2話
入学式会場に行くとエミリが私のところにやってきて「朝早くからどこ行ってたの!?」と問い詰めてきたので適当に流して席に座る
入学式が始まり暫くして新入生代表挨拶が始まった
登壇に上がったのは『レディバ嬢』だった
途端に会場がざわめき出す。周りの教師や先輩たちすらもどこかソワソワと、まるで奇妙なものでも見ているように浮き足立っていた
「わ…「そんな奴が新入生代表挨拶なんて学校の品位が下がるぞ!!」
声の方を見やると赤髪の大柄な男がいた。一応新入生らしい
鶴の一声とでも言うべきか、その掛け声を皮切りにあっちこっちからレディバ嬢に罵詈雑言が飛んでいく
私はそれをただ見ることしか出来なくて、周りに声を出して辞めてなんて言えなくて……ただ天井に向かってレディバ嬢に教えてもらった魔法を放つことしか出来なかった
「ちょ!?エカテリーナ何してるの!?」
エミリが驚いたように私を止めるが、一応の目標である会場を静まらせることはできたようだった
「……っ私は、この学園の新たな一員の代表として、この場にいる皆様方に伝えたい事があります」
「これからの五年間、この学園の名を胸に世間に恥じない学生としてこれからを歩みます!以上」
レディバ嬢が言い切ってくれた事にホッとする
「エカテリーナ流石にやりすぎだって!」
「えっ…そんなつもりは」
「嬢ちゃんやるな!」
「スゲェ!!」
ただ少し魔法を使っただけでこの持ち上げられっぷり、一体…みんなの何がレディバ嬢に対しても気持ちにさせているんだろうか
私はこの学園の皆んなと過ごせる気がしなくなってきた
そんなこんなで入学式が終わりそれぞれのクラスへ振り分けられる。学園から魔力が送られてきてその色によってクラスが違うらしい
「私は〜……赤」
赤色の魔力が示す教室へ入るとやけにクラスメイトとなる人達が教室の後ろへ偏っているように見えた
人混みの反対側を見てみると案の定と言うべきかレディバ嬢が座っていた
「レディバ嬢!」
私は迷わずレディバ嬢の隣の席を確保して荷物を下ろした
「同じクラスだなんて…とっても嬉しいです!これからよろしくお願いします」
「貴女、やっぱり何処か可笑しいわね…………ふふっ、私も少し安心したわ、よろしく、リーナ」
クラスの皆んながどよめいているが私は気にせずレディバ嬢の隣に腰掛けた。私を見つめる金色の瞳が余りにも綺麗で、愛おしくて、堪らない
「ねぇリーナ」
「何ですか?もしかしてレディバ嬢体調でも悪いですか?」
「そうじゃないのよ、その……レディバ嬢って辞めてくれないかしら。むず痒くて」
えっ……つまり「下級貴族如きが安易に私の名前を呼ぶんじゃあない」ってこと?
じゃあ、じゃあ何て呼べば
「ほら、もっといいかたがあるでしょ」
「…………アムス公爵?」
「何で!?」
「え………レディバ様?」
「だから何でよ!」
「レディバ・アムス・ジュピタル様!?」
「っっっっ!!もう!もっとあるでしょう!なんでそんなよそよそしいのよ!」
「レディバさん?」
「違うわ」
「レディバ…………ちゃん………?」
「私も貴女もちゃん付けするようなキャラじゃなくてよ」
「んんう…………レディバ?」
私が呼び捨てをした途端レディバ嬢は腕を掴んで遅いと言わんばかりに満足そうな顔をした
「分かってるじゃない親しい友人間では煩わしい敬称なんて無駄よ」
わぁレディバ嬢すっごい嬉しそう
「でも………私が親しい友人と言うのは………」
「え………まさか貴女は嫌だと言うの?」
「ちっちが!ただレディバ嬢のような綺麗で美しく聡明な方と友人だというのは気が引けるときいますか……」
「また嬢がついてるわ、それにここは貴族の場でも何でもないただの学園なのよ?誰そんな事気にするのよ」
確かにレディバj…………レディバの言う通りなのかもしれない。この狭い学園の中で階級を気にしたらキリがないだろう。とくに私のような低階級の貴族は
「それじゃあ………よろしくお願いします!レディバ!!」
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余りの嬉しさについ笑みが溢れそうになる
リーナは自分の魅力について知らない事が多過ぎる。私だけが知っているであろうリーナの魅力は私だけが知っていれば良い、こんな世界でただ1人私のそばに居てくれるのは彼女だけなのだから
「クスクス……『レディバ』がまたあの女と一緒にいるわ」
「クスクス……あの女も可哀想に、きっと何も知らされてないのだわ」
遠くから私に向けた悪意が聞こえてくる。今はこれで良い、でももしその悪意がリーナに向いたなら、私はそいつを許さないだろう
「ねぇリーナ、早速だけれど今日は魔法実習があるらしいわ」
「そうなんですか?」
「えぇ、だから一緒に魔法の練習しましょうか」
「でも……私は魔法は苦手です」
………………
きっと周りも、そして本人すらも気づいていない
リーナの魔法の素質は私と並ぶかそれ以上、シュメーシュツ領は魔法よりも剣の世界…きっと碌に魔法を教わってこなかったのね
「大丈夫よ、リーナには魔法の才能があるもの……たくさんいっしょに練習しましょう」
「レディバ………はい、私レディバのとなりにいても恥ずかしくないよう頑張ります!」
求めた分だけ返してくれる……やはり、私は自分で思っている以上にリーナを気に入ってしまったようだ
そっと手を伸ばしてリーナの頬に触れようとした時、教室の扉が荒々しく開かれドスドスと複数の足音が聞こえる
「ここがこれから世話になる新しいクラスか」
「んだよ狭めー部屋だな、俺らを何だと思ってんだよ!?もっと広い場所用意しろ!」
伸ばしかけた手が止まった
その2人にはよく見覚えがあったからだ。1人は赤髪に青い目をしたこの国の公爵家の1人「スティル・クレバトス」もう1人は、あの憎き男第二王子の側近「アジャイ・フォルテ」王族の側近とは思えないほどの荒々しさで有名な男だ
最悪だ、なんでよりにもよってあの男の関係者と同じクラスでなければならないのか
「レディバどうかしました?」
リーナが困り眉で顔色を窺ってくる。いけない、心配させてしまった
「何でもないわ、心配させてごめんなさいね」
「ところで今日のお昼なのだけれど良かったら食堂にでもいかg「あれぇー!!!!????なーんか鉄臭いなぁて思ったら殺人犯がクラスに紛れ込んでるなぁ!?」
「アジャイ、ここで騒ぎを起こすのはやめるんだ……ただまぁその意見には賛成だがね。神聖な我が学舎が下賤な者のせいで汚れてしまう」
「なぁーー殺人犯よぉお前どの面下げてここにいるの?あっ良いこと思いついた……俺も鬼じゃないからさぁお前の事守ってあげたいわけよ」
「だからさぁ一回だけヤらせてくれたらぜーんぶチャラにしてやるよ、俺もよく知らないけどさ、どうせあの馬鹿王子が悪いんだろ?本当はレディバ嬢は悪くないんですぅて言ってやるよ」
「アジャイ、お前本当に見境ないな……ん?そこのレディバの隣にいる女」
「あっは、はい?何でしょうか」
「名前は?」
「エカテリーナ・シュメーシュツです」
「ほうエカテリーナ………中々綺麗な…ふむ、良かったら今晩俺の部屋に来ないか?よくしてやる」
私は杖を持ってアジャイとスティルに向けて氷の魔法を構えた
「おー怖、ここで何する気だよ」
「リーナに何かしてみろ!!貴様らまとめてあの世に連れて行ってやる!」
「レディバが誰かを守るなんて珍しいこともあるもんだな……ソフィニアにすらそんなに優しくしてなかったろうに」
2人の気持ちの悪い雑音が頭へ流れてくる、そして何よりその汚い音をリーナにも向けられていると言う事が酷く耐えがたい
「早く何処かへ消えなさい!!すでに魔法を撃つ準備は整っているわ!」
「ッチ、スティル………行こうぜ」
「……レディバ、いつかその牙は自分に剥くぞ。エカテリーナと言ったか…心が変わったらいつでも来い」
五月蝿い羽虫に苛立ちを隠せなくなるその時、リーナが口を開いた
「私はレディバと居られればそれで充分です、なので金輪際そう言うことは結構です」
思わず目を開いてしまった。まるで愛の告白のようにも聞こえる言葉が耳から頭、そして全身へ電流のように流れていく
「…下級貴族の分際で断るとは……ふん」
2人は教室にいづらくなったのか廊下へと出て行った
「大丈夫?リーナ何もされていないわよね?何かされたらすぐにでも言うのよ?」
「はい、それよりもレディバが守ってくれた事がすっごく嬉しかったです。ありがとうございます!」
この子は本当に私の心を揺さぶる事が上手だ。
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その後先生が到着し、軽い挨拶と共に魔法実習が始まった
「そう、前よりも上手になっているわ………その調子」
アジャイとスティルの2人組も朝の出来事からは話しかけても来ないしとても平和で時がゆっくり流れる
「んんんん………あっ…また魔法が途切れちゃった」
「魔力が少ないのかしらね……少し手を出して」
「こうですか?」
「えぇ………そしたら……………こう…痛いけど我慢してね」
「え?」
レディバが私の手の甲に魔法陣のような何かを描くとそれをなぞる様に魔法で傷をつけていく。皮膚が焼ける様な痛みで涙が出るがレディバが優しく拭き取ってくれるので何とか耐えられる
「はい、お疲れ様……痛かったわよね、ごめんね」
レディバはぎゅっと抱きしめてくれたかと思うと自分の手の甲に向かって私と同じ魔法陣を焼き始めた
「えっちょ!大丈夫なの」
「えぇ、それよりも…………完成したわ」
レディバと私の手の甲に全く同じ魔法陣が描かれる
「これは何ですか?」
「私とリーナの魔力ポケットを繋ぐ紋よ」
「へー………え゛っ゛!?」
「ん?どうしたの?それよりも早く魔法を使ってみましょう!」
私だけで無く遠くで見ているクラスメイトや教師、アジャイとスティルまでもが目を見開いて手の甲に注目している
当たり前だ。なにせ魔力ポケットを繋ぐ紋を身体に消えない傷として残すなんて、狂気の沙汰だからだ
魔力ポケットを繋ぐなんて自分の銀行口座を共有する事と同等かそれ以上の行為だ
「どうしたのリーナ……もしかして迷惑だったかしら」
「そんなことないです!でも………えと、良いんですか?と言うかこれ焼いてあるから消えない………ですよね」
「ええ、だから金輪際一生りーなは私の魔力が使いたい放題よ…ふふっ」
「ふふっじゃないと思いますが………えと」
「早く魔法を使いましょう、リーナなら上級だって夢じゃないわ」
レディバに唆されるまま私は杖を構えて魔法を構える。普段なら三つが限界の火球が四つ、五つ、六つ……数えるのも面倒になるレベルで次々と生み出されていく
「流石よリーナ!普通魔力が増えたからっていくつも生成するなんてできないもの」
「あっあは……っありがとうございます」
撃った魔法は遠くにある的に全て命中した
「やっぱり、リーナには魔法の才能があるわ………ね、私が全てを教えてあげるからもっと頑張りましょうか」
「それに、貴女の学園生活は全て私のものだものね。遠慮なんてしないから」
「もう……それ言われたら逆らえないじゃないですか…ふへっレディバ…よろしくお願いします」
「あと敬語もやめなさい、重苦しいわ」
「え」




