第六章 11
アシカガの体が、異様に震え始めていた。
ビクン、ビクン、と。
不規則な痙攣が、その全身を襲っている。
「……なんだ?」
ケイタは眉をひそめた。
さすがに様子がおかしい。
立ち上がり、近づこうとした――その瞬間だった。
アシカガの体が、ふわりと浮かび上がる。
「なっ……!?」
次の瞬間。
彼を拘束していたエネルギー縄が、すべて一斉に断ち切られた。
バチン、と乾いた音が響く。
そして、そのまま――
空中に浮いたまま、ケイタ達を見下ろす。
「おい……なんだ、あれ……」
明らかに、おかしい。
アシカガではない“何か”が、そこにいた。
やがて、その口がゆっくりと開いた。
「――どうも、初めましてかな?」
だが、その声は。
アシカガのものではなかった。
「私は、ベルモントと言う」
場の空気が、凍りつく。
「しかし、キミとは確か面識があったよね?」
その視線が、まっすぐルカを捉える。
「確か……非検体7号、だったかな?」
「………………!」
ルカの表情が、一瞬で強張った。
唇を、強く噛み締める。
「ベルモント……?」
ケイタが小さく呟く。
「どこかで聞いた事がある名前だな……」
「うん?キミが、ケイタン君かな?」
ベルモントは、くすりと笑う。
「失礼、女性だったんだね?」
「……そんな事はどうでもいい」
ケイタは、低く吐き捨てた。
「で、こんな手の込んだ事をして……何か俺達に用なのか?」
「いやいや」
アシカガの顔に、不気味な笑みが浮かぶ。
「用というよりも……ただ、挨拶がしたかっただけなんだがね」
だがその目は、まったく笑っていなかった。
「しかし――」
視線が再びルカへと戻る。
「7号君は、核を持っていたんだね?」
「実験の時には分離しなかったから、てっきり無いものだと思っていたが……」
「……何を言っているんだ?」
ケイタの声は、低く、静かだった。
「いや、まあ……こちらの話だよ」
ベルモントは、軽く肩をすくめる。
「どうやら、7号君には少し用事が出来たようだ」
その言葉と同時に――
ふっと、空気が変わる。
「では……あとは、デミュートに任せるとしょう」
そのまま、沈黙。
アシカガの体は、空中に浮かんだまま、微動だにしない。
だが――
次の瞬間。
ぞわり、と。
不気味な気配が、周囲を満たし始めた。
重い。
黒い。
押し潰されるような圧。
それが、急速に膨れ上がっていく。
「……っ!」
ケイタが思わず歯を食いしばる。
気配は、さらに強くなる。
そして――
頂点に達した瞬間。
アシカガの目が、ゆっくりと開いた。
「……指示は……了解しました……」
声が、低く変質している。
「7号の核を――確保致します」
その瞬間だった。
ドンッ――!!
凄まじい負のオーラが、一気に解放された。
「なんだ、この気配は……!?」
ケイタが叫ぶ。
その場の空間そのものが、歪んでいるかのような圧力。
「マイロ……ルカ様」
ベルプリが、一歩前に出る。
「排除致しますか?」
ルカは、静かにその様子を見つめていた。
そして、短く首を振る。
「いや」
一歩、前へ出る。
「ベルプリ達は、援護をお願い」
その目には、迷いがなかった。
「――これは、僕がやるよ」
その言葉と共に、
ルカの周囲の空気が、わずかに揺らいだ。
――戦場の主導権が、再び動き出す。
――
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