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第24話「円卓会議」

UGN日本支部・チームジゼル個室


今、この部屋は裕子と奏だけがいる。

舞は、起きた後、外部へと準備をしに出かけて行った。


個室の扉は厳重にロックされ、外からは誰も入れない状態だ。


「さて…」


全て準備を終えたあと、裕子はそう呟いた。


部屋の中では、ソファの目の前にプロジェクターがおろされ、

そのプロジェクターに投影するための機材がいくつか置かれていた。

中でもその一番上に置いてある、洗濯機型の投影機が目につく。


そして、わぁわぁと喚きながら、裕子本人に首根っこをつままれたちび裕子が、抵抗するようにばたついていた。


「やめろーしにたくなーい(棒読み」


ここまで準備をする理由。


これから二人は、厳重機密事項である会議をのぞき見しようとしているのだった。


「さっき潜入したちび裕子さん、思いっきり蝿っていわれて潰されてたもんね…」


先ほど先に会議に潜入していたちび裕子は、くせ毛の男、久村に気づかれてしまっていたのだ。


「あれはダミーよ。部屋の絨毯と同じ色にしてそっと侵入させた子がいるのよ」


「成る程」


「そして、その情報はこの子とリンクさせてます。向こうの子がまた蝿だなんだと潰されてもへーき!そしてこの子を…」


ゴゴゴゴゴ…というようなオーラを発しながら、

裕子は小型洗濯機?機械の蓋を開ける


ちび裕子はまた、ばたばたと手足を動かしいて必死に抵抗した。


「やめろーしにたくなーい(棒読み」


「えいっ」


ちび裕子がぽいっと機械に投げ込まれ、ぱたんと扉がしまる。


「うわー」


ウィンウィンウィンと音を立てながら、機械は作動した。


すると機械音と共に、

プロジェクターに会議の盗撮風景が映し出された。


映し出された映像に、奏も裕子も注目した。



  ◆  ◆  ◆



「まず、今回の事件ですが、三重の神宮から『八咫鏡』が盗難されたという報告を受けました」


まず映し出されたのは、円卓で霧谷が真剣な面持ちで話している様子だった。

その発言に桜庭が問いかける。


「『八咫鏡』と言うと、あの『三種の神器』の?」


「はい、そして…」


霧谷が頷くと、長月、そして赤坂が発言した。


「……遺産、なんですよね」


「公にはされてないけど、3点とも特殊な力を秘めた、ですね」


「はい、その通りです」


次に、腕を組み顎に手をやりながら、秋家が言う。


「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、八咫鏡(やたのかがみ)、天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)、だろう?」


「それで、それが今回の謎のオーヴァード、ファントムマザーが所持していた、と?」


真剣な会議の中に、らしくない童顔の小さな少年が一人、真剣な顔をして言う。


「はい。そして、事件はそれだけじゃなかったのです」


「ふむ」


杉木が頷いた。

しかし彼の顔もちはやっぱり少年のソレだ。

それらの様子を、久村はただ黙ってじっと眺めている。


「八咫鏡が盗まれたとの報告を受けた後、我々はすぐに皇居に調査班を派遣させました」


「なるほど」


「勾玉と剣も既に盗まれていた、ということですね」


秋家と赤坂が納得したように言う。


「はい。皇居で厳重保管されているはずの八尺瓊勾玉と天叢雲剣は、エフェクトにより成功に造られていた偽物でした」


「な、なるほど…。それは大事件ですね…」


桜庭は、少し腰の引けたような感じで言った。

その発言に対し、赤坂は、溜息を吐きながら背もたれに寄りかかる


「大事件どころか、かなり危険な状態ですね…」


「?」


赤坂の発言に、桜庭は軽く首を傾げた。

そして、そこでようやく、この中で一番気の抜けた顔をした男、久村が口を開いた。


「……まぁ、今の段階で、そのうちで所在が分かってないのは一つだけらしいな」


秋家はそれに小さくうなずき、軽く咳払いする。


「……問題は、盗まれた理由。と言うより盗んで何に使うかの目的、か? 俺も詳しくは知らんのだが」


「霧谷さん…。あと赤坂さんもどうやら御存知そうですね」


杉木がにっこりと、外見相応のにこやかな笑顔を浮かべる。

すると、赤坂は軽く目を細めて黙った。


「…………」


「『三種の神器』とは、単体でも強力な力を持った遺産です。ですが、その名の通り3点揃えてまた別の作用を発生させる特殊な関係性を持つ遺産でもあります」


霧谷の説明に、長月と桜庭は初めて聞いたような顔をする。


「特殊な作用?」


「それは…、初耳ですね…」


唯一、まるであたかも知ってるような顔をしている赤坂に、霧谷は視線を向ける。


「赤坂さんは御存知なのですか?」


「……私は能力柄、一度漁ったデータベースは忘れませんからね…」


赤坂は眼鏡をかけ直した。


「大したことは知りません。『神話の通りのアイテム』だって事くらいしか」


その言葉に、秋家は問いかける。


「神話って言うと、古事記かなんかか?」


「はい。『天孫降臨』ですね」


霧谷がそういうと、続きを杉木が口にした。


「……ニニギノミコトが、アマテラスオオミカミから三種の神器を授かり、高天原から地上に降り立ったという?」


「その通りです」


霧谷が頷いた。


「……その逸話と先ほどの話を統合しますと、三種の神器を揃えてしかるべき手順を踏めば『天孫降臨』が起きる、ということでしょうか?」


「あたり」


桜庭がそうまとめると、赤坂が軽く指をさして肯定した。


「……まだ目新しい事件ですが、“神殺し”の少年がイザナギ、イザナミというレネゲイドビーイングを倒した事件がありましたよね?」


「あぁ、ありましたね…。

"イザナギ"がオーヴァードを生み、

"イザナミ"がオーヴァードを殺す。

凶悪な力を持ったレネゲイドビーイング…」


長月が思い出したようにそう言った。


それは、白昼に起きた大きな事件だった。


神殺しの少年が、全てを救うために

封印されていた"イザナギ"と"イザナミ"を殺す決断をした。


だが、それは一時的にイザナギとイザナミの力が解放される、日本の危機を意味した。


少年は自分が持てるすべての力を出し切り、この危機を打開。


イザナギ、イザナミを倒すため、UGN、FH、ゼノス全てが共闘し、

すべてのオーヴァード皆が少年の進む道を作った


そして、たくさんの人々に、愛する者に支えられながら、

少年はイザナギとイザナミを討ち果たした……という話。


その話は、ここにいる人間のみならず、世の中のほとんどのオーヴァードが知っている。


久村はその話が出た途端、すごいしかめ面をした。

そして、杉木が笑いながら懐かしそうに言う。


「懐かしいですね。年甲斐もなく激しい運動をしました」


「そいつがどうかしたのかい?」


秋家が尋ねると、再び真剣な表情で、赤坂が言う。


「いるのよ」


皆が、赤坂に注目する。


「イザナギやイザナミみたいに、アマテラスっていうレネゲイドビーイングが、この日本には眠っているの」


それを聞き、会議の空気が少し揺らぐ。


口を少し開けて驚く杉木。


表情を変えず、ただ真剣に腕を組む秋家。


「な…っ、そ、それは…」と狼狽える桜庭


「アマテラス……」と、冷静に受け止める長月。


そして、久村もまた、気だるげだが真面目にその話を聞いていた。


「はい。まだわからない点が多いのですが、確かに存在はしているようです。イザナギやイザナミ程強力な力を持ってないので、アマテラスの封印は半永久に作用している、とのことです」


霧谷の解説に、赤坂が付け加える。


「ただ、その『三種の神器』は、『天孫降臨』でニニギが地上に降り立ったって逸話のように、アマテラスにアクセスするキーなんじゃないか、って言われてるわね」


「詳しいことはまだわからない点が多いのです…」


霧谷が言う。

そして、また唐突に久村が口を開いた。


「……ヘタすれば、アマテラスを起こすかもしれないってわけか」


「というより、何が起きるかわからない、が妥当ね。

起動したら辺り一帯喰われるかもしれないし、お天道様パワーで焼け野原になるかもしれないし、レネゲイド濃度爆発的上昇で周辺都市が一気にジャームタウンなんてのも無いとは言い切れないわね」


赤坂の話を聞いて、長月がぽつりと言う。


「……なんにせよ、物騒ってことは変わらないみたいですね…」


それに、霧谷が頷いた。


「はい。イザナギやイザナミの持っていた力を考えると、アマテラスが秘めた力は決して看過できるものではありません」


「とにかく、三種の神器を大急ぎで探して、とっとと厳重保管、ってことか。自体が自体だけに、なりふり構ってられないと」


なるほどな、といった感じで、秋家が頷いた。

しかし、手を顎にやりながら、長月が言う。


「それがスムーズに出来ればベストなのですが…」


その時、杉木がふと思い出したような顔になる


「……あれ?」


「? どうしました?」


桜庭が杉木に言うと、杉木が霧谷を見ながら続けた。


「さっき、3つの内1つは行方知れず、って言いましたよね?」


「はい」


霧谷は頷く。


「なら、八咫鏡以外に、勾玉か剣は発見されているということですか」


それに答えたのは霧谷ではなく、久村だった。


「……もうひとつ……勾玉は適合してるって話だ。……だろう?赤坂」


「……ええ。杉木さん、貴方は既に適合者に会ってますよ?」


赤坂に言われた杉木は、余計はてなを浮かべて首をかしげる。


「ふぇ? 勾玉なんか持ってた人なんて最近会ったかなぁ」


すると、合点がいったかのように、秋家が話し出す。


「なるほど。チーム『ジゼル』か」


霧谷は深くうなずく。


「……はい。UGNエージェントの“創生の輝光(ジェネシス)”槇原奏。彼の持つ賢者の石が、紛失されたとされる八尺瓊勾玉とのレネゲイド波長が完全一致しました」


その言葉に、一瞬理解が追いつかずに杉木はぽかーんとした顔になる。

が、それもほんのすこしのことで、理解した杉木は大きな声を上げる。


「え、えええええええーーっ!?!? か、彼がですかぁ!?」


その叫びのほうにびっくりし、桜庭の身体は軽く跳ねた。


「今、チーム『ジゼル』が鏡の奪取に取り掛かってます。なので我々は残る一つ、天叢雲剣の行方と、三種の神器を持ち出した盗難者の最終目的を調査する必要が…………」


そうんな風に霧谷が仕切り、

会議が進んでく様を裕子と奏くんはジゼルの個室で見ていた。


  ◆  ◆  ◆


「…………」


そこまで会議を聞いていた二人とも、唖然としていた。

驚愕の事実で、開いた口が塞がらない状態だった。


だが、ふと奏は右手の石に軽く触れ、呟く。


「……これが…三種の神器……?」


石は、相変わらず淡い光を放っている。


「ねぇ、奏くん。電子辞書持ってない?」


ふと、裕子が奏の方を向き、そう尋ねた。


「えーと…確かあるはず…あ、はいどうぞ」


奏は鞄の中を少しあさり、電子辞書を取り出す。

電子辞書を受け取った裕子はおもむろに英和辞典を開く


「comma…。ああ出た」


裕子が文字を入力すると、内容が表示された。


「comma-shaped jewels、和訳勾玉、ね。あー、てかさっさとくれはちゃんの言葉疑ってないでさっさと調べるべきだったわ…。いや、『勾玉』って言われても『ああ、そうですか』とはならなかったか…。てか、前に調べたわね。わけわからなくて気に留めてなかったけど、まさかまんまな意味だったとは……」


「元気出せよ」とちび裕子が裕子の肩をぽん、と叩いた。



「皇居から盗まれた三種の神器……道理で、FHもコレを狙うわけか…」


そう奏が呟く。裕子は難しい顔をしながら腕を組んでいた。


「いまいち…、わからないわね」


「…ですね…なんでこれが僕に適合したんだろう……」


「イザナギ、イザナミがかなーりヤバいのはオーヴァードならみんな知ってるはず。なのにアマテラスにちょっかいを出す?それに、そうね。奏くんの言う通り、わざわざ勾玉を奏くんに適合させた理由もわからないわ事故? 故意? うーん、わからないわね…」


奏はふと頭を抑え、俯く。


「あの時の………レネゲイドに覚醒した時の記憶さえわかれば、前進するかもしれないのに…なんで覚えてないんだろ……」


「それはもう盗んだやつ見つけて聞くしかないかな…」


そこまで言って、裕子は改めて続ける。


「……とりあえず、一つだけ言えるのは犯人は『天孫降臨』とやらの儀式内容とその効果を知ってる可能性が高いわね。」


「ですね…」


俯く奏の頭を、裕子はぽん、と軽く叩いた。


「まったく。奏くんはオーヴァード歴短いんだからもっと加減してほしいわよ。ねぇ?」


「全くですよ…何が何やら…」


軽く混乱している奏を励ますように、裕子は奏の肩を軽くつかんでニッと笑う。


「まぁ、それなら、何がなんでも八咫鏡は私たち、「ジゼル」が取り返さないと。張り切っていくわよ、奏くん!」


「……はい!」


裕子の笑顔につられて、奏も笑う。


明らかになった事実。

それによって、謎は増えていくばかりだ。



だが、後ろを向いてる暇はない。


今、出来ることをして、人々を守る。


それが、チーム「ジゼル」なのだから。



セッションの時はセリフの前に誰が喋ってるかが書いてあったんのでわかりやすかったですが、小説風に書き出すと中々人数が多くて大変でした…


白昼の事件…公式リプレイの「デイズ」の事件の事ですね。

このシーンで知って、読んでみたらめちゃくちゃ面白かったです。

公式ってやっぱり面白いですよね。


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