第9話 【ミネルヴァ総合】最近見始めたんだけど【初心者歓迎】
【ミネルヴァ総合】最近見始めたんだけど【初心者歓迎】
そんなタイトルの掲示板スレッドが存在する。
今夜もそこに、ミネルヴァを知ったばかりの初心者が書き込んでいく――。
「最近ミネルヴァ見始めたんだけど、誰から見ればいい?」
その書き込みに、ミネルヴァの古参リスナーが答えていった。
「お前が何を好きかによる」
「ゲームならシュヴァルツ」
「歌ならいろは」
「癒しならイライザ」
「笑いたいならリリス」
「お絵かきならライム」
「酒飲んで泥酔してるお姉さんを観察したいならヤト」
「ライバル同士で争ってるのを見たいならルナとヒナタ」
「月日組、金蘭組、SSSと箱推しもいいぞ」
「俺は金蘭組オススメ。癒し」
「月日組は一期生だから安定感ある」
ちなみに、月日組が一期生、SSSが二期生、金蘭組が三期生である。
スレッド内の話題はやがて横道に逸れていった。
「そういえば今度、ミネルヴァ全員のシチュエーションボイス出るらしいな」
「シチュボはいいけど、そろそろ暗黒騎士さんのASMRを……」
「暗黒騎士ってシュヴァルツ? って人だよね。あの人、ASMRとか出すんだ」
初心者の疑問に、一瞬だけスレッドの動きが止まる。
「シュヴァルツにゲームで勝てたらASMRが出る」
「でも誰も勝てないので一生出ない」
「騎士様、容赦とか手心とか空気読みとか実装されてないから……(震え声)」
「でも世界ランク6位のゲーマーと戦えるチャンス、滅多にないからみんな喜んでるよな」
この書き込みに、初心者は「世界6位!?!?」と驚愕した。
ミネルヴァはなんだかとんでもないVTuber事務所であることが伝わったことだろう。
「でも、本人は『まだまだ修行が足りぬ』って言ってる」
「アジア1位なんだから充分だろw」
そこから、なぜか話題はシュヴァルツの性別考察へ進んでいく。
「そういえばシュヴァルツって結局男? 女?」
「あの低音イケボは男だろ」
「いや、声はボイスチェンジャーでどうとでもなる」
「俺は勝手に金髪ツインテの美少女と予想」
「シュレディンガーの暗黒騎士だからな。公式で顔が出るまで、あらゆる可能性を内包する」
「シュレディンガーの暗黒騎士は草」
だが、VTuberの中の人に興味のないスレッドの住人は、「まあ、中の人なんてどうでもいいだろ」と結論づけた。
「暗黒騎士は暗黒騎士。それで十分」
「それもそう」
「シュヴァルツ、見た目怖いけど実はめちゃくちゃ面倒見いいからオススメ」
初心者リスナーは「気になってきたから見てみるわ。ありがと」と書き込む。
「沼へようこそ」
「気付いたら箱推しになって首まで浸かってるぞ」
「もう逃げられない」
――こうして今日も、ミネルヴァを語るリスナーたちの夜は更けていった。




