第六章 5
さっきまで余裕の笑みを浮かべていた、アシカがの顔が歪む。
「効いた……?」
ケイタは、わずかに目を見開いた。
(ケイタ……今の……)
(マナが……瘴気とぶつかって……反応してる……!)
ライムの声が震える。
(完全には防げてない……!)
(あのスーツ……干渉は遮断してるけど……“物質化したエネルギー”までは止めきれてない……!)
「なるほどな……」
ケイタの口元が、わずかに吊り上がる。
「完璧じゃねぇってわけか……その鎧」
「……チッ」
アシカガが、舌打ちする。
だが、その目はすでに冷静さを取り戻していた。
「なるほど……そういう小細工ですか」
「ですが――」
次の瞬間。
アシカガの腕が、わずかに動いた。
ミイアの喉元に当てられていた刃が、さらに食い込む。
「これが、見えていないわけではないですよね?」
「っ……!」
ケイタの動きが止まる。
ミイアの白い肌に、赤い線が浮かぶ。
「やめろ……!」
絞り出すような声。
「それ以上やったら……」
「やったら?」
アシカガは、笑う。
「どうするんです?」
沈黙。
ケイタの拳が、わずかに震える。
(ケイタ……)
(落ち着いて……)
ライムの声。
(今なら、もう一度――)
「無理だ」
ケイタは、低く答えた。
「次は……確実に殺される」
視線は、ミイアに固定されたまま。
呼吸が浅くなる。
だが――
その時だった。
「……ケイタ……」
かすれた声。
ミイアだった。
ゆっくりと、顔を上げる。
その瞳は――まだ、消えていない。
「……大丈夫……」
「なに言って――」
「……やって……」
その一言。
ケイタの目が、揺れる。
「……私は……大丈夫……だから……」
「ふざけんな……!」
ケイタの声が、震えた。
「そんなわけあるかよ……!」
だが、ミイアは――
微かに、笑った。
「……信じて……」
その瞬間。
ケイタの中で、何かが切り替わる。
(ライム)
(うん……)
一瞬の同期。
迷いが、消えた。
「……悪いな、デブ」
ケイタが、静かに呟く。
「お前のゲーム、ここまでだ」
「――なに?」
その瞬間。
ケイタの足元から、液状のマナが一気に広がった。
床を這い、壁を伝い――
そして、一斉に跳ね上がる
「なっ――!?」
アシカガの視界が、一瞬で白く染まる。
四方八方から、叩きつけられるマナの奔流。
スーツの干渉が、追いつかない。
「ぐっ……!?」
その隙――
ケイタの姿が、消えた。
「遅ぇんだよ」
次の瞬間。
アシカガの懐に、ケイタが踏み込んでいた。
ブレードが、唸る。
一直線に――
ミイアを拘束していた腕へと振り下ろされた。
〝ガキィィン!!!〟
金属が、弾ける音。
「――なっ!?」
アシカガの体勢が、崩れる
その一瞬を逃さず――
ケイタは、ミイアの体を抱き寄せた。
「……間に合った……!」
息が荒い。
だが、その目には、確かな光が宿っていた。
(ケイタ……まだ終わってないよ……)
「ああ……わかってる」
ゆっくりと、顔を上げる。
煙の向こう。
そこには――
まだ、立っている。
アシカガが。
「……いいですねぇ……」
低く、くぐもった声。
その姿から、煙が立ち上る
「ようやく……“戦い”らしくなってきました」
ゆらりと、構えを取る。
先ほどまでの余裕は――消えていた。
「ここからが、本番ですよ」
空間が、さらに歪む。
干渉が、増す。
だが――
ケイタは、もう止まらない
「上等だ……」
ブレードを、構える。
「やってやるよ……最後までな」
縫合宮、第三階層最奥。
本当の戦いが、幕を開けた
――
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