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神代闘師ギルドライバー  作者: 黒羽光一 (旧黒羽光壱)
第4話 此ノ道ハ何処ヘヤ
21/22

 第4話 おまけ

 

 

 

 

 

 ――――月城市、駅前。

 再開発計画がはじまってすぐといった頃合いの駅前であるが、スーパーや隣接するラーメン屋などは区画整理以前から存在しており、特に立ち退きを要求されることもなく営業している。そんなスーパーの入り口から、缶ビールを箱買いする男が一人。銀髪、視線の見えないサングラス、真ん中分けの髪型に整った容姿。わずかに汗とドブのにおいを漂わせていなければ、貧乏なホストに見えないこともない。

 ホームレスの神様など、不名誉な呼び名で呼ばれることもある彼。自称はエージである。

 数日に一回の買い出しついでに、集まりの中でついにホームレス脱出に成功した人間が一人出たため、今日はそのお祝いがてらの買い出しであった。まぁビールを除いて入っているおつまみのお徳用品だったりして色々と懐事情を察するものがあるが、それはともかく。

 入り口を出ると、エージは足を止めた。

 

「あ? ”智の青(ウィズダム・ブルー)”か。何してんだこんなところで」

「っ! その名前で呼ばないでくださいましっ! 『私の救世主』様!」

 

 びくん、と体を震わし、彼女はエージに詰め寄った。青い髪に愛らしい容姿も目立つと言えば目立つが、なによりその服装がご当地キャラなどを基調とした手品師風というから色々いただけない。シルクハットに燕尾服タイトスカートという恰好はコスプレか何かの撮影かといった具合である。まぁ相対するエージもエージでそれとなく目立つので、あまり人のことを言える立場ではない。それもあってか、彼は鼻で笑って、その場を後にした。

 

「って、お待ちになりなさいっ! まだ何も話していないじゃありませんか!」

「あ? 何だよ」

「何だよって、そっちこそ何ですか!」

 

 サングラス越しにわずかに見える半眼。エージは肩をすくめると「まあついて来いよ」と言った。

 川辺の高架下に向かうエージとマギである。絵面だけ見れば中々に犯罪的であるし、向かう先がホームレスの巣窟というのもまた犯罪的だが、マギもエージも特に気にしている様子もない。そもそもお互いがお互いに興味もないし、いざ何かあっても対応が可能だという自覚があるからだろう。ただ、スタンネットが同行していないあたりは何か自重があったのか、あるいは今回は邪魔だったのか。

 ともあれ酒を仲間のホームレスたちに手渡すと、彼はマギを引き連れてテントに入った。椅子をすすめて座ると、やはりというべきか霧吹きで塩水をまく。

 

「けほっ。……、そういうのやるのなら、先に言ってください!」

「お前、なんか振る舞いが妹のそれじみてきたな。

 で、あー、なんだ? 俺に『ギルドライバーになれ』って話だったか」

 

 当然のように冷蔵庫から水晶のような球体の氷を取り出すエージ。

 それを無視して、マギは彼に確認をとる。

 

「ええ。そろそろ結論が出たのではないかと思いまして」

「どうしてだ?」

「先日、妹とそのギルドライバーがこちらに来ましたね? それで何か考えが変わったのではと」

「変わったというか……。まぁ、アレだな。お前らの姉、なんだっけ? ”勇の緑(カレッジ・グリーン)”のギルティア同伴だったな」

「それはそれは」

「というか、何で知ってるんだ?」

「先日こちらを見たとき、妹の気配を感じまして」

「気配ねぇ……」

「私たち、三人はそれぞれに特殊な能力を設定されている、とお話したかと思います。ゆえに私は知性、知覚、思考に秀でた存在としてデザインされています」

 

 知覚というか五感か、というエージ。おそらくかなり微妙な情報から妹の来訪を察知したのだろうが、細かく突っ込むのも面倒だと彼は鼻で笑った。

 

「それで? だから二人目のギルドライバーなんて『抜け道』を作るなんて無茶を思いついて実行できると」

「ええ。『月の城の意志』を降ろさなければ、失敗することもありません。そもそも、私自身が『ギルドライバー』が本当はどういう理屈で動いているのか、ネットを見て理解いたしましたので。同等の方法はいくらでもできます」

「はンっ」

 

 鼻で笑いながらサングラスと片手の手袋を外し、エージは水晶に右手をかざした。

 

「……いつも思うのですが、一体それは何をやっているのでしょうか?」

「邪道だ、邪道。あ、言っておくが俺がこれをしている間は、テントの外に出ようとするなよ? こっちに帰ってこれなくなる」

「えっ」

「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。いくら神様モドキとはいえ、『取り込まれたら』『どこに出るか』わからんぞ」

「…………」

 

 意味不明でこそあったが、マギは無言のまま、テントの壁を軽くノックした。本来ならそれは素材が張られた構造特有の一定の弾力を返すべきであるが――――明らかに彼女の触ったその感触はまるで「肉を殴ったような」嫌な生暖かさと柔らかさをもったものだった。

 そして、わずかにどこからか聞こえる「赤子の鳴き声」のようなもの――――。

 

「…………貴方、本当に何者です?」

「お前の妹も聞いてきたが、理解できると思わない方がいいぞ」

「それは、納得がいきません」

「型がいくら”智の青(ウィズダム・ブルー)”なんて名前だからといったって、なんでもかんでも世の中のことを理解できるなんて思わないことだ。それこそ膨大な演算装置、記録装置にでも依存しなきゃ、人間の知覚性能と処理能力でどうこう出来るものじゃない」

「まるで、自分が人間ではないかのような言い回しですね」

「一応、神サマらしいからな。ホームレスの」

 

 答えになってません、というマギを無視し、彼は何やら()ているようだ。ほう、とか、なるほどこうなるのか、など言葉が続く。

 そんなエージの様子を、どこか熱っぽく見つめるマギ。この場にスタンネットの中の人がいたら間違いなくカメラを回すだろう、普段の彼女からは想像もつかないかわいらしい女子中学生にしか見えなかった。

 

「……んー、まぁ、俺が居た方が色々とアレも大丈夫か。ん? どうした」

「え? い、いえ、何でもありませんが……」

「見惚れられても困るぞ。大体、俺、ロリコンじゃないし」

「!」ロリコンと言われたところで反射的にイラっとしたらしいマギ。

「一応、超遠距離だが彼女もいるから、無駄骨だ無駄骨」

「超遠距離というのが意味不明なのですが……」

「言葉通りだ。俺がこんなところでホームレスやってるのも、またソイツと再会するために色々仕事を負えないといけないんだよ。

 まあ、それはともかく――――なってやってもいいぞ。ギルドライバー」

 

 はっ、と驚いたようにマギは目を見開き、ほうと熱っぽく息を吐き両手を合わせる。心なしか頬が紅潮してるようにも見えるが、エージは面倒そうな表情で手袋をした右手をひらひらした。

 

「……で、では、胸に”種”を植えますので、む、胸元を開いて頂けると――――」

「そういうのナシで出来ないか?」

「貴方個人のデータをとるのに必要なので、そこは……。べ、別に私の趣味というわけではありませんからね! あくまで必要な措置なんですからね!」

「というか服はやらなくてもできるだろ。なんだコイツ、なんだかんだ一番俗世に染まってるんじゃねぇのか……?」

 

 呆れながら胸襟を開く気配のないエージに、彼女は少し寂しそうにしながら右手を伸ばした。

 つ、と軽く衣擦れが聞こえると同時に、右手がエージの胸元に「埋没する」。それを面白くもなさそうに見ているエージと、やはり照れているようなマギ。いや、照れているわけじゃない。はぁはぁと明らかに興奮している様子がうかがえる。頬の赤さは乙女らしさの発露というより……。

 

「ずいぶん残念なキャラクタだなコレ。……いや、クローニング元の人間性に引っ張られてるのか? 顔立ちも似通ってるし」

「なんでしょうか?」

「なんでもねぇよ。で、出来たか?」

「あ、ハイ」

 

 手を抜き放つと、そこには赤と青のエンブレム。こぶし大の大きさのそれを手に取り、重さの具合を確かめるエージ。

 

「デザインは発現者によって、若干変わるみたいだな。葛城葵のとは違うみたいだ」

「か……?」

「ビヨンド。お前の妹のギルドライバーだ」

「あ、本名はそうだったんですね。ビヨンドの方で覚えてました。……って、そもそもなんであんな変な名乗りをしていらっしゃるのかしら、あの失礼な男性は――――」

 

 エージは彼女の言葉を無視して、エンブレムをサングラスでも持つように、右手で軽く持つ。左手のこぶしを握り顔の横のあたりにもってきて、あたかも玩具のブレスレットか何かに外部アイテムを取り付けるような動きで、左手首、手の甲から沿う位置に充てた。

 

「――――罪破(ギル・ドライブ)

 

 その言葉と同時に、テントの中が紅い閃光に包まれ――――――――。

 

 

 

 

 

   ※

 

 

 

 

 

 少年は、自室でうずくまっていた。ボロボロの体、傷跡こそあれど、それを受けた相手を訴えることも、ましてや家族に助けを求めることすら出来ない。ただただ痛みを、怒りを我慢しなければならない。

 そんな感情のままに、ベッドの上でうずくまり、唸っていた。うなされていた。決して眠っているわけではないが、起きているわけでもない。半覚醒状態と言えばいいか、多数のフラッシュバック――――彼の体を、心を第三者に傷つけられたつらい経験が、何度も何度もリフレインしていた。

 

「――――辛いですか?」

 

 突如、部屋の中に聞こえる少女の声。

 誰の声だという感覚と共に、その声が存在することがまずありえないという認識が少年に走る。そもそも部屋を閉め切って入り口と窓に施錠している以上、この場に誰かが入るのはあり得ない。

 だというのに――――。

 そこには少女がいた。まるでファンタジーにでも居そうな革鎧と、スポーツウェアを混ぜたような活動的な服装。頭にはキャップを被っている。髪の色は緑。そして顔立ちは、おそろしく可愛らしく、また体のラインの起伏もそれなりに成長した、高校生くらいの少女だった。

 

「あなたのその悲しみ。あなたのその怒り――――叶えてあげましょう。ほんのわずかな力添えですが」

「だ、誰?」

 

 まだ声変わりしていない甲高い声に、少女は微笑んだ。

 

「私は Mーi(ミィ)――――最も神様に近い人形です」

 

 

 

 

 

 

 

ようやくDxM三人出せました...

次回、スピリットビヨンド vs バースエイジ

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