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月夜のオオカミ男

 再びトランシルバニアへやって来た桃太郎一行!


 メデューサの呪いを解く方法を探すため、まずはアナ王女のもとを訪れることになります。


 しかし――。


 久しぶりに再会したアナ王女から、とんでもない報告が。


 まさかの桃太郎、開始数分でメンタル大破!?


 さらに後半では、新たな強敵“オオカミ男”の存在も判明。


 しかも理由が、


「月の力を勝手に使ってるから許せない」


 という、かぐや姫のよくわからない怒りによって、討伐ルートが強制決定します。


 今回も騒がしく、でも少しだけ恋愛要素もある第13話です!

 長い旅路を経て――。


 桃太郎一行は再びトランシルバニアへと到着した。


 石畳の街並み。

 霧に包まれた古城。

 そしてどこか陰鬱な空気。


 しかし前回とは違い、街には活気が戻っていた。


「おお! 桃太郎様だ!」


「ドラキュラを倒した英雄だ!」


「鬼退治の勇者ばんざーい!」


 民衆たちが歓声を上げる。


 子供たちが駆け寄ってきて、桃太郎の着物を引っ張った。


「桃太郎さん! 本当に鬼を倒したの!?」


「おう!」


 桃太郎は得意げに腕を組む。


「鬼も吸血鬼も俺にかかればイチコロよ!」


「キャー!」


 黄色い歓声。


 犬がニヤニヤする。


「旦那、モテ期来てますって!」


「まあな!」


 桃太郎は満更でもない顔だった。


 一方で。


 メデューサは少し俯いていた。


 眼鏡の奥の瞳が、どこか不安そうである。


「……」


 かぐや姫がその様子に気づく。


「まだ呪いのこと気にしてるの?」


「はい……」


 メデューサは小さく頷いた。


「もし眼鏡が壊れたら……また皆さんを石にしてしまうかもしれません」


「大丈夫よ」


 かぐや姫は意外にも優しい声を出した。


「あんた、桃太郎たちといる時すごく楽しそうじゃない」


「え……」


「だから、そんな暗い顔しないの」


 メデューサは少し驚いた。


「かぐや姫さん……」


「なによその顔」


 かぐや姫はそっぽを向く。


「別に心配してるわけじゃないんだから」


「絶対心配してますよね?」


 犬がツッコんだ。


「うるさい!」


 そんな騒がしい一行は、やがてトランシルバニア城へ到着した。


 豪華な扉が開く。


「桃太郎さん!」


 アナ王女が笑顔で駆け寄ってきた。


 金色の髪。

 白いドレス。

 そして圧倒的な美貌。


 さらに。


 胸も圧倒的だった。


「うっ……!」


 桃太郎が固まる。


「旦那?」


「いや……」


 桃太郎は顔を赤くした。


「相変わらずボイ……」


「ボイ?」


「いやなんでもない!」


 犬が呆れる。


「旦那、緊張し過ぎですって!」


「し、仕方ないだろ!」


 桃太郎はモジモジしていた。


 普段の俺様っぷりはどこへやらである。


 するとアナ王女が嬉しそうに微笑んだ。


「そういえばわたくし、結婚しましたの!」


「……え?」


 桃太郎の動きが止まる。


「桃太郎さんがドラキュラを倒してくださったおかげで、国にも平和が戻りましたから!」


「……」


 沈黙。


 そして。


 ガクン。


 桃太郎が膝から崩れ落ちた。


「旦那ぁぁ!!」


 犬が慌てる。


「悲劇だ……」


 桃太郎は震えていた。


「トランシルバニアの悲劇だ……」


「いや、ドラキュラよりダメージ受けてません?」


 サルが引く。


「俺の心が石化した……」


「メデューサちゃん案件じゃないですか」


 犬がツッコむ。


 桃太郎は床に手をつきながら呟いた。


「俺は……俺は何のために命を懸けて戦ったんだ……」


「旦那!」


 犬が肩を掴む。


「我々のワールドカップはここじゃないです!」


「……」


「映画化すれば世界中の美女が旦那に夢中ですって!」


「……!」


 桃太郎が顔を上げた。


「そ、そうか……!」


「立ち直り早っ!」


 かぐや姫が呆れた。


 しかし桃太郎は即復活した。


「よし!」


 キリッ。


「過去は振り返らん!」


「三分前まで泣いてましたよね?」


 犬が冷静に言った。


 桃太郎は咳払いする。


「そ、それよりアナ王女」


「はい?」


「カクカクシカジカで、メデューサちゃんの呪いを解いてあげたいんだけど、何か方法知らない?」


「……メデューサ?」


 アナ王女の顔が引きつった。


「えっ」


 犬が青ざめる。


 桃太郎もハッとした。


「あっ」


 やらかした。


 西洋でメデューサの名は普通に危険人物扱いである。


 アナ王女は震えていた。


「ま、まさか……」


「いや違う違う!」


 桃太郎は慌てた。


「うちのメイプルちゃんだから!」


「無理ありますって旦那!」


 犬が小声で言う。


 しかしアナ王女は優しかった。


 深く追及はしなかった。


「そ、そうですか……」


 明らかに察していた。


 だが話題を変えるように口を開く。


「もしかすると、白雪姫のお妃が持つ“魔法の鏡”なら、呪いを解く方法を知っているかもしれません」


「魔法の鏡?」


「はい」


 アナ王女は頷いた。


「世界中の知識を映すと言われています」


「おお!」


 桃太郎が立ち上がる。


「じゃあ白雪姫のところへ行こう!」


 その時。


 アナ王女の表情が曇った。


「ですが……道中、十分お気をつけください」


「?」


「あなたがドラキュラを倒したことで、“オオカミ男”が桃太郎さんを狙っているそうです」


「オオカミ男?」


 ウィリアムも青ざめる。


「ドラキュラ様の親友です……」


 アナ王女は続けた。


「満月の夜になると巨大な狼へ変貌し、銀の武器でしか倒せないと言われています」


「へぇ」


 桃太郎は腕を組む。


「なんか設定盛ってるな」


「旦那、それ言っちゃダメです」


 犬が小声で止めた。


「しかも白雪姫の国へ向かう途中に縄張りがあるそうです」


「……」


 桃太郎と犬が顔を見合わせた。


「どうします?」


「ん~……」


 二人は悩んだ。


 怖いわけではない。


 問題は。


「映画映えするかな?」


「そこなんですよねぇ」


「お前ら最低だな!?」


 サルが叫ぶ。


「命狙われてるんですよ!?」


「いやでも狼男って、若干B級感あるじゃん?」


「失礼過ぎる!」


 すると。


 かぐや姫が扇子をバンッと閉じた。


「あんたたち何ひよってるのよ!」


 一同が振り向く。


「月の力で強くなるとか、月のお姫様的には許せないんだけど!」


「えっ、そこ?」


 犬が困惑する。


「月パワー使うなら使用料払いなさいって話よ!」


「著作権みたいに言うな!」


 桃太郎がツッコむ。


 しかし。


 かぐや姫は本気だった。


「絶対に許さない」


 ギラリ。


「月を勝手に利用する奴は、わたしが直々にシメる」


「怖っ!」


 サルが震える。


 桃太郎はため息を吐いた。


「……はぁ」


「旦那?」


「面倒くさいが……」


 桃太郎は刀を肩に担ぐ。


「オオカミ男の縄張り、突破するぞ!」


「おおー!!」


 犬たちが叫ぶ。


 こうして桃太郎一行は――。


 満月に支配された危険地帯。


 オオカミ男の縄張りへと足を踏み入れるのであった。

挿絵(By みてみん)

 第13話を読んでいただきありがとうございました!


 今回は久しぶりのアナ王女再登場回でした。


 そして桃太郎、

 まさかの失恋(?)です。


 ドラキュラを命懸けで倒し、

 世界を救い、

 イケメン化までしたのに――。


 結婚済み。


 これはキツい。


 作者的にも、

 桃太郎が床に崩れ落ちるシーンはかなり気に入っています(笑)


 そして今回は、メデューサの“恋心”も少し強めに描いています。


 桃太郎本人は相変わらず鈍感ですが、

 周囲はもうほとんど気づいています。


 特にかぐや姫は完全に察していますね。


 普段はわがまま放題ですが、

 時々ちゃんと優しいのが彼女の面倒くさいところです。


 また、新キャラ(?)として名前だけ登場したオオカミ男。


 今回のテーマは、


「満月」

「狼」

「西洋妖怪」


 です。


 ……なのですが。


 かぐや姫が完全に

「月の権利問題」

で怒っています。


 もはや発想がクレーマーです。


 次回はいよいよ、

 オオカミ男との遭遇!


 果たして銀の武器を持たない桃太郎一行はどう戦うのか。


 そして、かぐや姫は本当に“月の使用料”を請求するのか――。


 次回も楽しんでいただけたら嬉しいです!

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