4話 『もはやメインは夜ご飯』
今ここに第1次勉強会戦争が始まろうとしていた。
────────────────────────
翔はひたすらに焦っていた。何故なら玲奈と夏目が前とは比べ物にならないほど学力が付いていたからだ。
因みに前とはどのくらい前かというと、中学3年の頃である。
その頃、玲奈は学年トップは当たり前のようだったが、夏目はその真逆をいっていた。翔の知っている限りクラスでは圧倒的なバカだった。
だが、現状は3人共同じ高校に在籍している。
「おいおい...お前、そんな勉強できるキャラじゃ少なくともなかっただろ?」
夏目はカリカリと動いていた鉛筆を置き、こちらを向く。
翔はぽかんと口を開いている。
「どしたの?」
「いや、お前そんな勉強できたっけ?」
夏目はそれを聞き、誇らしげな笑顔で下を向く。
何か過去話がありそうなのて聞かなかった方がよかったか?と思い違う話に変えようと思ったが
「ふっふっふ...私は努力に努力を重ねとんでもない程の学力を身につけたのだ!」
「まぁ私よりは下だけどね」
玲奈がいらない付け足しをし、それを夏目が恨めしそうに睨む。だが夏目の睨みには覇気がない。
ただ目を細めただけにしか見えない時だってある。
「翔さー、何で私達が同じ高校に通えてると思ってる?もしかして偶然だと思ってた?」
「ちょっと玲奈!?それは言っちゃ...」
少なくとも翔はたまたまの偶然だと思っている。だがそれを明らかに否定するような言葉が飛び交う。意図的にしては理由が思いつかない。
「───実はね、夏目が翔と同じところ行きたいって言い出したから私達今同じなんだよー。私はついで」
翔は正直意味が分からなかった。
「えっと?それはどういう意味なのでしょうか?夏目さん」
「えっ!?特に深い意味は無いけど...仲のいい男子が1人でもいたほうが過ごしやすいかなっておもって」
夏目はそう供述する。嘘はないようだ。夏目は嘘をつくとき絶対耳が動く。
「そんな理由かよ...。まぁそれについていく玲奈はもっと考えられないけどな」
「いやぁ、私は別にどんな高校いってもいい所に進学できるしぃ」
「なんだろう...無性に殺意が湧いてくる」
「私も」
もちろん玲奈も決して努力をしていないわけではない。努力の成果がこの天才だ。翔は案外尊敬できる人って近くにいるんだなと思った。
「てか雑談はいいから勉強しよ!宿題終わらないよ」
「そやね。今から喋らずにしたら何とかなりそうやね」
再びえんぴつ片手に宿題へと向かっていく。翔はなんとか終わるという所だが夏目はもうすぐ終わる位だそうだ。玲奈は...もしかしたら既に終っている可能性も無くはない。
「あ、...三角定規学校に忘れた。どっちか貸してー」
「ん?あぁ、いいけど。忘れ物なんて珍しいな」
「まぁねぇー、私でも驚いてるよ。この私がっ...!」
自画自賛の止まらない玲奈は無視して夏目はひたすらに鉛筆を動かす。
そんな翔はコイルガンってどーやって作るんだろ? と明後日の方に振り切ったような全く関係のないことを考えてたりしていた。
────────────────────────
何事もなく1時間半の時間か過ぎた。
「あぁ終わったぁぁぁぁ。まじ松本宿題出しすぎ!脳細胞ガンガン死んでくよ」
「ほんっと多いよね。全くどうにかならんのかあの量は...」
松本とは2年の理科担当教師である。あそこまで愛想のない教師は初めてだと翔達は言い張っている。もちろん松本は男だ。
「二人ともおっつかっれさぁーん」
「お前...かなり前から終わってた?」
「さあねぇ?でも、私のノートには数多の落書きがあったりする」
「終わってたのをバッチリ物語ってんな」
玲奈は随分前に勉強は終わっていた様子だ。いつ終わったかは見当もつかなかった。何故なら3人共ずっと鉛筆を動かしていたからだ。
「え、どんくらい前に終わったの?」
「んー...40分くらい前かな?多分」
「早いな、てかそんな早く終わっててずっと落書き書いてたのか?」
「まぁそーゆーことになりそうだねっ!」
ニヤニヤと翔を見ながらそんな事を言ってくる。夏目と翔は頑張ってようやく終わったものを半分位の速さで終わらせたのだ。
「ほんっと化け物だなお前」
「失礼なこといってくれるねぇー?私、別に急いだつもりはないんだけど」
「その頭まじ落札したいわ」
「そこまでして欲しいんなら2京円からでお願いしますねー」
もし本気で玲奈が宿題をしたらいったいどのくらいで終わるのか、試したくなったが得体の知れない恐怖心が舞い上がっていた。
もはや人間技ではないことになりそうだから。
「さーて?勉強も終わったことだし?夜ご飯でもいただきますかぁ!ほらほら!黙ってないで夏目もなんかいいなよ!」
「お、おー?」
「わざわざ無理してのらなくてもいいぞー 夏目ー」
もう本来の姿をとどめていない。机の上からは綺麗さっぱり文具類は片付けられていた。
10割玲奈の仕業だ。
なんだかんだで今日の夜飯は楽しくなりそうだ と翔は小さな声で呟いた。
────────────────────────
放課後と同じようなことになっていた。
要約すると『晩ご飯のメニューは何だ!』だ。
翔は特にこだわりはなく、ご飯と少し肉焼くくらいだそうだ。夏目はとりあえず野菜で玲奈はずっと肉肉連呼している。
「お前肉食派すぎんだろ...まぁ前からだけど」
「はっ!失礼な。牛肉しか食べられなかった私はついに...ついに豚肉と鶏肉とかえるの肉を食べられるようになったのだぁー!」
「いや、かえるいがいは普通だから。てか、かえる食べれんの?お前」
もちろん と言わんばかりに首を大きく上下に振ってみせる。翔はかえるを食べたことはないが、夏目は玲奈に無理やり食べさせられたことがあるようだ。
「か、か、か、かえる!?!?まだ玲奈食べてたの!?」
「いや、あれからそんな食べてないよ。やっぱ牛には勝てないからねぇー」
「えっと...そういう問題なのかな」
夏目の目には恐怖の一文字が映っていた。それは翔も同じだ。何故なら今日のディナーにかえるをメインでそなえなければならないかもしれないからだ。
明日学校行けなくなると心中思い思いに嘆いていた。
「玲奈ぁ私達親友でしょぉ!お願いだから殺さないでぇ!!」
「全くもって上に同意!ここで俺の人生物語に終止符打ちたくねぇんだよぉ!」
「人生物語って...そんな大げさな。───てか、私別にかえる食べさせようなんて思ってないし、食べようとも思ってないよ」
急に安堵の吐息が漏れる。地獄絵図から脱出でき、この上なく喜んでいるのだろう。心身ともに。
「牛肉ってあるの?私、お肉もってきてないよ?」
「私もー。おにぎしかもってきてなぁーい」
「んー...あったかなぁ」
おもむろに立ち上がり、1階へ降りる冷蔵庫を開けてみるが肉らしきものは見つからない。
だが、ピサが2枚あった。
「おぉーピサが。まぁ肉っつーかベーコン入ってるしいっか」
ピサを片手に再び二階へと上がる。夏目の野菜に関してはあとでどうにかしてもらおうと理不尽な願いをした。
「どーお?肉あった?」
首を横に振る。それを見た玲奈はがっかりとした表情だ。
「喜べみなの衆。マルゲリータピザが2つあったぞ!」
「おぉーピザか!いいねぇ」
「久しぶりだなぁ」
どうやら肉じゃなくてもオッケーらしい。それともピザだから特別に良かったのか。
肉もピザも大好きな翔にはその感性が分からなかった。
「じゃあ早速食べたし、温めてきてよ!8時までもうすぐだし、待てそうにない!」
「たしかに。あ、水のおかわり頼んでいい?」
「わかった。まぁ8時までにはできるやろ。では行ってまいる」
そう言い残しまた下へ降りる。電子レンジにピザを叩き込む。そしてスタートを押し温め始める。
「うわ...袋開けただけでこのピザソースの匂い...神かっ!」
そう言い、ほんの数秒間の至福の時間が消えていく。匂いが完全に消えた。
数分後
すでに匂いが充満している。
「もういいかな?あと1分だし...いや、少し焦げたくらいが美味しいんだよなぁ」
1分後 ──ジリリリリ チンッ
「待っましたぁー!オープン!さっそく皿に移しかえてぇー...あっつ!」
素手で取ろうとする翔に天罰が下った。他人にあげるときはできるだけ手で触らないようにしましょう♪
皿に移した翔は走って2階まで登る。だが再び下へ戻る。
「いっけね...飲み物忘れた」
夏目の分もだが、翔も喉が渇いていた。
タタタタタと階段を上がる。
自室のドアを開けると...
「遅いんだよぉぉ、翔ぅぅぅ」
「ほんっとだよ!飲み物は少なくとも焼いてる間に持ってこれたでしょ!」
「いや、めんどくさいもん。───それよりお待ちかねのピザだぞー。玲奈がまだ床に寝たまんまなら俺と夏目で全部食べるぞー?」
そう言うと、バッと座りちょこちょことこちらへ近づき翔の少し前まできて
「なにとぞそれだけわぁーーー」
土下座をした。足に玲奈の手と頭が当たっていた。
少し恥ずかしがりながら足を手前へ寄せる。
もはや勉強会などサイドメニューにすぎなかった。
────────────────────────
また寝落ちだよおれ!
前もなったよね(笑)
ほんっと次からは気をつけます




