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余焰  作者: 雅野キュウ
8/10

薪八本目

 冷静に考えたら、ドラマに出演する俳優なんてごまんといて、燭の抱える仕事は膨大だ。そのうちの一人が草太だと限定するのは些か早合点がすぎただろう。仕事終わり、喫茶店で幽井はノートパソコンを開いた。窓からの景色は藍色で、煌々と黄色く白い光が忙しなく瞬いていた。


 今日届いたメールたちをチェックしつつ、ツイッターも更新した。「本日二十二時、『夢想家エミコの子ども無双』。第九話です。ミータの恋の行方、ぜひお見逃しなく!」


 注文したコーヒーは夜よりも暗い色だった。これと似たような色が心の奥底で燃えているのがわかった。脳は冷静でも、胸のうちは急いてならない。白い陶器のカップを持ち上げ、燃料を入れるかのように体内へ注ぎ込んだ。


 ツイッターのタイムライン更新の通知が出る。青と白の液晶画面が自動的に動き、幽井のツイートが画面下に流れ消えていった。一番上に表示されていたのは、笹木のツイート。


「先日、『黄薔薇と泡沫』の先行試写会でした。来てくださった皆様、ありがとうございました。公開まであと少し。みなさん、よいお年を」


 ツイートされて数秒後に、ぽつぽつと「いいね」と「リツイート」が増えていく。リプライには彼への労いの言葉や、映画の感想。彼の知名度から、いわゆる「バズる」ことはないだろう。

 もう一度タイムラインが更新された。なんと、あの燭のツイートだった。幽井は彼女をフォローしていない。彼女は笹木のツイートを引用してコメントしていた。笹木智数ともかずさんがリツイートしました。


「『黄薔薇と泡沫』、脚本を担当させていただきました。他人の恋人ばかり狙う女・マイカと、そんなマイカを愛する男・チカゲのハラハラなラブストーリーです。ぜひ劇場でご覧ください!」


 燭のツイートは瞬く間に拡散されていった。千、二千、と数字が増えていく。


「絶対観に行きます!」


「試写会行きました。燭さんのお姿本当に綺麗でした……」


「試写会やってたの知らなかった(泣)『アカラー』なので公開当日に観に行きます!」


 急いで先程自分が投稿したツイートを見た。いいねもリツイートもせいぜい五百程度。おい何やってんだよフォロワー。早く拡散しろ!

 パソコンをシャットダウンし、そのまま閉じた。どくどくと心臓が高鳴っていた。こういうとこだ、ネットのこういうところが嫌だ。自身の評価と知名度が、数字としてはっきりと表示されてしまう。数だけではないというのも確かにそうだが、気にしないなんて不可能だ。


 残りのコーヒーを飲み干した。既に冷めかけていたが、幽井の体は火照ったままだった。

 嫉妬の炎がどんどん燃え上がってく。その羨望は、もはや憎悪だった。そして幽井は決意する。燭も参加するあの企画に、必ず出ると。そして自身の培ってきたものを見せつけてやると。

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