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VTuber事務所『ミネルヴァ』の日常  作者: 永久保セツナ


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第4話 蛇神ヤトの酒飲み配信

「お前らぁ~! 飲んでるかぁ~!?」


 蛇神ヤトは、既にできあがっていた。

 彼女は、毎晩22時には酒飲み配信を行っている。

 配信の内容はその時の気分で、おつまみを作ったりダラダラ雑談したりしている。

 その夜は泥酔しながらパズルゲームをし、リスナーと雑談しながら解けないゲームと対話していた。


「あ~、ゲーム全然わからん。もう頭回んないよぉ~」


『めっちゃ酔ってるw』『ヤト様、お水飲んでw』


「うぃ~。麦茶麦茶、っと……あ、これビールだったわ。うめぇ~」


『ダメだこの酔っ払いw』


 泥酔ハイテンションで突っ走るヤトに、リスナーはついていくのがやっと。

 そのうち、ヤトがスマホを手に取る。


「誰かに電凸しちゃお~」


『また深夜電凸が始まったw』『さあ、今回の犠牲者は誰だ』


 ピッ、ピッ、とスマホのダイヤルを押す音。

 しばらく呼び出し音が鳴り、やがて相手が電話に出た。


「……姐さん。今、深夜の2時だぞ」


『お前かwwww』『シュヴァルツきた!』『暗黒騎士さん、寝てた?』


「わ~、ブリキ~!!」


「姐さん、さてはまた酔ってるな」


「アタシはいつでも酔ってるだろ!!」


「自慢することではない」


『ド正論すぎる』


 シュヴァルツの説教が始まりそうな気配を察知し、ヤトは喋り始める。


「だってさぁ、お前いつもこの時間帯、ゲームしてるじゃん。どうせまたランク潜ってるだろ」


「深夜のほうが強豪が多いからな」


『わざわざ強いやつがいる時間帯を選んで潜ってるの?』『修羅か?』


 リスナーが若干引き気味になっていた。

 シュヴァルツはそれを気にする様子はない。


「我はゲームの世界でも最強を目指す暗黒騎士。強い相手を倒さなければ意味がない」


『ど、努力家だ……』『これがガチゲーマーの世界か』


「ブリキさぁ……そういう努力してるからお前は強いんだよな」


 ヤトの口調は存外柔らかい。

 シュヴァルツも意外に思ったのか、電話口で一瞬押し黙る。

 ヤトは続けた。


「お前は本当に偉いよ。でもたまには休んでいいんだぞ」


「姐さん……」


『あら、いい話だなー』『イイハナシカナー?』


 シュヴァルツはヤトに感謝の言葉を伝えるべきか考える。

 一方、ヤトは目を閉じて、しみじみと考えているようだった。


「…………ぐう」


 ……失礼、寝てただけである。


「姐さん。配信切ってから寝てくれ」


『草』『イイハナシダッタノニナー』『シュヴァルツ、ヤト様を起こすか配信切りにヤト宅に来るかしてくれ』


 結局、配信は繋がったまま、朝の5時までヤトは寝ていた。


「いや~、昨日は泥酔してて配信つながったまま寝ててさ~」


「ヤトちゃん、本当に気をつけたほうがいいよ?」


 SSSの同期、いろはも本気でヤトを心配している。

 シュヴァルツは、静かにヤトに尋ねた。


「……姐さん。昨日の記憶はあるか?」


「ん~?」


 ヤトは首を傾げたあと、ニッと笑う。


「ブリキが頑張ってて偉いなって話のこと?」


「……驚いた。泥酔しても記憶を保持できるのか」


「アタシは二日酔いもしないし、飲んだときの記憶もちゃんとある。ただ、酔うと眠くなるだけさ」


「便利なのか何なのか」


「だからさ」


 ヤトはシュヴァルツに顔を寄せた。

 シュヴァルツのほうが背が高く、ヤトはシュヴァルツの顔を下から覗き込む形になる。


「アタシはマジでお前も休んだほうがいいと思うぜ?」


「……ご忠告、痛み入る」


 シュヴァルツは静かに距離を取ろうとした。

 ……のだが、ガッと肩を組まれる。


「だからさぁ、一緒に飲みに行こうぜ!」


「我は未成年ではないが、今は昼だぞ」


「昼でも飲めるとこ知ってるんだよぉ~。いろはも一緒に行くぞぉ~!」


「ええ? 私も?」


「アタシは仲間はずれは作らねえぞ! SSSの懇親会だぁ~!」


「姐さん。一度アルコールを抜いたほうがいい」


 シュヴァルツはヤトに思い切り引っ張られた。

 こうして、SSSの三人は、ヤトがリーダーとして牽引する形で、日々活動しているのである。


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