第3話 金蘭組の麻雀配信~暗黒騎士を添えて~
「なんか『立直』のボタン出てきた! 押すわね!」
「あ、それロンです~」
「えぇーっ!?」
「リリス、防御を覚えるこトをオススメしマす」
――緑青ライム、紫乃リリス、白銀イライザ。
『金蘭組』と呼ばれる三人は、今宵は麻雀配信をしている。
点数状況としては、イライザ、ライム、リリスの順になっていた。
「だって、アタシ三麻わかんないんだもん!」
「まルで四麻なら勝てると言いタげでスね」
「でも本当にイライザちゃん強いよね~」
『さすがアンドロイド』『点棒管理も期待値計算も完璧だもんな』
リスナーもうんうんと頷いていそうなコメントが流れていく。
ぐぬぬ……と悔しげな顔をするリリス。
だが、彼女は不意に、ある名案を思いついた。
「そうだ! シュヴァルツさんも呼びましょうよ!」
「シュヴァルツさん~?」
「あのガチゲーマー暗黒騎士さんならイライザにも勝てるわよ!」
「ほウ。なるホど。確かにシュヴァルツさンは何のゲームをやらせテも強いデすね」
「まさか、イライザは敵前逃亡なんてしないわよねぇ?」
リリスはニヤリと笑う。
イタズラを思いついた子どものような、悪巧みをしている悪魔っ娘のような、そんな笑み。
そんなことを言われて、引き下がれるイライザではない。
「よろシいでショう。シュヴァルツさンのご都合がつケば、の話でスが」
こうして、金蘭組は暗黒騎士シュヴァルツに連絡を取り、配信に呼ぶことにした。
シュヴァルツは「心得た」とあっさり承諾し、配信に参戦する。
金蘭組とシュヴァルツ、この四人で四麻を戦うことになった。
「というわけで、暗黒騎士の召喚に成功したわ!」
「いかにも。リリス殿の召喚に応じ、参上した。本日はよろしく頼む」
『なんかモンスター召喚みたいになってて草』『悪魔が召喚する側なんだ……』
リスナーはミネルヴァ随一のゲーマーが現れて盛り上がる。
リリスはシュヴァルツを召喚できた時点で勝利を確信していた。
既に勝ち誇った顔でイライザに宣戦布告する。
「どう? イライザ。これでアンタの無敗伝説もここまでよ!」
「別に私は無敗といウわけデはなイのですが……しカし、リリス。よろしイのでスか?」
「え? 何が?」
「……いエ」
イライザの言葉には含みがあったが、リリスがそれに気づくことはない。
「それじゃ~、早速打とうね~」とライムが麻雀アプリの対戦ルームを立て直した。
金蘭組とシュヴァルツが入室し、いよいよ対局が始まる。
しかし、そこからが真の地獄の始まりであった。
「立直」
「速っ!?」
「え~!? シュヴァルツさん、まだ三巡目ですよ~!?」
「こレは苦しイ。こコはベタオリ一択でスね」
イライザたちが苦心して放銃を回避。
しかし、シュヴァルツはそんな彼女たちをものともしない。
「ツモ。2600オール」
「嘘でしょ!?」
「うわ~、やっぱり強いです~」
「ロンで直撃なら7700持っテいかレていマした。やはり強いデすね」
シュヴァルツはただ淡々と牌を打ち、金蘭組を追い詰めていく。
そう、この暗黒騎士、初心者相手でも容赦ないタイプのガチゲーマーであった。
彼(もしくは彼女)の言うところによれば、「どんな相手であれ、全力で応えなければ礼を欠く」という信念である。
「ダブル立直」
「はぁぁ!?」
『暗黒騎士さん、もう少しこう……手心ってやつを……』『召喚者まで巻き込まれるぞこれ』
リスナーのツッコミコメントが乱舞した。
リリスは「まずい……!!」と手牌とにらめっこする。
どこを切っても危ない気しかしない。
「え、っと……これ?」
「ロン。倍満」
「ぎゃあああああ!?」
『リリスーーー!!!』『大草原不可避』『予測可能、回避不可能』
リリスが一気に箱下までふっ飛ばされ、終局。
彼女は若干涙目になりながらシュヴァルツを睨んだ。
「ちょっと、シュヴァルツさん! なんでアタシを飛ばすの!? アタシの味方じゃないの!?」
「? 麻雀は一対一対一対一の真剣勝負だぞ」
「だカら言ったでショう、リリス。シュヴァルツさンは忖度をするヨうな方でハありマせん」
「そんなぁ……」
リリスはガックリと肩を落とす。
そんな中でも、ライムは楽しそうにニコニコ笑っていた。
彼女はみんなでゲームができればそれで楽しいのである。
「でも~、シュヴァルツさん、やっぱり強くてすごいなあ~」
「我は麻雀もできる暗黒騎士」
「暗黒騎士、管轄広いわね!」
リリスは悔し紛れにツッコミを入れてから、ある決意をした。
「決めた。アタシ、いつか麻雀でシュヴァルツさんから一本奪ってみせるわ!」
「目標があるのはいいことだ。では、近いうちに講習会を開こう」
「わあ~、いいですね~! ミネルヴァのみんなで麻雀のお勉強、楽しそうです~!」
「そうデすね。麻雀ゲーム内ランキング上位のシュヴァルツさンから学べルことは多そウです」
「……え?」
イライザの言葉に、リリスは一瞬意味が理解できず、固まる。
ライムも目を丸くしていた。
「え~!? シュヴァルツさんって麻雀でも上位ランカーなんですか~!?」
「我はゲームの世界でも最強を目指す暗黒騎士。麻雀も嗜んでいる」
「……アタシ、本当にシュヴァルツさんから一本取れる日が来るのかしら……」
リリスの声が震えていたのは言うまでもない。




