第二十五話 リッチと幽霊娘
玄関からまずはリビングに向かった。
一歩進む度に怨念が強くなっている。
「出てくる気配は無いんですけど」
「ああ。ただ、怨念は強くなってる。間違いなく」
一階を見て回ったが、異常は無かった。
続いて二階に上がる。
「っ!」
「これは!」
「本体はこの上の様ですね」
一歩、階段に上がったところで数倍の怨念が漂って来た。
その凄まじい怨念に戦慄しながらも、俺達は二階に上った。
階段を上がると廊下が続き、いくつかの部屋があった。
緊張しながらも、その中で一番奥の部屋に入る。
その部屋はカーテンで太陽の陽が入らない様に仕切られていて、全体的に暗かった。
「鏡……?」
ただ、俺達の意識は部屋の真ん中にあった鏡に引っ張られた。
『いらっしゃい』
次の瞬間には別の場所に立っていた。
そこはこの屋敷が見えたが、周囲の風景は全くの別物だ。
この屋敷以外には何も建っていなくて、殺風景で薄気味悪い印象を受ける。
魔法攻撃? 精神、幻覚か?
俺達の頭の中で様々な憶測が飛び交うが、語り掛けて来た声が考える事を許さなかった。
『おやおや。久しぶりのお客様ですよ、アリス』
『そうみたいね』
その声を聴いた瞬間にゾクッと背筋が震え上がった。
『初めまして。私、リッチのセバスチャンと申します』
『アリスよ』
その声がした方を見ると二人の人影が見えた。
片方は魔術師のローブを着た骸骨。
もう片方は透けて見える事以外は愛らしい金髪の少女だった。
ただ、両方ともに途方もない魔力をその身に宿している。
「カルナ、あれは普通のリッチなのか?」
「そんなわけないでしょ、もう片方の幽霊の子もそうよ。自然発生したとは思えないわ」
「つまり誰かがアンデットを呼び覚ましたと?」
「そうね。はっきり言って、あれは異常よ。それこそ私達みたいに……」
「待つです! それは裏に死霊術師がいるって事です!?」
「その可能性もある、という事です」
「そんなの、アレン級の死霊術師にしかできないです!」
エリーの言う通り、死霊術師によるアンデットの強化なんてたかが知れている。
死の女神による加護がある俺だからこそ、エリーやカルナはかなりの力を得る事が出来た。
ならば相手にも死の女神の加護持ちが?
いや、それはあり得ないだろう。
加護ってのは基本的には一柱につき一人までらしいからな。
ダメだ。
「カルナ、エリー。考えるのは後にしよう。今はこの二人を倒さないとやばそうだ」
「確かにそうですね」
「です!」
二人とも俺の言葉を聞いて戦闘態勢を取った。
切り替えの早さはパーティ時代から変わってないな。
『おや。話し合いは終わりましたか?』
「待たせたみたいだな」
『いえいえ。こちらも丁度、準備が終わったところですので』
「準備……?」
『ええ……。“蘇りなさい。我が下僕達よ!”』
セバスチャンの激によって地面が、大地が揺れた。
「な、なんです!?」
エリーは驚愕しているが、同業者である俺と神官であるカルナだけはその正体に気が付いていた。
それは徐々に姿を現す。
屋敷の周囲の果てしない草原の地面が一つ、また一つと穴が出来た。
そこから這い出てくるのは生身の人間でも、生物でもない。
腐った死体、ゾンビだ。
それも百や二百ではない。最低でも千は超えている。
「これは……!」
「大軍勢です……」
二人はその軍勢を目にして、一瞬諦めかけた。
ダメだ。勝利にはこの二人の力が必要だ。
仕方がない。
「目には目を歯には歯を、だ」
「アレン……?」
「ちょ、どこに行くです!?」
エリーに止められたが、俺は二人よりも前に出た。
そして左膝を突き、右手を地面に置く。
「召喚・無骨軍」
手を置いた地面に魔法陣が展開される。地面から這い出て来たのは鎧に身を包み、剣や弓を携えたスケルトンの軍団だった。
その数、およそ三百。
俺が練兵した、精鋭のスケルトン達だ。
『ほう……!』
「総力戦だ!」
この時、二つのアンデットの軍団が衝突した。




