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余焰  作者: 雅野キュウ


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11/15

薪十一本目

 佐藤草太は希望に満ちていた。もしかしたら、やっと俳優としての芽をだせるかもしれない。


 生で見た燭朱里は実に美しかった。撮影に毎度のことやってくるわけではないが、その姿を見たときはいつも心が躍った。無論、自分なんていう脇役の脇役では会話することすら難しいのだが。


 いつか。いつかでいい。彼女の描く物語の主人公になりたい。燭朱里とは彼にとって、まさに太陽だ。

 そういえば、幽井が参加する企画に彼女も呼ばれているのだろうか。彼が出るなら燭が参加してもおかしくない。あとで聞いてみよう。


 今までずっと、ずっと。血の滲むような努力をしてきた。それを努力――苦しいものと認めている時点で本当は向いていないのかもしれないが、それでも自分の演技力を信じ続けた。


 憧れの俳優がいた。本人は臆病でネガティブでおどおどした青年。それなのに、ドラマや舞台に立つとまるで別人だったのだ。時には煌びやかな学園の王子、時には凶悪な殺人犯。変幻自在という言葉が似合っているほど、彼はたくさんの顔を持っていた。


 草太も同じようになりたかった。それなりに要領もよく、それなりに世渡りが上手かった草太は常に人との関わり方を相手に合わせてきた。話したい人なら聞き役に、聞きたい人なら話し役に。こうすることで、自分がちょっとした俳優になれた気がした。その能力を自分で才能と呼んだ。


 だが才能とは厄介なもので、一度志してしまうと容易に手放すことができない。常に誰かの下位互換でいることしかできない。それでも「自分は高みに登れるはずだ」と根拠のない自身を抱く。

 草太自身、今の状況で大喜びするほど才能と時間を費やした。自分より若い俳優が活躍している様子をテレビで見ると、本当は目を背けたくなる。

 

 それでも。

 ただ、もし高みに登りつめたとしてもこの感情は一生付きまとうのだろう。同居しているプロの脚本家・幽井至も同じ念を抱いている。ような気がする。おそらくその名は、嫉妬。


 彼はきっと燭朱里に嫉妬を抱いている。


 誰かを羨んでも何も解決しないのに、ふつふつと湧き上がってしまうこの感情はなぜ存在するのだろう。と思うこともあった。だが結論はいつも同じ。「がんばるしかない」。時間も環境も残酷で、年だけを取っていく。


 虚しい。虚しい。虚しい。


 しっかりしなければ、と草太は両手で自分の頬をピシッと叩く。控えめで乾いた音がした。こんな顔、尊敬する友人に見せられる顔ではない。頬を叩いたおかげで、顔を洗ったようにすっきりとした。


 終わりの見えない足掻きが背後に潜んでいることは否めないが、知らないふりをした。


「センセイ、ただいま」

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