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余焰  作者: 雅野キュウ
10/10

薪十本目

 それから、例のスタッフに連絡をした。


「本当ですか! いやー、幽井先生が参加してくれるなんて嬉しいなあ! きっと盛り上がりますよ! 単行本なんか出ちゃったりして! ありがとうございます! これからも藍々(らんらん)社一同よろしくおねがいしますね!」


 そのあとすぐに日程などの詳細がメールで送られてきた。まるで準備していたかのようだった。

 今日は外に出る用事がない。とはいえ仕事はまだまだあったため、執筆ページを開く。


 草太はやはり幽井の誘いに乗った。実力試しにはもってこいだと思ったのだろう。まさかこんな早い段階でセンセイと一緒に仕事ができるなんて、と朝から上機嫌だった。そして彼は今、ドラマの撮影で家にいない。脇役の脇役と言いつつも出演回数はそこそこあるようだった。

 幽井はツイッターを開いた。嫌いなアカウントはなぜか観察したくなる。液晶にはやはり燭の名前があった。


 苛立ちと、嘲笑。またこんなこと呟いてやがる、悲しいやつめ。今日の更新はまだこれだけか。囲われてばかりの醜い女だ。

 醜いのは紛れもなく自分であるということは重々、幽井本人が理解していた。ただこうでもしなければ、自己肯定をする機会がなくなってしまう。もはや病気なのではないかと何度も思った。


 幽井はネットサーフィンも趣味だ。パソコンやスマホであてもなく見知らぬサイトをふらふらと。サーフィンと言うより徘徊の方が相応しかった。ただそれも暇だからなどではなく、作品のネタのため。ロケハンとかいうように、彼はそれを「ネットハン」と呼んでいた。


 世界は自分の知らないことで満ち溢れている。幽井の貪欲な知的好奇心が彼を生かしているようなものだ。

 だから、「嫌いな人の潰し方」なんていうサイトに辿り着いたとき。彼には一閃の電撃が走るような心地になった。

 ただ、それはほんの一瞬の衝撃にすぎない。幽井はそのままパソコンを閉じた。しかし、確かに「復讐」をテーマに何か書いてもいいかもしれない。暗い話題はあまり手をつけたことがなかったが、「幽井至の異端作」なりうる可能性がある。きっかけを見つけると、執筆のモチベーションは温泉のように湧き上がった。


 そうだ、今現在の自分に当てはめてしまうのはどうだろう。つけ上がる女に痛い目を食らわす話。実体験ならなおさらキーボードを叩くスピードは上がる。生きた経験は創作においては財産なのだ。


 ……あれ。


 じゃあ痛い目って、どうやって食らわせればいいのだろう。

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