第8話 白銀イライザのサポートセンター
白銀イライザは、その日、パズルゲームをしながら雑談配信をしていた。
「そういエば、ミネルヴァのメンバーから相談を持ちカけらレることがアります」
イライザは話をしながら、的確な動作で淡々とパズルを解いていく。
ステージを3分でクリアし、次のパズルへ。
『恋愛相談とか?』
「そレは私からもっトも縁遠い相談でスね」
リスナーの質問に答えるイライザの顔は大真面目だ。
白銀イライザはアンドロイドという設定のVTuberである。
声も機械的なノイズが入っており、リスナーは本当にAIと喋っている気分になると評判だ。
「ミネルヴァの皆さンは、VTuberではありマすが、全員が機材や配信に詳しイわけデはありまセん。ですので、自然と私に相談が集中すルのデす」
『なるほど。機械のことは機械に聞いたほうが早いと』
「そうイうこトです」
イライザは、やはり真面目に頷くのだった。
リスナーも慣れっこではあるのだが、VTuberのなりきりは、かなり作り込まれている。
「たトえば、シュヴァルツさンからはゲーミングPCについテのご相談を受けましタ」
『あの暗黒騎士、ゲームに関してはガチだからな』
「ゲームマシンとして必要なスペック、予算などヲお伺いして、最適なPCをご紹介しマした」
『もう白銀サポートセンターじゃん』
「恐縮でス」
イライザの立ち絵が、配信画面の中でペコリとお辞儀をした。
この丁寧で落ち着きのある態度が、リスナーに好まれている。
彼女の配信内容も、パズルゲームを解いたり、リスナーの相談や質問に答えたりと、決して派手なものではない。
しかし、刺激の強い配信に疲れたリスナーの憩いの場となっていた。
「この間、ライムさンかラも、イラストに関してノご相談がありマした」
『イライザさんって絵も描くの?』
「いイえ。より正確に言うナらば、イラスト用のペンタブレットのご相談でスね。液晶タブレットを新しく購入したイとのこトで、二人で電器店に行って見てきマした」
『ライムちゃん、配信でイラスト描きやすくなったって言ってたよ』
「それハよかっタ。お力にナれたノなら幸いデす」
イライザが、微かに口元を緩める。
その僅かな表情の変化を、リスナーがスクリーンショットで撮影してSNSに投稿するのがお約束であった。
他にも、美空いろはには歌配信に必要なマイクなどの機材を新調したいという相談を受け、最適なものを紹介したという。
「……あア、そうイえばヤトさンかラもご相談を受けましタ」
『酒飲み配信やってて相談することなんてあるのか?』
リスナーは思わず首を傾げた。
イライザは、パズルを解く手を止めないまま、話し続ける。
「突然PCがつかなクなっタとご相談があり、いくつか質問をしたトころ、電源ケーブルが抜けテいましタ」
『いや草』『あるあるだけどもw』
イライザのパズルはそろそろ20ステージをクリアしていた。
彼女は「そろソろいい時間でスね。このクらいで配信を終わっテもよイかと」とゲームのタイトル画面に戻る。
「他に聞きたイことがなケれば、ここでお開きにしマすが」
『イライザを引き止めろ』『配信を終わらせるな』
「なゼですカ」
何しろ、イライザは普段から、一時間ほどで配信を終わらせてしまうことが多い。
個々のVTuberにもよるが、ミネルヴァ所属のVTuberは三時間、四時間は平気で配信している体力オバケが多いのだ。
シュヴァルツに至っては、ゲームのランク戦を夜の九時から始めて朝の四時まで延々と続けており、リスナーからは「バケモン」と呼ばれていた。
『じゃあ質問いい?』
「どウぞ」
『イライザさんも誰かに頼ったり相談することあるの?』
リスナーからの質問に、イライザは少し考える。
「本の置き場所がなくナった時ハ、リリスに本棚を組み立ててモらイました」
『金蘭組、仲良しで良き』『助け合ってるの好き』『そういう関係いいね』
こうして、イライザの配信は、いつも通り穏やかな空気のまま終わっていくのだった。




