表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
46/56

徳川埋蔵金 祠が

 小栗家??報告

一行が小栗家に戻り、祠で見つけたことを報告すると、小栗惟継の表情が、みるみる強張った。

「祠が……あったんですか」小栗の声が、震えていた。

「知らなかったのか」横溝が聞いた。

「いえ……」小栗は言葉を選ぶように言った。

「実は、祖父の代まで、うちの家では、竹林の奥に絶対に近づくな、と言われていました。理由は聞かされていません。ただ、『あそこには、うちの家の秘密が眠っている』とだけ」

「秘密、というのは」佐藤が聞く。

小栗は、しばらく黙っていた。

「正直に言うと、私自身、今日まで、それが本当にあるものだとは思っていませんでした。ただの言い伝えだと」

金田一が言った。「木像の台座に彫られていた紋様、見覚えはあるか」

小栗は首を振った。「いえ……ただ」

「ただ?」

「祖父の遺品の中に、似たような渦巻きの絵を描いた、古い護符のようなものがありました」小栗は言った。「今も、仏壇の奥にしまってあります」

安藤が身を乗り出した。「見せてもらえますか」

小栗は頷き、奥の部屋から、古びた紙の護符を持ってきた。

渦巻き一つの、簡素な文様??祠の木像と、確かに同じ意匠だった。

「これは、うちの家の――何かの信仰の印なんでしょうか」小栗は不安げに言った。

誰も、すぐには答えられなかった。


深沢老人宅、再訪

夕方、江戸川と山田は、再び深沢老人を訪ねた。

祠のことを話すと、深沢の顔が、初めて明らかに動揺した。

「……見つけたのか、あの祠を」深沢は言った。

「わしも、若い頃に一度だけ、見せてもらったことがある」

「見せてもらった、というのは」

「わしの祖父が、生前、こっそり連れて行ってくれたことがあってな」深沢は言った。

「その時、祖父が言っていた。『これは、山の神ではない。もっと古い、別のものを祀っている』と」

「別のもの、というのは」山田が聞く。

深沢は、しばらく考え込んでから言った。

「この辺りには、御用の荷の話とは別に、もっと古い伝承がある。『土の底に眠るもの』という言い方をする者もいた」

江戸川が眉をひそめた。「土の底に眠るもの……それが、埋蔵金と関係あるんですか」

「わしにも分からん」深沢は言った。「ただ、埋蔵金の話が広まったのは、案外、この古い伝承を隠すための、後付けの話だったんじゃないか、と、わしは思うことがある」

その言葉に、山田の中で、何かが引っかかった。

(――隠すための、後付けの話。前にも、似たようなことを聞いた気がする)

彼は、それ以上を深く考えないようにした。今はまだ、確証のない話だった。


地元の郷土史家、鷲尾誠也の元へ

翌日、一行は御嵩町で長年郷土史を研究しているという、鷲尾誠也(68)を訪ねた。

鷲尾は、地域の神社仏閣や伝承を専門に調べている、地元では知られた人物だった。

祠の写真と木像の紋様を見せると、鷲尾はしばらく黙って見つめていた。

「……これは、私の知る限り、この地域の一般的な信仰の形とは違いますね」鷲尾は慎重に言った。

「渦巻き一つの文様というのは、この地方の神社仏閣には、通常見られないものです」

「では、どこから来たものだと思いますか」金田一が聞いた。

「推測でしかありませんが」鷲尾は言った。

「江戸期、この地域は中山道が通り、様々な行商人や修験者が行き来していました。中には、地方独自の信仰を持ち込んだ者もいたでしょう」

「修験者、ですか」

「あるいは、もっと特殊な――」鷲尾は少し言い淀んだ。

「これは、根拠のない話ですが、幕末には、一部の藩や幕府の中枢で、秘密裏に活動する、特殊な情報・工作組織があったという説があります。そうした組織が、独自の目印や符牒として、こうした紋様を使っていた、という話を、以前どこかで読んだ記憶があります」

一同が顔を見合わせた。

「その組織の名前は、覚えていますか」山田が聞いた。

鷲尾は、記憶を辿るように目を閉じた。

「……確か、『御庭番衆の一派』とだけ、書かれていたと思います。名前までは、覚えていません」

その言葉に、金田一が静かに呟いた。

「御庭番……幕府の隠密か」

座敷の空気が、また一段と、重くなった気がした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ