表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
51/56

徳川埋蔵金 車の持ち主

 判明翌朝、安藤が古い伝手を使って調べた結果を、一同に報告した。

「あの車、レンタカーだった」安藤は言った。

「借りたのは、東京の投資顧問会社の人間だ。表向きは、な」「表向き、というのは」山田が聞く。

「その会社、登記上は投資顧問だが、実態がよく分からない」安藤は言った。

「元刑事の勘だが、こういう会社は、時々、別の目的のための隠れ蓑になっていることがある」金田一が言った。

「環座衆が、明治以降『学術団体』や『財界』に接触してきたという記録があった。もし、その繋がりが、今は投資顧問会社という形を取っているとすれば――辻褄が合う」「つまり」佐藤が言った。

「環座衆は、今も、姿を変えて存続している、ということか」誰も、すぐには答えなかった。


フェンウィックとの最後の対話その日の午後、フェンウィック本人が、突然、小栗家を訪ねてきた。

「お邪魔して、申し訳ありません」彼は静かに言った。

「ですが、そろそろ、お互いに手の内を明かす時期かと思いまして」一同が緊張しながら、彼を迎え入れた。「石室を、見つけられたようですね」フェンウィックは言った。

「おめでとうございます、と言うべきか、迷うところですが」「あなたは、何を知っている」金田一が単刀直入に聞いた。

フェンウィックは、しばらく考えてから言った。

「環座衆について、私が調べてきたのは、ヨーロッパの一部の秘密結社との、古い接点です。江戸期、日本に来航した外国人の中に、そうした結社の関係者が混じっていたという記録が、ヨーロッパ側にも、断片的に残っています」「つまり、環座衆は、日本だけの組織じゃない、ということか」横溝が言った。「純粋な日本発祥の組織か、あるいは、外部から思想を持ち込まれて形を変えたものか――そこは、私にも断定できません」フェンウィックは言った。

「ただ、一つ確かなのは、この組織が、時代ごとに姿を変えながら、ずっと『何か』を守り続けてきた、ということです」「何を、守っている」山田が聞いた。

フェンウィックは、初めて、少し表情を曇らせた。

「――そこまでは、私も分かりません」彼は言った。「昨日会っていた男から、率直に言えば、これ以上の調査を、やめるように、と忠告されました」「忠告、というのは」


「言葉は丁寧でしたが、意味は明確でした」フェンウィックは言った。

「私の大学の研究資金、そして――同僚の一件を、暗に持ち出されました」

座敷に、重い沈黙が落ちた。

「あなたは、どうするんだ」金田一が聞いた。

フェンウィックは、静かに微笑んだ。

それは、疲れたような、それでいてどこか諦観を含んだ笑みだった。


「私は、帰ります」彼は言った。「これ以上は、私の手に負える話ではないようです。ただ――」

彼は、鞄から一枚の紙を取り出し、テーブルに置いた。

それは、彼自身が持っていた、環座衆に関する断片的なメモだった。


「これだけは、お渡しします。あなた方が、この先も調べ続けるなら――何かの役に立つかもしれません」

彼はそう言って、静かに立ち上がった。

「お会いできて、光栄でした。願わくば、あなた方が、私よりも、賢明な選択をされますように」

彼はそう言い残し、小栗家を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ