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「廃墟と生配信と、骨」 第四話

## シーン4


 ロドリゲス斎藤の自宅兼事務所は、可児市郊外の住宅街にあった。

 表札には「斎藤」とだけ書いてある。インターホンを押すと、十秒後に声がした。

 『はい』

 「工藤といいます。少しお話を聞かせてもらえますか」

 『……何の件ですか』

 「旧三菱機械工場の件です」

 沈黙が十五秒続いた。長い。工藤は待った。

 ドアが開いた。

 五十二歳。長身で、日焼けした顔に白髪交じりの無精髭。

バイヤーという仕事柄か、目が鋭い。Tシャツの袖から伸びた腕には、古い傷痕が一本あった。

工藤はそれを一瞬見て、何も言わなかった。

 「どこで私の名前を」ロドリゲスは言った。

 「現場で」

 「……現場で」

 「IDカードの破片が残っていた。あなたの名前が読めた」

 ロドリゲスは目を細めた。「警察ですか」

 「違います」

 「じゃあ何ですか」

 「横浜から来た観光客です」

 ロドリゲスは三秒、工藤を見た。それから短く笑った。「……入れ」

---

 リビングには、世界各地から持ち帰ったと思しい雑貨が並んでいた。

アフリカの木彫り、東南アジアの布、ヨーロッパのどこかのポスター。

バイヤーの仕事場というより、旅人の部屋に近い。

 工藤はソファに座り、出されたコーヒーを一口飲んだ。

 「十年前、あの工場で何があったか、聞かせてほしい」

 ロドリゲスはテーブルの向こうで腕を組んだ。「なぜ私が知ってると思うんですか」

 「あなたのIDカードが残っていたから。捨てたんじゃなく、落とした。急いで逃げた人間の落とし方だ」

 「……」

 「見たんでしょう。何かを」

 ロドリゲスはしばらく黙っていた。コーヒーカップを両手で包むように持ち、窓の外を見た。夏の庭に、雑草が伸びている。

 「探偵、でしょう」ロドリゲスはようやく言った。「観光客じゃない」

 「ええ」

 「誰に頼まれた」

 「今のところ、自分の興味で動いています」

 ロドリゲスは工藤を見た。「信用できない答えですね」

 「正直な答えです」

 また沈黙。

 工藤は待った。急かさなかった。こういうとき、待てる人間と待てない人間がいる。工藤は待てる側だった。

 ロドリゲスが口を開きかけた??

 そのとき、玄関のチャイムが鳴った。

---


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