桃太郎VS孫悟空
再びトランシルバニアを目指し、天竺へとやって来た桃太郎一行。
しかし――。
そこには“絶対に再会してはいけない相手”がいました。
そう、西遊記一行です。
前回はなんとか三蔵法師たちの仲裁で収まった桃太郎と孫悟空でしたが、今回はまさかの本格抗争へ発展!
市場を巻き込み、
牛魔王まで乱入し、
最後にはメデューサがブチ切れます。
もはや誰が敵で誰が味方なのかわからないカオス回です(笑)
第12話、開幕!
堺の港――。
冬の冷たい潮風が吹く中、桃太郎一行は巨大な帆船へ乗り込んでいた。
「うわぁ~!」
かぐや姫が目を輝かせる。
「船旅なんて初めて!」
「月には海ないのか?」
「あるわけないでしょ」
「即答!」
サルは荷物を抱えながら船酔いしそうな顔をしていた。
「俺、もう嫌な予感しかしないんですけど……」
「なんだよ急に」
桃太郎が聞く。
「だって前に天竺来た時も、西遊記の連中と揉めたじゃないですか!」
「あー……」
犬も嫌そうな顔をした。
「孫悟空の兄貴、旦那のことライバル視してましたからねぇ」
桃太郎は鼻を鳴らす。
「向こうが勝手に張り合ってきてるだけだ」
「いや旦那もかなり煽ってましたよ?」
「細けぇことはいいんだよ!」
そんなこんなで数日後――。
一行は再び天竺へ到着した。
異国の香辛料の匂い。
賑やかな市場。
ラクダの群れ。
そして。
「あっ」
サルが固まる。
「いた……」
道の向こうから歩いてきたのは。
金の輪を頭につけた猿。
筋斗雲。
如意棒。
どう見ても孫悟空だった。
しかも隣には三蔵法師、猪八戒、沙悟浄までいる。
最悪の再会だった。
「……」
「……」
桃太郎と孫悟空の目が合う。
空気が凍る。
そして次の瞬間。
孫悟空がニヤッと笑った。
スッ――。
中指を立てる。
「……は?」
桃太郎の額に青筋が浮かぶ。
「おい今の見たか?」
「見ました」
犬が真顔で答える。
「完全に挑発です」
「上等だコラァァ!!」
桃太郎が飛び出した。
「山猿がナメやがって!!」
「誰が山猿だ桃野郎!!」
孫悟空も突撃する。
ドゴォォォン!!
拳と如意棒が激突。
衝撃波で市場の屋台が吹き飛んだ。
「また始まったぁぁ!!」
三蔵法師が頭を抱える。
桃太郎は刀を抜く。
「今日こそ決着つけてやる!」
「上等だ!」
孫悟空は筋斗雲で上空へ。
そこから如意棒を巨大化。
「潰れろぉぉ!!」
桃太郎は跳躍。
「甘い!」
空中で斬撃。
ズガァァン!!
地面が割れた。
周囲の人々が悲鳴を上げる。
「逃げろー!!」
市場は大混乱。
犬は頭を抱えた。
「旦那ぁぁ!! 映画化目指してるんだから暴力沙汰はダメですってぇ!!」
「今はそれどころじゃねぇ!!」
サルも叫ぶ。
「兄貴ぃぃ!! 相手、西遊記の主役ですよぉ!!」
「だからなんだ!」
「知名度が違うんですよぉ!!」
一方。
かぐや姫は普通に観戦していた。
「どっちが勝つと思う?」
「いや止めてくださいよ!」
メデューサはオロオロしていた。
「桃太郎さん……!」
戦いはどんどん激化する。
孫悟空は分身を生み出した。
「行けぇ!!」
大量の孫悟空。
「うわっ、ズル!」
桃太郎も負けていない。
「キジ!」
「はい!」
「霧だ!」
キジが大量の煙を撒く。
さらにサルが背後から飛び蹴り。
「サルアターック!!」
「裏切り猿がぁぁ!!」
孫悟空激怒。
完全に大乱闘だった。
その時。
「やめんかお前らぁぁ!!」
凄まじい怒声が響いた。
現れたのは巨大な牛頭の魔物。
牛魔王だった。
「う、牛魔王!?」
サルが震える。
西遊記世界でも有名な大妖怪である。
「また貴様か孫悟空!」
牛魔王が怒鳴る。
「町を壊すな!」
「そっちこそ!」
孫悟空も怒鳴り返した。
そこへ桃太郎。
「なんだこの牛」
「牛じゃねぇ!! 牛魔王だ!!」
「へぇ」
桃太郎は腕を組む。
「つまり、お前も有名枠か」
「なんだその括り!?」
結局。
牛魔王まで巻き込んで乱闘が始まった。
もうめちゃくちゃだった。
市場は半壊。
ラクダ暴走。
三蔵法師は泣きそう。
「もう嫌ですこの人たちぃぃ!!」
その時だった。
「もうっ!!」
メデューサが叫ぶ。
「いい加減にしてください!!」
一同が振り向く。
メデューサは怒っていた。
本気で怒っていた。
「桃太郎さんも孫悟空さんも子供なんですか!?」
「え……」
桃太郎が固まる。
「う……」
孫悟空も怯む。
そして。
メデューサは――。
スッ。
眼鏡を外した。
その瞬間。
蛇の髪が広がる。
禍々しい魔力。
「えっ」
牛魔王が固まる。
「ちょ、待っ――」
ピキピキピキ……!!
一瞬だった。
牛魔王は石像になった。
静寂。
「……え?」
孫悟空が震える。
「い、今の何?」
猪八戒が青ざめる。
「お、おい悟空……」
沙悟浄が後退る。
「あの姉ちゃん……」
孫悟空はメデューサを見る。
眼鏡の美少女。
しかし今は怪物。
「ま、まさか……」
声が震えていた。
「メデューサ……?」
「……」
桃太郎は冷や汗を流した。
「メデューサちゃん! 眼鏡! 眼鏡!」
「あっ!」
慌てて眼鏡装着。
一瞬で美少女へ戻る。
「す、すみません……」
孫悟空たちは完全にドン引きだった。
「お前……」
孫悟空が桃太郎を見る。
「そんな危険生物連れてたのかよ……」
「危険生物言うな!」
「いや危険だろ!!」
桃太郎も反省したらしい。
「……悪かった」
「え?」
孫悟空が驚く。
「今回は俺も熱くなりすぎた」
桃太郎は頭をかいた。
「お前も悪かったけど」
「最後に一言多いな!」
しかし孫悟空もため息を吐いた。
「まあ……俺も中指立てたしな」
「原因そこかよ!」
三蔵法師は泣きながら合掌していた。
「終わったぁぁ……」
その後。
一行は市場の修理代を払わされることになった。
「痛ぇ出費だ……」
桃太郎が項垂れる。
犬が慰めた。
「旦那、うちら映画化目指してるんですから、あんなエテ公相手にしちゃダメですよ」
「おい犬」
「はい?」
「うちのメンバーにもエテ公いるだろ」
一同の視線がサルへ向く。
「えっ、俺!?」
「誰とは言ってない」
「絶対俺ぇぇ!!」
かぐや姫は大笑いしていた。
「ふふっ、サル君ショック受けてる!」
「かぐや姫さんまでぇ!」
一方。
孫悟空は石化した牛魔王を見て震えていた。
「……おい」
「なんだ」
「もう二度と喧嘩売らねぇ」
「賢明だな」
「お前も売るなよ!?」
こうして桃太郎一行は、西遊記一行と一応の和解を果たし――。
ついでに牛魔王も退治した状態で。
再びトランシルバニアを目指し、旅立つのであった。
第12話を読んでいただきありがとうございました!
今回は完全に、
「桃太郎VS孫悟空を本気でやったらどうなる?」
というお祭り回でした。
昔話界の主人公と、
中国最強クラスの暴れ猿。
そりゃ相性悪いです。
しかも今回の孫悟空、
初手で中指立ててますからね(笑)
あそこから平和的解決はもう無理でした。
そして途中から参戦する牛魔王。
本来なら大ボス級なのですが、
この作品だと完全に
「仲裁に来たのに石化された不憫枠」
になってしまいました。
ある意味、一番被害者かもしれません。
また今回は、メデューサの“怒ると本当に怖い”部分も描いています。
普段はおとなしくて優しい子ですが、
本気で怒ると洒落にならない。
桃太郎も孫悟空も、
あの瞬間だけは完全に子供みたいになっていました。
そして毎回恒例ですが、
桃太郎の「映画化したい欲」も相変わらずです。
もう半分くらい旅の目的を見失っています。
次回からは、再びトランシルバニア編へ!
メデューサの呪い、
アナ王女との再会、
そして新たな騒動――。
引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです!




