「弱い!」
「知名度が足りない!」
「属性が古い!」
「炎上する!」
もはや何の会議なのかわからない。
そして犬は、満を持して壁に二枚の絵を貼った。
一枚は、妖艶な美女。
九本の尾を持つ黄金の狐。
もう一枚は、白い着物を纏った冷たい美貌の女。
「市場が求めているのは、この二人です!」
「市場って何だよ」
桃太郎が呆れる。
犬は指し棒で絵を叩く。
「まずはこちら!」
パンッ!
「玉藻の前! 白面金毛九尾の狐!」
さらにもう一枚。
パンッ!
「雪女!」
「いや待て」
桃太郎が手を挙げる。
「姫じゃないだろその二人」
「いいんですよ!」
犬が叫ぶ。
「メデューサさんだって妖怪だったじゃないですか!」
「まあ、そうだけど……」
「しかも玉藻の前はゲーム・アニメ・漫画界隈で超人気!」
パンッ!
「雪女も海外人気が高い!」
パンッ!
「属性が強い!」
パンパンパンッ!
「うるせぇ!!」
桃太郎が突っ込む。
だが犬は止まらない。
「クール系! 妖艶系! ケモミミ! 白髪! 長寿! 海外需要!」
「最後の方もう何言ってるかわからん」
キジが遠い目をする。
サルはなぜか感心していた。
「犬さん、妙に詳しいっすね……」
「プロデューサーですから」
「何の?」
「桃太郎ファミリーの」
桃太郎は頭を抱えた。
「で、その二人どこにいるんだ?」
「東国です!」
犬は地図を広げる。
「玉藻の前は坂東、下野の国!」
「ほう」
「雪女は奥州、遠野!」
「遠いなぁ……」
桃太郎がため息をつく。
だが犬はニヤリと笑った。
「しかもこの二人、長命の妖怪です」
「……?」
「つまり」
犬が静かに言う。
「メデューサさんを復活させる方法を知っているかもしれません」
空気が変わった。
桃太郎の目が一気に鋭くなる。
「……それを先に言え犬!!」
「今言いました」
「最初に言え!!」
サルも立ち上がる。
「行きましょう桃太郎さん!」
キジも羽を広げる。
「東国ですね!」
桃太郎は静かに戸棚を見る。
そこには、メデューサの破片が入った壺。
しばらく黙っていたが、やがて立ち上がった。
「……行くか」
犬が満足そうに頷く。
「決まりですね」
「しかし東国かぁ」
サルが呟く。
「どんなとこなんすかね」
「寒そうです……」
キジが震える。
犬はニヤリと笑った。
「大丈夫ですよ」
「何が?」
「次のヒロイン候補、かなり強いですから」
「その言い方やめろ」
こうして、再び旅支度を整えた桃太郎一行は、東国を目指して歩き始める。
目的は二つ。
新たな仲間を探すこと。
そして――。
メデューサを取り戻す方法を見つけること。
だがこの時の桃太郎たちは、まだ知らなかった。
東国の妖怪たちが、想像以上にクセの強い連中ばかりだということを――。
第21話を読んでいただきありがとうございました。
今回は久しぶりに、少しコメディ寄りの空気感を強めた回になりました。
メデューサ編はかなり重たい流れだったので、桃太郎一行らしい掛け合いを戻しつつ、それでも「メデューサを助けたい」という目的だけはしっかり残しています。
特に犬は、相変わらず“作品の人気”をやたら気にしていますが、実は一行の中で一番冷静に現状を分析しているキャラでもあります。
そして今回から、いよいよ東国編。
玉藻の前、雪女という、日本妖怪界でも屈指の人気キャラたちが登場予定です。
桃太郎たちとどんな騒動を巻き起こすのか、ぜひ楽しみにしていただければ嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。




