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(仮タイトル)天墜が還る日  作者: 久遠 ゆのか
第一章 黄の国ティワン
12/22

[トウエンの町-12] ミャクリへの相談


 ギルドでクエストの受注手続きを終えた俺は、ミャクリの屋敷へ戻った。


 庭を通ると、アルネが植木の水やりをしているのが見えた。俺の姿に気づくと、じょうろを持ったまま駆け寄ってくる。


「ルーシェ、おかえり! 遅かったけど、あれからどこ行ってたの?」

「ギルドに行ってたんだ。」


 そう答えると、アルネは興味深そうに食いついてきた。


「えっ、ギルド? 何かあったの?」


「ああ、ちょっとな……。どうやら今回の件の背景には、スリの集団が絡んでるらしいんだ。」

「あの子の単独犯ではないってこと?」

「あぁ。それでギルドも何か話を掴んでいないか聞くため足を運んだんだが、そこでバッカスさんと遭遇してな。ギルマスとバッカスさんに相談した結果、スリ集団の件を正式なクエストとして依頼してもらった。だから、これからは堂々と動けることになったよ。」

「そっか、それなら安心ね。」

「あぁ…。」


 状況報告を終えたあと、沈黙が訪れた。

もう1つの件に対する懺悔の気持ちが、俺の中でモヤモヤとした感情を生んでいた。


 「黙り込んでどうしたの?なんだかまだ話に続きがありそうな顔してない?」


 うっ!アルネはするどいな!

俺は少し迷ったが、意を決して話すことにした。


「……実は、アルネからプレゼントしてもらった革手袋を、金策のための担保としてルトに預けたんだ。あいつ、困っててさ…。せっかくのプレゼントなのに、アルネの許可なしで勝手をしてすまない。」


 アルネは一瞬驚いたようだったが、すぐに微笑んだ。


「そうだったの。でも、それで2人の力になれたならいいわ。だから気にしないで!」


 事情があったとはいえ、自分の行いが間違えてたように思えて複雑な気持ちになる。もし、アルネが本気で気にしないと言ってくれてるのだとしても、その言葉に甘えてはいけない。


「本当にすまない。事が終えたら、質屋に引き取りに行くから…。」

「わかったわ。それで、この後はどうするつもり?」

「ミャクリさんに相談したいことがあるんだ。」

「じゃあ、もうすぐ夕食だから、3人で食堂で話しましょ!」


 俺はアルネに案内されながら、食堂へ向かった。


−−−−−


 食堂にはすでにミャクリが座っていた。俺たちが席につくと、給仕の者がグラスにワインを注いだ。


「ミャクリさん、相談事を聞いてもらってよいだろうか。」

「改まってどうした?何かあったのか?」


 俺は今日の出来事を順番に説明した。スリ集団の件が正式な依頼になったこと、ルトという少年のこと、そして彼の妹が病気であること。


 説明に聞き入るミャクリ。

話し終えると俺は真剣な眼差しでミャクリを見つめた。


「そこでお願いがある。家は俺が探すから、2人をこの屋敷の使用人として雇ってもらえないだろうか? 」


 ミャクリは静かに考え込んだあと、コクリと1つ頷いた。


「雇うこと自体は問題ない。使用人用の部屋もあるから、そこに2人を住まわせるといい。」

「それは助かる。お願いします。」


 住処まで提供してくれるとは予想外だった。本当にありがたい。


「ああ。ただ、妹さんの体調が悪いんだったな?」

「そうなんだ。すぐにでも医者に診てもらいたいが今は金がないので、ギルドの依頼を受けて報奨金が入ったら手配するつもりでいる。」


 ミャクリは少し笑い、首を横に振った。


「金の心配はいらない。うちには専属の医者がいる。私から話を通しておくから、いつでも連れて行くといい。」


「……ありがとうございます。」


 心からの感謝を込めて礼を述べると、アルネも嬉しそうに笑った。


「妹さん、早く良くなるといいわね。」


「ああ、本当に。ありがとう、ミャクリさん、アーシャ。」


 ルトと妹の問題は解決の目処が立った。


 次は…。


「もう1つ、わかれば教えてほしいことがある。 ミャクリさんはスリ集団について何か耳にしてることはないか?」


 スリと言えば金銭に絡むことだ。

もしや商人であるミャクリなら、何か関連する話を耳にしているかもしれないという可能性を考えた。


「役に立てなくて悪いが、スリ集団の詳細は知らないな。ただ…。」

「ただ?」


 ミャクリは軽く握った手を顎に添えて視線を斜め上方へ向けると、思い出したように話す。


「最近、役人が酒場街の路地裏で、見慣れない連中とよく立ち話をしているという話は聞いたな。」

「役人が?」

「それは怪しいわね!ううん、怪しすぎるわよ!」


 アルネが鼻息荒く、テーブルに両手のひらを置き、食い気味で立ち上がった。


「おいおい、相手は役人だ。職務上、ただ町のチンピラに注意して回ってるだけの可能性もあるんだぞ。」


 興奮するアルネを、猛獣使いのようにミャクリが宥めた。


「絶対そんなことないわ!だって私の勘がそう告げているもの!」


 しかしアルネは、女の勘は侮れないのだと熱弁を奮っている。


 (興味深いな。今のところスリ集団に関係するかもしれない唯一の情報だ。 早速明日の夜にでも酒場街へ行ってみよう。)


スリ集団――。


 ……このまま好きにはさせない。


 スリ集団の足取りを掴むために必要なことは?

俺は静かに、次に取るべき行動を考え始めた。


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