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14/25

オオカミが来た村

 こんにちは、作者です!


 今回は「オオカミ少年」のお話をベースに、桃太郎一行が西洋の村で大暴れ(?)します!


 しかも今回の敵は、ドラキュラでもヤマタノオロチでもなく――まさかの普通のオオカミ軍団!

 ……なのですが、桃太郎たちは相変わらず全力です。


 そして今回も、

 

・ローションで滑るオオカミ

・ハリセン片手に無双するかぐや姫

・妙に策士な犬

・調子に乗って挑発するサル

・桃太郎に惚れ込みすぎているメデューサ


 など、いつものメンバーが好き勝手やっています。


 ただのギャグ回に見えて、最後は少しだけ優しい気持ちになれるようなお話を目指しました。


 それでは、第14話をお楽しみください!

 トランシルバニアの城を後にした桃太郎一行は、白雪姫の住む国を目指して山道を進んでいた。


 空はどんより曇り、冷たい風が吹き抜ける。


「寒っ!」


 サルが身体を丸める。


「西洋ってなんでこんな寒いんですか!」


「お前、鬼ヶ島の時は裸みたいな格好で暴れてただろ」


 犬が呆れる。


「いや、あれは夏だったから!」


 かぐや姫は荷車の上でゴロゴロしていた。


「ねぇ、誰か温かい飲み物ない?」


「ありますけど、自分で取ってください」


「やだ」


「即答!」


 一方、メデューサは静かに歩いていた。


 眼鏡の奥の瞳はどこか優しい。


 そんな彼女の隣を歩きながら、桃太郎は腕を組んでいた。


「しかし白雪姫か……」


「旦那、また女の人だからって変な期待してません?」


「してねぇよ!」


「目がキラキラしてますって」


「うるさい!」


 そんな騒がしい一行が、夕方頃に小さな村へ辿り着いた時だった。


 村の入り口で、一人の少年がうずくまっていた。


 ボロボロの服。


 赤く腫れた目。


 どうやら泣いていたらしい。


「おい、坊主」


 桃太郎が声をかける。


「何を落ち込んでる」


 少年は顔を上げた。


「あ……」


 そして驚く。


「もしかして……桃太郎さん!?」


「おう、有名人だ」


 桃太郎は胸を張る。


「今ならサインも高いぞ」


「最低ですね」


 犬が冷静にツッコんだ。


 少年は涙を拭きながら話し始める。


「実は……」


 聞けば少年は羊飼いだった。


 しかし。


「“オオカミが来た!”って嘘を何度もついてたんです……」


「うわぁ」


 サルが引いた。


「最低じゃないですか」


「お前にだけは言われたくないと思うぞ」


 犬が言う。


 少年は俯いた。


「でもある日、本当にオオカミが現れて……」


 声が震える。


「誰も信じてくれなくて……羊を食べられてしまったんです」


「……」


 桃太郎は腕を組んだ。


「なるほど」


 そして一言。


「自業自得だな」


「うっ……」


 少年が泣きそうになる。


「では、先を急ぐからな」


「えっ!?」


 桃太郎一行は普通に通り過ぎようとした。


 少年は慌てて桃太郎の足にしがみつく。


「ま、待ってください!」


「なんだ」


「助けてください!」


 少年は必死だった。


「オオカミたちはそれ以降も村を襲ってくるんです! このままじゃ羊だけじゃなく、村の人まで……!」


「……」


 桃太郎は黙る。


 かぐや姫がボソッと言った。


「放っといたら?」


「かぐや姫さん!?」


「だって自業自得じゃない」


「それはそうですけど!」


 しかし。


 メデューサが小さく言った。


「でも……」


 一同が振り向く。


「この子、ちゃんと反省してると思います」


 少年は涙を流しながら頭を下げた。


「お願いします……!」


 桃太郎は頭をかく。


「はぁ……」


 そして。


「仕方ねぇ」


 ニヤリ。


「オオカミ退治、やるか」


「やったぁ!!」


 少年が泣きながら喜ぶ。


 すると犬が前へ出た。


「では旦那、いつものやりますか」


「おう」


 その瞬間。


 一同の顔つきが変わった。


 作戦会議モードである。


 村の空き小屋に移動すると、一時間ほど秘密会議が始まった。


 途中。


「それはダメです!」


「いや絶対ウケるって!」


「倫理観!」


 などという声が聞こえていた。


 そして一時間後。


 桃太郎一行は村の入り口で巨大なブルーシートを広げ始めた。


「な、何するんですか?」


 羊飼いの少年が尋ねる。


 すると犬が人差し指を立てた。


「坊や」


「は、はい」


「最初にオチを言う芸人がいるか?」


「芸人!?」


 犬は真顔だった。


 桃太郎たちはさらに、ブルーシートの上へ大量の液体を撒き始めた。


 ヌルヌル。


 テカテカ。


「うわぁ……」


 サルが引いていた。


「すごい量ですね」


「旦那、ケチったらダメですからね」


「わかってる」


 桃太郎は真剣だった。


 無駄に。


 そして準備完了。


「よしサル!」


「はい!」


「森へ行って挑発してこい!」


「また俺ぇ!?」


「お前が一番向いてる」


「否定できない!」


 サルは森へ走っていった。


 数分後。


「オラァァ!!」


「ウキキキィ!!」


 サルの叫び声が響く。


 そして。


 ドドドドドド!!


 森の奥から大量のオオカミが現れた。


 真っ赤な目。


 鋭い牙。


 完全にブチ切れていた。


 その先頭を走るサル。


「桃太郎さん!! 奴らマジギレしてます!!」


「よし!」


 桃太郎が刀を構える。


「作戦開始だ!!」


 オオカミたちは怒りのまま突撃した。


 そして。


 ズルッ!!


「ギャン!?」


 一匹が滑った。


 さらに。


 ズルズルズルッ!!


「ギャイン!?」


「ウォン!?」


 次々転ぶ。


 完全に大惨事だった。


 ブルーシートの上はローションまみれ。


 立てない。


 走れない。


 転ぶ。


 また転ぶ。


「なんだこれぇぇ!?」


 オオカミたちは大混乱だった。


 しかも起き上がろうとするたびに滑る。


 地獄絵図である。


 そこへ。


「オラァ!!」


 かぐや姫が巨大ハリセンを持って登場。


 バシィィン!!


「キャイン!!」


 ブルーシートから出ようとしたオオカミを顔面から叩き落とす。


「戻りなさい!!」


 バシィ!!


「ギャン!」


「容赦ねぇ!!」


 サルが震えた。


 オオカミたちは完全にパニックだった。


 そして。


「今だ!」


 桃太郎が叫ぶ。


 村人たちがブルーシートの端を持つ。


「せーの!!」


 グルグルグル!!


 オオカミたちはそのまま簀巻き状態になった。


「ギャアアア!!」


「回るぅぅ!!」


 ローションまみれのまま縛られるオオカミたち。


 毛並みはベットベトだった。


 数十分後。


 完全敗北したオオカミたちは泣いていた。


「も、もう許してくれ……」


「ベタベタが取れない……」


「嫁に笑われる……」


 桃太郎は腕を組む。


「まあ、これに懲りたら人間の村は襲うな」


 すると一匹のオオカミが情けない声で言った。


「お、俺たちだって好きで襲ってるわけじゃないんだ……。最近は森の獲物も減って腹が減ってるんだよ……」


「……」


 桃太郎は村人を見る。


「お前らも少し考えろ」


「えっ」


「定期的に森の入り口へ肉の切れ端とか置いてやれ」


 村人たちは顔を見合わせた。


「共存ってやつだ」


 桃太郎は続ける。


「縄張りを守れば、無駄な争いは減る」


 オオカミたちもコクコク頷く。


「もう村は襲わねぇ……!」


「本当か?」


「た、多分!」


「そこは断言しろよ!」


 犬がツッコんだ。


 そして最後に。


 桃太郎は羊飼いの少年の前へ立つ。


「お前」


「は、はい!」


「人を困らせる嘘は二度とつくな」


「……はい!」


 少年は泣きながら頭を下げた。


 その姿を見た村人たちも、少しだけ表情を和らげる。


「もう許してやるか……」


「反省してるみたいだしな」


 どうやら村八分状態も解除されそうだった。


「桃太郎さん……!」


 メデューサは両手を頬に当てていた。


 完全に恋する乙女の顔である。


「本当に優しいんですね……」


「え?」


 桃太郎は首を傾げる。


「そうか?」


「鈍感ですねぇ」


 かぐや姫が呆れる。


 しかし桃太郎本人は、別のことを考えていた。


(今回の話……結構映画向きじゃないか?)


 キラーン。


「旦那、その顔やめてください」


 犬が即ツッコんだ。


 こうしてオオカミ騒動を解決した桃太郎一行は――。


 次なる目的地、白雪姫の国へ向かって再び歩き出すのであった。

 第14話、読んでいただきありがとうございました!


 今回は「オオカミ少年」をベースにしつつ、


「本当に悪いのは誰なのか?」

「一度失った信用はどうやって取り戻すのか?」


 という部分も少し意識して書いてみました。


 とはいえ、この作品なので真面目になり過ぎないように、


・ブルーシート

・大量ローション

・ハリセン制裁


 など、だいぶカオスな方向へ着地しています(笑)


 そして今回、地味に活躍したのが桃太郎です。


 最後に少年をちゃんと叱りつつ、村人たちにも「もう許してやれ」という空気を作る辺り、なんだかんだで面倒見が良い主人公なんですよね。


 一方で、メデューサの好感度は相変わらず爆上がり中です。

 桃太郎本人だけが、まだ全然気づいていませんが……。


 次回はいよいよ、オオカミ男の縄張りへ――!


 桃太郎一行は無事に白雪姫の元へ辿り着けるのか。


 次回もよろしくお願いします!

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