↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VTuber事務所『ミネルヴァ』の日常  作者: 永久保セツナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/13

第7話 紫乃リリスのゲーム配信

「契約者ども~! 元気~!?」


『こんリリス~』『契約更新に来ました』


 ――紫乃リリスのチャンネル。

 リリスは魔界から来た悪魔という設定のVTuberだ。

 リスナーを「契約者」として扱い、ゲーム配信などのパフォーマンスで楽しませる。

 リスナーたちも、リリスのそういった「設定」を受け入れて一緒に遊んでいた。

 VTuberの独特な世界である。


「はい、というわけで、今夜もゲーム配信するわよ! 楽しんでいってね!」


『地獄へようこそ』『ここは指示厨が堕ちる地獄です』


「どういう意味よ!?」


 ツッコミを入れながら、リリスはコントローラーを手に取った。

 今夜のゲームは横スクロールのアクションゲーム。

 ――そして、今宵も地獄の扉が開かれる。


「んなーッ!! なんでクリアできないのよーッ!」


『そこジャンプだって』『二番目のブロックを叩くとアイテム出てくるよ』


「一斉に言わないで! わかんない!!」


 紫乃リリスは、ゲームが壊滅的に下手であった。

 リスナーに指示されても基本的に言うことを聞かない。

 どんどん前に進んでいき、敵に突撃した結果、返り討ちにされてゲームオーバー。

 それを繰り返し、リリスもリスナーも頭を抱えてしまう。


『もうやだ……』『助けて暗黒騎士……』


 リスナーが泣き言を言い出した。

 暗黒騎士――シュヴァルツほどのゲーマーがいてくれたら。

 そのリスナーの呟いた希望を、リリスは聞き逃さない。


「あっ……! いい考えだわ、契約者!」


 リリスの口元には笑みが浮かぶ。

 起死回生の切り札は、やはりあの暗黒騎士だった。


「シュヴァルツさんにゲームを教えてもらいましょう!」


 こうして、再びリリスに召喚されるシュヴァルツ。

 彼(もしくは彼女)は、リリスのプレイしているゲーム画面をしげしげと見つめる。


「ふむ、このゲームか」


「シュヴァルツさん、詳しい?」


「RTA配信をしたことがある」


 RTA。

 「リアルタイムアタック」の略称である。

 ゲームクリアまでの時間をリアルタイムで測り、その速さを競う競技だ。


『プロゲーマーか??』『本当に何者なんだよ、この暗黒騎士……』『救世主が来たかもしれない』


 希望を抱いたリスナーたちは、リリスにゲーム攻略を教えるシュヴァルツに注目した。

 こうして、暗黒騎士による悪魔娘へのゲーム指南が始まる。


「このステージは海に落ちるとゲームオーバーだ。このタイミングでジャンプすると浮舟に乗れる」


「よし! ジャンプ!!」


 リリスの操作するキャラクターは、全速力でダッシュして海に落ちていった。

 空気が凍りつき、コメント欄が絶句したように、一瞬動きが止まる。


「……」


「……」


 シュヴァルツが言葉を失った。

 リリスも気まずそうにしている。


「今、AボタンとBボタンを間違えたな。初歩的なミスだ」


「初歩すらできなくて悪かったわね!」


『ヤバい』『暗黒騎士もさじを投げてしまう』『見捨てないで』


 拗ねたように頬を膨らませたリリス。

 一触即発の空気か、とリスナーが身構えた。

 シュヴァルツの対応次第では、炎上の危険もある。

 しかし、暗黒騎士は冷静だった。


「大丈夫だ。まずはボタン操作に慣らしていこう」


 リリスの握っているコントローラーを手に取り、一旦ステージを練習用のものに変える。

 そして、リリスにAボタンでのジャンプと、Bボタンでのダッシュを練習してもらった。


「えっと……こっちがAで、こっちがB……」


「うむ。コントローラーを見ず、指の感覚だけでボタンを識別できるようになるのが目標だ。パソコンのタッチタイピングと同じで、慣れが必要だが、リリス殿にも必ずできる」


『やだ、この暗黒騎士やさしい……』『騎士様かっけぇ』


 リリスが四苦八苦しながら、なんとかコントローラーを操作する。

 やがて、AボタンとBボタンを覚えられるようになった。


「でも、なんか動きがもっさりしてない? このゲーム……」


「ふむ……失敗の原因がわかったかもしれない。少し貸してもらえるか」


 リリスからコントローラーを預かり、一旦シュヴァルツがステージをひとつ攻略する。

 リリスが使っていたのとは別人なのかと思うくらい、ゲームの中のキャラクターがキビキビとした動きでステージを突き進んだ。

 あっという間にゴールに辿り着いたシュヴァルツに、リリスもリスナーも驚愕する。


「えっ……速っ……」


「ボタンを押したときに数秒遅延がある。それがクセのある操作感の原因だ」


『遅延がある状態であの速さ!?』『つよつよ騎士様だ……』『大会とか出たほうがいい』


 リスナーの称賛の声が止まらない。

 シュヴァルツはゲームの設定画面を開き、淡々と設定を直していった。


「これで遅延は解消されたはずだ」


 暗黒騎士がテストプレイとして、ステージをもう一周する。

 先程より、さらにキレのある動きでキャラクターが移動していった。


「……え、今のどうやったの!?」


「ジャンプしただけだが」


「うっそだぁ~……」


『このゲームで三角跳びとか初めて見たんだけど……』『やっぱ設定直すともっと強いじゃん』


 こうして、コントローラーは再びリリスのもとに渡る。

 彼女は緊張した面持ちでコントローラーを深く握った。


「さっきの練習を思い出せ。リリス殿ならできる」


「……うん!」


 十字キーで前に進む。

 岸辺で一旦止まって、浮舟が近寄ってくるタイミングを待った。

 近寄ってきたら、ジャンプで飛び移る……。


「~~~……っ……で、できた……」


「ゲームできるようになると楽しいだろう」


「うんっ!」


 リリスの目は、子どものように輝いていた。


『先生ありがとう』『教え方上手いな』『また暗黒騎士がミネルヴァを救った』


 シュヴァルツがリリスにゲーム指導した回は、ファンの手によって切り抜き動画が作られ、拡散されたという。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。